《カクヨム様で50000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう

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二章 黒曜麒麟

五十五話

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あれから二ヶ月が過ぎた。

ゴーマンとの死闘も、母との突然の再会も、今では胸の奥に静かに沈み、日常は驚くほど穏やかに流れていた。

あの夜を境に世界が劇的に変わった、ということはない。ただ、確かにソラの中で何かが変わり、それが少しずつ、しかし確実に彼の歩みを支えていた。

朝は決まった時間に起き、学校へ向かう。

座学ではダンジョンの生態学、戦術の基礎を学び、実技では身体操作や連携訓練を繰り返す。

かつて腫れ物扱いされていたソラだが、今では教師たちの評価も安定して高かった。

突出しすぎず、だが確実に結果を出す。その姿勢は、地味ながらも信頼を積み重ねていった。

ダンジョン実習では、ボッケ、マルコ、リン、ファラと組むことが多かった。

派手な活躍はしないが、誰よりも周囲を見て、危険を予測し、仲間が最大限動きやすい位置を作る。気づけば自然と、パーティの軸はソラになっていた。

「相変わらず便利だな、お前は」
「一家に一台どころか、一パーティに一人だよね」

そんな冗談を言い合いながら、彼らは何度もダンジョンを踏破した。

ゴーマン事件については、誰も口にしない。それが暗黙の了解だった。

放課後や休日になると、ソラはギルドの訓練場へ向かう。
魔力操作を徹底的に磨き、身体の効率的な動き方を追求する。筋トレとランニングは欠かさず、無理はしないが手を抜かない。以前よりも、疲労の抜けが早くなっていることに自分でも気づいていた。

今日も変わらず訓練をする。ひと通り基礎練習を終え、呼吸を整えながらストレッチをしていると、しばらく黙って様子を見ていたクロが、ぽつりと口を開く。

『……ソラ。魔力操作、だいぶ安定してきたな』

「ほんとか? まだ無駄に漏れてる感じするけど」

『それは“贅沢な悩み”というやつだ。少なくとも二ヶ月前のお前とは別人だな』

クロの声音は軽いが、その評価は本物だった。

ソラ自身も分かっている。魔力を流す感覚、止める感覚、力を一点に集める感覚。そのどれもが、以前より確実に“思った通り”になってきていた。

クロは尻尾を揺らしながら続ける。

『だからだ。そろそろ――スキルのレベルアップを考えていい』

その言葉に、ソラは思わず目を見開いた。

「レベルアップ……」

アイテムボックス。
ソラがこの世界で初めて経験した“スキルの進化”。

「あの時は……正直、よく分からないまま上がったよな」

『そうだな。正確に言えば、あれは“入口”だ』

クロは静かに言葉を選ぶ。

『一度目のレベルアップは簡単だ。器に少し水を注ぐようなものだからな。だが――二度目以降は違う』

「違うって?」

『器そのものを作り替える作業になる』

ソラの背筋に、じわりと冷たいものが走った。

『スキルのレベルアップは、本来“人間にはできない”』

「……え?」

『だから言っただろう。これは私と契約しているお前にしかできない』

クロははっきりと言い切る。

『契約を通して、お前の魔力とスキルは私と繋がっている。だからこそ、内側から“書き換える”ことができる』

「書き換える……」

『だが、代償はある』

クロの声が低くなる。

『準備不足でやれば、体が耐えられない。魔力の流れが暴走し、筋肉が裂け、内臓が焼ける。最悪――体が弾け飛ぶ』

「……っ」

ソラは思わず息を呑んだ。

「そんな……危ないものだったのかよ」

『だから今まで止めていた』

クロは淡々と続ける。

『下手に力だけを上げれば、お前は自分自身に殺される。だが今のお前なら――“挑戦する資格”はある』

「資格……」

『日々の鍛錬だ。走り、殴り、魔力を抑え、流し、制御する。それを積み重ねてきた』

クロはソラを見据える。

『その積み重ねが、スキルを受け止める“器”を作った。簡単ではないが、不可能でもない』

ソラは拳を握りしめる。

「……前はさ」

『ん?』

「アイテムボックスをレベルアップした時は正直訳がわからないままだった」

ソラは目を閉じ、深く息を吸った。

「……でも今は違う」

『ほう』

「強くなりたい」

迷いはなかった。

「仲間を守れる力がほしい。自分が前に立てる力がほしい」

クロはしばらく黙っていたが、やがて満足そうに頷く。

『いいだろう』

『だが今日はやらない』

「え?」

『前準備がいる。精神と体を完全に休めろ。次は“失敗できない”』

クロはソラの肩から降り、真正面に座る。

『覚えておけ。今回は簡単じゃない。前みたいに、気づいたら終わっている――なんてことはない』

クロは静かに告げた。

『それでも踏み込めるなら――お前はまた一段、別の場所へ行ける』

ソラはゆっくりと頷いた。

「……分かった」

胸の奥が、静かに熱を帯びていく。
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