キミのすべては俺のもの

すずかけあおい

文字の大きさ
27 / 283

(6)残酷な優しさ ◇侑大視点◇②

しおりを挟む
◇◆◇

「マユ?」
「え…、安藤?」

いつも行くバーのクリスマスパーティに行くとそこに安藤がいた。
そこはゲイバーのママが二号店として経営している、ノンケも女性もゲイかバイの男と一緒に来ればOKというバーだから安藤がいたからって別におかしくないのだけれど、パーティに招待されたのはほとんどがゲイかバイの常連客だと聞いている。
そうじゃなくても安藤はゲイかバイの知り合いがいるという事だ。

「マユも招待された?」
「安藤も…? え、安藤ってゲイなの?」

口に出してから失敗したと思った。
でも安藤は全く気にした様子ではない。

「ん? 俺、バイなんだ。言ってなかったけど」
「そ、か…」

突然緊張し始める。
身近に男を恋愛対象として見る男がいたなんて気がつかなかったから。
いや、安藤は自分がバイだと言っただけで、俺を好きだと言ったわけじゃないんだからそんなに緊張する事はない。
でも、安藤なら俺が好きになっても『気持ち悪い』という理由で拒絶しないだろうと考えたらどきどきした。
安藤とふたりきりになるなんてよくある事なのに。

「マユはゲイなの?」
「そう。俺も言ってなくてごめん」
「なんで謝るの? 別に言わなきゃいけない事じゃないし。隠したかったら隠していいよ。俺だって言ってなかったし」
「あ、そか」
「そーだよ」

無邪気に笑う笑顔が優しい。
仕事抜きの安藤はこんな風に笑うのか。
ずっと見ていたいなと思ったらまたどきどきした。

それから何か特別な話をしたってわけじゃないけど、仕事を完全に抜きでプライベートの他愛ない話をずっとした。
でもその全てが特別に感じるほどの居心地の良さだった。

俺は、この人かもしれない、と思った。
何が“この人”なのかはわからないし、何をどう説明したらいいのかもわからないけれど、俺の欠けた部分にぴったりはまった気がして心臓が高鳴る。

安藤と一緒にいたいな、と思った。
安藤と付き合いたい、と。

◇◆◇

安藤と話し続けているうちに気がついたら始発の時間になり、仕事もあるので安藤とふたりでバーを出た。
冷たい手を握り合って駅まで歩く。
どきどきを通り越して安心感に包まれる。

「マユ、俺と付き合わない?」

とても自然に安藤は俺に言った。

「俺も安藤と付き合いたいって思った」

迷う事なく答える。
それがとても自然な形に感じたから。
握り合った手にぎゅっと力がこもって、心を返すように握り返した。

駅についても手を離したくなくて離れたくなくて、いつまでも改札に向かえない。
安藤も同じ様子だった。
でも仕事に支障が出るとよくない。

「安藤、今日早番だし…そろそろ」
「ん」

そっと手を離すと外気が急に冷たく感じた。
じっと安藤を見つめると、その視線に気づいたのか安藤も俺を見つめる。
どちらからというわけでもなくゆっくり唇が重なった。

安藤とずっと一緒にいたい、そう思った。

付き合い始めてからすぐに一緒に暮らし始めた。

安藤…かなめが隣にいるのが俺の当たり前になっていく。
春臣の影やしこりが消えていくのを感じた。
しばらくしてナミが加わり、更に生活が賑やかになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

パパ活は塾の帰りに。

茜琉ぴーたん
BL
 塾講師の下滝は、生徒の赤坂少年のことが気になっている。  彼は最近どうも元気が無く、挙動不審で落ち着かない。  悩みでもあるのかと下滝が助け舟を出したら、事態は思わぬ方向へと走り出す。 (58話+番外5話) *性描写あります。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

青は藍より出でて藍より青し

フジキフジコ
BL
ヤクザの跡取りの高校生とその同級生の話。高校生からはじまり40代になるまで続きます。 【青は藍より出でて藍より青し】本編。高校時代。 【番外編/白い花の家・月を抱く】葉月と綾瀬が出会った頃の話。 【番外編/Tomorrow is another day ・Sweet little devil】綾瀬と高谷の高校時代の短いエピソード。 【朱に交われば赤くなる】本編「青は藍~」の続き。 【狭き門より入れ】本編「朱に交われば~」の続き。7年後のお話になります。 【番外編/BLEED】篤郎の事情 【三代目の結婚】本編「狭き門~」の続き。綾瀬の結婚問題。 【番外編/刺青】高谷×綾瀬のいちゃいちゃ 【瑠璃も玻璃も照らせば光る】本編「三代目の結婚」の続き。主役は篤郎です。エピローグに高谷×綾瀬のいちゃ。 【番外編/古傷】高谷×綾瀬のいちゃいちゃ 【番梅花は蕾めるに香あり 】本編「瑠璃も玻璃~」の続き。高谷と男子高校生の話。 【天に在らば比翼の鳥】本編の完結編。 他シリーズ『チェリークール』の【番外編】「東京ミスティ」「東京ミスティ2」「微笑みの行方」に綾瀬と高谷が出ています。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

処理中です...