初恋迷子

すずかけあおい

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初恋迷子⑩

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 いつもの帰り道、並んで歩いていたら和惟が突然足を止めた。
「真弥がしてほしいこと、全部言って?」
 とくんと心臓が揺れた。でも。
「言えない」
 心に溢れる願望をすべて伝えたら、絶対に和惟は呆れる。真弥を嫌いになるかもしれない。
「大丈夫だから、教えて?」
 和惟は強いと思う。「好き」を怖がっていないし、真弥のすべてを受け止めようとしてくれる。それがどんなに心強いか、和惟は知らないだろう。
「和惟のこと考えると、苦しいしせつない。俺以外を見ないでほしい。今日みたいに女子と話すのも、平松と話すのも嫌。ずっと『あーん』ってしてほしい」
 口にしていたら声が震えてきた。涙が滲んで、視界がゆらりと揺らめく。言葉にすると自分の心の汚さがはっきりとわかって、それも苦しかった。
「――どんどんわがままになってく自分も嫌だ。和惟を好きだって思えば思うほど、自分が嫌いになってく」
 優しくて懐かしいにおいがすぐそばに感じて、一瞬呼吸が止まる。抱きしめられているのだとわかって頬がひどく熱くなる。
「そんな真弥が可愛いよ」
「可愛くない。こんなのだめだよ」
 自分がこんなに自己中心な考えをする人間だったなんて知らなかった。どんどん自分の嫌な部分が見えてきて、和惟に嫌われる怖さが膨らむ。
「俺になら、どんどん欲張りになっていい」
 あやすような言葉に、涙が頬を伝った。和惟がそのひとしずくを指で拭ってくれる。
「平松と仲良くしないで」
 ほぐれた心で、またわがままを言ってしまった。反省しないといけないのに、和惟があんまり嬉しそうにするから目が引き寄せられた。
「そんなに好きになってくれてありがとう」
 柔らかく目を細め、唇に弧を描く表情の美しさに息を呑む。こんなに素敵な人が、自分の好きな人なんて信じられない。
「真弥の黒い心を溶かす魔法をかけてあげようか?」
「うん」
 和惟はそんなすごいことができるのか、と驚嘆の表情を向けると、和惟はいっそう優しく微笑んだ。
「つきあおう、真弥」
「――」
「恋人になったら、苦しくなくなるよ」
 夢のような言葉に反応できない。ただじいっと和惟を見あげていると苦笑された。
「オーケーじゃなかったら、俺は苦しいけど」
「あ、あっ、もちろんオーケーだよ! よろしくお願いします!」
 ぺこりと頭をさげると、和惟が髪を撫でてくれた。いつもされていることなのに、「恋人」という単語の響きが小さな触れあいを特別なものにする。
「よろしく、真弥」
 手を握られて、かあっと頬に熱が集まる。
 和惟はすごい。本当にもう苦しくない。


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