《カクヨム様で50000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう

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二章 黒曜麒麟

八十一話

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その後は戦闘も無く、ソラ達は無事にセイカイダンジョンの入り口まで戻ることができた。

外に出た頃には、太陽は少し傾き始め時刻は三時を回っていた。

涼しい海風が肌に当たり、ダンジョン内の湿気と緊張から解放されたことを実感させる。

「今日はここまでですね」

そう言って、ハーデンは一行を見渡した。

「すみませんが、私はこのあと少し用事があります。皆さんは先にユナさんのご自宅へ戻ってください。明日もダンジョンに入りますから、今日はしっかり休んで英気を養うように。いいですね」

その言葉に全員が頷くと、ハーデンは軽く手を振り別の方向へと歩いていった。

先生の姿が見えなくなった途端、張り詰めていた空気が一気に緩む。

「はぁ~……もう、汗と潮で体中ベタベタだよ~」

「わかる! 服の中、最悪なんだけど!」

女性陣が一斉に声を上げ、キャッキャと騒ぎ始める。
緊張から解放された反動もあってか、その表情は明るい。

するとユナが少し照れたように微笑みながら言った。

「私の家のお風呂、広いんです。よかったら……みんなで入りませんか?」

「賛成!」

「やったー!」

間髪入れずに上がる歓声。
女性陣のテンションは一気に跳ね上がった。

一方、その会話を横で聞いていた男性陣はというと――

苦笑いで視線を逸らす者。
聞こえなかったふりをして空を仰ぐ者。
そして、よからぬ想像をしてしまい、分かりやすく顔に出ている者。

反応は実にさまざまだった。

そんな中、マルコだけは違った。

彼はさらりと前髪をかき上げ、いつも通りの涼しい表情を保っている。

(……さすがだな)

ソラは内心でそう思いながら、改めて仲間たちとともにユナの家路へと足を向けた。

帰路につこうと歩き出した、その瞬間だった。

ソラは肩にかかったバッグの重みを意識して――はっとする。

(……クロ?)

ダンジョン内では一度も話しかけられなかった。

張り詰めた緊張と連戦の疲労で、同じ時間を共にしているはずの存在をうっかり忘れてしまっていたのだ。

嫌な予感を覚えながら、ソラはそっとバッグの口を開けて覗き込む。

「……大丈夫か?」

次の瞬間、
むわっと、生温かい空気が顔に吹きつけた。

湿気と熱気がこもりきったバッグの中。

それだけで、事態が深刻だと分かる。

「やばっ……!」

ソラは顔色を変え、周囲にいた仲間たちに向かって叫ぶ。

「ごめん! 先に帰ってて!」

返事を待つ余裕すらなかった。

ソラはバッグを抱えたまま、少しでも涼しそうな場所を求めて駆け出す。

石畳を抜け風通しのいい広場に行き、そこでようやく噴水を見つける。

「ここだ……!」

ソラは急いでバッグからクロを取り出し、そのまま噴水の水をすくってばしゃっとかけた。

『おお……ソラか……』

力の抜けた、焦点の合っていない声。

『今な……お前の母上が迎えに来てくれているんだ……優しい顔でな……』

「幻覚見てる場合か!」

ソラは即座に叫び、今度は容赦なく水何度もかける。

「戻ってこーい!!」

ソラが水をかけ続けることで、クロはようやく焦点の合った目で周囲を見回した。

『……すまない、ソラ。だらしない姿を見せたな』

「いや、完全に俺のせいだ。本当にごめん」

クロは返事の代わりに、ぶるりと体を震わせる。

体についた水滴が弾け、周囲に細かな水しぶきが散った。

『……ふむ。ようやく正気に戻った』

そう言ってから、クロは少し眉をひそめる。

『だが、困ったぞ』

「困った?」

『流石にだ。あのBランクダンジョンの湿気と熱気の中で、あの狭い鞄に入ったままというのは……命がいくつあっても足りん』

クロは腕を組み、真剣な顔で考え込む。

『何か方法を考えねばならんな』

ソラは少し迷ってから、恐る恐る口を開いた。

「……じゃあさ。今回はクロは留守番してた方がいいんじゃないか?」

その瞬間だった。

『却下だ』

即答だった。

『ダンジョンで何が起こるかわからん。そんな場所でお前の側にいないなど、危険すぎる』

クロは一歩、ソラに近づく。

『それに――』

じっとりとした視線。
明らかに恨みのこもった、責めるような目だった。

『お前は時々、いや、かなり抜けている』

「……うっ」

『今日のことをもう忘れたか? 私の存在をすっかり忘れ、灼熱の袋に放置した張本人がよく言う』

ソラは視線を逸らし、頭を掻きながら乾いた笑いを漏らす。

「あはは……反論できないな、それ」

『まったく……』

どうすべきか、二人で頭を悩ませていると――
やけに威勢のいい声が飛んできた。

「にいちゃん、にいちゃん! ちょっと見ていかないか!?」

声の主は、露天商の中年の男だった。
日に焼けた顔に人懐っこい笑みを浮かべ、敷物の上に並べた品々をこれでもかと指差す。

「ここにあるのは全部ダンジョンから出たお宝だ! 掘り出し物ばっかりだぞ!」

ソラは言われるままに視線を落とす。

欠けた装飾品、用途の分からない金属片、ひび割れた魔道具――正直、どれもガラクタにしか見えない。

だが、その中で一つだけ、目を引くものがあった。

小さく、飾り気のない指輪。
不思議と視線が吸い寄せられ、ソラは無意識のうちにそれを手に取っていた。

その瞬間――

『――それだ!』

クロが目を見開き、声を張り上げる。

『それを買うんだ、ソラ! 今すぐだ!』

「え!? これ?」

『間違いない! 理由は後で説明する! とにかくそれだ!』

あまりの勢いに、ソラは細かいことを考える余裕もなくなる。

クロがここまで食いつくのは珍しい。

「……えっと、おじさん。これ、いくらですか?」

露天商は待ってましたとばかりに笑顔を深めた。

「おっ、いいとこに目をつけたね! それは五千リルだ!」

「五千……」

よく分からないものにしては少し高い。
だが、クロの興奮した様子を思い出し、ソラは小さく息を吐いた。

「……わかりました。ください」

「毎度あり!」

そうしてソラは指輪を受け取り、代金を支払う。

クロは満足そうにソラの持つ指輪を見つめながら、静かに呟いた。

『これで……問題は解決だな』

指輪を買い終えたソラは、露天商から少し距離を取り、クロの方へ視線を向けた。

「なあクロ。どうして、この指輪だったんだ?」

ソラの問いに、クロは落ち着いた様子で答える代わりに、短く指示を出す。

『まずはソラがその指輪をつけてみろ』

言われるがまま、ソラは指輪を指にはめる。
特に違和感はない。重さもなく、見た目も地味だ。

「……何も変わらないけど?」

『今度は魔力を注いでみろ』

半信半疑のまま、ソラは指輪へと意識を集中させ、魔力を流し込む。

その瞬間――

「あれ……?」

肌にまとわりついていた熱気が、すっと引いていく。

さっきまでほどよく暑いと感じていた気温が、少しだけ下がったような感覚があった。

『それが、この指輪の効果だ』

クロはどこか得意げに説明を続ける。

『この指輪の表面には、装着者が触れているものの“感じる温度”を常に適温に保つ魔法式が刻まれている。魔力を流すことで、その効果が発動する仕組みだ』

「そんな……そんな効果の指輪だったのか!?」

ソラは思わず声を上げる。

ダンジョン内の高温多湿を思い出せば、喉から手が出るほど欲しい性能だ。

だが、クロはすぐに言葉を継いだ。

『確かに驚くような指輪だが……これは欠陥品だ』

「欠陥?」

『普通の人間は、自分の魔力を意図して指輪に流すことができない。本来なら、自動で魔力を吸い上げる魔法式も一緒に刻まれていなければ、実用にはならない代物だ』

なるほど、とソラは納得しかける。

『だがな……私たちなら話は別だ』

そう言うと、クロはふわりと身を翻し、ふさふさの尻尾をソラの前に差し出した。

『それを、私の尻尾につけてくれ。そうすれば、あの暑さの中でも私はソラの側にいられる』

ソラは慎重に指輪を外し、クロの尻尾の根元にそっと通してやる。

指輪が尻尾の付け根にはまった瞬間、クロは小さく息を吐いた。

『……これで問題は解決だ』

クロは満足そうに呟いた。
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