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「レジ袋はご利用になりますか?」⑥
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◇◆◇
「いらっしゃいませー」
いつものコンビニ。
でもいつもとちょっと違う。
俺は一度帰宅して着替えてから来た。
缶ビール二本とおつまみを持ってレジへ。
レジには天志が。
俺を見てちょっとびっくりしてから。
「いらっしゃいませ」
笑顔を見せた。
今日はレジ袋がいるかどうか聞かずに天志はレジ袋に入れてくれた。
それを持ってコンビニの外で待つ。
しばらくして上がった天志が出てくる。
俺を見てやっぱりまたびっくりする。
「歩、待っててくれたんですか?」
「うん。これ」
レジ袋と別に持っている紙袋を見せる。
「うちのテイクアウトメニューのずわいがにのお寿司。昨日、蟹って聞いて目キラキラさせてたから」
「…俺にですか?」
「うん、天志に。おみやげ」
そう答えて天志の手を取る。
昨日教えてもらった天志のアパートの方向へ歩き出すと、ちょっと引っ張られるようにして天志がついてくる。
「…もう来ないかと思いました」
「なんで?」
「……嫌だったかなって思ったので」
「……」
なんて答えよう。
正直に答えるの、ちょっと恥ずかしいけど、でも恋人に嘘つかれたくないよな。
「そんなに嫌じゃなかったから」
「え…」
「…それに俺達別れてないんだし、ビールも冷やしてもらってるし」
ちょっと曖昧な言い方になってしまった。
天志は真っ赤になって、それから微笑む。
天志の笑顔、好きだな。
優しい気持ちになれる。
「ありがとうございます…!」
「……」
なんとなく天志の唇に視線が行ってしまう。
…昨日のキス、気持ちよかった。
「お仕事はスーツじゃないんですか?」
「店で制服の白ワイシャツと黒いスラックスに着替えるよ。通勤はスーツだけど」
「じゃあ今日はお休みだったんですか?」
俺の服装…ジーンズにパーカー、その上にコート、そしてスニーカーという格好を見て天志が聞く。
「あれ、でもおみやげ…」
「うん。一度帰って着替えてから来た」
「どうしてですか?」
「………言わないとだめ?」
俺が天志の目を見ると、視線を受け止めた天志は少し口元を緩めてからそれを隠すように俯いた。
「着いたね。…なんか喉渇いたかも」
「あ、じゃあ……お茶…飲んで行ってください…」
顔が熱い。
こんなの、期待してるみたいだ。
でも、期待してないって言ったら嘘になる。
手を繋いだまま天志の部屋に入った。
「どうぞ」
「ありがとう」
天志が出してくれたお茶を一口飲む。
テーブルに向かい合って座り、ふたりで静かにお茶を飲む。
「歩は、…」
「ん?」
「考え違いじゃないと思うんですが、俺が脱がせやすい服で来たんですか?」
「……」
もう一口お茶を飲む。
顔がまた熱くなる。
「さっきも言ったけど…そういうの、答えないとだめ?」
俺の顔見たら答えはわかると思う。
天志がテーブルに身を乗り出して俺に唇を重ねる。
あ、気持ちいいキスだ…。
そう考えてゾクッとする俺の思考をかき乱す天志のキス。
そのままベッドに連れて行かれた。
連れて行かれたって言っても、今日の俺はそうされたいと思っていた。
「いらっしゃいませー」
いつものコンビニ。
でもいつもとちょっと違う。
俺は一度帰宅して着替えてから来た。
缶ビール二本とおつまみを持ってレジへ。
レジには天志が。
俺を見てちょっとびっくりしてから。
「いらっしゃいませ」
笑顔を見せた。
今日はレジ袋がいるかどうか聞かずに天志はレジ袋に入れてくれた。
それを持ってコンビニの外で待つ。
しばらくして上がった天志が出てくる。
俺を見てやっぱりまたびっくりする。
「歩、待っててくれたんですか?」
「うん。これ」
レジ袋と別に持っている紙袋を見せる。
「うちのテイクアウトメニューのずわいがにのお寿司。昨日、蟹って聞いて目キラキラさせてたから」
「…俺にですか?」
「うん、天志に。おみやげ」
そう答えて天志の手を取る。
昨日教えてもらった天志のアパートの方向へ歩き出すと、ちょっと引っ張られるようにして天志がついてくる。
「…もう来ないかと思いました」
「なんで?」
「……嫌だったかなって思ったので」
「……」
なんて答えよう。
正直に答えるの、ちょっと恥ずかしいけど、でも恋人に嘘つかれたくないよな。
「そんなに嫌じゃなかったから」
「え…」
「…それに俺達別れてないんだし、ビールも冷やしてもらってるし」
ちょっと曖昧な言い方になってしまった。
天志は真っ赤になって、それから微笑む。
天志の笑顔、好きだな。
優しい気持ちになれる。
「ありがとうございます…!」
「……」
なんとなく天志の唇に視線が行ってしまう。
…昨日のキス、気持ちよかった。
「お仕事はスーツじゃないんですか?」
「店で制服の白ワイシャツと黒いスラックスに着替えるよ。通勤はスーツだけど」
「じゃあ今日はお休みだったんですか?」
俺の服装…ジーンズにパーカー、その上にコート、そしてスニーカーという格好を見て天志が聞く。
「あれ、でもおみやげ…」
「うん。一度帰って着替えてから来た」
「どうしてですか?」
「………言わないとだめ?」
俺が天志の目を見ると、視線を受け止めた天志は少し口元を緩めてからそれを隠すように俯いた。
「着いたね。…なんか喉渇いたかも」
「あ、じゃあ……お茶…飲んで行ってください…」
顔が熱い。
こんなの、期待してるみたいだ。
でも、期待してないって言ったら嘘になる。
手を繋いだまま天志の部屋に入った。
「どうぞ」
「ありがとう」
天志が出してくれたお茶を一口飲む。
テーブルに向かい合って座り、ふたりで静かにお茶を飲む。
「歩は、…」
「ん?」
「考え違いじゃないと思うんですが、俺が脱がせやすい服で来たんですか?」
「……」
もう一口お茶を飲む。
顔がまた熱くなる。
「さっきも言ったけど…そういうの、答えないとだめ?」
俺の顔見たら答えはわかると思う。
天志がテーブルに身を乗り出して俺に唇を重ねる。
あ、気持ちいいキスだ…。
そう考えてゾクッとする俺の思考をかき乱す天志のキス。
そのままベッドに連れて行かれた。
連れて行かれたって言っても、今日の俺はそうされたいと思っていた。
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