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二章 黒曜麒麟
六十九話
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皆の決意が固まり、場の空気が静かに締まった、その時だった。
「――その話、俺たちも混ぜてもらえないかな」
背後からかけられた声に、全員が振り返る。
そこに立っていたのはカイトだった。
どうやら少し前から教室の外で会話を聞いていたらしい。いつもの整った笑みを浮かべ、軽く手を挙げる。
「自分たちも同行したい」
その言葉に、空気が一瞬だけ張りつめる。
真っ先に反応したのはソラだった。
「……なんでだ?」
警戒を隠さず問い返す。
その瞬間、カイトの表情がわずかに歪んだ。ほんの一瞬、ほんの刹那。見逃せば気づかないほどの不機嫌さ。
それに気づいたのは、前の人生でカイトの人柄や癖を知っていたソラだけだった。
だがカイトはすぐに、いつもの爽やかな顔に戻る。
「ユナさんの心の美しさに、心を打たれてね。ぜひ協力したいと思ったんだ」
そう言って、ユナに向けて柔らかく視線を送る。
「それに、これは俺たちのパーティにとっても良い経験になる。Bランクダンジョンなんてそう簡単に挑めるものじゃない。成長のためにも、ぜひ参加したい」
ソラは一歩前に出て、きっぱりと言った。
「ダンジョンは遊びじゃない。経験のためなんて軽い理由で行く場所じゃないぞ」
だがカイトは、その言葉を聞いても気分を害した様子はなく、むしろ肩をすくめて一笑する。
「そんなことは分かっているさ。命の危険があることもね」
そして、場にいる全員を見回した。
「俺たちのパーティは最近、Cランクダンジョンに入って実戦経験を積んでいる。――ここにいる中でハーデン教諭以外に、Cランク以上のダンジョンに入ったことがある人はいるかな?」
その問いに、誰も答えられない。
ボッケも、リンも、ファラも、マルコも沈黙する。
ユナ、テナ、セノンも同様だった。
ソラも黙ったままだった。
前の人生では何度もCランク以上のダンジョンに入っている。
だが、それを今の自分が証明する術はない。
そして、その過去を話すつもりもなかった。
沈黙が肯定のように場を支配する中、カイトは満足そうに頷く。
「つまり、俺たちは少なくとも“未知”ではない。足を引っ張るつもりもないし、覚悟もある」
そう言い切るカイトを、ソラは真っ直ぐに見据えた。
その爽やかな笑顔の奥にほんのわずかだが、焦りと競争心や他のどす黒い感情が合わさって滲んでいるのをソラは確かに感じ取っていた。
――こいつは、ただの善意だけで来ようとしているわけじゃない。
少しの沈黙が続くが、その沈黙を破ったのは、ハーデン先生だった。
「……話はわかりました」
「先生!」
ソラが思わず声を上げるが、ハーデンは片手を上げて制する。
「カイト君たちが自ら望んで参加するのであれば、私は拒みません」
ただし、と一拍置き、静かな声で、しかしはっきりと言い切る。
「ダンジョン内では、私の指示が絶対です。
もし一度でも指示に従わない場合――その場で、あなた方をダンジョンから離脱させます」
その言葉には、教師としてではなく、元Bランクシーカーとしての重みがあった。
カイトは少しだけ目を細め、軽く頷く。
「わかりました」
そして踵を返しながら、
「では、次は僕のパーティメンバーを連れてきます」
そう言って教室を出ようとした――が、ふと思い出したように立ち止まり、踵を返す。
そのまま、ユナの前へと歩み寄った。
「……?」
突然目の前に立たれ、ユナの身体がわずかに強張る。
カイトは、完璧な笑顔を浮かべて口を開いた。
「もし、このダンジョンで僕が活躍できたなら――
その時は僕と付き合ってくれないかな」
「おい!」
ソラが反射的にカイトの肩を掴む。
だが次の瞬間、カイトはその腕を力強く振り払った。
二人の視線が一瞬、鋭くぶつかる。
その緊張を断ち切るように、ユナが一歩前に出た。
「……わかりました」
静かな声だったが、はっきりしていた。
「もし、あなたが協力してくれるのなら……
その時は、あなたとお付き合いさせてください」
そう言ってユナは軽く頭を下げる。
カイトは満足そうに微笑み、踵を返す。
「良い返事をありがとう。では、さようなら。皆さん」
その背中が教室を出ていくと、残された面々の間に重くそして不穏な沈黙が続く。
ソラは拳を強く握りしめながら、胸の奥に広がる嫌な予感を振り払うことができずにいた。
「――その話、俺たちも混ぜてもらえないかな」
背後からかけられた声に、全員が振り返る。
そこに立っていたのはカイトだった。
どうやら少し前から教室の外で会話を聞いていたらしい。いつもの整った笑みを浮かべ、軽く手を挙げる。
「自分たちも同行したい」
その言葉に、空気が一瞬だけ張りつめる。
真っ先に反応したのはソラだった。
「……なんでだ?」
警戒を隠さず問い返す。
その瞬間、カイトの表情がわずかに歪んだ。ほんの一瞬、ほんの刹那。見逃せば気づかないほどの不機嫌さ。
それに気づいたのは、前の人生でカイトの人柄や癖を知っていたソラだけだった。
だがカイトはすぐに、いつもの爽やかな顔に戻る。
「ユナさんの心の美しさに、心を打たれてね。ぜひ協力したいと思ったんだ」
そう言って、ユナに向けて柔らかく視線を送る。
「それに、これは俺たちのパーティにとっても良い経験になる。Bランクダンジョンなんてそう簡単に挑めるものじゃない。成長のためにも、ぜひ参加したい」
ソラは一歩前に出て、きっぱりと言った。
「ダンジョンは遊びじゃない。経験のためなんて軽い理由で行く場所じゃないぞ」
だがカイトは、その言葉を聞いても気分を害した様子はなく、むしろ肩をすくめて一笑する。
「そんなことは分かっているさ。命の危険があることもね」
そして、場にいる全員を見回した。
「俺たちのパーティは最近、Cランクダンジョンに入って実戦経験を積んでいる。――ここにいる中でハーデン教諭以外に、Cランク以上のダンジョンに入ったことがある人はいるかな?」
その問いに、誰も答えられない。
ボッケも、リンも、ファラも、マルコも沈黙する。
ユナ、テナ、セノンも同様だった。
ソラも黙ったままだった。
前の人生では何度もCランク以上のダンジョンに入っている。
だが、それを今の自分が証明する術はない。
そして、その過去を話すつもりもなかった。
沈黙が肯定のように場を支配する中、カイトは満足そうに頷く。
「つまり、俺たちは少なくとも“未知”ではない。足を引っ張るつもりもないし、覚悟もある」
そう言い切るカイトを、ソラは真っ直ぐに見据えた。
その爽やかな笑顔の奥にほんのわずかだが、焦りと競争心や他のどす黒い感情が合わさって滲んでいるのをソラは確かに感じ取っていた。
――こいつは、ただの善意だけで来ようとしているわけじゃない。
少しの沈黙が続くが、その沈黙を破ったのは、ハーデン先生だった。
「……話はわかりました」
「先生!」
ソラが思わず声を上げるが、ハーデンは片手を上げて制する。
「カイト君たちが自ら望んで参加するのであれば、私は拒みません」
ただし、と一拍置き、静かな声で、しかしはっきりと言い切る。
「ダンジョン内では、私の指示が絶対です。
もし一度でも指示に従わない場合――その場で、あなた方をダンジョンから離脱させます」
その言葉には、教師としてではなく、元Bランクシーカーとしての重みがあった。
カイトは少しだけ目を細め、軽く頷く。
「わかりました」
そして踵を返しながら、
「では、次は僕のパーティメンバーを連れてきます」
そう言って教室を出ようとした――が、ふと思い出したように立ち止まり、踵を返す。
そのまま、ユナの前へと歩み寄った。
「……?」
突然目の前に立たれ、ユナの身体がわずかに強張る。
カイトは、完璧な笑顔を浮かべて口を開いた。
「もし、このダンジョンで僕が活躍できたなら――
その時は僕と付き合ってくれないかな」
「おい!」
ソラが反射的にカイトの肩を掴む。
だが次の瞬間、カイトはその腕を力強く振り払った。
二人の視線が一瞬、鋭くぶつかる。
その緊張を断ち切るように、ユナが一歩前に出た。
「……わかりました」
静かな声だったが、はっきりしていた。
「もし、あなたが協力してくれるのなら……
その時は、あなたとお付き合いさせてください」
そう言ってユナは軽く頭を下げる。
カイトは満足そうに微笑み、踵を返す。
「良い返事をありがとう。では、さようなら。皆さん」
その背中が教室を出ていくと、残された面々の間に重くそして不穏な沈黙が続く。
ソラは拳を強く握りしめながら、胸の奥に広がる嫌な予感を振り払うことができずにいた。
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