あなたと夕陽と心

すずかけあおい

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あなたと夕陽と心⑧

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月曜日は祝日なので休みだけど、明日…火曜日からは仕事だから自宅にスーツを取りに帰りたい、と千明さんに言うと、渋々に見える様子で了承してくれた。それで月曜日の午後に一旦帰宅した。…千明さんと一緒に。

「ひとりでも大丈夫ですよ」
「俺が光輝をひとりにしたくなくて、勝手にくっついてるだけだから」

俺が着替えをバッグに入れている間、千明さんは部屋の中を楽しそうに見回している。たいしたものはないんだけどな。

「お待たせしました。行きましょう」

なんとなく、早く千明さんの部屋に帰りたかった。ここは俺だけの部屋だけど、千明さんの部屋は当然だけど千明さんがいて、そのうえで俺がいていい部屋だから。

「みーつき」

部屋を出たところで聞き慣れた声が聞こえた。ざらっとした耳障りの声。ぞわっと鳥肌が立つ。この声で鳥肌が立つのなんて初めてだけれど。
声のしたほうを見ると海司が立っていた。

「見つけた」

妙に優しく笑んでいる。あ、キレてる、とわかった。身体が固まって動かない。千明さんが俺の前に立って背後に隠してくれた。

「気まぐれで遊ぶにはちょうどいいよな、光輝って」
「………」

心が冷える声。今までこんな風になったことはなかったのに。

「飽きてきてたけど、他の奴に盗られると腹立つな。おい、光輝」
「っ!」

この声で呼ばれると身体が自然に反応する。そっと様子を窺うと、笑みをたたえた海司が俺を見ている。

「こっち来い」
「あ……」

身体が勝手に動く。足が出てしまう。なんだろうな、もう身体にしみ付いているんだろう。海司に言われるとそうしないとって思ってしまう。千明さんの横を通って海司に近付くと、背中から抱き締められて足が止まった。
千明さんのにおい…。
すごく安心して力が抜ける。そのままへたりと座り込んでしまった。そこに海司の手が伸びてきて、俺の首を掴む。

「来い」
「離せ」

千明さんが海司の手を掴む。海司がなにか言っているけどよくわからなくて、千明さんもなにか言っているけど、わからなくて。ふたりがなにか言い合っているんだけど、頭がすごく混乱していて全然理解できない。
少ししたら海司がドアをガンッと蹴って去って行った。座り込んだままの俺を、千明さんが抱き締める。

「光輝、帰ろう」
「………」

今更震えが止まらなくなって立てない俺を、千明さんが支えてくれる。
………終わった?

「もう大丈夫だよ」

大丈夫なんだ…。千明さんがそう言うなら、大丈夫。
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