あなたと夕陽と心

すずかけあおい

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あなたと夕陽と心⑥

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「……ごめんなさい」

お皿を手渡しながら謝ると、千明さんが、なにが?と聞く。

「好きなもの、答えられなくて」

意識して考えたことがなかったから、突然聞かれるとわからなくなってしまう。情けない。ちょっと落ち込んでしまうと。

「悪いことをしてないのに謝らなくていいんだよ」

優しい声が俺を包んだ。顔を上げると千明さんが耳に届いた声以上に優しく微笑んでいる。

「思い付いたら教えて? いつでもいい」
「………」

なんでこんなに俺のことを考えてくれるんだろう。変な人。でも、心がそわそわする。俺も変。頬が熱くなって俯いたら、頭の中にぽっと浮かんだ。

「…のんびり散歩をするのが好き、かも」

そういえば、時間があると自宅の周りを歩いている。
千明さんが俺の髪をくしゃっと撫でる。

「それなら一緒に散歩をしよう」

すごく嬉しそうに見える。
俺の一言でこんなに嬉しそうにしてくれる人がいるなんて……。むずがゆい気持ちが広がって、どうしたらいいかわからない。千明さんの目が見られなくて俯いて洗い物を終えた。

千明さんは時間が空くと、都度俺に『なにをしたい?』と聞いてくれる。俺の意見を必ず聞いて、それを叶えてくれようとしているのがわかってどきどきする。俺ばかり優先かと思えば、千明さんが自分のおすすめの過ごし方を教えてくれたりするところもある。そういう自由さが心地好くて、なにかがほどけていく。なにかを固く閉じていたつもりなんてないんだけれど、それなのにほどけていくものを感じる。

「光輝、散歩に行こう」

夕方、涼しくなってきたので千明さんと近所の散歩に行く。千明さんはあまり近所を歩かないということで、知らないお店があちこちにあると言っている。

「あ、あんなところにパン屋さんがある。なにか買っていく?」
「パンですか?」
「晩御飯のパンとか、明日の朝のパンとか」

パン屋さんで総菜パンと食パンを買って、また散歩の続き。歩いているうちに少し小高くなっていて視界の開けたところに着いた。沈んでいく夕陽に見入ってしまう。

「光輝、手を繋いでもいい?」
「………」

千明さんに答えないとと思うのに、夕陽に見惚れて答えられない。夕陽から目を離せない。

「……千明さん」
「なに?」
「ありがとうございます」

夕陽から目を離さずに千明さんに心の底からのお礼を言う。今、俺が感じている精いっぱいを伝えたい。

「夕陽がすごく綺麗に見えます」
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