《カクヨム様で50000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう

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二章 黒曜麒麟

八十二話

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翌日

ソラたちは再びダンジョンの中へ足を踏み入れた。

前日に作った地図があるおかげで、進行は驚くほど順調だった。

道が合っているのが分かるため無駄な探索をする必要も無く、疲労を感じる前に四階まで到達する。

「やっぱり地図があると全然違うな……」

リンが小さく呟くほど、移動は快適だった。

そして五階へと続く階段を下りた瞬間、空気が一変する。

視界に広がったのは、夕暮れ時を思わせる赤く染まった空。

まるで太陽が沈みかけているかのような色合いが、ダンジョン全体を不気味に照らしていた。

(……雰囲気、変わったな)

ソラは思わず周囲を見渡す。

四階までの蒸し暑さは嘘のように消え、肌に触れる空気はひんやりとしている。

寒いとまではいかないが、長く留まれば体温を奪われそうな冷え方だった。

しかし――。

「……見られてる」

シーマンたちは変わらず、こちらをじっと観察している。

赤い空の下、ぬらりとした体を揺らしながら獲物を値踏みするような視線を向けてくる。

その視線に、再び緊張感が走る。

ハーデンは落ち着いた様子で、懐から昨日購入した地図を取り出す。

一度視線を落として現在地を確認すると、すぐに顔を上げた。

「皆さん、こちらです」

そう言って、地図に示された方向を指し示す。

「地図によると階段はあちら側にあります。寄り道せず、そのまま向かいましょう」

その声は穏やかだが、迷いはない。

ソラたちは無言で頷き、それぞれ武器を握り直す。

その後、五階ではほとんど迷うこともなく階段を見つけ、ソラたちは六階へと進んだ。

六階に降り立ってからも、行動は地図通りだった。

――しかし、ある地点でハーデンが足を止めた。

「……おかしいですね」

ハーデンの低い声に、ソラはすぐ反応する。

「どうしましたか?」

「地図によれば、この先に階段があるはずなんですが……」

そう言って視線を向けた先には、通路を塞ぐように鎮座する大きな岩があった。

自然に転がっているようにも見えるが、妙に存在感がある。

「地図には、こんな岩の記載はありません」

ハーデンは続けて、慎重に言葉を選ぶ。

「……もしかすると、彼らが話していた“ビッグシェル”かもしれません」

その言葉を聞いた瞬間、ソラは無意識に一歩前へ出た。

目に魔力を集め、岩をじっと見据える。

すると――。

(……ある)

岩の内部に、ごく微かだが確かに魔力の流れが見える。
それは自然物にはない、不規則で歪な魔力だった。

「ハーデン先生」

ソラは視線を逸らさずに告げる。

「間違いありません。こいつは魔物です。擬態しています」

ハーデンも同様の違和感を感じ取っていたのだろう。
小さく頷きながら、腕を組んで思案する。

この先には階段がある。

だが、この魔物を避けるとなれば、大きく遠回りすることになる。

その先が安全かどうかは、誰にも分からない。

かといって――。

(私の土魔法では、相性が悪い)

岩のような殻を持つ魔物に、土属性は決定打になりにくい。

無理に仕掛ければ、被害が出る可能性もある。

場の空気が重くなった、その時だった。

「……私がやります」

一歩前に出たのは、ユナだった。

周囲が驚いて視線を向ける中、ユナは迷いのない表情で前へ進む。

両手を前に突き出し、静かに、しかし確かに力を込める。

「――アイスボム!」

短く、はっきりとした詠唱。

ユナの手元から、小さな光の塊が生まれ、ゆっくりと岩へ向かって飛んでいく。

速度は決して速くない。

だが――岩に擬態しているビッグシェルは、まったく動かなかった。

次の瞬間。

光が触れた箇所から白い霜が一気に広がり、
パキパキと音を立てながら氷が魔物を覆う。

「……!」

ビッグシェルはわずかに身じろぎしたが、それだけだった。
抵抗する間もなく、全身が完全に氷に閉じ込められる。

やがて、動きは完全に止まった。

ユナは振り返り、少し息を整えながら微笑む。

「これで、前に進めますね」

その言葉に、誰もすぐには返事ができなかった。

ソラは凍りついたビッグシェルとユナを交互に見つめ、心の中で呟く。

(ユナって……こんなに、強かったのか)


一同は歩を進めながら、ソラは近くを歩くユナにそっと声をかけた。
周囲に聞こえないよう、ほんの小声で。

「ユナ……前にさ、不良たちに絡まれてたことあっただろ」

ユナがきょとんとした顔でこちらを見る。

「もしかして……あの時、俺が助けなくてもユナ一人で解決できてたのかなって」

恐る恐る投げかけたその質問に、ユナは一瞬言葉に詰まり困ったように眉を下げて首を振った。

「ううん……それは、たぶん無理でした」

ユナは少し視線を落としながら、正直に答える。

「私の魔法って、あんまり加減ができなくて……もし使っていたら大ごとになっていたと思います」

それから小さく息を吸い、続けた。

「それに……あんなふうに男の人に近づかれたの、初めてで。正直、すごく怖かったんです」

一拍置いて、ユナは顔を上げ、ソラを真っ直ぐに見つめた。

「でも、ソラ君が助けてくれたから……」

そう言って、軽くペコリと頭を下げる。

「本当に、ありがとうございました」

ソラは慌てて手を振る。

「いやいや、あんな場面だったら、誰でも助けるよ。だから、そんなに気にしなくていいって」

照れ隠しのようにそう返すと、ユナはふっと表情を和らげた。

「……そうですか」

そして、少しだけ声を弾ませる。

「じゃあ、ダンジョンから帰ったら、改めてお礼しますね」

そう言って、軽くウインク。

「――っ」

ソラは思わず胸に手を当てる。

(……うっ!?)

鼓動が一気に早くなるのを感じながら、必死に自分に言い聞かせる。

(落ち着け! まだダンジョンの中だぞ!
 平常心だ! 平常心を保つんだ……!)

表情には出さないよう努めつつ、ソラはひたすら前を向いて歩き続けるのだった。
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