《カクヨム様で50000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう

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二章 黒曜麒麟

七十八話

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シーマンとの戦闘を終えた一行は、再び歩みを進めた。

暑い気温と湿った空気、更にシーマンの視線の気配に神経を張り詰めたまま進み続け、体感ではかなりの時間が経ったように感じられる。

——三十分ほどが過ぎただろうか。

前方に、次の階層へと続く階段が姿を現した。

(……よかった)

ソラは内心でほっと息をつく。

正直なところ、進む方向を誤ったのではないかという不安が、少しずつ胸に溜まっていたのだ。

ハーデンも階段を確認し、小さく頷いた。

「やはり、こちらで正解でしたか」

その言葉に、ソラは一同を代表するように口を開く。

「先生……どうして、こっちの道が階段につながっているって分かったんですか?」

ハーデンは少し考えるように顎に手を当て、前置きをしてから話し始めた。

「これはあくまで私個人の考えですが——」

ハーデンは穏やかな声で続ける。

「シーカーも結局は生活のためにダンジョンへ入ります。
ボスを倒せれば大きな報酬になりますが、その分、怪我や死亡のリスクも高い。
ですから一部の英雄志望を除けば、多くのシーカーは“比較的安全で、倒しやすい魔物”を狩り、魔石を集めて生計を立てる傾向があります」

一同は静かに耳を傾ける。

「この階層は、二階のシーマンよりも明らかに気が立っていました。
つまり、それだけ人に狩られている可能性が高い。
ここを狩場にしているシーカーが多いなら、階段の近くではなく自分たちに有利な所で戦いと思うものです。なので少数の足跡の先に階段へと通じるルートである可能性が高いと判断しました」

なるほど、と小さな声があちこちから漏れる。

ハーデンは付け加えるように言った。

「ただし、これはあくまで一つの目安にすぎません。
ダンジョンによっては階層が進むごとに魔物の攻撃性が増す場所もありますし、必ず通用する考え方ではない。過信は禁物です」

「……でも、すごく参考になります」

ソラが素直にそう言うと、他の面々も同意するように頷いた。

こうして一行は、ハーデンの経験と判断そしてソラの索敵によって選ばれた道が正しかったことを確認し、次の階層へと向かっていく。

四階に降り立ったソラたちを迎えたのは、これまでと変わらない青空と海の風景だった。
しかし――決定的に違う点が一つある。

「……シーマンがいませんね」

周囲を警戒していたハーデンが、そう呟いて小さくでも深く息を吐いた。

海の中にも、砂浜の向こうにも、あの不気味な視線は感じられない。

最初のダンジョン実習で入ったダンジョンと同じ――魔物が出現しない“空白の階層”だと判断したのだろう。

「ここら辺で、一度休憩にしましょう」

その提案に、すぐさま異を唱えたのはカイトだった。

「必要ないですよ。まだ消耗するほどでもありません」

だがハーデンは、落ち着いた口調で首を振る。

「慣れていないダンジョンで無理をするものではありません。
休める場所で休む。それもダンジョンでは重要な判断です」

静かだが、有無を言わせない説得だった。

ハーデンは一応、ユナにも視線を向ける。
ユナは少し考えてから、こくりと頷いた。

「……そうですね。無茶をして怪我をするくらいなら、ここで整えた方がいいと思います」

その言葉に、カイトは露骨に不機嫌そうな表情を浮かべる。

だが他の全員が休憩に賛同したことで、それ以上は何も言えなかった。

こうしてソラたちは、次の戦いに備えてこの安全な階層で束の間の休憩を取ることになった。

ソラはアイテムボックスからレジャーシートを三枚取り出した。

一枚はユナのパーティへ、もう一枚はカイトのパーティへ渡し、残りを自分たちのパーティで使用する。

続いて、人数分の水が入った水筒とタオルも取り出して配った。

「ありがとう」

カイトのパーティを除き、皆が口々に礼を言い、それぞれ腰を下ろす。

休憩に入った途端、疲労が一気に表に出た。

高い気温と湿気。
武器や防具の重さ。
そして、常に自分たちに注がれていたシーマンたちの視線。

それらがじわじわと体力と精神を削っていたのだろう。
誰もが肩で息をし、額や首筋の汗を拭いながら、しばし無言になる。

元Bランクシーカーであったハーデンでさえ例外ではなかった。

久しぶりのBランクダンジョンという緊張感に加え、生徒たちを危険にさらさぬよう常に神経を張り詰めている。その疲れが、一気に表に出ていた。

皆がひと通り汗を拭き終えた頃合いを見て、ソラは周囲を見渡した。

「使い終わったタオル、回収するよ。アイテムボックスにしまうから渡してくれる?」

声をかけると、皆は素直にタオルを差し出してくる。

リンもマルコも、テナやセノン、ユナも「ありがとう」と言いながら渡してくれた。

だが――ファラだけは違った。

彼女はタオルを胸に抱え、大事そうにしてソラへ渡そうとしない。

「ファラ、どうしたの?」

ソラが不思議そうに尋ねると、ファラはわざとらしく頬をぷくっと膨らませて言った。

「このタオルにはですねー、ファラの汗がたっぷり染み込んでまーす。
こんなのソラには渡せませーん!」

そして人差し指を突きつける。

「どうせ、くんかくんかって嗅ぐつもりなんでしょー!」

「しないよ!」

ソラは即座に、しかも全力で否定した。

すると今度は、ファラが目を見開いて固まる。

「ガーン……。
じゃあファラ、そんなに臭いってことですか!?」

そう叫びながら、わざとらしくリンに抱きつく。

「えーん!リン、ソラがファラのこといじめてきまーす!」

リンは困ったように微笑みつつも、あえてファラの芝居に乗った。

「ソラ君……だめだよ。
人の匂い嗅ごうとしたり……それに、臭いなんて言っちゃ……」

「言ってないから!」

ソラが慌てて反論する。

そのやり取りに、カイトを除く皆がくすくすと笑い始めた。
張り詰めていた空気が、ほんの少しだけ和らぐ。
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