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二章 黒曜麒麟
七十話
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あれから時間が経ちついに夏休みが始まった。
校内は一気に静けさを増し、帰省や旅行の話題で賑わっていた廊下も日を追うごとに人影がまばらになっていく。そんな中、ソラたちは例外だった。
彼らは休暇を楽しむためではなく、命がけの目的のために集まっていた。
黒曜麒麟がボスとして君臨するBランクダンジョンへ向かうために。
出発の日の朝、ソラたちは駅に集まった。皆んな大量の荷物を持ち、女性陣はさらにサイドバックも持っている状態だ。軽装なのはアイテムボックスのスキルを持つソラだけである。
ハーデン先生は、今は教師ではなく“シーカー”の顔でそこに立っている。
そしてユナ。
緊張を隠しきれない様子ではあったが、その瞳には確かな決意が宿っていた。
「……ソラ君。本当に、ありがとうございます」
そう小さく呟くユナに、ソラは軽く首を振る。
「みんなで決めたことだろう。行こう」
汽車は長い汽笛を鳴らし、ゆっくりと動き出した。
車窓の外では、見慣れた街並みが次第に後ろへ流れていく。
「いよいよって感じだな」
ボッケが腕を組みながら言う。
「帰省の汽車に、僕らのような目的で乗る人たちも珍しいよね」
マルコが肩をすくめる。
最初のうちは皆、興奮気味に話していた。
黒曜麒麟の噂、ダンジョンの構造予想、戦闘の役割分担――話題は尽きなかった。
だが、時間は容赦なく流れる。
二時間、三時間……五時間も経つ頃には、さすがに疲れが出始めた。
ボッケは座席で腕を組んだまま眠りに落ち、リンも窓にもたれて静かに目を閉じる。ファラはいつの間にか帽子を目深にかぶり、マルコも珍しくうとうとしていた。
起きているのは、ほんの数人だけだった。
ハーデン先生は通路側の席で、地図と資料を見比べながら静かに思案している。
ユナは落ち着かない様子で膝の上に手を置き、時折ぎゅっと握りしめていた。
「……緊張してる?」
ソラが声をかけると、ユナは少し驚いたように顔を上げる。
「……はい。でも、大丈夫です。皆さんが一緒ですから」
その言葉は自分に言い聞かせるようでもあった。
「それに……」
ユナは小さく笑う。
「皆さんに家に泊まって欲しいとお願いしてしまったので」
「正直、助かるよ」
ソラは苦笑する。
「宿代、馬鹿にならないし」
ユナの家は、このダンジョンのある地方でも名の知れた大きな家らしい。
皆が遠慮しても、「家族に紹介したいから」と押し切られてしまったのだ。
「……迷惑じゃ、ありませんか?」
ユナが不安そうに尋ねる。
「全然」
ソラは即答した。
「むしろありがたい」
その言葉に、ユナの肩から少し力が抜けた。
少し離れた席では、カイトが一人、窓の外を眺めていた。
流れていく山並みと空を、じっと見つめている。
ソラは一瞬だけ、その横顔に視線を向けたが何も言わなかった。
この旅においてカイトとの余計な言葉は不要だと感じていた。
さらに三時間ほどが過ぎる。
長かった汽車の旅も、ようやく終わりを告げようとしていた。
車内アナウンスが目的地の到着を告げると、眠っていた者たちも次々に目を覚ます。
「……着いたか」
ボッケが大きく伸びをする。
「八時間だからね。さすがに長いね」
マルコが肩を回す。
汽車は減速し、ゆっくりと駅に滑り込んだ。
扉が開いた瞬間、外の空気が流れ込む。
都会よりも少し涼しく、潮の香りを含んだ風だった。
「ここが……」
ユナが小さく呟く。
「黒曜麒麟のダンジョンがある街。セイカイだ」
ハーデン先生の声は落ち着いているが、その表情は引き締まっていた。
ソラは一歩、ホームに足を踏み出す。
これから先に待つのは、訓練でも授業でもない――命懸けのダンジョンでの戦闘だ。
だが、仲間は揃っている。
「行こう」
ソラはそう言って、皆を振り返った。
校内は一気に静けさを増し、帰省や旅行の話題で賑わっていた廊下も日を追うごとに人影がまばらになっていく。そんな中、ソラたちは例外だった。
彼らは休暇を楽しむためではなく、命がけの目的のために集まっていた。
黒曜麒麟がボスとして君臨するBランクダンジョンへ向かうために。
出発の日の朝、ソラたちは駅に集まった。皆んな大量の荷物を持ち、女性陣はさらにサイドバックも持っている状態だ。軽装なのはアイテムボックスのスキルを持つソラだけである。
ハーデン先生は、今は教師ではなく“シーカー”の顔でそこに立っている。
そしてユナ。
緊張を隠しきれない様子ではあったが、その瞳には確かな決意が宿っていた。
「……ソラ君。本当に、ありがとうございます」
そう小さく呟くユナに、ソラは軽く首を振る。
「みんなで決めたことだろう。行こう」
汽車は長い汽笛を鳴らし、ゆっくりと動き出した。
車窓の外では、見慣れた街並みが次第に後ろへ流れていく。
「いよいよって感じだな」
ボッケが腕を組みながら言う。
「帰省の汽車に、僕らのような目的で乗る人たちも珍しいよね」
マルコが肩をすくめる。
最初のうちは皆、興奮気味に話していた。
黒曜麒麟の噂、ダンジョンの構造予想、戦闘の役割分担――話題は尽きなかった。
だが、時間は容赦なく流れる。
二時間、三時間……五時間も経つ頃には、さすがに疲れが出始めた。
ボッケは座席で腕を組んだまま眠りに落ち、リンも窓にもたれて静かに目を閉じる。ファラはいつの間にか帽子を目深にかぶり、マルコも珍しくうとうとしていた。
起きているのは、ほんの数人だけだった。
ハーデン先生は通路側の席で、地図と資料を見比べながら静かに思案している。
ユナは落ち着かない様子で膝の上に手を置き、時折ぎゅっと握りしめていた。
「……緊張してる?」
ソラが声をかけると、ユナは少し驚いたように顔を上げる。
「……はい。でも、大丈夫です。皆さんが一緒ですから」
その言葉は自分に言い聞かせるようでもあった。
「それに……」
ユナは小さく笑う。
「皆さんに家に泊まって欲しいとお願いしてしまったので」
「正直、助かるよ」
ソラは苦笑する。
「宿代、馬鹿にならないし」
ユナの家は、このダンジョンのある地方でも名の知れた大きな家らしい。
皆が遠慮しても、「家族に紹介したいから」と押し切られてしまったのだ。
「……迷惑じゃ、ありませんか?」
ユナが不安そうに尋ねる。
「全然」
ソラは即答した。
「むしろありがたい」
その言葉に、ユナの肩から少し力が抜けた。
少し離れた席では、カイトが一人、窓の外を眺めていた。
流れていく山並みと空を、じっと見つめている。
ソラは一瞬だけ、その横顔に視線を向けたが何も言わなかった。
この旅においてカイトとの余計な言葉は不要だと感じていた。
さらに三時間ほどが過ぎる。
長かった汽車の旅も、ようやく終わりを告げようとしていた。
車内アナウンスが目的地の到着を告げると、眠っていた者たちも次々に目を覚ます。
「……着いたか」
ボッケが大きく伸びをする。
「八時間だからね。さすがに長いね」
マルコが肩を回す。
汽車は減速し、ゆっくりと駅に滑り込んだ。
扉が開いた瞬間、外の空気が流れ込む。
都会よりも少し涼しく、潮の香りを含んだ風だった。
「ここが……」
ユナが小さく呟く。
「黒曜麒麟のダンジョンがある街。セイカイだ」
ハーデン先生の声は落ち着いているが、その表情は引き締まっていた。
ソラは一歩、ホームに足を踏み出す。
これから先に待つのは、訓練でも授業でもない――命懸けのダンジョンでの戦闘だ。
だが、仲間は揃っている。
「行こう」
ソラはそう言って、皆を振り返った。
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