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一章 契約と回帰
二十六.五話
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ソラが特別教室に行くようになって三日が経った。
朝に授業を受け、昼休みには仲良くなったボッケ、リン、ファラ、マルコの四人と自然に集まり、同じテーブルで食事を取りながら談笑する。
午後の授業を受け終えたソラは家に帰り、制服を脱ぐとまっすぐギルドの訓練場へ向かった。魔力の流れを滑らかにする体術訓練と軽い筋トレ、それを終えると帰宅してシャワーを浴び、夕食を食べて眠る。──そんな規則正しい日々が続いていた。
四日目の朝。
ソラはいつも通り学校へ向かっていたが、その同じ時間、教師達は職員室奥の会議室でソラについて頭を抱えていた。
「……どう扱うべきか、だな」
最初にソラを「問題児」だと判断した教師達は眉間を押さえる。
あの日、揉め事を起こした“加害者寄りの被害者”という扱いで特別教室送りにしたが、その後のソラの態度は教師達の予想とは違っていた。
授業中は時折上の空になるものの、問いかけには的確に答え、理解も早い。テストを受けさせれば高得点を取る。
かと思えば、休み時間にはカバンに話しかけている奇妙な姿が生徒や教師、用務員に食堂のおばさん達に目撃され、別の教師は苦笑しながら「やっぱり謎が多いな……」と呟く。
ソラ本人の事情──二十年後の未来で悪魔と契約し、過去の自分へ逆行してきた存在であること──そんな真実を誰も知るはずもない。
さらに彼は他の誰にもできない魔力を自覚し操作することができ、その成長の限界も常人とは比べ物にならないほど未知数。
それらが教師達の「掴めなさ」をより強めていった。
「特別教室の期間、短縮しても良いのでは?」
「いや、一度決めた処分を甘くするのは良くない」
「優秀な生徒なら、もっと実力を伸ばす環境を整えるべきだ!」
「なんでもいいから早く終わらせてくれぇ……」
最後の一人は早く帰りたいだけの教師で、会議室に微妙な空気が流れる。
議論は平行線を辿り、まとまる気配はない。
そのとき──静寂を切り裂くように低いがよく通る声が響いた。
「……皆、よく話し合ってくれた」
シーカー学校校長、ショーイチローが腕を組んで椅子に寄りかかりながら口を開いた。
白髪混じりの短髪、無駄のない筋肉を包む白のワイシャツ。一線を退いて年を召してなお百戦錬磨の冒険者のような気迫をまとう彼が話すと、場の空気がすぐに変わる。
「一案ある。今回の議題の中心であるソラという生徒──私が実際に会い、行動と人柄を見て判断しよう。教師達が手探りで議論するより、直接見た方が早い」
ひとりの教師が反論しようとして声を上げかけた。
「し、しかし校長、それは──」
その瞬間、ショーイチローが淡々とそちらを向いた。
「……何か問題でも?」
ただ見ただけ。
それだけなのに、反論しようとした教師の背後に“巨大な虎が吼える”幻覚がちらつき、全身の毛が逆立つ。
スキルも魔力も使っていない。
ただ“睨んだだけ”で会議室全体が制圧される。
口を開きかけた教師は青ざめて、黙って席に戻った。
ショーイチローはそれを確認すると、ゆっくりと立ち上がる。
「では決まりだ。今日は─私が直接ソラ君に指導することにしよう」
教師達は誰一人逆らえず、静かに頷くしかなかった。
そして、ソラ本人が知らないところで、またひとつ騒ぎが起ころうとしていた。
朝に授業を受け、昼休みには仲良くなったボッケ、リン、ファラ、マルコの四人と自然に集まり、同じテーブルで食事を取りながら談笑する。
午後の授業を受け終えたソラは家に帰り、制服を脱ぐとまっすぐギルドの訓練場へ向かった。魔力の流れを滑らかにする体術訓練と軽い筋トレ、それを終えると帰宅してシャワーを浴び、夕食を食べて眠る。──そんな規則正しい日々が続いていた。
四日目の朝。
ソラはいつも通り学校へ向かっていたが、その同じ時間、教師達は職員室奥の会議室でソラについて頭を抱えていた。
「……どう扱うべきか、だな」
最初にソラを「問題児」だと判断した教師達は眉間を押さえる。
あの日、揉め事を起こした“加害者寄りの被害者”という扱いで特別教室送りにしたが、その後のソラの態度は教師達の予想とは違っていた。
授業中は時折上の空になるものの、問いかけには的確に答え、理解も早い。テストを受けさせれば高得点を取る。
かと思えば、休み時間にはカバンに話しかけている奇妙な姿が生徒や教師、用務員に食堂のおばさん達に目撃され、別の教師は苦笑しながら「やっぱり謎が多いな……」と呟く。
ソラ本人の事情──二十年後の未来で悪魔と契約し、過去の自分へ逆行してきた存在であること──そんな真実を誰も知るはずもない。
さらに彼は他の誰にもできない魔力を自覚し操作することができ、その成長の限界も常人とは比べ物にならないほど未知数。
それらが教師達の「掴めなさ」をより強めていった。
「特別教室の期間、短縮しても良いのでは?」
「いや、一度決めた処分を甘くするのは良くない」
「優秀な生徒なら、もっと実力を伸ばす環境を整えるべきだ!」
「なんでもいいから早く終わらせてくれぇ……」
最後の一人は早く帰りたいだけの教師で、会議室に微妙な空気が流れる。
議論は平行線を辿り、まとまる気配はない。
そのとき──静寂を切り裂くように低いがよく通る声が響いた。
「……皆、よく話し合ってくれた」
シーカー学校校長、ショーイチローが腕を組んで椅子に寄りかかりながら口を開いた。
白髪混じりの短髪、無駄のない筋肉を包む白のワイシャツ。一線を退いて年を召してなお百戦錬磨の冒険者のような気迫をまとう彼が話すと、場の空気がすぐに変わる。
「一案ある。今回の議題の中心であるソラという生徒──私が実際に会い、行動と人柄を見て判断しよう。教師達が手探りで議論するより、直接見た方が早い」
ひとりの教師が反論しようとして声を上げかけた。
「し、しかし校長、それは──」
その瞬間、ショーイチローが淡々とそちらを向いた。
「……何か問題でも?」
ただ見ただけ。
それだけなのに、反論しようとした教師の背後に“巨大な虎が吼える”幻覚がちらつき、全身の毛が逆立つ。
スキルも魔力も使っていない。
ただ“睨んだだけ”で会議室全体が制圧される。
口を開きかけた教師は青ざめて、黙って席に戻った。
ショーイチローはそれを確認すると、ゆっくりと立ち上がる。
「では決まりだ。今日は─私が直接ソラ君に指導することにしよう」
教師達は誰一人逆らえず、静かに頷くしかなかった。
そして、ソラ本人が知らないところで、またひとつ騒ぎが起ころうとしていた。
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