あなたと夕陽と心

すずかけあおい

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あなたと夕陽と心⑦

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人の動く気配で目を覚まし、手を伸ばす。

「起こしちゃった?」
「………」

千明さんの寝間着を掴むと、千明さんはその手を撫でた。

「大丈夫、どこにもいかないよ。水を飲もうと思っただけ」
「………」

俺が身体を起こして千明さんの寝間着を引っ張ると、どうしたの、と不思議そうについてくる。キッチンまで引っ張っていき、昨日そうしてもらったように、冷蔵庫からミネラルウォーターを出してグラスに注ぐ。それを千明さんに渡し、飲むのを見守る。空いたグラスを洗って、それからまたベッドまで引っ張っていく。千明さんは素直についてくる。

「………」

俺がベッドにまた入ると、千明さんが抱き締めてくれる。ほっとして瞼を下ろし、再び眠りの世界へ。千明さんの優しい腕に包まれて、夢を見る。

もう一度目を覚ますと千明さんがじっと俺を見ていた。目が合って微笑んでくれる。

「おはよう、光輝」
「…おはようございます」
「起きる?」
「起きます…」

ベッドを出ると、千明さんが髪を撫でてくれた。なにをするにも優しい、魔法の手。

「光輝は可愛いね」
「…可愛くなんてないです」

なにを言ってるんだか。
ふたりで朝食をとって、昨日のように俺のしたいことや千明さんのおすすめの過ごし方で過ごしているうちに時間が経ってしまう。初めて、時間が経つのが嫌だと思った。

「千明さん、おしゃべりしたいです」

そして更に、おしゃべりというものをしてみたいと思った。千明さんがもっと知りたい。もっと俺を知ってもらいたい。そんな欲求が俺の中にあるなんて思わなかった。
千明さんが『膝に座る?』と聞いてきたので、ぶんぶん首を横に振って辞退する。そんなの無理。
無難にソファに隣り合って座った。

「千明さんはいくつですか?」
「三十」
「なにをするのが好きですか」
「特にこれと言ってなかったけど、今は光輝といるのが好き」
「……」

とくん、と心臓が優しい音を立てる。好きな食べ物や嫌いな食べ物、好きな飲み物、コーヒーに砂糖とミルクは入れるか、お酒はどのくらい飲めるか、学生時代の部活などなど、思いついたことを次々聞いていく。

「おしゃべりって言うより、質問だね」
「…すみません」
「俺が知りたい?」

千明さんがぽんぽんと頭を撫でてくれるので、素直にこくんと頷く。

「俺も光輝が知りたい。質問してもいい?」
「はい」

今度は千明さんが俺に質問をくれる。考えながらひとつひとつ答えていたら、ふたりのお腹が同時に鳴った。夢中になっていて気が付かなかったけれど、もうお昼だ。

「お昼ご飯にしようか」
「…はい。なにか作りたいです」
「一緒に作る?」

ちょっと考えて、首を横に振る。

「いえ、俺が作りたいです」
「じゃあ任せるよ」

不思議だけど、俺が作ったものを食べてもらいたい。すごくお腹が空いているので時間がかからず作れるものを作って食べた。

午後もおしゃべりをしたり、昼寝をしたりして、夕方にはまた散歩に行った。
夕陽の美しさは昨日より増していて、俺はまた言葉を失ってしまう。同時に、一日が終わってしまうことが寂しく感じて、なんとも言い難い感情が心の中で揺らめく。
今夜は千明さんとたくさんおしゃべりをして夜更かしをしようと決めた。
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