そして何もなかった

平 昌綱

文字の大きさ
15 / 22

焦りと限界

しおりを挟む
期末テストのプレッシャーと文化祭の準備が重なり、僕の毎日は極限状態だった。この1ヶ月、ほとんど毎日のように徹夜を繰り返していた。睡眠不足が続く中でも、「自分なら大丈夫だ」と無理に自分を奮い立たせ、なんとか乗り切ろうとしていた。しかし、ついにその限界が訪れた。

その日、僕はいつも通りの忙しい朝を迎え、文化祭の準備に向かっていた。視界が少し霞んでいるような気がしたが、疲労のせいだと思い込み、気にも留めなかった。しかし昼過ぎ、突然目の前が真っ白になり、足元がふらついた。次の瞬間には、僕の体は床に崩れ落ちていた。

気づいたとき、僕は宙に浮いていた。いや、正確には、ラグビー部とバスケ部のマッチョな部員たちにお姫様抱っこされ、保健室へ搬送されている途中だった。汗と筋肉で輝く彼らの腕に抱かれた状況は、どこか滑稽でさえあったのに、その瞬間、僕の頭には「恥ずかしい」とか「いいところを見せなければ」という思いしか浮かばなかった。保健室までの廊下を運ばれる途中、周囲の視線がやけに重く感じられた。友人たちの心配そうな目、あるいは笑いを堪えているような表情。そのすべてが僕を追い詰めていくように思えた。

保健室のベッドに横たわった僕は、深い疲労感に包まれながらも、自分を責めることを止められなかった。
「なんでこんなところで限界を迎えるんだ。まだやるべきことがたくさんあるのに…」
文化祭の準備はまだ山積みだし、期末テストの勉強も全然足りていない。徹夜をしてまでやってきた努力がここで無駄になるのではないかという恐怖が、頭の中を支配していた。自分の体が思うように動かない無力感。責任感に押しつぶされそうになる中、心の奥底で「こんなに頑張っているのに、どうして誰も僕を助けてくれないんだ」という不満がこみ上げてくる。それでも、そんな弱音を口にする自分を許せなかった。

眠りに落ちた僕は、夢の中でも自分を責め続けた。文化祭の準備を進める友人たちの姿がぼんやりと浮かぶ中、自分だけが取り残されている感覚が胸を締めつけた。僕がいなければ文化祭は失敗するのではないかという不安。そして、その不安を裏付けるように、夢の中で文化祭が無残にも崩壊する光景を見た。恐怖に目が覚めたとき、保健室の天井が見えた。すべてが現実だった。

その後、担任に呼び出され、強制的に休養を命じられた。先生は優しい声で「倒れるまで頑張ることが偉いわけじゃない」と言ったが、僕にはその言葉がどうしても素直に受け入れられなかった。努力を手放すことが、まるで敗北のように感じたのだ。

けれども、その日の夜、家で布団に横たわりながら、僕はようやく気づいた。文化祭も期末テストも、すべてを背負おうとしていたのは僕自身だったのだと。周りを頼ることをせず、ただひたすらに一人で頑張ることが正しいと信じ込んでいた。それが、僕自身をここまで追い詰めた原因だったのだ。

あの日の出来事は、僕にとって苦い思い出だ。でも同時に、自分の弱さを受け入れることの大切さを教えてくれた出来事でもあった。それから僕は、少しだけ周囲に頼ることを覚えた――少しずつではあるけれど。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

俺をフッた女子に拉致されて、逃げ場のない同棲生活が始まりました

ちくわ食べます
恋愛
大学のサークル飲み会。 意を決して想いを告げた相手は、学内でも有名な人気女子・一ノ瀬さくら。 しかし返ってきたのは―― 「今はちょっと……」という、曖昧な言葉だった。 完全にフラれたと思い込んで落ち込む俺。 その3日後――なぜか自分のアパートに入れなくなっていた。

処理中です...