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あなたと夕陽と心⑤
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「……ん」
寝返りをうって瞼を上げる。朝だ。今日は何曜日だっけ。ぼんやりした頭で考えて、昨日が金曜日だから今日は土曜日、仕事は休み…だからもう少し寝る、ともう一度瞼を下ろす。
「……!!」
がばっと起き上がる。寝てちゃだめじゃん。ここ、俺の部屋じゃないし。
隣を見ると誰もいない。千明さんはもう起きているんだろうか。今は何時だ。
時計を見ると、もう午前九時だった。慌ててベッドから出てリビングダイニングに向かう。
「おはよう、光輝」
「…おはようございます」
朝から爽やかな笑顔だ。ソファでコーヒーを飲みながらタブレットをいじっている。先に起きていたんだ、とちょっと寂しくなった自分に不思議になる。
「なにか食べる? パンを焼くくらいしかできないけど」
「あ、自分でやってよければ自分で…」
「光輝は自分でやりたい?」
「?」
俺?
「光輝がやりたいことを教えて?」
俺がやりたいこと。
…ってなんだろう。とりあえずパンを焼くこと? わざわざ千明さんにやってもらうのは申し訳ないから、自分でやりたい。…こういうことでいいのかな。
「えっと…パンは自分で焼きたいです」
「わかった。冷蔵庫の中身は好きに使っていいよ」
「ありがとうございます」
お言葉に甘えて冷蔵庫を開けさせてもらう。卵とベーコンを見つけたのでベーコンエッグも作ることにする。レタスとトマトも発見。塩を振って食べよう。
俺の分と千明さんの分を作ってテーブルに置くと、千明さんが驚いた様子で俺を見る。
「俺の分も作ってくれたの?」
「朝は食べない人ですか? あ、もしかして食べた後でした?」
「いや、食べてない。普段から面倒で食べない人。でも光輝となら食べたい。ありがとう」
ふたりでいただきますをして食べ始める。たいしたものじゃないのに、千明さんはおいしいおいしいと食べてくれる。かっこいい人って、心が表面に現れているのかもしれない、と思った。優しかったり、人の気持ちを尊重しようとしてくれたり、そういうのってかっこいい。
「光輝はなにが好き?」
「え?」
「好きなものはなに?」
好きなもの。
改めて聞かれるとわからない。食べ物かな。それとも場所? それとも全般的に?
「…どうして俺にそんなに興味があるんですか?」
思ったままを聞いてみる。海司が相手だったら絶対無理だけど、千明さんは怒らないだろうから。
「光輝は自分の魅力に気付いてる?」
「? 魅力?」
そんなのわからない。あるの?
考えが顔に出ていたんだろう、千明さんが困ったような表情をする。
「光輝は自分で思っている以上に魅力的」
「魅力的…」
「ころころ変わる表情は愛らしいし、笑うと思わず抱き締めたくなるくらい可愛い。でもね」
千明さんが表情を曇らせる。
「光輝が怯えた目をしていたり、諦めたような顔をしているのは、見ているほうが辛い」
優しい人だな、と感じる。こんなに俺を深く知ろうとしてくれている人に出会ったことはなかった。表面をすくい取るんじゃなくて、底の深いところまでしっかりわかろうとしてくれている。
「ごちそうさま。片付けは俺がやるよ」
「いえ、俺も一緒に」
俺が食器を洗って、千明さんが拭いていく。結局、自分の好きなものを答えられなかった。
寝返りをうって瞼を上げる。朝だ。今日は何曜日だっけ。ぼんやりした頭で考えて、昨日が金曜日だから今日は土曜日、仕事は休み…だからもう少し寝る、ともう一度瞼を下ろす。
「……!!」
がばっと起き上がる。寝てちゃだめじゃん。ここ、俺の部屋じゃないし。
隣を見ると誰もいない。千明さんはもう起きているんだろうか。今は何時だ。
時計を見ると、もう午前九時だった。慌ててベッドから出てリビングダイニングに向かう。
「おはよう、光輝」
「…おはようございます」
朝から爽やかな笑顔だ。ソファでコーヒーを飲みながらタブレットをいじっている。先に起きていたんだ、とちょっと寂しくなった自分に不思議になる。
「なにか食べる? パンを焼くくらいしかできないけど」
「あ、自分でやってよければ自分で…」
「光輝は自分でやりたい?」
「?」
俺?
「光輝がやりたいことを教えて?」
俺がやりたいこと。
…ってなんだろう。とりあえずパンを焼くこと? わざわざ千明さんにやってもらうのは申し訳ないから、自分でやりたい。…こういうことでいいのかな。
「えっと…パンは自分で焼きたいです」
「わかった。冷蔵庫の中身は好きに使っていいよ」
「ありがとうございます」
お言葉に甘えて冷蔵庫を開けさせてもらう。卵とベーコンを見つけたのでベーコンエッグも作ることにする。レタスとトマトも発見。塩を振って食べよう。
俺の分と千明さんの分を作ってテーブルに置くと、千明さんが驚いた様子で俺を見る。
「俺の分も作ってくれたの?」
「朝は食べない人ですか? あ、もしかして食べた後でした?」
「いや、食べてない。普段から面倒で食べない人。でも光輝となら食べたい。ありがとう」
ふたりでいただきますをして食べ始める。たいしたものじゃないのに、千明さんはおいしいおいしいと食べてくれる。かっこいい人って、心が表面に現れているのかもしれない、と思った。優しかったり、人の気持ちを尊重しようとしてくれたり、そういうのってかっこいい。
「光輝はなにが好き?」
「え?」
「好きなものはなに?」
好きなもの。
改めて聞かれるとわからない。食べ物かな。それとも場所? それとも全般的に?
「…どうして俺にそんなに興味があるんですか?」
思ったままを聞いてみる。海司が相手だったら絶対無理だけど、千明さんは怒らないだろうから。
「光輝は自分の魅力に気付いてる?」
「? 魅力?」
そんなのわからない。あるの?
考えが顔に出ていたんだろう、千明さんが困ったような表情をする。
「光輝は自分で思っている以上に魅力的」
「魅力的…」
「ころころ変わる表情は愛らしいし、笑うと思わず抱き締めたくなるくらい可愛い。でもね」
千明さんが表情を曇らせる。
「光輝が怯えた目をしていたり、諦めたような顔をしているのは、見ているほうが辛い」
優しい人だな、と感じる。こんなに俺を深く知ろうとしてくれている人に出会ったことはなかった。表面をすくい取るんじゃなくて、底の深いところまでしっかりわかろうとしてくれている。
「ごちそうさま。片付けは俺がやるよ」
「いえ、俺も一緒に」
俺が食器を洗って、千明さんが拭いていく。結局、自分の好きなものを答えられなかった。
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