48 / 55
最終章
48.フィリッパの悲痛
しおりを挟む
その日は、表向きは晴れやかな式典に相応しいような、青空の広がる日だった。
ハメられた、とフィリッパは怒りに青褪めた。
目の前には、床に押さえつけられたダイヤモンドスターのリーダーと副リーダー。
彼らと因縁があるはずのメイベルは、なぜか無感動で。どうして。フィリッパは混乱しながら、内心でうめく。
ダイヤモンドスターが今日ここに現れた理由など、フィリッパはまったく分からない。だが、彼らと嫌でも関わったことがあるフィリッパの、わずかな反応を取られた。
出来レース。この式典は、最初からフィリッパを断罪させるために使われていたのだ。
クーデターが失敗に終わったのを見て、オズワルド派からうまく離れられたと思っての、これ。トーマス大神官に売られたのかと思ったが、あの男もまた青褪めている。
「この手紙は、コルート家の長子に頼まれて、わたくしが確かに認めたもの。このような惨劇が、本当の目的だったのね?」
メイベルを放逐し、あの女が手にしていた栄誉すべてを手に入れたはずが。あともう少しで、フィリッパが生まれ持って手にしているはずだった幸せが、ついえていく。
「恐れながら、王女殿下……! わたくしは、手紙のことなど……存じ上げませぬ……!」
声を振り絞りながら、フィリッパはもう少しで手に入るはずだった栄光が崩れていくのを、まざまざと感じていた。
ユージェニー王女の冷たいまなざしが、フィリッパをゆっくりと見る。
「知らない? この期に及んで、どのような恥をさらすというのかしら? わたくしに、どのような理由があって、見も知らぬ彼らに、わざわざ手を差し伸べるというの?」
王侯貴族にとって、ギルドそのものは下賤な職人階級に近い。A級ほどの実力があって、ようやく王侯貴族の噂の種になってよい、という程度のものなのだ。
庶民には人気のダンジョン探索者だが、上流階級の者からすると、ただの野蛮野卑でしかなかった。
むろん、貴族として義務を果たしている者たちは、ダイヤモンドスターの存在を認識している。
だから当然、彼らがメンバーを一人入れ替えてから、すっかり落ちぶれているのも知っていたが、それを口にすることはない。
今は、国賓を襲った国賊であり、その手引きを、コルート家の長子フィリッパが行った。という事実がある。
義務を果たさず享楽にふけるだけの貴族たちはもちろん、王女殿下が用意した演目に興ずるのみである。昨日までフィリッパに優しい声をかけていようが、そのようなお遊びでしかなかったのだから、なにを思うこともなく。
我らが麗しき、王族の御言葉のままに。
玩具にされていると理解しつつ、いずれは、オズワルドと無事に婚姻を結べば彼らに復讐できるからと、それまで利用するのだと思っていたフィリッパは、彼らを睨みつけたい気持ちをぐっと堪えた。
今はなにをしても、王の御前を穢すのみ。少しでも生き延びる手を探さなければならない。
しかし、フィリッパは詰んでいた。
口先だけでもメイベルを立てておけばよかったものを、コルート家の長子として立ってしまった時点で。
ユージェニーは、コルート家の長子の願いを聞き届けたと言っているのだ。
「こちらにおわす御方は、先だって立国なされた国王陛下であらせられる。陛下の御意志により、わたくしの宣言式に、ひそかに参られていた。すなわち、そなたらは我が国を貶めた国賊である」
「ユージェニー様!」
「気安く我が名を言うでない! そなたは所詮、母親が下賤な身。レルムの民ではなかったのだ。近衛兵、コルート家を全員捕らえなさい!」
「お待ちください」
フィリッパが悲鳴を上げる前に、貴族たちがもうずっと、気になっていたその人物の声が、した。
「メイベル女王」
ユージェニーが目礼する。
それだけで、今までと立場が異なるのだということが伝わる。
フィリッパを筆頭に、メイベルを蔑んでいた貴族たちは青褪めた。
ハメられた、とフィリッパは怒りに青褪めた。
目の前には、床に押さえつけられたダイヤモンドスターのリーダーと副リーダー。
彼らと因縁があるはずのメイベルは、なぜか無感動で。どうして。フィリッパは混乱しながら、内心でうめく。
ダイヤモンドスターが今日ここに現れた理由など、フィリッパはまったく分からない。だが、彼らと嫌でも関わったことがあるフィリッパの、わずかな反応を取られた。
出来レース。この式典は、最初からフィリッパを断罪させるために使われていたのだ。
クーデターが失敗に終わったのを見て、オズワルド派からうまく離れられたと思っての、これ。トーマス大神官に売られたのかと思ったが、あの男もまた青褪めている。
「この手紙は、コルート家の長子に頼まれて、わたくしが確かに認めたもの。このような惨劇が、本当の目的だったのね?」
メイベルを放逐し、あの女が手にしていた栄誉すべてを手に入れたはずが。あともう少しで、フィリッパが生まれ持って手にしているはずだった幸せが、ついえていく。
「恐れながら、王女殿下……! わたくしは、手紙のことなど……存じ上げませぬ……!」
声を振り絞りながら、フィリッパはもう少しで手に入るはずだった栄光が崩れていくのを、まざまざと感じていた。
ユージェニー王女の冷たいまなざしが、フィリッパをゆっくりと見る。
「知らない? この期に及んで、どのような恥をさらすというのかしら? わたくしに、どのような理由があって、見も知らぬ彼らに、わざわざ手を差し伸べるというの?」
王侯貴族にとって、ギルドそのものは下賤な職人階級に近い。A級ほどの実力があって、ようやく王侯貴族の噂の種になってよい、という程度のものなのだ。
庶民には人気のダンジョン探索者だが、上流階級の者からすると、ただの野蛮野卑でしかなかった。
むろん、貴族として義務を果たしている者たちは、ダイヤモンドスターの存在を認識している。
だから当然、彼らがメンバーを一人入れ替えてから、すっかり落ちぶれているのも知っていたが、それを口にすることはない。
今は、国賓を襲った国賊であり、その手引きを、コルート家の長子フィリッパが行った。という事実がある。
義務を果たさず享楽にふけるだけの貴族たちはもちろん、王女殿下が用意した演目に興ずるのみである。昨日までフィリッパに優しい声をかけていようが、そのようなお遊びでしかなかったのだから、なにを思うこともなく。
我らが麗しき、王族の御言葉のままに。
玩具にされていると理解しつつ、いずれは、オズワルドと無事に婚姻を結べば彼らに復讐できるからと、それまで利用するのだと思っていたフィリッパは、彼らを睨みつけたい気持ちをぐっと堪えた。
今はなにをしても、王の御前を穢すのみ。少しでも生き延びる手を探さなければならない。
しかし、フィリッパは詰んでいた。
口先だけでもメイベルを立てておけばよかったものを、コルート家の長子として立ってしまった時点で。
ユージェニーは、コルート家の長子の願いを聞き届けたと言っているのだ。
「こちらにおわす御方は、先だって立国なされた国王陛下であらせられる。陛下の御意志により、わたくしの宣言式に、ひそかに参られていた。すなわち、そなたらは我が国を貶めた国賊である」
「ユージェニー様!」
「気安く我が名を言うでない! そなたは所詮、母親が下賤な身。レルムの民ではなかったのだ。近衛兵、コルート家を全員捕らえなさい!」
「お待ちください」
フィリッパが悲鳴を上げる前に、貴族たちがもうずっと、気になっていたその人物の声が、した。
「メイベル女王」
ユージェニーが目礼する。
それだけで、今までと立場が異なるのだということが伝わる。
フィリッパを筆頭に、メイベルを蔑んでいた貴族たちは青褪めた。
0
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~
高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。
先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。
先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。
普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。
「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」
たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。
そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。
はちみつ色の髪をした竜王曰く。
「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」
番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした
しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」
十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。
会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。
魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。
※小説家になろう様にも投稿しています※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる