《カクヨム様で50000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう

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二章 黒曜麒麟

105話

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ユナに導かれて辿り着いた“秘密の場所”は、
街の灯りから少し離れた、木々に囲まれた小さな空き地だった。

人の気配は薄れ、
代わりに、夜が持つ本来の静けさが満ちている。

灯りは少ない。
だがその分――

夜空は、息を呑むほど澄んでいた。

無数の星が、まるで手を伸ばせば掴めそうなほど近くに瞬いている。
ソラは思わず、立ち尽くしたまま空を見上げてしまった。

「……すごいな……」

言葉が、それ以上続かない。

セイカイダンジョンの黒曜麒麟が居た
階の幻想にも負けないほど絶景だった。

夜の風はひんやりと涼しく、
祭りで少し火照っていた体温を、やさしく冷ましてくれる。

耳を澄ませば、
遠くに聞こえる海の音
草陰で鳴く虫の声
自然の息遣いが、驚くほど鮮明だった。

騒がしい祭りが、まるで別世界の出来事のように思える。

――まさに、秘密の場所。

ソラとユナは、そんな場所に二人きりで立っていた。

「ここはですね」

ユナが、夜空を見上げながら静かに話し始める。

「父と母が、私が小さい頃に教えてくれた場所なんです」

その声には、懐かしさと少しの誇らしさが混じっていた。

「花火も、ここからだとよく見えるんですよ。
それに……今の、食べ過ぎたソラ君には、特におすすめです」

そう言って、くすりと笑う。

ソラは苦笑しながら、
アイテムボックスからレジャーシートを取り出し、地面に敷いた。

「助かるよ、本気で……」

腰を下ろすと、
張りつめていた体が、ようやく落ち着く。

ユナも、その隣に静かに座った。

二人並んで、夜空を見上げる。

しばらくの間、言葉はなかった。

心地よい沈黙だった。

やがて、ソラが口を開く。

「……なあ」

少し迷ってから、問いかける。

「なんで、そんな大事な場所を……俺に教えてくれたんだ?」

ユナは、すぐには答えなかった。

星を見つめたまま、
ほんの少し考えるように間を置いてから、
ゆっくりと口を開く。

「……嬉しかったんです」

その一言は、とても静かだった。
そこからユナの独白に近い話は続く。

「私は、生まれが貴族なので……」
「仲良くできる人が、あまりいませんでした」

夜風に溶けるような、柔らかな声。

「近づいてくる人はいても……」
「多くは、家や立場目当てで……」
「本当の意味で“友達”って呼べる人は、片手で足りるくらいでした」

少しだけ、寂しそうに笑う。

「テナとセレンは……その、数少ない友達です」

ソラは、何も言わずに聞いている。

ユナが言葉を続ける。

「だから、私は家族に無理を言って
冒険者学校に行きたいってお願いしました」
「本当なら、公爵家の娘が言っていいわがままじゃないんです」
「……でも、父と母は私のそのわがままを
聞いてくれました」

星の光が、ユナの横顔をやさしく照らす。

「私は……」
「私の生まれを気にしないで、接してくれる友達が欲しかったんです」

少しだけ、拳を握りしめて。

「でも……それは、簡単なことじゃありませんでした」

「貴族である私を、家と無関係に見てくれる人は……冒険者学校でもほとんど、いませんでした」

その言葉には、
長い時間、胸の奥にしまい込んできた思いが滲んでいた。

夜空の星は、変わらず瞬いている。

「……そんな折に」

ユナは、胸の前でそっと手を組み、続きを語り始めた。

「母が体調を崩した、という手紙が届きました」

その声は落ち着いているが、
どこか遠い記憶をなぞるようだった。

「最初は……『すぐに良くなるから心配しなくていい』って書いてあったんです」
「だから、私は……家に戻りませんでした」

夜風が、木々を揺らす。

「でも……」

ユナの声が、わずかに震える。

「その後、母の体調は……みるみる悪くなっていって」
「ついには、ベッドから起き上がることすら難しくなりました」

言葉を選ぶように、一度息を吸う。

「その時、私は思ったんです」

視線を落とし、静かに続ける。

「……きっと、私がわがままを言ったから、
神様が……罰を与えたんだって」

ソラは、思わず拳を握りしめた。

だが、ユナは顔を上げ、続ける。

「でも……ソラ君は、私に協力してくれました」
「ううん……ソラ君だけじゃありません」

一人ひとりの名前を、確かめるように紡ぐ。

「リンさんも」
「ファラさんも」
「ボッケ君も、マルコ君も……」
「みんな、私の願いを聞いてくれました」

夜空の星が、静かに瞬く。

「ハーデン先生だって……」
「ソラ君がお願いしてくれたから、一緒に来てくれたんです」

少し、照れたように笑う。

「その皆さんのおかげで……母は、回復することができました」

「その事実だけで、私はもう……」
「皆さんに、頭が上がりません」

ユナは、ぎゅっと両手を握りしめる。

「だから……何度も、何度もお礼を言ってしまうんです」
「それなのに……」

ふっと、やわらかな笑みが浮かぶ。

「ソラ君は、私にこう言ってくれましたよね」

『仲間だろう』

「……あの言葉が」

一瞬、言葉に詰まりながらも、はっきりと。

「どれほど、嬉しかったか」
「その時、気づいたんです」

視線を上げ、星空を見つめる。

「私が本当に欲しかったのは……」
「……こんなふうに、心で繋がれる人たちとの関係だったんだって」

そして、ゆっくりとソラを見る。

「だから……」
「この場所を、ソラ君に教えたかったんです」
「ここは、私にとって家族と繋がっている場所だから」
「その大切な場所を、仲間だって言ってくれた人に……知ってほしかった」

夜の静けさの中で、
ユナの言葉は、まっすぐにソラの胸に届いていた。

それは、感謝以上の――信頼と、想いを託す言葉だった。

ふたりが互いを見つめ合っている、
その瞬間――
空を裂くような音が、頭上に響いた。

ドン――。

次の瞬間、夜空いっぱいに光が咲く。

ついに、花火が打ち上がったのだ。

赤、青、金色。
幾重にも重なる光が、夜の帳を鮮やかに染め上げる。

それを見るソラとユナは、言葉を交わさなかった。

ただ並んで座り、
ゆっくりと、静かに、空を見上げる。

遠くで聞こえる人々の歓声さえ、
ここでは不思議と遠く、柔らかく感じられる。

花火が空で弾けては消え、
また次の光が生まれる。

その繰り返しの中で、
ソラはふと、隣に座るユナへと視線を向けた。

花火の光に照らされる横顔。

一瞬ごとに色を変えるその表情は、
どこか儚く、それでいて温かかった。

言葉は、必要なかった。

ソラは胸の奥で、ただ一つの感情を噛みしめる。

――綺麗だな

それが花火なのか、
それとも、その光を見つめるユナなのか。

ソラ自身にも、はっきりとは分からないまま。

やがて最後の花火が夜空に大きく咲き、
余韻を残して、静かに消えていった。

その光が消えた後も、
ふたりはしばらく、星空を見上げたまま動かなかった。
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