風哭島奇譚~後日談B~

イワイケイ

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風哭島奇譚~後日談B~

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「……緊張する」
 ぽつんと呟いた凪に千紘は大丈夫ですよ、と声をかけながら、自分でも思っていたより緊張していることに気付いた。

 今日は、母親に凪を紹介する日である。色々考えた末、もちろん全ては話せないがパートナーだと紹介しておいた方がいいと七穂とも相談して決めた。法的なメリット、デメリットを考慮した結果、自分達の場合はメリットの方が大きいので近々養子縁組もする予定であることも伝える予定である。
 千紘の母親は所謂一般的な母親像には当てはまらない人ではあるけれど、さすがに外見上かなり若い同性のパートナーを連れて行った時にどういう反応を示すかは予測できない。それでもまあ、あの人なら何となく受け入れてくれるだろう、と甘く考えていた千紘の予想に反し、玄関のドアを開けて凪を見た瞬間、母親の顔が見たことがないくらい強張るのが見えた。
 凍り付く空気、千紘も凪も蛇に睨まれた蛙状態である。既成事実を一気に開示する戦法を取った千紘は、“会わせたい人の名前”と“ちょっとびっくりするかもだけど”だけではなく、予め設定しておいた情報を伝えておくべきだったと後悔した。
「……とりあえず上がって」
 ため息をついて言われるのへ、千紘は石化した凪の肩を抱えるようにして玄関に入り、指定されたリビングへ行く。これはまずい、どうやって立て直そうかと千紘が必死に考えていると、アイスティーを出してくれた母親が最初に口を切った。
「凪君、でいいのよね?……正直に答えてね、何歳?」
「えっと、あの、……19歳、です」
 今日の凪はなるべく大人っぽく見えるように七穂が見立てた服を着ている。シンプルで上質なリネンの白いシャツに、薄いグレーのシルクリネンのジャケットとパンツ。身長は167cm(当時はかなりの高身長だったらしい)細すぎて通常のメンズサイズが合わない凪の為に七穂がフルオーダーで作った、夏の一張羅だ。
 真剣に凪を見ている母親とどんどん顔色が白くなっていく凪、御柱様に戻ってしまうのではないかと錯覚した千紘の耳に、
「ギリセーフかなあ?!」
 聞こえてきたのはいつもの母親の声だった。
「焦ったー、うちの息子が未成年に手を出したのかと……凪君、綺麗だけどせいぜい高校生くらいにしか見えないんだもん、あー、本当に死ぬかと思った!」
「こ、これでも一応成人はしているので……」
 嘘は言っていない、という顔で凪が言う。“当時”も成人男性だし、“現在”でも戸籍上は19歳だ。御柱様ではなくなったから嘘がつけないという縛りはないが、未だに凪は嘘が苦手である。
「まあ、いいんじゃない?成人してれば。後は仲良くやってね」
 とそれだけ言うと、母親はアイスティーを飲む。その様子に千紘は拍子抜けした。
「……何かもっと聞くことないの?」
「聞いて欲しいの?……私も馬鹿じゃないわよ、どう考えたって訳アリでしょ。それでもここに来たってことは二人共よっぽど覚悟があるんじゃない?私は凪君とあんたが納得して幸せなら他はどうでもいい」
 やはりこの人は強い、と千紘は苦笑する。
「あ、覚悟と言えば私もあんたのお父さんと結婚した時したわ。覚悟して脅して結婚した」
 顔色の戻って来ていた凪がアイスティーに咽る横で、今度は千紘の顔から血の気が引く。
「脅……っ、強引に、でしょ!」
「だから脅して強引に結婚したのよ。つーか、あんた変なとこ私に似てるから凪君脅してない?」
 血か、と凪が俯いたまま笑いを堪えて小さく呟く。
「見た目はお父さんそっくりなのにね、中身が違うんだよね。あ、凪君、この子のお父さん、私の元旦那ね、気持ち悪いくらい似てるんだけど写真見る?」
「そうなんですね、見ます」
 と素知らぬ顔でにっこりする凪に呆れながら、千紘はあることに気付く。
「父さんの写真なんてまだ持ってたんだ?」
「それが処分したと思ってたんだけど、突然、今朝古い本から出てきたのよ。あんた達が来るのを待ってたみたいに。ちなみに千紘も写ってる。生まれたばっかりの頃かな」
 ほら、と差し出されたそれは白い布団に横たえられた千紘が、小さな手で父親の指を握っているものだった。少し困ったような顔で笑う父は、多分今の自分と同じくらいの年のためか、パラレルワールドの自分を見ているようだと千紘は思う。
 ふ、と凪の指が揺れる。あの島で写真集に触れた時と同じような柔らかな、優しい僅かな動きで父に触れ、次の瞬間赤ん坊の頬を全然優しくない動きで突っつく。
(差!)
 思わず心の中で叫んだのが伝わったのか、凪はこちらを見もしないでにやりと笑う。
「凪さん、そろそろ行きますよ」
 ぶすっと言い放ってから千紘ははっとする。さん付け、丁寧語は不自然だから母親の前では止めるつもりでいたのに、ついいつもの癖が出る。
「えー、もっとゆっくりしていけばいいのに」
 何の拘りもなく言う母へ、
「この後父さんの墓参りに行ってくる」
 とこちらもさらりと返すと、ああ、と納得したように母は頷いた。
「じゃあ、その写真持って行って。あんた達が持ってなさい。そのつもりでお父さん出てきたんだろうから」



「……七穂とはまた違う凄さがあったな」
 バスの座席に収まってしみじみ言う凪に千紘は苦笑して頷いた。
「まあ、ちょっと変わってはいます。ミュージシャンなんで、あの人」
「部屋に楽器が置いてあったのはそれか」
「ええ、ギタリストなんですよ。スタジオミュージシャン界隈では結構有名な」
「写真家と音楽家の間に生まれてんのに、何でお前は金融なんだ?」
「そこはどっちにも似なかったんです。芸術系才能一切なし。唯一、両親から同じこと言われました。“好きなことしなさい”って」
 見切りつけられたんですよね、とため息を吐く千紘に、凪は楽しそうに笑う。
「いいじゃないか、お前はお前だ」
 それだけ言うと凪は窓の外を眺める。何故か機嫌が良さそうだと千紘は思った。



 都心からやや離れたところにある霊園にバスと電車を乗り継いで着いた時、凪は意外そうな顔をした。
「想像してたのと違う」
「ここは樹木葬用の霊園なんです。一般的なお墓じゃなくて、ほら、こういう感じ」
 霊園の一番前にある区画のプレート群を示すと、凪は小さく頷いた。
「父の場所はもうちょっと奥です」
「先祖代々っていうわけじゃないんだな」
「そうですね、父は……色々複雑な事情があったらしくて、実家とは疎遠でほとんど独りで生きてきたんです。なので、父だけの墓にしてあげたくて。母とも相談して、自然が好きだった父の為に樹木葬にしたんです」
 説明しながら見晴らしの良い、小ぶりな桜の木の下にある区画に来る。その片隅に父は眠っていた。
「木は小さいんですけど、風景がいいんで、父はこういうの好きかと思って決めました。……父さん、凪さん連れて来たよ」
 青みがかった灰色の石の墓標に刻まれた父の名に、凪は屈んでそっと指で触れる。夏の暑い風が吹きつけてくる中、ああ、凪をここに連れてきて良かったと千紘は思う。プレートに雫が落ちる、最初は凪が泣いているのかと思ったが、こちらを見上げた凪の顔に涙はなかった。立ち上がった凪が手のひらでこちらの背を撫でる、泣いているのは自分なのだと千紘は気付いた。
 あの島で、死を以っても繋がれない凪と父にこれ以上の哀しさはないと思った。今思えばあれがきっかけで現在があるのだと思う。自分という存在も、手にした縁も、全て父から受け継いだものだと考えた時、理屈で無しに涙が出た。凪の手に支えられながら千紘はただ、泣き続けた。



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 涙にはリラックスする効果があるとは知っていたけれど、体感したな、と千紘は思う。所謂子供の頃から“泣かない子”で、もちろん大人になってから泣いたのも記憶にないくらいだから、今日は本当に例外だったのだと思う。霊園の後、凪の希望でガーデニングショップにより、いくつかハーブの苗を買って帰って来た時には心地よい疲れに襲われていた。
 清潔なシーツの中で手足を伸ばし、少し早いけれどこのまま寝てしまおうかと思った時、ノックの音がして枕を抱えた凪が入って来た。
「凪さん?どうしたんですか」
 実は凪と千紘はそれぞれ部屋を分けている。仕事で遅くなった時、物音に敏い凪を起こさないようにするための配慮だった。
「……今日は一緒に寝る」
 とだけ言うと、隣に滑り込んで来る。今まで凪が自分からこの部屋に来てくれたことはなかったから、何かあったのかとやや心配になると、凪は体を寄せてしばらく黙っていたが、真面目な声で言った。
「俺はあのまま、あの島で朽ちるのも構わないと思ってたんだ。……誰かを犠牲にして人間に戻りたくなんてなかった。でも今日、お前の母親に会ったり正臣の墓参りしたりして、……おかしな言い方だが、生きてることを改めて実感したんだ。楽しいとか悲しいとか、全部含めて……生きてるんだって。お前と一緒に」
 凪の額がこちらの肩に押し付けられる。
「千紘、今までちゃんと言えてなくて悪い。……還俗させてくれてありがとう」
「……凪さん、俺また泣きますよ」
「いくらでも泣け」
 小さく笑って髪を撫でてくれる、これが自分にとっての何よりの幸せだと千紘は思う。昔、自分が考えていた“世間的な幸せの鋳型”からは外れたけれど、本物を知ってしまうと鋳型など要らなくなる。
「……俺がお前の一生を拘束するのは事実なんだ。お前は優しいからそう言わないし、思ってもいないだろうけどな。でも、……俺でも何かお前にしてやれることを探していきたい」
 静かに、だが決意を込めて告げる凪を自分の腕で抱きしめながら、千紘は穏やかな眠りについた。



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「いつまで寝てんだ、起きろ」
 つっけんどんに叩き起こされた千紘が重たい瞼を開けると、呆れたような顔の凪が自分を見下ろしているのが見えた。
「もう8時だ、いい加減起きないと体内時計狂うだろ。馬鹿かお前は」
「……昨日の凪さんはどこ行ったんですか……」
「もう消えた。いいから起きろ」
 遮光カーテンを雑に開ける凪の姿をぼんやり見守る、昨日はなるべく大人っぽく見せるために工夫していたけれど、Tシャツに短パン姿の凪は母親の言う通り高校生くらいにしか見えない。凪を抱く時に少々感じる後ろめたさの正体だが、正直言えば今だけの“背徳感”を楽しんでいる自分もいる。
「……ろくでもないこと考えただろ、今」
「……たまに本当にちゃんと還俗してくれたのか不安になるんですよね」
「だから言ったろ、思考なんて読めなくたってお前は全部顔に出てるんだ。……全く、普段は飄々としているくせに、こういう時だけ……」
 ほら、起きろ、とタオルケットを引き剥がす凪を捕まえてベッドに引きずり込む。
「おい、離せ。シーツ洗濯したい」
「やです。凪さん可愛いんだもん。どうせシーツ汚れるし」
 と明け透けに言えば、凪はため息を吐く。朝の8時だぞ、と薄赤くなるのはこちらの意図を正しく理解している証拠、それでも拒否しないところが千紘の欲に火を付ける。服に手をかけた時、凪がつっけんどんに呟いた。
「……後でお前が洗濯しろよ」



 満月の時の、理性が飛んで徹底的に淫らになった凪と獣欲のままにするセックスも楽しいけれど、理性が最後まであって照れを含んだ凪とするのもまた違った楽しさがある、と千紘は思う。それに最近の凪は、今まで自分が彼にしてきたことをトレースしようとする傾向がある。
「俺はお前としか経験がないから、真似しか出来ん」
 と脱がせかけの途中で大真面目に言われた時は正直、この人は自分が言ってる意味が分かっているのか疑問だったが、実際に目の前で展開される光景には劣情と背徳感で千紘は眩暈を覚える。
 部屋着の大きめのTシャツからは肩と首筋が覗き、短パンと下着が足首に引っ掛かった状態で、凪が自分のを必死で舐めている。1年前までは御柱様で、現在でも戸籍上は表立って公表されていないとはいえ神子一族の御曹司だ。神罰が下るか、カミコホールディングスから抹殺されるかの二択かと頭の片隅で考えている千紘を上目遣いで見て、凪は肩を落とした。
「……やっぱり気持ち良くないか。下手で悪い」
「違います、そうじゃなくて、……殺されても良いほど興奮してます」
「物騒なこと言うな、誰に殺されんだ」
 と呟きながら、凪はほっとした表情をする。可愛すぎる、と千紘の支配欲が疼く。
「凪さん、今度は俺の番」
 そのまま凪の体を俯せに寝かせて後ろから覆い被さる、本当は顔が見える体位の方が凪の好みなのは知っているけれど。
「……後ろからしていい?」
 そっと聞くと一瞬躊躇った後、凪は頷いてくれた。
「これ、脱いだ方がいいか?」
 着ているTシャツを指先で抓むのへ、
「あ、全部そのままで。……脱ぐ時間もないほど早くセックスしたかったって感じで良くないですか?」
「……お前、本当に妄想の天才だな」
「ありがとうございます」
「褒めてるんじゃないぞ」
「でも嫌いじゃないでしょう」
 と耳を食みながらTシャツの中へ手を入れて首筋から胸まで指で撫で下ろす。
「くすぐったい」
 と最初は笑っていた凪が、枕に顔を埋めて声を抑えるようになるまで、そんなに時間はかからない。自分で言うのもおかしいが、初めて凪を抱いてから今までの間に、彼の弱い所、好きな触られ方はほとんど把握したつもりだった。変化しているのは凪の反応で、最初の頃の戸惑いや羞恥が多かったものから、最近ではこちらの劣情を引きずり出すような反応、言ってみれば千紘が一番興奮するような反応へと変わってきた。勿論、凪自身がわざとしているとも思えないし、変化していること自体にも気付いてもいないだろうけれど。
(何というか……初々しいエロさなんだよな)
 御柱様から生身の人間に戻り、これから成長していく凪の、今だけの姿。恐らく肉体年齢が大人になればまた違う色気が出てくるだろうし、それが楽しみでもあるのだけれど、今はこの背徳感を味わっておきたい。肉体年齢=実年齢ではないからこそ、安心して楽しめる特別な背徳感である。
 潤滑剤の容器を片手に凪の足を開かせる、いつもなら体が強張るのに、今日は凪が小さく笑う。
「なんでだろうな、……こんなみっともない恰好なのに、お前ならいいって思う」
 
 凪は天然の無自覚煽り属性である。

 思わずため息を吐いた千紘は、抱え込むようにして凪の上体を起き上がらせ、驚いたように振り向く凪の唇を塞ぐ。同時に抱えた手で尖った胸の突起を撫でながら、凪の足が閉じないよう、もう片方の手を前から腿の内側を押さえるように、指を体の中へ埋める。体格差があるからやや羽交い絞めのようになるのは申し訳ないし、少し苦しそうな吐息に、
「ごめん、この体勢辛い?」
 と聞くと、凪は、
「平気、……だけど、カーテン閉めたい」
 と呟く。朝だからそこまではっきりではないけれど、ベッド正面の窓ガラスに自分達の痴態が映っている。
「あ、これ結構エッチですね」
「言わなくていい」
 嫌そうに言う割にますます赤くなるのはちゃんと認識がある証拠、照れているだけで千紘との行為を拒絶しているのではないことは分かる。舌を絡めるキスをしながら色素の薄い凪の乳首を指先で押し潰したり軽く弾いたりすると、千紘の指を誘うようにさらに奥へ飲み込もうとする。触れていない凪の芯からは先走りが透明な蜜のようにとろり、とシーツに零れて染みを作っていた。
 自分の欲が限界だ、と千紘は思う。
「凪さん、もう入れるね」
 と言いながら凪の上体を元に戻す。ぎゅっと枕を掴んで隠すように顔を埋めながらも、こちらに促されるまでもなく僅かに腰を浮かす仕草に、千紘はぞくぞくする。1年前までは神聖な存在で触れるのも躊躇われた凪の体を抱けるのは自分だけ、まだ成熟しきってはいない肉体に性の悦びを覚えさせたのも自分だという強烈な独占欲。今まで極めて標準的、寧ろ淡泊寄りだと思っていた己の性欲も性癖も、ひょっとしたら目覚めてなかっただけなのではないかと千紘は暴れる己の欲の手綱を引き締める。凪を傷つけないように。
(あれ)
 思っていたよりも自分に余裕がない。これはまずい、と焦った千紘の耳に凪の小さな声が届く。滅多に言ってはくれない素直な快楽の表現と先をねだる言葉、いつもなら嬉しいはずなのに今はさらに余裕を奪われて、最短記録ではないかというほどあっという間に千紘は果てる。
 異変に気付いた凪が振り向くのへ、
「……ごめん、凪さん、」
 と今まで味わったことのない気まずさのまま言いかけると、凪が嬉しそうに笑ってこちらに向き直り、白い両腕で千紘の頭を抱きかかえた。
「何で謝るんだ。……お前が気持ちいいのが嬉しいのに」
 嘘でも演技でもなく、本当に嬉しそうに言われるのへ、思わず釣られて笑う。
「もっと、ちゃんと凪さんを気持ち良くさせてあげたかったのに」
「……いつもそうしてるだろ。何なら俺ばっかりだと思ってたから、丁度いいんだ」
「でもこのままじゃ凪さん辛いでしょ。……手でいいですか」
 と聞くと、凪は薄赤くなって頷いた。
「こっちの方が何か、……照れるな」
 呟いて千紘の肩に顔を埋める、それでも指と手のひらで与えらえる性感に腰が跳ね、堪え切れない甘い吐息を漏らして凪はほどなく果てた。やっぱりこっちの方が恥ずかしい、と赤くなったまま独り言ちる凪は、まさに“初々しいエロさ”そのものだと千紘は思う。
「凪さん、リベンジさせて」
「は?シーツ洗う時間無くなるだろ」
「お願い」
 ぎゅっと抱きしめるのへ、凪はため息を吐いて小さく笑った。
「……ホント、お前負けず嫌いだよな」



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 あれだけ天気良かったのに電気代がもったいない、と乾燥機を回しながらぶつぶつ言う凪は、恐らく七穂ではなく藍の金銭感覚を引き継いでいるのだろう。良かった、もし七穂の金銭感覚を引き継いでいたら破産してしまう、と千紘は苦笑しながら夕飯の支度をする。
 結局、今日は一日だらだらとベッドの中で過ごして終わった。眠ったりくだらないことで笑い合ったり、セックスしたり。今は電気代の件で眉間に縦皺のある凪だが、抱いていた時は本当に可愛いかったな、と反芻していたのがバレたらしい、物凄く嫌そうな顔で後ろから足を蹴られた。
「危なっ!料理中でしょ、包丁持ってるのに」
 抗議を無視して皿を出そうとした凪は、ふと千紘の手元を見て真顔になった。
「……前から思ってたんだけど、お前、料理上手だな」
「小学生から自炊してるんで……慣れ、ですかね。父親も母親も料理出来ないんですよ。味も見た目も結構壊滅的で。近所のファミレスで「普通の味」を覚えて、子供心に自分でやらないと旨いものは食べられないって覚悟しました」
「……色々極端な家系だな」
「親が極端なんですよ。俺は普通」
「未成年に手は出してるけどな」
 と機嫌よく言い、凪は茶碗や皿を食卓に並べる。再び抗議しようとした千紘は、凪に先回りされた。
「でも俺もこういう休日、嫌いじゃないぞ」
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