《カクヨム様で50000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう

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一章 契約と回帰

三十七話

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四階層では戦闘をいくつかこなすソラたちは、程よい疲労を感じながらも順調に進んでいた。三階層での休憩が効いたのか、体力にはまだ余裕がある。なにより、初めてのダンジョン攻略とは思えないほど連携がうまくなっていた。

「こっちの足跡が濃い。先に何組か通ってるな」

 先頭で足跡を確認していたソラが、壁際の細い通路を指差す。洞窟の床は土と石が混ざっており、踏み固められた場所は見分けがつきやすい。

「またソラの足跡鑑定が出た! 本当にすごいでーす!」
 ファラがぱちぱちと手を叩く。

「いや、そんな大したものじゃないって……」

 ソラが照れたように頭をかいたその時、先を行くボッケが声を上げた。

「おい、ここ……二手に分かれてるぞ。どうする?」

 四階層は一階層・二階層と比べて通路が複雑になり、分かれ道が増えていた。マルコが杖をつきながら息をつく。

「ほんとうに広いね……これは迷うパーティも多いだろうね」

 リンは少し緊張した様子で周囲を見回し、ソラに尋ねる。

……ソラ君は、どっちが良いと思いますか?」

 ソラはしばらく地面と壁を観察し、それから少しだけ笑った。

「右の通路の方が足跡が多い。進んだパーティが多いってことは、魔物と遭遇する可能性は減る。そっちを進もう」

「了解した」

 ボッケが力強く頷き、五人は右の通路へと歩き出す。
 その後も何度かスライムと遭遇したが、どれも問題なく撃破できた。ボッケが前に立ち、ソラとファラがサポートし、後衛の2人が状況に応じて支援や牽制を入れる。その動きは初めての戦闘時前とは比べ物にならないほど洗練されていた。

やがて、長い通路の突き当たりで階段を見つけた。

「……あった! ここ、下に続いてる!」

 リンが嬉しそうに指差し、マルコも「ようやくか!」と笑顔で頷く。

「五階層か……だいぶ深くまできたな」

 ボッケの言葉に全員が身を引き締める。疲れはあるが、まだ動ける。
 ソラが仲間たちの顔を順番に見てから言った。

「みんな……行けそう?」

「もちろんだ!」
「ファラもぜーんぜん大丈夫でーす!」
「わ、私も……いけます」
「僕も問題ないよ!」

 その返事にソラは満足そうに頷いた。

「じゃあ……行こう、みんな」

 五人は並んで階段を降り始めた。

階段を下り終えると、そこは他の階層とは全く違う構造だった。
 狭いフロアの中央に、ぼんやりと光る球体が浮かんでおり、空間全体が静謐で澄んだ雰囲気に包まれている。

「……あ、ハーデン先生!」

 リンが指差す先、光の球体のそばには魔法薬学教師のハーデンが立っていた。
 ソラたちに気づくと、ハーデンは穏やかな笑みで手を振った。

「よく来ましたね、ここがこのダンジョンのゴールです」

 近づくと、先生はゆっくりと説明を始めた。

「皆さんが見えているその光の球体に触れると、ダンジョン入り口へ転移します。……そして、おめでとうございます。君たちは三番目のクリアパーティです」

「三番目……!」
 マルコが目を見開き、ボッケは満足そうに鼻を鳴らす。

「ふん、悪くないな」

「すごいでーす! みんなでここまで来れましたねー!」

 ファラがピョンと跳ねて喜び、リンもほっと息をついた。

「……ほんと良かった……誰も怪我せずにここまで来れて」

 そんな仲間たちの様子を微笑ましげに見てから、ハーデン先生が言う。

「では、皆さん。その球体に触れて戻ってください。実習は終了です」

四人は頷き、次々と光球に触れて姿を消していく。
最後に残ったソラが球体へ手を伸ばす前に、ハーデン先生が声をかけた。

「ソラ君」

「はい?」

「……防具、ちゃんと使えていましたか?」

 ソラは胸当てと籠手、脛当てに軽く触れて頷いた。

「はい。体にすごく馴染んで……おかげで戦闘の時も安定してできました。本当に、ありがとうございました」

「それは良かった。お礼で贈った甲斐がありましたよ」

 ハーデンは柔らかく笑い、しかし少しだけ声を潜める。

「ただし……他の生徒には秘密ですよ?」

「もちろんです!」

ソラは笑って答えたあと、光の球体に触れた。

 光に包まれ、次の瞬間ダンジョン入り口へ戻っていた。
 すぐ側で腕を組んで待っていたボッケが言う。

「遅いぞ、ソラ!」

「ご、ごめん!」

「先生と話してたの? ふふっ」
 リンが笑い、マルコとファラも同じように微笑んだ。

 ソラは仲間の輪に入りながら、胸の奥で強く思う。

――この四人となら、もっと先に行ける。
――もっと強くなれる。

ソラ達のダンジョン実習はこうして幕を下ろした。


だが、そんなソラ達の様子を少し離れた場所から見ていたカイトは、表情こそ崩さなかったが、胸の奥に不快なざらつきを覚えていた。

――目障りだ。

喉まで出かかった言葉を、カイトは奥歯を噛みしめて押し戻す。

自分たちこそ、この実習で最初にダンジョンを突破した。
常にトップを目指し続ける自分が、今回も堂々と結果を示した。
そこに一点の曇りもないはずだった。

だが。

(……どうして、あいつらはあんな顔をしていられる?)

戻ってきた直後は自分でさえ肩で息をしていた。

魔物は弱く、数はそこまで多くなかったとはいえ学校で初めてのダンジョン攻略だ。
緊張もあり、体力も精神も削られて当然のはずだ。

にもかかわらず――ソラ達のあの落ち着きようは何だ。

疲労はある。だが、息が乱れていない。
緊張も薄れたのか、笑い合う余裕さえある。

特にソラ。
あの男は、なぜ自分の直ぐ背後まで迫るように成績を伸ばしてくるのか。
こちらが一歩先に進むと、まるで影のように同じ距離で付いてくる。

(鬱陶しい……僕が導くべき場所に、勝手に付いてくるなよ)

自分が優れた存在である事は疑っていない。
このクラスを導くのは自分でなければならず、それこそが自分の使命だと確信している。

だがこの学校に入ってからというもの、ソラのことが妙に目につく。

最初の20キロ走、ポーションの製作、そして今のダンジョン実習。

気が付けば自分の後ろに立ち、まるで自分に迫るように歩幅を合わせてくる。

(そんな器のやつじゃないだろう……!)

苛立ちが胸の奥で熱を帯びる。
否定したい感情が、じわじわと形を持ち始めているのを、自分でも分かってしまう。

――焦り。

そう呼びたくはないものが、喉元にこびり付く。

「……次は絶対に、引き離す」

カイトは小さく呟き、拳を握りしめるのだった。
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