君の想い

すずかけあおい

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君の想い③

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 二日酔いでもないのに頭がぐらぐらする状態で帰宅すると、彼女は帰っていて琉太だけがリビングにいた。どこに泊まっていたかはいつものように聞かれない。これが俺の普通。でも琉太は必要としてくれる。

「おかえり、燈路」

 琉太といながら、芳貴のことが頭に浮かぶ。

 それから仕事中もなにをしていても芳貴のことばかり考えてしまう日が続いた。

「燈路、最近様子がおかしいけどなにかあった?」
「……」

 なにも答えられない。俺が答えたところできっと琉太はなにも言わないだろう。もしかしたら相談に乗ってくれるかもしれない。でも答えられない。芳貴の気持ちがあまりにまっすぐで澄んでいて、誰にも聞かせたくない。

「ああ、そうだ。今日彼女が来るからどこかに泊まってくれる?」
「あ、うん。わかった……」

 頷いて、どこかってどこだ、と考えながら自宅を出る。芳貴の部屋には行けない。芳貴の想いを知って好意に甘え続けるのは残酷だから。

「ここでいっか……」

 自宅近くの公園のベンチに腰掛ける。ここで夜を過ごそう。明日までだし、まだ真冬じゃないから一晩くらい大丈夫だ。
 芳貴の想いは切なすぎて、触れてはいけない気がする。あまりに純粋で、俺にはもったいない。
 ひとつ息を吐くのと同時にスマホが鳴った。画面を見ると芳貴から着信。

「はい」
『今どこだ』

 正直に言うわけにはいかない。

「自宅だよ。どうしたの?」
『嘘吐くな』

 俺の言葉を嘘だとわかりきっている声で芳貴が言う。

『彼女来てるんだろ』

 続いた言葉にぎくりとする。なんで知ってるんだろう……。でもなんとかごまかそう。これ以上迷惑をかけたくない。

「ううん。来てな――」
『今どこだ』

 強い言葉に、まっすぐな視線を思い出した。



 公園の入り口から俺のいるベンチに駆け寄る影に息を吐く。それがため息なのか安堵の息なのかはわからない。

「……ごめん」
「ほんとにな」

 呆れられてしまった。
 あの後、位置情報を送れ、そこを一歩も動くな、と言われた。そして芳貴が迎えに来てくれて結局迷惑をかけている。

「どうして彼女が来てるってわかったの?」

 芳貴の部屋に移動しながら、不思議に思っていたことを聞く。芳貴と琉太は繋がりがないから、琉太から聞いたということはないはず。まさか彼女から聞いたということもないだろう。

「今日は四がつく日だから」
「四?」

 四ってなんだろう。

「毎月、四と九がつく日は彼女が来てる」
「……気づかなかった」
「気づけよ」

 また呆れられてしまった。芳貴の部屋に着いて、玄関の鍵を開けるところを見つめる。

「……いいの?」

 問いかけに、二秒ほど俺を見て、それからすぐに視線を足元に落とす芳貴。

「そばにいられるだけで幸せだって言っただろ」

 それが苦しい。そんな切ない想いに触れていいんだろうか……。そう思いながら、先に部屋に入った芳貴に向かって声をかける。

「なんでそれが幸せなの?」

 暗がりで振り返った芳貴の瞳が妙に鮮明に見えて、どきりとする。

「知りたいか?」

 逆に聞き返されて、俺は迷わず頷く。知りたい。

「だったら俺のところに来い。そばにいられるだけで幸せだけど、辛い思いしてるおまえのそばにいるのは全然幸せじゃない」

 芳貴が俺の手を取った。


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