7 / 9
あなたと夕陽と心⑦
しおりを挟む
人の動く気配で目を覚まし、手を伸ばす。
「起こしちゃった?」
「………」
千明さんの寝間着を掴むと、千明さんはその手を撫でた。
「大丈夫、どこにもいかないよ。水を飲もうと思っただけ」
「………」
俺が身体を起こして千明さんの寝間着を引っ張ると、どうしたの、と不思議そうについてくる。キッチンまで引っ張っていき、昨日そうしてもらったように、冷蔵庫からミネラルウォーターを出してグラスに注ぐ。それを千明さんに渡し、飲むのを見守る。空いたグラスを洗って、それからまたベッドまで引っ張っていく。千明さんは素直についてくる。
「………」
俺がベッドにまた入ると、千明さんが抱き締めてくれる。ほっとして瞼を下ろし、再び眠りの世界へ。千明さんの優しい腕に包まれて、夢を見る。
もう一度目を覚ますと千明さんがじっと俺を見ていた。目が合って微笑んでくれる。
「おはよう、光輝」
「…おはようございます」
「起きる?」
「起きます…」
ベッドを出ると、千明さんが髪を撫でてくれた。なにをするにも優しい、魔法の手。
「光輝は可愛いね」
「…可愛くなんてないです」
なにを言ってるんだか。
ふたりで朝食をとって、昨日のように俺のしたいことや千明さんのおすすめの過ごし方で過ごしているうちに時間が経ってしまう。初めて、時間が経つのが嫌だと思った。
「千明さん、おしゃべりしたいです」
そして更に、おしゃべりというものをしてみたいと思った。千明さんがもっと知りたい。もっと俺を知ってもらいたい。そんな欲求が俺の中にあるなんて思わなかった。
千明さんが『膝に座る?』と聞いてきたので、ぶんぶん首を横に振って辞退する。そんなの無理。
無難にソファに隣り合って座った。
「千明さんはいくつですか?」
「三十」
「なにをするのが好きですか」
「特にこれと言ってなかったけど、今は光輝といるのが好き」
「……」
とくん、と心臓が優しい音を立てる。好きな食べ物や嫌いな食べ物、好きな飲み物、コーヒーに砂糖とミルクは入れるか、お酒はどのくらい飲めるか、学生時代の部活などなど、思いついたことを次々聞いていく。
「おしゃべりって言うより、質問だね」
「…すみません」
「俺が知りたい?」
千明さんがぽんぽんと頭を撫でてくれるので、素直にこくんと頷く。
「俺も光輝が知りたい。質問してもいい?」
「はい」
今度は千明さんが俺に質問をくれる。考えながらひとつひとつ答えていたら、ふたりのお腹が同時に鳴った。夢中になっていて気が付かなかったけれど、もうお昼だ。
「お昼ご飯にしようか」
「…はい。なにか作りたいです」
「一緒に作る?」
ちょっと考えて、首を横に振る。
「いえ、俺が作りたいです」
「じゃあ任せるよ」
不思議だけど、俺が作ったものを食べてもらいたい。すごくお腹が空いているので時間がかからず作れるものを作って食べた。
午後もおしゃべりをしたり、昼寝をしたりして、夕方にはまた散歩に行った。
夕陽の美しさは昨日より増していて、俺はまた言葉を失ってしまう。同時に、一日が終わってしまうことが寂しく感じて、なんとも言い難い感情が心の中で揺らめく。
今夜は千明さんとたくさんおしゃべりをして夜更かしをしようと決めた。
「起こしちゃった?」
「………」
千明さんの寝間着を掴むと、千明さんはその手を撫でた。
「大丈夫、どこにもいかないよ。水を飲もうと思っただけ」
「………」
俺が身体を起こして千明さんの寝間着を引っ張ると、どうしたの、と不思議そうについてくる。キッチンまで引っ張っていき、昨日そうしてもらったように、冷蔵庫からミネラルウォーターを出してグラスに注ぐ。それを千明さんに渡し、飲むのを見守る。空いたグラスを洗って、それからまたベッドまで引っ張っていく。千明さんは素直についてくる。
「………」
俺がベッドにまた入ると、千明さんが抱き締めてくれる。ほっとして瞼を下ろし、再び眠りの世界へ。千明さんの優しい腕に包まれて、夢を見る。
もう一度目を覚ますと千明さんがじっと俺を見ていた。目が合って微笑んでくれる。
「おはよう、光輝」
「…おはようございます」
「起きる?」
「起きます…」
ベッドを出ると、千明さんが髪を撫でてくれた。なにをするにも優しい、魔法の手。
「光輝は可愛いね」
「…可愛くなんてないです」
なにを言ってるんだか。
ふたりで朝食をとって、昨日のように俺のしたいことや千明さんのおすすめの過ごし方で過ごしているうちに時間が経ってしまう。初めて、時間が経つのが嫌だと思った。
「千明さん、おしゃべりしたいです」
そして更に、おしゃべりというものをしてみたいと思った。千明さんがもっと知りたい。もっと俺を知ってもらいたい。そんな欲求が俺の中にあるなんて思わなかった。
千明さんが『膝に座る?』と聞いてきたので、ぶんぶん首を横に振って辞退する。そんなの無理。
無難にソファに隣り合って座った。
「千明さんはいくつですか?」
「三十」
「なにをするのが好きですか」
「特にこれと言ってなかったけど、今は光輝といるのが好き」
「……」
とくん、と心臓が優しい音を立てる。好きな食べ物や嫌いな食べ物、好きな飲み物、コーヒーに砂糖とミルクは入れるか、お酒はどのくらい飲めるか、学生時代の部活などなど、思いついたことを次々聞いていく。
「おしゃべりって言うより、質問だね」
「…すみません」
「俺が知りたい?」
千明さんがぽんぽんと頭を撫でてくれるので、素直にこくんと頷く。
「俺も光輝が知りたい。質問してもいい?」
「はい」
今度は千明さんが俺に質問をくれる。考えながらひとつひとつ答えていたら、ふたりのお腹が同時に鳴った。夢中になっていて気が付かなかったけれど、もうお昼だ。
「お昼ご飯にしようか」
「…はい。なにか作りたいです」
「一緒に作る?」
ちょっと考えて、首を横に振る。
「いえ、俺が作りたいです」
「じゃあ任せるよ」
不思議だけど、俺が作ったものを食べてもらいたい。すごくお腹が空いているので時間がかからず作れるものを作って食べた。
午後もおしゃべりをしたり、昼寝をしたりして、夕方にはまた散歩に行った。
夕陽の美しさは昨日より増していて、俺はまた言葉を失ってしまう。同時に、一日が終わってしまうことが寂しく感じて、なんとも言い難い感情が心の中で揺らめく。
今夜は千明さんとたくさんおしゃべりをして夜更かしをしようと決めた。
36
あなたにおすすめの小説
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
サンタからの贈り物
未瑠
BL
ずっと片思いをしていた冴木光流(さえきひかる)に想いを告げた橘唯人(たちばなゆいと)。でも、彼は出来るビジネスエリートで仕事第一。なかなか会うこともできない日々に、唯人は不安が募る。付き合って初めてのクリスマスも冴木は出張でいない。一人寂しくイブを過ごしていると、玄関チャイムが鳴る。
※別小説のセルフリメイクです。
だって、君は210日のポラリス
大庭和香
BL
モテ属性過多男 × モブ要素しかない俺
モテ属性過多の理央は、地味で凡庸な俺を平然と「恋人」と呼ぶ。大学の履修登録も丸かぶりで、いつも一緒。
一方、平凡な小市民の俺は、旅行先で両親が事故死したという連絡を受け、
突然人生の岐路に立たされた。
――立春から210日、夏休みの終わる頃。
それでも理央は、変わらず俺のそばにいてくれて――
📌別サイトで読み切りの形で投稿した作品を、連載形式に切り替えて投稿しています。
エピローグまで公開いたしました。14,000字程度になりました。読み切りの形のときより短くなりました……1000文字ぐらい書き足したのになぁ。
📌本編モブ視点による、番外エピソード
「君はポラリス ― アンコール!:2年後の二人と俺と」を追加しました。
目線の先には。僕の好きな人は誰を見ている?【高瀬陸×一ノ瀬湊 編】
綾波絢斗
BL
東雲桜花大学附属第一高等学園の三年生の高瀬陸(たかせりく)と一ノ瀬湊(いちのせみなと)は幼稚舎の頃からの幼馴染。
湊は陸にひそかに想いを寄せているけれど、陸はいつも違う人を見ている。
そして、陸は相手が自分に好意を寄せると途端に興味を失う。
その性格を知っている僕は自分の想いを秘めたまま陸の傍にいようとするが、陸が恋している姿を見ていることに耐えられなく陸から離れる決意をした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる