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二章 黒曜麒麟
八十三話
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ソラは歩き続けるうちに、少しずつ高鳴っていた鼓動を落ち着かせていった。
七階へと続く階段を見つけた頃には、すっかりいつもの自分に戻っている。
――ダンジョンの中で、いつまでも浮かれているわけにはいかない。
そう自分に言い聞かせながらも脳裏にちらつくのは、先ほどのユナのウインクだった。
あまりにも破壊力が強すぎて、意識から完全に追い払うのは難しい。
(体は十五歳に戻ってるけど、精神は三十五歳だぞ……いい歳したおっさんが、夢見てんじゃねぇよ)
心の中で軽く毒づき、ソラは意識を切り替える。
七階に到達すると、そこからの道のりは六階とほぼ同じだった。
地図どおりに進み、迷うことはない。
ときおりシーマンがこちらに襲いかかってくるがその数は一体、もしくは多くても二体ほど。
昨日の緊張感に比べれば、戦闘には明らかに余裕があった。
仲間同士の連携でシーマンを倒す動きに無駄がない。
ハーデンの指示も的確で、危なげなく前へ進むことができた。
幸いにも、この階ではビッグシェルが道を塞ぐことはなく足止めされることはなかった。
順調に探索を続けた末、ついに八階へと続く階段を見つける。
一同が八階へ足を踏み入れた瞬間、景色は一変した。
先ほどまでの見通しの良い階層とは打って変わり、空は重く沈み暗雲が渦を巻いている。
激しい雨が容赦なく降り注ぎ、突風が吹き荒れていた。
視界は悪く、少し離れただけで敵の気配を掴むのも難しい。
どこから魔物が襲ってきてもおかしくない、不気味な空気が漂っている。
さらに気温も一段と下がり、肌を刺すような冷たさが体力を奪っていく。
この環境で長時間ダンジョン内を歩き回るのは、明らかに危険だった。
頼りにしていた地図も、ここから先は白紙だ。
記されているのは途中までで、これ以上の進路は自分たちで切り開くしかない。
ソラはすぐに足元へ視線を落とす。
だが、雨と風で地面はぐちゃぐちゃに荒らされ、砂も泥も入り混じっている。
足跡らしきものは掻き消され、追跡に使える痕跡は何一つ残っていなかった。
(……無理だな)
ソラはそう判断し、顔を上げてハーデンのもとへ向かう。
「ハーデン先生……この足元じゃ、足跡など見るのは難しそうです。
力及ばずですみません」
そう言って、ソラは深く頭を下げた。
だが、ハーデンはすぐに首を振る。
「この状況では仕方ありませんよ。
雨と風がここまで強ければ、どんな熟練者でも足跡などの痕跡を拾えません」
穏やかな声でそう言うと、ハーデンは続けた。
「それに、ソラ君には四階まで本当に助けてもらいました。
地図作成も先導も、十分すぎるほどの働きです。
どうか、そんなふうに自分を卑下しないでください」
その言葉に、ソラは少しだけ肩の力を抜く。
ここからは自分の力ではどうにもならない領域。
だからこそ、仲間と知恵を出し合って進むしかないのだ。
ソラは自分を納得させるように小さく頷き、再び前を見据えた。
七階へと続く階段を見つけた頃には、すっかりいつもの自分に戻っている。
――ダンジョンの中で、いつまでも浮かれているわけにはいかない。
そう自分に言い聞かせながらも脳裏にちらつくのは、先ほどのユナのウインクだった。
あまりにも破壊力が強すぎて、意識から完全に追い払うのは難しい。
(体は十五歳に戻ってるけど、精神は三十五歳だぞ……いい歳したおっさんが、夢見てんじゃねぇよ)
心の中で軽く毒づき、ソラは意識を切り替える。
七階に到達すると、そこからの道のりは六階とほぼ同じだった。
地図どおりに進み、迷うことはない。
ときおりシーマンがこちらに襲いかかってくるがその数は一体、もしくは多くても二体ほど。
昨日の緊張感に比べれば、戦闘には明らかに余裕があった。
仲間同士の連携でシーマンを倒す動きに無駄がない。
ハーデンの指示も的確で、危なげなく前へ進むことができた。
幸いにも、この階ではビッグシェルが道を塞ぐことはなく足止めされることはなかった。
順調に探索を続けた末、ついに八階へと続く階段を見つける。
一同が八階へ足を踏み入れた瞬間、景色は一変した。
先ほどまでの見通しの良い階層とは打って変わり、空は重く沈み暗雲が渦を巻いている。
激しい雨が容赦なく降り注ぎ、突風が吹き荒れていた。
視界は悪く、少し離れただけで敵の気配を掴むのも難しい。
どこから魔物が襲ってきてもおかしくない、不気味な空気が漂っている。
さらに気温も一段と下がり、肌を刺すような冷たさが体力を奪っていく。
この環境で長時間ダンジョン内を歩き回るのは、明らかに危険だった。
頼りにしていた地図も、ここから先は白紙だ。
記されているのは途中までで、これ以上の進路は自分たちで切り開くしかない。
ソラはすぐに足元へ視線を落とす。
だが、雨と風で地面はぐちゃぐちゃに荒らされ、砂も泥も入り混じっている。
足跡らしきものは掻き消され、追跡に使える痕跡は何一つ残っていなかった。
(……無理だな)
ソラはそう判断し、顔を上げてハーデンのもとへ向かう。
「ハーデン先生……この足元じゃ、足跡など見るのは難しそうです。
力及ばずですみません」
そう言って、ソラは深く頭を下げた。
だが、ハーデンはすぐに首を振る。
「この状況では仕方ありませんよ。
雨と風がここまで強ければ、どんな熟練者でも足跡などの痕跡を拾えません」
穏やかな声でそう言うと、ハーデンは続けた。
「それに、ソラ君には四階まで本当に助けてもらいました。
地図作成も先導も、十分すぎるほどの働きです。
どうか、そんなふうに自分を卑下しないでください」
その言葉に、ソラは少しだけ肩の力を抜く。
ここからは自分の力ではどうにもならない領域。
だからこそ、仲間と知恵を出し合って進むしかないのだ。
ソラは自分を納得させるように小さく頷き、再び前を見据えた。
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