ありふれた想いも、その儚さで

青森りんご

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八話 未来を支える為に

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 セレナを追い払ったことで、一時的に安心感は得られたものの、現実は厳しいままだった。ルカの弟の治療費は未だ莫大で、セレナが支援を止める可能性も残されている。セレナの金に頼らずに治療費を工面する方法を考えなければならない。

 その夜、カフェの閉店後にルカと二人で話し合うことにした。彼は疲れた顔で私を見て、深い溜息をついた。

「セレナを追い払ってくれたのは本当に感謝してる。でも、どちらにしろ支援が断たれれば弟の治療は続けられないんだ」

「だからこそ、何か方法を考えなきゃいけないのよ」

「……正直、他に頼れるアテなんてない。俺の給料じゃ到底追いつかないし、家族ももう限界だ」

 ルカの声には深い諦めが混じっていた。けれど、私は諦めたくなかった。彼の家族も、ルカ自身も救いたいと思ったからだ。

 翌日、私は一人でアパートの狭い部屋で考え込んでいた。治療費を賄う方法……それにはお金が必要だ。けれど、私たちの手元には十分な資金がない。

「何か方法があるはず……」

 頭を抱えていたその時、私はふと昔のことを思い出した。没落する前、私の家は慈善団体に多くの寄付をしていた。医療支援や難病支援に特化した団体もあったはずだ。もしかしたら、そういった団体が助けてくれるかもしれない。

「調べてみるしかない」

 私は早速行動に移した。ネットで情報を探し、難病治療を支援している団体や医療助成プログラムを調べ上げた。そしてその中から、いくつかの団体に問い合わせることにした。

 数日後、私はルカを呼び出し、結果を伝えた。

「いくつか、希望が見えてきたわ。難病支援の団体が、弟さんの治療費を一部負担してくれる可能性があるの」

「本当か?そんな団体があるのか……」

「ええ。ただし、申請のために詳しい書類が必要みたい。弟さんの医師の診断書や治療計画、家族の収入状況を証明する書類とかね」

「そっか……でも、それさえ用意すればいいんだな」

 ルカの顔に少し希望の光が見えた。私はその表情を見て、さらに意欲が湧いてきた。

「それだけじゃないわ。クラウドファンディングも考えてるの」

「クラウドファンディング?」

「ネットで資金を募る方法よ。弟さんの病気や治療の状況を伝えて、多くの人から少しずつ支援をしてもらうの。最近は、そういう方法で救われた人がたくさんいるって聞いたわ」

 ルカは驚いた顔をしていたが、すぐに真剣な表情になった。

「……そんなことができるなら、ぜひやってみたい。でも、俺たちだけでそれができるのか?」

「私に任せて。文章を書くのは得意だし、写真や資料を揃えれば、きっとたくさんの人が協力してくれるわ」

 数週間後、私たちはクラウドファンディングのページを立ち上げた。そこには弟の病状や治療に必要な費用、これまでの経緯が詳しく書かれていた。私たちはSNSを通じて知人や友人にも拡散をお願いし、多くの人々に協力を呼びかけた。

「本当にこれでうまくいくのかな……」

 ルカは不安そうだったが、私は彼の肩を叩いて励ました。

「大丈夫。あなたの家族を救いたいと思う人は、きっとたくさんいるわ」

 その言葉の通り、クラウドファンディングのページには次々と支援のコメントや寄付が集まり始めた。「少しだけどお役に立てれば」「頑張ってください」という温かい言葉が並び、私たちの胸を打った。

 一方で、セレナがこれを見逃すはずもなかった。彼女は私たちの動きを知るやいなや、再び妨害しようと画策していた。SNSでデマを流し、「この募金は詐欺だ」という悪意のある噂を広めようとしたのだ。

 しかし、私たちはすでに対策を練っていた。信頼性を証明するために、弟さんが治療を受けている病院や主治医の協力を仰ぎ、正確な情報を提供していたのだ。そのおかげで、セレナの策略はすぐに信用を失い、彼女は逆に批判の的となった。

 最終的に、クラウドファンディングと支援団体の助けを得て、必要な治療費の目処が立った。ルカは深く感謝の意を示し、私の手を握りしめた。

「本当にありがとう、エリザベート。お前がいなかったら、俺はきっと諦めてた」

「私たちの力で乗り越えたのよ。これからも一緒に頑張りましょう」

 こうして、私たちはセレナの金に頼らずに未来を切り開く道を見つけたのだった。

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