《カクヨム様で50000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう

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二章 黒曜麒麟

八十四話

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八階を探索してから、二時間が経過した。

激しい雨と風にさらされながら、ソラたちは幾度も戦闘を繰り返してきた。

襲いかかってくるのはシーマンだけではない。

二メートルほどもある電気ウナギのような魔物、そして砂の中を泳ぐピラニアのような魔物。

どの敵も危険な魔物で、一瞬の油断が命に関わる存在である。

気を抜く暇は一瞬たりともなかった。

皆が大きなケガなどはなくとも擦り傷や打ち身など、満身創痍になりながらもようやく九階へ続く階段を見つけた時、誰もが無言で拳を握りしめていた。

重い足取りで九階へと踏み込む。

そこに広がっていたのは、先ほどまでの地獄のような光景とはまるで別世界だった。

穏やかな砂浜が続き、風も雨も嘘のように消えている。

周囲を見渡しても、敵の姿は見当たらなかった。

「……ここは、安全そうですね」

そう判断したハーデンが、皆に向かって声をかける。

「この階層で休憩にしましょう」

その言葉を聞いた瞬間だった。

誰かが倒れ込むように座り込み、それを合図にしたかのように全員が糸の切れた人形のようにその場へ崩れ落ちる。

激しい戦闘の連続と冷たい雨と風の中で張り詰め続けていた緊張が、一気に解けたのだ。

体だけでなく、精神も限界を迎えていた。

ハーデンも例外ではない。

深く息を吸い、吐くが、なかなか呼吸は落ち着かない。

誰も言葉を発することなく、ただ荒い息を整えて体力を回復させることに集中していた。

そうして、静かなまま一時間が過ぎる。

幸いこの階層は温かく、冷え切っていた体がゆっくりと回復していくのが分かる、低体温症の心配はなさそうだ。

ただ、雨で濡れた服が肌に張り付いているのが不快で、時折身じろぎする者もいた。

九階から十階へ続く階段は、すぐ近くにあった。

探すまでもなく、視界に入るほどだ。

ハーデンは立ち上がり、皆を見回してから告げる。

「先の階層を少し確認してきます。
様子を見るだけなので、危険はありません。
すぐに戻って来ます」

そう言って、一人で階段を降りていく。

すでにソラを含め、生徒たちは心身ともに限界だった。

ハーデンは今日はここで探索を打ち切り、帰還するべきだと考えている。

ただ――。

もし次の十階も、八階と同じような過酷な環境であれば装備を整え直す必要がある。

その判断を下すためにも、事前に状況を確認しておきたかった。

だが、ハーデンの胸にあった不安は、思いがけず良い形で裏切られることになった。

十階へと続く階段の先――

その入り口には、重厚な扉が静かに佇んでいた。

「……これは」

一目見ただけで分かる。

この扉は、ダンジョンボスが待つ階層にのみ現れるものだ。

Cランク以上のボスが存在するダンジョンでは、すべて確認されている共通の特徴。

ハーデンはその事実を確かめるように、扉の前に立ち尽くす。

胸の奥に、確かな喜びが湧き上がった。

同時に、気持ちを引き締め直す。

――この先には、ボスがいる。

つまり、目的である黒曜麒麟が待ち構えているということだ。

ここまで、生徒たちに致命的な怪我もなく、誰一人欠けることなく辿り着けた。

これは奇跡に近い。

ソラの学生とは思えない技能、ユナの強力な氷魔法。

それだけではない。
一人一人が自分の役割を果たし、仲間と連携した結果だ。

それらを差し引いたとしても――
やはり奇跡と呼ぶほかない。

Bランクダンジョンの恐ろしさを、ハーデンは身をもって知っている。

一瞬の油断、ほんの小さな判断ミスで、命が失われる世界だ。

だからこそ、ここまで無事に来られたことが信じられなかった。

(どうか……)

ハーデンは、誰にも聞こえないほど小さな声で祈る。

この幸運が、黒曜麒麟の角を手に入れ、全員が無事にダンジョンを出るその瞬間まで続きますようにと。

確認を終えたハーデンは踵を返し、九階で休んでいるソラたちの元へ戻った。

「皆さん」

その声に、疲れ切っていた生徒たちが顔を上げる。

「十階は……ボスのいる階層です。
 目的の黒曜麒麟は、この先にいます」

一瞬の静寂のあと――

「やったーー!!」

歓声が一斉に上がった。

疲労を忘れたかのように、喜びの声が砂浜に響く。

だが、その中でただ一人。

カイトだけが、何かを思いついたように顎へ手を当て、目を細めていた。

その表情には、喜びとは別の――
別の考えが浮かんでいるように見えた。
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