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二章 黒曜麒麟
六十八話
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放課後、まだ陽の残る校舎の一角に、ソラたちは集まっていた。
目的は一つ――黒曜麒麟が棲むBランクダンジョンへ向かうための、最終的な顔合わせだ。
そこには、いつもの顔ぶれであるソラ、ボッケ、リン、マルコ、ファラに加え、ハーデン先生、そしてユナの姿があった。
さらに、ユナの後ろには見慣れない女生徒が二人、少し緊張した様子で立っている。
「まずは、全員揃ったみたいですね」
ハーデン先生がそう言って集まった人の顔を見ていく。
その視線に促されるように、ユナが一歩前へ出た。
「今日はありがとうございます。あの……この二人は、私と同じパーティの仲間です」
ユナの言葉を待ちきれなかったのか、元気そうな少女が勢いよく前に出る。
「はーい! 私がテナ! ユナとパーティを組んでる前衛だよ!」
明るく手を振りながら、にっと笑う。
「スキルは身体強化! 前に出て殴るのが仕事って感じかな!」
その勢いのまま、テナは隣に立つ少女の背中を軽く叩いた。
「で、こっちがセノン!」
突然話を振られ、セノンは小さく肩を跳ねさせる。
一歩前に出て、スカートの端をつまみながら、丁寧に頭を下げた。
「セノンです……」
少し小さな声だが、落ち着いた響きがある。
「テナが言ってくれた通り、回復魔法と、攻撃を防ぐ障壁系の魔法を使えます。よろしくお願いします」
その所作はどこか品があり、慎ましい。
テナとは正反対だが、不思議とバランスの取れた二人だとソラは感じた。
その流れで、ソラはふとユナに視線を向けた。
「ユナ、普段は三人でパーティを組んでるのか?」
その問いに、ユナは一瞬だけ目を伏せ、遠慮がちに首を横に振った。
代わりに、テナが腕を組んで口を開く。
「本当はね、同じクラスの男子二人も入れて五人パーティなんだよ。でもさ」
そこまで言って、テナは露骨に顔をしかめた。
「ユナがBランクダンジョンの話をした途端、『家の跡取りだから』『危険すぎる』とか言い出してさ。同行拒否だよ?」
吐き捨てるような口調に、怒りがはっきりと滲んでいる。
「普段はさ、ユナの周りにくっついて『守る』だの『美しい』だの言ってたくせに! 肝心なところでこれだよ。ほんっと役に立たない!」
その勢いに、セノンは少し困ったように視線を泳がせる。
ユナはというと、テナが代わりに怒ってくれたことが嬉しかったのか、小さく「ふふっ」と笑った。
「……彼らには、彼らの事情がありますから」
そう静かに言って、ユナは話を締める。
そして改めて、ソラたち一人ひとりの顔を見渡した。
「私のために、ここまで集まってくださって……本当にありがとうございます」
ユナは深く頭を下げる。
「でも、私たちが向かおうとしているのは、命の危険がある場所です。今なら……まだ引き返すこともできます」
一瞬の沈黙。
それでもユナは顔を上げ、覚悟のこもった目で続けた。
「それでも……それでも、私の願いを協力してくださるなら。どうか、力を貸してください」
その言葉に、最初に動いたのはテナだった。
ユナの隣に並び、勢いよく頭を下げる。
「お願いします! 私からも!」
続いて、セノンも反対側に立ち、少し声を震わせながら頭を下げる。
「よ、よろしくお願いします」
三人の頭が並んで下がる光景を前に、ソラたちは自然と背筋を伸ばしていた。
ユナの言葉を受けて、最初に反応したのはボッケだった。
ソラの横に立ったまま、ソラを見て肩をすくめて笑う。
「……まるでどっかの誰かを見てるようだな」
その一言に、リンとファラ、マルコも思わず頷く。
「誰かのために危ない場所へ行くなんて、普通はできないよね」
リンは穏やかに微笑みながら言う。
「放っておいたら飛び出してしまいまーす!」
ファラは猫のポーズをとってにゃーと少しおどけて見せる。
マルコは大げさに肩をすくめて、いつもの調子でウインクした。
「困っている女性を見捨てるなんて、僕の美学が許さないからね!」
ボッケは一歩前に出て、ユナをまっすぐ見つめる。
「私たちは未熟な学生だ。それは分かってる。でもな――だからって、何もしない理由にはならない。協力しよう」
リンも続く。
「危ないのは承知の上です。でも……みんなで行けば、きっと道は見つかります」
ファラは小さく拳を握りしめた。
「ファラはやってやりまーす!大活躍の時が来ました!」
マルコは胸に手を当て、芝居がかった声で言う。
「運命の冒険に、僕たちが立ち会わない理由がないね!」
その言葉の一つ一つが、ユナの胸に深く染み込んでいく。
涙が溢れそうになるのを、必死に堪えているのが分かった。
そこへ、静かに一歩前に出たのがハーデン先生だった。こほんと咳払いをした後に皆んなに話す。
「教師の立場で言えば、本来なら止めなければなりません」
低く、しかしはっきりとした声だった。
「Bランクダンジョンは、学生が軽々しく挑む場所ではない」
一瞬、空気が張り詰める。
だがハーデンは、ユナ、そしてソラたち一人一人の顔を見渡し、静かに息を吐いた。
「ですが……ユナさんの真摯な願い。そして、皆さんの覚悟を前にして、それを無理に押し潰すことは私にはできない」
ハーデンの目が、かつての冒険者の色を帯びる。
「ならば私は――教師としてではなく、元Bランクシーカーのハーデンとして、この依頼を受けましょう」
その言葉に、場の空気が一気に熱を帯びた。
ソラは一歩前に出て、ユナの前に立つ。
迷いのない目で、手を差し出した。
「必ず、黒曜麒麟の角を手に入れよう!約束だ!」
ユナは一瞬言葉を失い、それから堪えていた涙が溢れ出した。
それでも、泣きながら笑い、ソラの手を強く握り返す。
「……ありがとうございます。どうか、よろしくお願いします」
その握手を中心に、仲間たちの決意が一つに重なった。
目的は一つ――黒曜麒麟が棲むBランクダンジョンへ向かうための、最終的な顔合わせだ。
そこには、いつもの顔ぶれであるソラ、ボッケ、リン、マルコ、ファラに加え、ハーデン先生、そしてユナの姿があった。
さらに、ユナの後ろには見慣れない女生徒が二人、少し緊張した様子で立っている。
「まずは、全員揃ったみたいですね」
ハーデン先生がそう言って集まった人の顔を見ていく。
その視線に促されるように、ユナが一歩前へ出た。
「今日はありがとうございます。あの……この二人は、私と同じパーティの仲間です」
ユナの言葉を待ちきれなかったのか、元気そうな少女が勢いよく前に出る。
「はーい! 私がテナ! ユナとパーティを組んでる前衛だよ!」
明るく手を振りながら、にっと笑う。
「スキルは身体強化! 前に出て殴るのが仕事って感じかな!」
その勢いのまま、テナは隣に立つ少女の背中を軽く叩いた。
「で、こっちがセノン!」
突然話を振られ、セノンは小さく肩を跳ねさせる。
一歩前に出て、スカートの端をつまみながら、丁寧に頭を下げた。
「セノンです……」
少し小さな声だが、落ち着いた響きがある。
「テナが言ってくれた通り、回復魔法と、攻撃を防ぐ障壁系の魔法を使えます。よろしくお願いします」
その所作はどこか品があり、慎ましい。
テナとは正反対だが、不思議とバランスの取れた二人だとソラは感じた。
その流れで、ソラはふとユナに視線を向けた。
「ユナ、普段は三人でパーティを組んでるのか?」
その問いに、ユナは一瞬だけ目を伏せ、遠慮がちに首を横に振った。
代わりに、テナが腕を組んで口を開く。
「本当はね、同じクラスの男子二人も入れて五人パーティなんだよ。でもさ」
そこまで言って、テナは露骨に顔をしかめた。
「ユナがBランクダンジョンの話をした途端、『家の跡取りだから』『危険すぎる』とか言い出してさ。同行拒否だよ?」
吐き捨てるような口調に、怒りがはっきりと滲んでいる。
「普段はさ、ユナの周りにくっついて『守る』だの『美しい』だの言ってたくせに! 肝心なところでこれだよ。ほんっと役に立たない!」
その勢いに、セノンは少し困ったように視線を泳がせる。
ユナはというと、テナが代わりに怒ってくれたことが嬉しかったのか、小さく「ふふっ」と笑った。
「……彼らには、彼らの事情がありますから」
そう静かに言って、ユナは話を締める。
そして改めて、ソラたち一人ひとりの顔を見渡した。
「私のために、ここまで集まってくださって……本当にありがとうございます」
ユナは深く頭を下げる。
「でも、私たちが向かおうとしているのは、命の危険がある場所です。今なら……まだ引き返すこともできます」
一瞬の沈黙。
それでもユナは顔を上げ、覚悟のこもった目で続けた。
「それでも……それでも、私の願いを協力してくださるなら。どうか、力を貸してください」
その言葉に、最初に動いたのはテナだった。
ユナの隣に並び、勢いよく頭を下げる。
「お願いします! 私からも!」
続いて、セノンも反対側に立ち、少し声を震わせながら頭を下げる。
「よ、よろしくお願いします」
三人の頭が並んで下がる光景を前に、ソラたちは自然と背筋を伸ばしていた。
ユナの言葉を受けて、最初に反応したのはボッケだった。
ソラの横に立ったまま、ソラを見て肩をすくめて笑う。
「……まるでどっかの誰かを見てるようだな」
その一言に、リンとファラ、マルコも思わず頷く。
「誰かのために危ない場所へ行くなんて、普通はできないよね」
リンは穏やかに微笑みながら言う。
「放っておいたら飛び出してしまいまーす!」
ファラは猫のポーズをとってにゃーと少しおどけて見せる。
マルコは大げさに肩をすくめて、いつもの調子でウインクした。
「困っている女性を見捨てるなんて、僕の美学が許さないからね!」
ボッケは一歩前に出て、ユナをまっすぐ見つめる。
「私たちは未熟な学生だ。それは分かってる。でもな――だからって、何もしない理由にはならない。協力しよう」
リンも続く。
「危ないのは承知の上です。でも……みんなで行けば、きっと道は見つかります」
ファラは小さく拳を握りしめた。
「ファラはやってやりまーす!大活躍の時が来ました!」
マルコは胸に手を当て、芝居がかった声で言う。
「運命の冒険に、僕たちが立ち会わない理由がないね!」
その言葉の一つ一つが、ユナの胸に深く染み込んでいく。
涙が溢れそうになるのを、必死に堪えているのが分かった。
そこへ、静かに一歩前に出たのがハーデン先生だった。こほんと咳払いをした後に皆んなに話す。
「教師の立場で言えば、本来なら止めなければなりません」
低く、しかしはっきりとした声だった。
「Bランクダンジョンは、学生が軽々しく挑む場所ではない」
一瞬、空気が張り詰める。
だがハーデンは、ユナ、そしてソラたち一人一人の顔を見渡し、静かに息を吐いた。
「ですが……ユナさんの真摯な願い。そして、皆さんの覚悟を前にして、それを無理に押し潰すことは私にはできない」
ハーデンの目が、かつての冒険者の色を帯びる。
「ならば私は――教師としてではなく、元Bランクシーカーのハーデンとして、この依頼を受けましょう」
その言葉に、場の空気が一気に熱を帯びた。
ソラは一歩前に出て、ユナの前に立つ。
迷いのない目で、手を差し出した。
「必ず、黒曜麒麟の角を手に入れよう!約束だ!」
ユナは一瞬言葉を失い、それから堪えていた涙が溢れ出した。
それでも、泣きながら笑い、ソラの手を強く握り返す。
「……ありがとうございます。どうか、よろしくお願いします」
その握手を中心に、仲間たちの決意が一つに重なった。
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