5 / 217
1章 五人の勇者
孝志の潜在能力
しおりを挟む朝食の後は特に何も起きなかった。
ダイアナさんは城の案内をしましょうか?と言ってくれたが、正直面倒だったのでお断りしてしまった。
その際にダイアナさんが「孝志さんの性格が何となくわかってきました」と微笑みながら言ってくれた。
どう解ったのかは怖くて聞かなかったが……
面倒くさがりだとバレたんだろうか……なんか嫌だなぁ……よし!明日から頑張ろう!
その後は結局、用意して貰った部屋で昼食までゆっくりと寛いだ。
ちょっと早めに昼食へ向かったので雄星御一行に会わなかったので良かった。
そして、あっという間に訓練の時間となったのである。
────────
いま勇者5人は広々としたとある室内訓練所へと集まっていた。
この場所は普段【ワルキュライト騎士団】という有名な王国騎士団が訓練に使っているらしい。
外が雨の為、急遽この場所に集まる事になったのである。
そしてこの場所には5人の勇者の他にネリー王女とマリア王女そしてユリウスとアリアンの姿があった。
「えいっ!……えぃ!」
声を上げて由梨が剣を振るう。
まだ訓練の時間では無いが、たったいま渡された剣に興味を持ったのか試しに振っている。
「お~剣を振るう姿も可愛いなぁ~由梨は」
「か、可愛い!?剣を振ってるだけで可愛いとか、意味わかんないよぉ~っ」
「あっ!由梨ったらこんな時に可愛さアピールとか!……っとう、せい!……私はどうかな?」
と今度は触発された美咲が剣を振るってみせる。
「カッコいい」
「かっこいい!!?……複雑だなぁ~」
「嘘だよ……美咲も可愛いって」
「っ!ば、ばかっ!もうカッコいいで良いわよ!」
「ご、ごめんって」
「嘘、怒ってないよ……じゃあさ、雄星も剣使ってみたら?雄星だったら本当にカッコイイと思うよ!」
「そうだね、ユリウスやアリアンさん達は準備に時間掛かってるようだしね」
と言いながら雄星は剣を鞘から抜き、由梨や美咲と同じ様に剣を振るってみせた。
まだ基礎を習ってないので動きは非常にぎこちない。
「ふわぁ~……王子様みたい……素敵ね雄星」
「ありがとう由梨、でもまだまだかなぁ?もっとトレーニングすれば良くなると思うよ」
「ほんとに、あんなぶきっちょな動きで何でそんなにカッコいいんだよ!」
「美咲……褒めてくれるのは嬉しいけど、言葉遣いが昔みたいに戻ってるよ」
「あっ、ご、ごめん……あの時は迷惑掛けちゃったよね」
美咲がしおらしくなった所で、雄星はずっと無言のまま離れた所で此方の様子を伺っている穂花に気がつく。
「穂花はどうかな?僕の剣技」
「いや……普通に危ないと思うよ……」
…………
ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬっっっっっ!!!!!
なんで、1日に、二度も、あんなのを、見せられなきゃならないんだよ。
なんなんマジで?異世界に強制的に呼び出された挙句に、こんな思いまでしなくちゃなんないの?
俺なんか昨日不安で眠れなかったんだぞ?(大嘘)
超ムカつく。
……けど、さっきの件が有ったから穂花ちゃんを中心に気四人のやり取りを観ていた。
それで改めて思ったけど、どうやら穂花ちゃんは一歩引いた態度で接している様に見える。
今までは穂花ちゃんの事は嫌ってはないものの、他の3人と同じだと思っていたが、全然違ったらしい……うん、凄くまともな子だ。
でも、あんなまともそうな子でも雄星が好きなんだよなぁ~……
偉そうな事を言う様だが朝の穂花ちゃんとのやり取りや、今の周囲の目を気にした態度など、穂花ちゃんへ対する評価がかなり上がっただけに雄星を好きと言う事実が少し残念に思えてしまう。
別に自分が穂花ちゃんを好きという訳ではないが、真面目で大人しく、可愛いがってた近所の子がチャラ男と付き合いだした時な気分?
まぁ向こうも俺の事は弘子の兄くらいの認識だろうが……
てか話が違うじゃねぇか!訓練は別って約束したんじゃなかったっすかねぇ!?
…それと橘雄星と奥本に昔なにが有ったんだよ笑
────────
「ではこれより勇者の皆んなにはステータスを確認して貰いたいと思う」
先程まで離れた場所で打ち合わせをしていたユリウスとアリアンがこちらにやって来てそう言った。
手には免許証やキャッシュカード位の大きさのプレートを5つ持っており、俺たち全員分有るのだろう。
いま発言したのはユリウスさんだが、口調もガチガチの騎士という感じではなく要所要所をしっかり喋って後は固くない感じだ。
マリア王女に裏切られたと思ったが、今からステータス確認も行うので一応全員で情報を共有する為に同じ場所に集められた訳だ。
まぁ情報を共有するっていう事自体も乗り気しないんだけどな。
そしてそれぞれの手元にそれは配られる。
どうやらこれを使って自分のステータスを確認する事ができるらしい。いやほんと異世界って感じ。
取り敢えず俺はそのプレートを振りかざし、自らのステータス確認してみる事にした。
「ステータス!」
……しかし何も起こらない。
「え??あ、ちょ、急にどうしたの?後ろのボタンを押して確認するんだよ(笑」
とユリウスが半笑いになりながらそう言った。
……いや、そんな笑わなくても……俺も言った瞬間おかしいとちゃんと思ったもん。
離れた所に居る第一王女ネリーはため息をついて冷めた目でこちらを見ている……マジ傷付くからその目辞めて。
そして隣の腹黒王女マリアは顔だけを後ろに向けて肩を震わせていた。
あれ絶対笑ってるよな?マジ態度改めろよ第二王女!
「何?急にどうしたの松本?」
「み、美咲ちゃん失礼だよ、確かにおかしかったけど」
美咲と由梨が俺に対してこんな感想を漏らす。
何気にこの世界に来て初絡みである。
ずっと無視してた癖に、こちらの失態にはきっちり反応してくれるらしい……マジムカつくんですけど。
「やれやれ、そんなに目立ちたいのかね」
と橘雄星が小馬鹿にした感じで呟いている。
お前に!!だけは!!言われたく!!ねぇから!!
「ユリウスさん!笑わなくてもいいじゃないですか!そもそも何も説明せずにこんな物を渡してきたユリウスさんがおかしいですよ!」
しかし、みんなから馬鹿にされる中、穂花ちゃんだけが俺を庇う様な事をユリウスさんへ向かって言ってくれた。
……穂花ちゃんマジ天使!
「わ、わりぃ、今までに無い反応だったからついな……みんな異世界人だし配慮に欠けていたわ……すまなかったな松本孝志。まさか周りがこんな反応になるとは思わなかったんだ。ましてや第二王女まで」
とユリウスは素直に謝罪し、最後にチラッと第二王女マリアを見た。
それに対してマリアは『しまった』と言わんばかりの表情を一瞬みせてすぐに笑うのをやめるのだった。
──ユリウスとしてはマリアは第一王女ネリーと違い、礼節をしっかり弁えている人物だと思っている。
なので公の場で客人の失態を笑っていたのが本当に意外に思っていた。
まぁ前日の孝志とマリアのやり取りを見ていれば違った印象になったのだろうが……。
マリアとしてもこんな場で笑ってしまうほど無意識に孝志に入れこんでいる事に自分自身驚いていた──
穂花ちゃんが声を上げて怒った事が意外だったらしく、雄星達は少し騒ついている。
その間に自身のステータス確認してみる事にした。
松本孝志
称号:勇者
種族:人間
腕力 F
速度 F
魔力 E
知力 C+
技術 D
抵抗 E
精神 S
スキル
豪運 逆転の秘策 危険察知 ???
……精神力が半端ないって。
ーーーーーーー
豪運
非常に運が良い。
逆転の秘策
追い詰められた状況において知力・技術・抵抗・精神のパラメーターが大幅に上昇する。
危険察知
自分の身に起こる危険を事前に察知する。
危険度が高ければ高いほど危険の詳細が鮮明になる。
???
この世界では今だ発現していないスキル。
このスキルが実際に効果を発揮するまでスキル名とスキル詳細は判らない。
11
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる