追放置き去り婚約破棄されたので拾われ溺愛狙います

つるぎ

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第四章

35.だから待っていてくれと俺(あなた)は言う

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「物は言いよう!」
「普段から準備が足りていなかったからだという誹りは甘んじる!」

 オズワルドとて、言葉一つでメイベルに信じてもらえると虫のいいことは考えいなかった。だから。

「だから、待っていてくれ。かならず、迎えに行くから」

 唐突なそれに、メイベルは首をかしげた。

「むか、えに……?」

 オズワルドは覚悟を決めた目で、メイベルを見る。

おやすみ・・・・。あるいは、おはよう・・・・。メイベル」

 呼応するかのように、どろり、メイベルの視界が崩れた。

「え、いやっ……?!」

 溶けている!

 メイベルは驚愕に目を見開き、そして自分が今ここに居ないことを悟った。

 夢うつつ。垣根が崩壊する。

 自覚がなかったそれに怖気が走った。自分が消えていく恐怖。いつの間に。だって、メイベルはいつの間に?

 無意識に縋り伸ばした手を、オズワルドが手に取った。

「おずっ……」
「すぐ君のところへ行く……!」

 森の中。
 最後に、婚約者の真剣な表情が、メイベルの目に映った。




 これでも、オズワルドには勝算があった。

 神竜アルビアンに本気の一撃を入れられそうになったとき、メイベルは真っ先にオズワルドを庇ったからだ。

 あの時は彼女を失くしてしまうのかと肝を冷やしたが、メイベルが現れたことでアルビアンが攻撃を止め、また神君竜王の拒絶魔法リジェクトがあったお陰で、もんどりうつだけで済んだ。

 神竜の二柱に庇われたことは気になるものの、メイベルがこちらを完全に切って捨てていないことが分かったのは、収穫である。

「――よく分かったね」

 風が吹いて、木々がなぎ倒される。

 赤黒くうろこのように硬質化した身体が重い。もうひと踏ん張りだと、自由の利かないその身体を動かした。

 顔を上げれば、黒竜が覗き込んでいる。メイベルと現れた竜だ。

 オズワルドは竜を睨みつけた。

 許さない。

「なにが、よく分かったね、か。貴様は神君竜王なのだろう。仁徳に優れたと音に聞く神が、なぜ彼女を利用する」

 メイベルは意識だけが地上にあった。自分の存在が不確かなものだと気づいた時の、あの表情。

 神君竜王が口を開くより先に、アルビアンが言った。

「こいつは利用していない。望みを叶えるだけ。利用したのは僕だ。それで怒っているのなら僕に言うんだな」

「同じだ。神が聞いて呆れる。たかが一人の人間を使ってまで、喧嘩ごっこか?」

「そういうお前は、時間稼ぎが終わったのか? お前も同じだ。部隊を撤退させるのに彼女を使った。その血肉が僕に連なる者であればこそ、度し難い。この僕に恥をかかせたのだと知れ」

「それだと私も当てはまってしまう」

「お前は黙っていろ」

 オズワルドは鼻で笑った。

「あいにくと貴様らと違って、俺は承諾を得ている。アルビアン、我が祖国の竜神。そのことも気づけないほど堕ちたのか?」

 言いながら、オズワルドはせり上がるものを吐いた。

「ゴホッ……」

 血がボトボトと落ちたが、肉体がすでに赤いせいで、血の味と臭いで悟るしかない。

「アルビアン、この子の身体が危ない」

 神君竜王は明らかなオズワルドの不調を見て取ると、アルビアンを見た。が、守護竜は頷かなかった。

「お前の魂だ。お前もいる。これで死ぬ道理がどこにある?」

「ああ。情けは無用だ。そろそろ教えてもらうぞ。貴様らはメイベルの正体をどう見ている。彼女を利用する目的はなんだ……!」

 魔力放出で、黒髪がなびく。

 オズワルドは魔法で剣を呼び出し、刃を神竜に突きつけた。
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