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一章 契約と回帰
二十七話
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ソラはいつものように特別教室へと向かっていた。
この三日間、特別教室での生活は奇妙なほどに静かで、そして淡々としていた。授業は一応成立しているが、担当の教師は日替わりで、誰も彼も対応に困っている雰囲気を隠せていない。
自分が原因であることはソラにもわかっていた。
クロだけがいつも通り――いやいつも以上に飄々としていて、ソラが歩くリズムにあわせてカバンの中でゆらゆらと揺れる気配を感じる。
教室の前に着くと、扉のガラス越しに中が暗いのが見えた。
(まだ先生来てないのか……)
扉を開けて席に座ったところで、ソラの背筋に小さな緊張が走る。
いつもであれば、ここで教師が「今日は私が担当だ」と申し訳なさそうに入ってくるのだが――今日は違った。
チャイムが鳴る直前、
ガラッ
と勢いよく扉が開いた。
入ってきたのは、全校生徒が絶対に忘れないであろう人物――
シーカー学校 校長、ショーイチロー。
白髪混じりの短髪。背筋はまっすぐ、白のワイシャツとズボンとラフな格好を着ているのにどこか武人のような雰囲気が滲み出ている。目は細いが、獣のような光がその奥に潜んでいる。
「やぁ、ソラ君」
低い声なのに教室の空気が震えるようだった。
ソラは思わず姿勢を正しながら、
「こ、校長先生? どうしてここに……?」
ショーイチローは静かに教卓に立つと、淡々と告げた。
「担当できる者がいなくてね。皆、忙しい。だから今日は私が受け持つことになった。――問題あるかな?」
ないわけがないがそれを口することはしない。
だがソラの胸の奥で、ほんの僅かに嫌な予感がした。
「い、いえ……よろしくお願いします」
ショーイチローは軽く頷くと、
「さて、授業を始める前に……ひとつ提案がある」
そう言いながら袖をまくった。
「私は教師としてよりも、武人としての性分が強くてね。言葉を交わすより、拳を交えた方が相手を知れる。ソラ君――私と、ひとつ手合わせしてみないか?」
明らかに“やる気だ”という目だった。
「け、ケガとかは……」
「させない。私も無手でいこう。ソラ君は好きにスキルを使っていい。武器を使っても構わない。もしも――」
ショーイチローはポケットから小さな物体を取り出し、ソラに見せた。
それは手のひらサイズの、青白く輝く魔石。
精製済みAランク魔石。
「私に片膝を着かせられたら、これを贈ろう」
ソラは息を呑む。
あの魔石は、Aランク相当の魔物からしか取れない魔石だ。さらにそれを精製してあるので強力な武器や魔道具にすることができる品物だ。売るにしても競売に出されればを百万を超えるだろう。
だが、それ以上に―
(……自分が、どこまで通用するのか試したい)
入学式からは成長したはずだ。
悪魔と契約した自分、そこから訓練や魔力操作など色々なことを覚え力を身につけた。今の自分が、ショーイチローというSランクまで登り詰めた男に何処まで届くのか。
その好奇心と闘志が胸を熱くする。
「……やります。胸を借ります」
ショーイチローは満足そうに目を細めた。
「では、体育館へ行こう。今の時間は使われていない。着替えてから来なさい」
ソラは頷き、着替え室へと向かった。
そこでふと、気づく。
――クロがずっと黙っている。
(珍しいな……いつもなら何か皮肉の一つでも言ってくるのに)
気にはなったが、考える時間はなかった。
ソラは急ぎ体育館へ向かう。
体育館に入ると、既にショーイチローが中央で待っていた。
しかも先ほどの服装と同じ、ワイシャツは第一ボタンを外してはいるが、それでも戦う格好とは到底言えない。
なのに、その姿が妙に絵になる。
まるで、これから武術の型の手本でも見せるだけのような軽やかさがあった。
ソラの胸に火が灯る。
ショーイチローは言った。
「いつでも来なさい」
ソラは一気に踏み込んだ。
最初の攻撃は――魔力なしのパンチ。
不意をつけば、もしかしたら通るかもしれない。
だが――
ショーイチローから三メートルほどに入った瞬間、身体が鉛のように重くなった。
「――っ!?」
腕が振れない。足が沈むようだ。
その一瞬の遅れで、ショーイチローは軽く手のひらを出し、ソラの拳を受け止めた。
「おわりかね」
その声は淡々としていた。
ソラは距離を取る。
今度は跳び込んで蹴りを――と踏み切った瞬間、
また身体が固まった。
ジャンプすらできない。
(スキル……? いや、そんな気配、感じない……!)
考えた瞬間、
「私は何もしていないよ。スキルも、魔法もね」
ショーイチローはゆったりと告げた。
ではなぜ?
ソラは自分の手を見る。震えていた。
(……まさか、怯えてる?)
ショーイチローに近づくたび、圧倒的な実力差を本能が感じ取ってしまう。
理性ではわからなくても、肉体は震える。
“勝てない”と。
だが――
(心に打ち勝つしかない)
ソラは息を整え、心を固める。
何度か深呼吸し、意地でも震えを押さえ込む。
「はぁっ!」
真正面からショーイチローに飛び込んだ。
体に異変は起こらない。
気迫でねじ伏せたのだ。
しかし拳はまたもや手のひらで受け止められる。
しかも、今回はさらに軽い音――
パシュッ
まるで紙を払うような感触。
汗が落ちる。
ショーイチローのプレッシャーは腕力でも魔力でもない。
彼自身の“存在”。
その近くにいるだけでゴリゴリと体力が削れていく。
(……まずい、このままじゃ本当に何もできない)
ソラは右手に魔力を集中させ始めた。
時間をかけて、絞り出すように。
ショーイチローは止めない。むしろ観察するように見ている。
そして――渾身の右ストレート。
だがこれも、軽く受け止められた。
心が折れかけたその瞬間。
ショーイチローはため息をついた。
「この程度か。もっと出来ると思っていたが……私の見込み違いだったようだね」
そして、目を細めてウインクする。
「もし、それが全力なら……すまない。私は謝ろう。ごめんね」
挑発だった。
完全なる、武人の挑発。だが、
――カチン。
ソラの中で、何かが静かに切れた。
今だけは、魔石も、実力試しも、胸を借りるという謙虚さも捨てる。
ただただひとつ。
この老人に、一泡吹かせる。
ソラはショーイチローに背を向け、ゆっくり元の位置まで戻る。
「もう終わりかい?」
背後からショーイチローの声が聞こえたが、答えない。
ソラはクラウチングポーズを取り、初めて手足以外の部位――脚に魔力 を集中し始めた。
訓練で身についた精密操作が、極限状態の精神と噛み合い、魔力がスムーズに脚へ収束する。
体育館に静寂が落ちる。
――今だ。
ソラの汗が一滴、床に落ちた瞬間。
ドンッ!!
ソラは弾丸のように飛び出した。思った以上の速度。
ショーイチローへ迫る寸前、ソラは重心を傾け、滑るように横をすり抜け背後へ回る。
脚から手へ魔力を瞬時に移動し、パンチを放つ。
ショーイチローの手のひらがそのパンチを“軽くはたくように”流す。
だがソラも止まらない。
流された勢いのまま回転し、手から脚へ再び魔力を戻す。
魔力を纏った回転蹴りが唸りを上げて――
――決まる!
と思った瞬間。
ショーイチローが、 スッ…… と息を吸う音が聞こえた。
その刹那。
視界が――裏返る。
ショーイチローの姿が消え、
代わりに体育館の天井。
「っ……!?」
身体がふわりと浮いていた。
地面から十メートル以上。
バランスを整える間もなく、落下が始まる。
(やば――っ!!)
姿勢を変えようとするが、身体は動かない。
ただ地面が迫る。
そのとき。
ふわり。
落下寸前、ソラの身体をショーイチローが受け止めた。
「よし、大丈夫だ」
ソラはわけがわからず呆然と立たされる。
その肩に手を置き、ショーイチローは静かに語った。
「すまない。君の人柄を見るため、挑発をさせてもらった。もし君が違法シーカーのような、力で人を傷つけることに快楽を覚えるタイプなら……私は止めるつもりだった。
だが安心した。君は人を傷つけて悦に浸る違法シーカーのような類ではない。」
ポケットから Aランク魔石を取り出し、ソラへ差し出す。
「これは恐がらせた詫びと、楽しませてもらった礼だ。君は将来有望だよ」
ソラはボーッとしながら受け取った。
ショーイチローはさらに続ける。
「特別教室は今日の午前で終わりだ。午後からは自分の教室に戻りなさい。教師達には私から伝えておく」
そして、ニヤリと笑った。
「それと――猫を連れてくるのなら、首輪はきちんと付けなさい。ではまた会おう、ソラ君」
ショーイチローは笑いながら去っていった。
ソラはその場に座り込み、汗が滝のように流れ始める。
全身の力が一気に抜けた。
するとクロがカバンからヒョイッと顔を出した。
「……ソラ。ちょっと目に魔力を集めて、あのジジイを見てみろ」
最後の力を振り絞り、魔力視でショーイチローを見る。
次の瞬間――
「……な……んだ、あれ……?」
普通は丹田に霧のように魔力が宿る。
だがショーイチローは違う。
全身が魔力でパンパンに膨らんだ“魔力の風船”のようだった。
あれが――Sランク。
理解を超えた存在。
ソラは呟く。
「……首輪。つける?」
クロは即答した。
「つけんわ。我は誇り高き悪魔だ。死んでも首輪などつけん」
ソラは思わず笑った。
最悪な午前だったが、最高の経験でもあった。
この三日間、特別教室での生活は奇妙なほどに静かで、そして淡々としていた。授業は一応成立しているが、担当の教師は日替わりで、誰も彼も対応に困っている雰囲気を隠せていない。
自分が原因であることはソラにもわかっていた。
クロだけがいつも通り――いやいつも以上に飄々としていて、ソラが歩くリズムにあわせてカバンの中でゆらゆらと揺れる気配を感じる。
教室の前に着くと、扉のガラス越しに中が暗いのが見えた。
(まだ先生来てないのか……)
扉を開けて席に座ったところで、ソラの背筋に小さな緊張が走る。
いつもであれば、ここで教師が「今日は私が担当だ」と申し訳なさそうに入ってくるのだが――今日は違った。
チャイムが鳴る直前、
ガラッ
と勢いよく扉が開いた。
入ってきたのは、全校生徒が絶対に忘れないであろう人物――
シーカー学校 校長、ショーイチロー。
白髪混じりの短髪。背筋はまっすぐ、白のワイシャツとズボンとラフな格好を着ているのにどこか武人のような雰囲気が滲み出ている。目は細いが、獣のような光がその奥に潜んでいる。
「やぁ、ソラ君」
低い声なのに教室の空気が震えるようだった。
ソラは思わず姿勢を正しながら、
「こ、校長先生? どうしてここに……?」
ショーイチローは静かに教卓に立つと、淡々と告げた。
「担当できる者がいなくてね。皆、忙しい。だから今日は私が受け持つことになった。――問題あるかな?」
ないわけがないがそれを口することはしない。
だがソラの胸の奥で、ほんの僅かに嫌な予感がした。
「い、いえ……よろしくお願いします」
ショーイチローは軽く頷くと、
「さて、授業を始める前に……ひとつ提案がある」
そう言いながら袖をまくった。
「私は教師としてよりも、武人としての性分が強くてね。言葉を交わすより、拳を交えた方が相手を知れる。ソラ君――私と、ひとつ手合わせしてみないか?」
明らかに“やる気だ”という目だった。
「け、ケガとかは……」
「させない。私も無手でいこう。ソラ君は好きにスキルを使っていい。武器を使っても構わない。もしも――」
ショーイチローはポケットから小さな物体を取り出し、ソラに見せた。
それは手のひらサイズの、青白く輝く魔石。
精製済みAランク魔石。
「私に片膝を着かせられたら、これを贈ろう」
ソラは息を呑む。
あの魔石は、Aランク相当の魔物からしか取れない魔石だ。さらにそれを精製してあるので強力な武器や魔道具にすることができる品物だ。売るにしても競売に出されればを百万を超えるだろう。
だが、それ以上に―
(……自分が、どこまで通用するのか試したい)
入学式からは成長したはずだ。
悪魔と契約した自分、そこから訓練や魔力操作など色々なことを覚え力を身につけた。今の自分が、ショーイチローというSランクまで登り詰めた男に何処まで届くのか。
その好奇心と闘志が胸を熱くする。
「……やります。胸を借ります」
ショーイチローは満足そうに目を細めた。
「では、体育館へ行こう。今の時間は使われていない。着替えてから来なさい」
ソラは頷き、着替え室へと向かった。
そこでふと、気づく。
――クロがずっと黙っている。
(珍しいな……いつもなら何か皮肉の一つでも言ってくるのに)
気にはなったが、考える時間はなかった。
ソラは急ぎ体育館へ向かう。
体育館に入ると、既にショーイチローが中央で待っていた。
しかも先ほどの服装と同じ、ワイシャツは第一ボタンを外してはいるが、それでも戦う格好とは到底言えない。
なのに、その姿が妙に絵になる。
まるで、これから武術の型の手本でも見せるだけのような軽やかさがあった。
ソラの胸に火が灯る。
ショーイチローは言った。
「いつでも来なさい」
ソラは一気に踏み込んだ。
最初の攻撃は――魔力なしのパンチ。
不意をつけば、もしかしたら通るかもしれない。
だが――
ショーイチローから三メートルほどに入った瞬間、身体が鉛のように重くなった。
「――っ!?」
腕が振れない。足が沈むようだ。
その一瞬の遅れで、ショーイチローは軽く手のひらを出し、ソラの拳を受け止めた。
「おわりかね」
その声は淡々としていた。
ソラは距離を取る。
今度は跳び込んで蹴りを――と踏み切った瞬間、
また身体が固まった。
ジャンプすらできない。
(スキル……? いや、そんな気配、感じない……!)
考えた瞬間、
「私は何もしていないよ。スキルも、魔法もね」
ショーイチローはゆったりと告げた。
ではなぜ?
ソラは自分の手を見る。震えていた。
(……まさか、怯えてる?)
ショーイチローに近づくたび、圧倒的な実力差を本能が感じ取ってしまう。
理性ではわからなくても、肉体は震える。
“勝てない”と。
だが――
(心に打ち勝つしかない)
ソラは息を整え、心を固める。
何度か深呼吸し、意地でも震えを押さえ込む。
「はぁっ!」
真正面からショーイチローに飛び込んだ。
体に異変は起こらない。
気迫でねじ伏せたのだ。
しかし拳はまたもや手のひらで受け止められる。
しかも、今回はさらに軽い音――
パシュッ
まるで紙を払うような感触。
汗が落ちる。
ショーイチローのプレッシャーは腕力でも魔力でもない。
彼自身の“存在”。
その近くにいるだけでゴリゴリと体力が削れていく。
(……まずい、このままじゃ本当に何もできない)
ソラは右手に魔力を集中させ始めた。
時間をかけて、絞り出すように。
ショーイチローは止めない。むしろ観察するように見ている。
そして――渾身の右ストレート。
だがこれも、軽く受け止められた。
心が折れかけたその瞬間。
ショーイチローはため息をついた。
「この程度か。もっと出来ると思っていたが……私の見込み違いだったようだね」
そして、目を細めてウインクする。
「もし、それが全力なら……すまない。私は謝ろう。ごめんね」
挑発だった。
完全なる、武人の挑発。だが、
――カチン。
ソラの中で、何かが静かに切れた。
今だけは、魔石も、実力試しも、胸を借りるという謙虚さも捨てる。
ただただひとつ。
この老人に、一泡吹かせる。
ソラはショーイチローに背を向け、ゆっくり元の位置まで戻る。
「もう終わりかい?」
背後からショーイチローの声が聞こえたが、答えない。
ソラはクラウチングポーズを取り、初めて手足以外の部位――脚に魔力 を集中し始めた。
訓練で身についた精密操作が、極限状態の精神と噛み合い、魔力がスムーズに脚へ収束する。
体育館に静寂が落ちる。
――今だ。
ソラの汗が一滴、床に落ちた瞬間。
ドンッ!!
ソラは弾丸のように飛び出した。思った以上の速度。
ショーイチローへ迫る寸前、ソラは重心を傾け、滑るように横をすり抜け背後へ回る。
脚から手へ魔力を瞬時に移動し、パンチを放つ。
ショーイチローの手のひらがそのパンチを“軽くはたくように”流す。
だがソラも止まらない。
流された勢いのまま回転し、手から脚へ再び魔力を戻す。
魔力を纏った回転蹴りが唸りを上げて――
――決まる!
と思った瞬間。
ショーイチローが、 スッ…… と息を吸う音が聞こえた。
その刹那。
視界が――裏返る。
ショーイチローの姿が消え、
代わりに体育館の天井。
「っ……!?」
身体がふわりと浮いていた。
地面から十メートル以上。
バランスを整える間もなく、落下が始まる。
(やば――っ!!)
姿勢を変えようとするが、身体は動かない。
ただ地面が迫る。
そのとき。
ふわり。
落下寸前、ソラの身体をショーイチローが受け止めた。
「よし、大丈夫だ」
ソラはわけがわからず呆然と立たされる。
その肩に手を置き、ショーイチローは静かに語った。
「すまない。君の人柄を見るため、挑発をさせてもらった。もし君が違法シーカーのような、力で人を傷つけることに快楽を覚えるタイプなら……私は止めるつもりだった。
だが安心した。君は人を傷つけて悦に浸る違法シーカーのような類ではない。」
ポケットから Aランク魔石を取り出し、ソラへ差し出す。
「これは恐がらせた詫びと、楽しませてもらった礼だ。君は将来有望だよ」
ソラはボーッとしながら受け取った。
ショーイチローはさらに続ける。
「特別教室は今日の午前で終わりだ。午後からは自分の教室に戻りなさい。教師達には私から伝えておく」
そして、ニヤリと笑った。
「それと――猫を連れてくるのなら、首輪はきちんと付けなさい。ではまた会おう、ソラ君」
ショーイチローは笑いながら去っていった。
ソラはその場に座り込み、汗が滝のように流れ始める。
全身の力が一気に抜けた。
するとクロがカバンからヒョイッと顔を出した。
「……ソラ。ちょっと目に魔力を集めて、あのジジイを見てみろ」
最後の力を振り絞り、魔力視でショーイチローを見る。
次の瞬間――
「……な……んだ、あれ……?」
普通は丹田に霧のように魔力が宿る。
だがショーイチローは違う。
全身が魔力でパンパンに膨らんだ“魔力の風船”のようだった。
あれが――Sランク。
理解を超えた存在。
ソラは呟く。
「……首輪。つける?」
クロは即答した。
「つけんわ。我は誇り高き悪魔だ。死んでも首輪などつけん」
ソラは思わず笑った。
最悪な午前だったが、最高の経験でもあった。
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