君の想い

すずかけあおい

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君の想い④

 芳貴に握られた手の温もりと感覚が忘れられない。ずっとそばにいて、信頼していて、それなのに知っているようで知らなかった温もり。
 自宅にいても琉太との距離の取り方がわからず、なんとなく外出することが多くなった。少し離れたところにあるコンビニまで行ったり、ひとりで外食したり。仕事から帰ってもすぐに自室にこもってさっさと寝てしまう日もある。会話も減っていった。
 どこにいてもなにをしていても、芳貴のことが頭に浮かぶ。こんなのはおかしい。今まで芳貴をこんな風に意識したことはなかった。芳貴は大切な幼馴染だったはずなのに……。





小嶋こじまさん、これもお願いしていいですか?」
「はい。わかりました」

 頼まれることは嫌いじゃない。必要とされていることがわかるから。便利に使われていることも知っている。それでもいい。

「……」

 パソコンモニターに芳貴の影が過る。なんと表現したらいいのかわからない。グレーな状態と言ったらいいのか……。芳貴が俺を必要としてくれている。琉太も俺を必要としてくれている。俺が付き合っているのは琉太で、でも心を占めているのは芳貴……。





 そんな日々が続いたある日、仕事から帰ると琉太がリビングにいた。どうしようかと思うけれど避けるのもな、と少し悩んでいると、琉太が複雑な表情で見つめてくる。

「燈路はもう俺を必要としてない?」

 なにを言われているのかわからなくて、首を傾げて今の問いかけを頭の中で繰り返す。

「俺が琉太に必要とされてるんじゃないの?」

 俺が聞き返すと、琉太が不可思議なものを見るような顔で俺を見る。その意味がわからず、頭の中が疑問符だらけになる。

「俺は燈路に必要とされていると思ってたよ?」

 ……あれ?

「俺、は……琉太が俺を必要としてるんだと……」

 なにこれ……どういうこと?

 たぶん、お互いにお互いがわからないという顔をして見つめ合っている。首を傾げて、空間を見て、また相手を見て、首を傾げて。

 ……お互い、相手が自分を必要としてくれていると思っていたから、そばにいた……?

「え……琉太? どういうこと?」
「燈路こそ……」

 顔を見合わせて、合点がいく。
 そうだ。琉太を必要としたこと、必要だと思ったことはなかった。求められたいとは思ったけど、求めたことはない。必要としてくれるからそばにいたけど、そうじゃなければ――。

「……別れようか」

 琉太の言葉に頷く。

 そうか……求めないといけないんだ。
 突然わかった。必要とされることばかりに目がいっていて、誰かを必要とすること、誰かを本当に求めることがわからなかった。

 それから少しだけ話をして、荷物のことや部屋のことなどはまた詳しく話をしようということで俺は部屋を出る。メッセージアプリを開いて、芳貴に『今から行く』とメッセージを送った。


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