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一章 契約と回帰
四十七話
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ゴーマンの巨体が教会の外壁を破壊し、夜気を切り裂いて吹き飛んでいったあと、あたりには不自然な静寂だけが残った。砕けた石材が地面に転がり、舞い上がった埃がゆっくりと落ちていく。
その中心に、ソラは立っていた。
だが、その背中はもう限界を迎えていた。拳を下ろした直後、彼の全身から力が抜けていくのが、傍目にも分かるほどだった。
「……ソラ?」
震えた声が、背後から響く。
瓦礫の陰から、恐る恐る顔を出したのはカジトだった。顔色は悪く、足元もおぼつかない。それでも、目の前の光景が現実なのか確かめるように、少しずつ距離を詰めてくる。
倒れ伏したゴーマン。
崩れた教会の壁。
そして、血に濡れながら立つソラ。
「……終わった、のか?」
カジトがそう呟いた瞬間、ソラの身体がぐらりと揺れた。
「カジト……」
呼ばれて、カジトは息を呑む。
『こいつを……頼む。……このことは……他言無用、だ』
それだけを言い切ると、ソラの膝が崩れ落ちた。
「っ、ソラ!」
反射的に駆け寄り、カジトは倒れ込むソラの身体を受け止めた。想像以上に軽く、そして冷たい。
何が起きたのか、何が起きていたのか。
理解はまったく追いついていなかった。
それでも一つだけ、はっきりしていることがあった。
――自分は、間違いなくこの少年に助けられた。
「……分かった。後のことは任せろ」
誰に言うでもなく、カジトはそう呟いた。
まずは仲間たちだ。
意識を失ったまま縛られていたボッケたちを起こし、簡潔に状況を伝える。
「人を呼んできてくれ。信頼できる大人を、できるだけ早く」
混乱しながらも、彼らは頷き、走り出していった。
その背を見送ったあと、カジトはソラを背負い直す。自分が間借りしている寮は近い。今は、とにかく休ませるのが先だった。
夜道を急ぎ、寮の一室に辿り着く。
ベッドにソラを寝かせると、ようやくカジトは大きく息を吐いた。
「……お前、何者なんだよ」
返事はない。
ソラは深い眠りに落ちていた。
そのときだった。
ベッド脇に、いつの間にか一匹の黒猫が座っていることに気づく。
金色の瞳でソラを見上げ、次いでカジトの方を見る。
「にゃあ」
その鳴き声は、不思議と――感謝を告げているように聞こえた。
カジトは目を瞬かせ、そして小さく笑う。
「……気のせいじゃ、ないよな」
黒猫は何も答えず、静かにソラの傍に丸くなった。
こうして、長く重い夜は、ようやく終わりを迎えたのだった。
その中心に、ソラは立っていた。
だが、その背中はもう限界を迎えていた。拳を下ろした直後、彼の全身から力が抜けていくのが、傍目にも分かるほどだった。
「……ソラ?」
震えた声が、背後から響く。
瓦礫の陰から、恐る恐る顔を出したのはカジトだった。顔色は悪く、足元もおぼつかない。それでも、目の前の光景が現実なのか確かめるように、少しずつ距離を詰めてくる。
倒れ伏したゴーマン。
崩れた教会の壁。
そして、血に濡れながら立つソラ。
「……終わった、のか?」
カジトがそう呟いた瞬間、ソラの身体がぐらりと揺れた。
「カジト……」
呼ばれて、カジトは息を呑む。
『こいつを……頼む。……このことは……他言無用、だ』
それだけを言い切ると、ソラの膝が崩れ落ちた。
「っ、ソラ!」
反射的に駆け寄り、カジトは倒れ込むソラの身体を受け止めた。想像以上に軽く、そして冷たい。
何が起きたのか、何が起きていたのか。
理解はまったく追いついていなかった。
それでも一つだけ、はっきりしていることがあった。
――自分は、間違いなくこの少年に助けられた。
「……分かった。後のことは任せろ」
誰に言うでもなく、カジトはそう呟いた。
まずは仲間たちだ。
意識を失ったまま縛られていたボッケたちを起こし、簡潔に状況を伝える。
「人を呼んできてくれ。信頼できる大人を、できるだけ早く」
混乱しながらも、彼らは頷き、走り出していった。
その背を見送ったあと、カジトはソラを背負い直す。自分が間借りしている寮は近い。今は、とにかく休ませるのが先だった。
夜道を急ぎ、寮の一室に辿り着く。
ベッドにソラを寝かせると、ようやくカジトは大きく息を吐いた。
「……お前、何者なんだよ」
返事はない。
ソラは深い眠りに落ちていた。
そのときだった。
ベッド脇に、いつの間にか一匹の黒猫が座っていることに気づく。
金色の瞳でソラを見上げ、次いでカジトの方を見る。
「にゃあ」
その鳴き声は、不思議と――感謝を告げているように聞こえた。
カジトは目を瞬かせ、そして小さく笑う。
「……気のせいじゃ、ないよな」
黒猫は何も答えず、静かにソラの傍に丸くなった。
こうして、長く重い夜は、ようやく終わりを迎えたのだった。
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