《カクヨム様で50000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう

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二章 黒曜麒麟

108話

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ショーイチローに拳を止められたソラは、
大きく目を見開いていた。

驚いたのは、止められたことそのものではなく

――自分が、想像していた以上の
速さでショーイチローの目前まで辿り着いて
しまったことだ。

本来なら、もう少し距離のある場所から、
助走をつけて拳を振り抜くつもりだった。

だが、走り出したと思った瞬間には、
すでにショーイチローのすぐ目の前。

一瞬の出来事に判断が追いつかず、
ほとんど破れかぶれで突き出した拳を
あっさりと止められてしまった。

(……速すぎる)

内心で舌打ちしながらも、ソラはすぐに意識を切り替える。

呆けている暇はない。

軽く後方へ跳ぶ

――そのつもりだった。

着地した瞬間、ソラは自分でも目を疑った。

ショーイチローとの距離は、
ゆうに十メートルは開いている。

「……はは」

思わず、乾いた笑いが漏れる。

自分の身体が、完全に想定を超えて動いている。

雷神化《ライジング》

――ぶっつけ本番で使ったその力は、
まるで制御できない暴れ馬のようだった。

それでも

ソラの胸は、高鳴っていた。

三ヶ月前

入学当初にショーイチローと模擬戦をした、あの時とは明らかに違う。

同じように拳を止められたにもかかわらず、感触がまるで異なる。

あの時は、すべてを無効化されたかのような、乾いたパシュッという音だった。

だが、今は違う。

パシンと、確かに“弾かれた”感触があった。

(……今なら)

今なら、あの時よりも一歩――いや、確実に前へ進めている気がする。

ソラは深く息を吸い、足に力を込めた。

次は、さっきよりも手前から。
助走をつけ、狙いすました距離で拳を振り抜くイメージを描く。

次の瞬間、ソラの姿が掻き消えた。

再び現れたのは、ショーイチローの正面
およそ三メートル先ほど。

まだ、イメージと実際の距離感にはズレがある。

でも――助走をつけるには、十分だ。

ソラは地面を蹴り、全身の勢いを乗せて拳を振り抜いた。

迎え撃とうとしたショーイチローの手に、
ソラの拳が叩き込まれる。

――バチンッ。

鋭い音とともに、ショーイチローの腕が弾き飛ばされた。

「……っ」

ショーイチローの手にわずかだが、
衝撃による痺れが走る。

その瞬間を逃すソラではない。

追撃に移ろうとした瞬間、
ショーイチローは大きく後方へ跳び退き、
ソラの拳は空を切った。

距離を取ったショーイチローは、自分の片手を見つめる。

模擬戦を続ける上で問題はない

――だが、まだ痺れが残っている。

その感覚が、なぜか心地よくて
ショーイチローは、ふっと口元を緩めた。

片手を前に出し、ソラへと語りかける。

「私の想像を、ずいぶんと超えて成長してソラ君に正直、肝を冷やしたよ」

一呼吸置き、静かに続ける。

「だが――これは、乗り越えられるかな?」

その言葉をショーイチローが言い終えた途端に
ソラの体が、まるで鉛を詰め込まれたかのように重くなった。

圧倒的なプレッシャーが、
ショーイチローから放たれる。

前回の模擬戦で経験したものとは、比べものにならない。

構えた手足は震え、呼吸は荒くなり、心臓が鼓動が速くなる。

汗が止まらない。

本能が、逃げろと叫ぶ。

どれだけ心を強く保とうとしても、根本から押し潰されるような重圧。

――それでも

ソラを踏み止まらせたのは、ゴーマン、そして黒曜麒麟との死闘の記憶だった。

嘘偽りのない本当に命を懸けた戦い。

一歩間違えれば、確実に死んでいた経験。

あの激闘の記憶と感情が、ソラの背中を押す。

(……こんなもので、止まってたまるか)

歯を食いしばり、ソラは再び走り出した。

プレッシャーの壁を、真正面から突き破る。

今度の踏み込みは――完璧だった。

狙い通りの位置から、理想通りの助走。

一切の減速を許さない、完全な雷速の拳。

それをショーイチローは、
紙一重で上半身を横に倒して避ける。

ソラは苦しまいと追撃のパンチを繰り出す。

横に、下に、そして後ろへ――
ショーイチローは大きく身をかわしながら、ソラの猛攻を受け流していく。

大きく後方へと避けたショーイチローと距離が空いた所で、ソラは追撃を止めた。

荒くなった呼吸を整え、額から流れる汗を拭う。
少しだけの休憩だが、呼吸が楽になる。

ソラの呼吸が整うのを待つ様に、
ショーイチローが口を開いた。

「若人の成長というのは、
やはり素晴らしいものだな……」

穏やかな声。

だが、その視線は一瞬たりともソラから離れない。

「ソラ君。
君は、私の想像をいくつも越えていく。
一体君は、どこを目指すのかね?」

その問いに、ソラはすぐには答えなかった。

一瞬だけショーイチローから視線を落とし、
自分の気持ちを見つめる。

ソラのあの日からのこれまでの記憶を順に辿る。

前の人生で何もさせないままだった自分

死に際でクロと契約して過去に戻って来たこと

仲間が、信頼できる人が、信用してくれる人ができたこと

ゴーマンや黒曜麒麟との死闘

そして――今、目の前に立つ男。

ソラは顔を上げて静かに、
しかし確かな意思を込めて
ショーイチローの質問に対して答えた。

「今は……まだ絵空事かもしれません」

少しだけ間を置いてからソラは続ける。

「でも、いつかきっと――
最強と呼ばれた、あなたを越えて……
俺は、誰よりも強くなります」

夢と言うには大きく出たその言葉。
ただ、ソラの心は揺るぎなかった。

ショーイチローは、ゆっくりと目を閉じ微笑を浮かべる。

(ふふ……“なります”、か)

“なりたい”ではない

“なる”と決めた者の言葉

ソラの質問の答えを聞いて
ショーイチローの脳裏で、遠い過去が走馬灯のように蘇る。

かつての自分も、少しでも強くなりたいと剣を振り続けていた。

高くそびえ立つ壁を、がむしゃらに越えようとしていた幼き頃の自分を。

一瞬の沈黙ののちに、
ショーイチローは目を開けて
ソラを真っ直ぐに見据えた。

(最強を目指すと言うなら……)

今の自分がやっている“手を抜いた戦い”では、
足りない。

それはこの若者に対しても、
過去の自分自身に対して
馬鹿にしてると同義だ。

ショーイチローは、静かに頭を下げる。

「すまない」

ソラが驚く間もなく、続ける。

「君の目指す場所を聞いて、
一つ決めたことがある。
前と同じでは……物足りない」

ゆっくりと顔を上げ、その目に先ほどはなかった鋭さが宿る。

「私も、ここからは攻撃をさせてもらう」

言い切ったその瞬間、
ショーイチローの姿が音を立てず消えた。

(――っ!?)

ソラが異変を察知した時には、すでに遅い。

次にショーイチローが姿を現したのは――
ソラの眼前。

ソラに向けられたショーイチローの本気の拳が、
振り抜かれる直前だった。

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