31 / 55
第四章
31.二柱の再会
しおりを挟む
「ぐっ!」
もんどりうってから、耳元で元婚約者のうめき声がした。
メイベルは吹き飛ばされると、オズワルドに受け止められたのだ。
「オズワルド様!」
知らない従者の声がして、気配が近づいてくる。
「リオン、人を近づけさせるな。――いいから、行けっ」
メイベルは全身の鈍い痛みを堪えながら、ゆっくりと身体を起こした。
「でんか、ご無事ですか……?」
くらくらとする頭に気をつけ、オズワルドを見る。そして。息を呑んだ。
「オズっ……」
「俺は大丈夫だ。君の方こそどうなんだ」
オズワルドは被せるように言った。
「そんな姿で!」
だからメイベルは悲鳴を上げる。
オズワルドは血に塗れていた。大きな怪我はなかったが、異様としか言いがたい。
右腕は変形し、赤黒い爪のように硬化していた。いや、右腕どころか身体が全体がそのような有様だった。完全に変質してしまっているのが右腕なので、すぐ目に入ったのだ。
「まさか、呪い?! いえ、でも、これは……?!」
カースド・メラースに至る呪いかと思ったが、最初の印象からして違った。身の内から形成されたように見える。
「一緒……」
メイベルは無意識にオズワルドの右腕をなぞった。それは地上へ上がるときに触れていた感触と、一緒だった。
「神君竜王」
呆然と呟く。オズワルドの指がぴくりと動く。
神君竜王はメイベルとオズワルドを守るように、黒竜の前に立っていた。
「同じ姿の竜……!?」
「なにが、なにが起きて!」
強大な竜神と相対して大混乱をきたす一団を尻目に、彼らは永い眠りの歳月を経てにらみ合っている。
二柱は瓜二つで、鏡を知らず敵意を向ける生き物ののように同じ動きで威嚇した。
『危なかっただろう』
『あの程度、死にはしないが、彼女を危険に晒したのは貴様だ』
グルルルル……。人間には唸り声としか聞こえない声を上げ、二柱は牽制し合う。
『アルビアンよ。アヴァルの守護竜と呼ばれた竜よ。あれはアヴァルの民を統べ、アルビアン<聖なる獣>たる王家の人と心得る。私を呼び起こすために、我が子を痛めつけるとは何事か』
神君竜王がそう言えば、アルビアンが答える。
『その血のみならば、そうだろう。だがあれは貴様だ。貴様の魂だ。生まれ変わっておいて、貴様の方こそ何事か』
神君竜王はうなった。
『偶然だ。分かっているだろう。あれは偶然生まれたのだ。或いは、あれが私の想いということだろう。そうでなければ、この地は滅びてなどいない』
目を覚ましてすぐ、神君竜王は自分が思うよりずいぶんと深く眠っていたことに気がついた。それだけ深淵に近づいていたことに驚きながら、その理由はすぐに理解した。
地上に、居るはずのない自分の気配を感じたのだ。
もんどりうってから、耳元で元婚約者のうめき声がした。
メイベルは吹き飛ばされると、オズワルドに受け止められたのだ。
「オズワルド様!」
知らない従者の声がして、気配が近づいてくる。
「リオン、人を近づけさせるな。――いいから、行けっ」
メイベルは全身の鈍い痛みを堪えながら、ゆっくりと身体を起こした。
「でんか、ご無事ですか……?」
くらくらとする頭に気をつけ、オズワルドを見る。そして。息を呑んだ。
「オズっ……」
「俺は大丈夫だ。君の方こそどうなんだ」
オズワルドは被せるように言った。
「そんな姿で!」
だからメイベルは悲鳴を上げる。
オズワルドは血に塗れていた。大きな怪我はなかったが、異様としか言いがたい。
右腕は変形し、赤黒い爪のように硬化していた。いや、右腕どころか身体が全体がそのような有様だった。完全に変質してしまっているのが右腕なので、すぐ目に入ったのだ。
「まさか、呪い?! いえ、でも、これは……?!」
カースド・メラースに至る呪いかと思ったが、最初の印象からして違った。身の内から形成されたように見える。
「一緒……」
メイベルは無意識にオズワルドの右腕をなぞった。それは地上へ上がるときに触れていた感触と、一緒だった。
「神君竜王」
呆然と呟く。オズワルドの指がぴくりと動く。
神君竜王はメイベルとオズワルドを守るように、黒竜の前に立っていた。
「同じ姿の竜……!?」
「なにが、なにが起きて!」
強大な竜神と相対して大混乱をきたす一団を尻目に、彼らは永い眠りの歳月を経てにらみ合っている。
二柱は瓜二つで、鏡を知らず敵意を向ける生き物ののように同じ動きで威嚇した。
『危なかっただろう』
『あの程度、死にはしないが、彼女を危険に晒したのは貴様だ』
グルルルル……。人間には唸り声としか聞こえない声を上げ、二柱は牽制し合う。
『アルビアンよ。アヴァルの守護竜と呼ばれた竜よ。あれはアヴァルの民を統べ、アルビアン<聖なる獣>たる王家の人と心得る。私を呼び起こすために、我が子を痛めつけるとは何事か』
神君竜王がそう言えば、アルビアンが答える。
『その血のみならば、そうだろう。だがあれは貴様だ。貴様の魂だ。生まれ変わっておいて、貴様の方こそ何事か』
神君竜王はうなった。
『偶然だ。分かっているだろう。あれは偶然生まれたのだ。或いは、あれが私の想いということだろう。そうでなければ、この地は滅びてなどいない』
目を覚ましてすぐ、神君竜王は自分が思うよりずいぶんと深く眠っていたことに気がついた。それだけ深淵に近づいていたことに驚きながら、その理由はすぐに理解した。
地上に、居るはずのない自分の気配を感じたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~
高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。
先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。
先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。
普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。
「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」
たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。
そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。
はちみつ色の髪をした竜王曰く。
「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」
番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!
婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される
さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。
慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。
だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。
「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」
そう言って真剣な瞳で求婚してきて!?
王妃も兄王子たちも立ちはだかる。
「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。
地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる