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3章 フェイトエピソード
壊れかけのユリウス
しおりを挟む時刻は午前8時過ぎ。
俺は指定された待合室の中に居る。中に入った時には既に穂花ちゃんがおり、今は一緒に時間が来るのを待ってる感じだ。
俺は30分前行動タイプだから早く来たが、穂花ちゃんは気が気でないので早く来過ぎたみたいだ。
穂花ちゃん緊張してるみたいだし、それを解せる会話は無いかと考えていると、先に話掛けて来たのは穂花ちゃんの方からだった。
「孝志さん、謝罪ってどんな風に言えば良いんでしょうかね」
穂花ちゃんは困った様な表情でこんな事を俺に尋ねて来た。
「……そうだな」
う~ん…獣人の文化とか知らないしな……どういった謝り方がいいだろうか?
そして俺も真剣にその事について深く考える。
俺が穂花ちゃんの質問に悩んでいると、穂花ちゃんはこんな事を提案して来た。
「でしたら、9時まで時間がありますし、少し練習しときませんか?」
「練習?まぁ良いけど」
謝罪の練習をするのはやらかした政治家かスクープされた芸能人くらいじゃない?
ま、時間までの暇つぶしにはなるだろう。
俺は軽い気持ちで了承した。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
~ユリウス視点~
俺は獣人国へと向かうブローノ王子と、二人の勇者の護衛に選ばれた。というより、俺が行く事になるのは当然だろうと思っていた。
今はオーティスと一緒に廊下を歩いており、彼の話を聴いてる最中(会話にならない)
長い廊下を歩いていると、大きな地響きと共に向こうからアリアンが突進する勢いで突っ込んで来た。
「ユリウスーーッッ!!」
そのまま飛び付いてくるアリアンを、俺は仕方なく抱き止めた。普通の人なら骨逝ってるわこれ。
俺は、ほんの少しの痛みを感じながらそう思った。
「5日も会えないなんて……私壊れちゃうわ!」
獣人国へは馬車で往復4日掛かるが、場合によっては彼方に滞在するかもしれないので、念の為に5日の旅だとアリアンには伝えてある。
「大丈夫だ……それに壊れても治せば良いだろう?」
「……それもそうね!」
どう壊れてどう治せばいいか……訳のわからない会話だが、アリアンと会話する時は頭を使わない方が良い。
いや、もう良い大人なんだから、脳をそろそろ成長させて欲しいんだけどね。
「では私は先に行く……我が盟友よ……赤の騎士と積もる話もあるのだろう……天命に背きし咎人ユリウスよ……しからば」
オーティスは無駄に気を使い、俺たちを置いて先に馬車へと向かって行く。
別に天命に背いて無いのだが?咎人でも無いし。
相変わらず何を言ってるかわからん奴だ。
そして今までノリを合わせて適当にあしらっていたら、なんか本人は親友みたいに思ってるし、周りからもそんな風に見えてるみたいだ。
いや、別に嫌いじゃないけど、5日間ずっと会話出来ない奴と一緒は精神持たんぜ?
孝志なんて絶対おれにオーティスのこと押し付けて来るぞあの性格からして……
そんなオーティスを見てアリアンは眉間に皺を寄せながら、一言こう告げた。
「相変わらず頭のおかしい奴だな」
…………どの口が言ってるんだ?
俺はブーメラン発言を繰り出したアリアンを怪訝な眼差しで見る。もちろん眼差しの意味などアリアンに伝わる筈も無かった。
「それよりも今は充電するの!」
アリアンは俺を力強く抱き締める。
もちろん力いっぱいでは無く、ある程度加減してくれているが、それでも骨がミシミシ逝ってる……普通の人なら脊髄逝ってるわこれ。
「じゃ、じゃあ行ってくるけど、俺とオーティスが居ない間の留守番任せたぞ?」
俺は痛みに堪えながらも、なんとかそれだけは口にした。
「……うん」
さっきは成長してないと言ったが、無理やり着いて来ようとしない辺りは剣聖としての自覚があるようだ。
ラクスール王国の騎士のトップと、魔導師のトップが抜けるのだから、ここでアリアンが抜けるとシャレにならない。
ただでさえ俺たち3人とその他の者達とでは実力に大きな差があるのだから。
正直、オーティスは恐ろしく強い。
俺には高いアンチマジックがあるが、オーティスの魔法の前では気休め程度しか役に立たないだろう。
オーティスはアンチマジックで弾けない最上級魔法を連射しても全く魔力の底が見えない程だ。
俺もアリアンも、正面切った一騎打ちなら詠唱なんかに時間を費やすオーティスに負けることは無いのだが、オーティスが万全な対策をとって挑んで来たなら勝てるかわからない。
他の奴らには悪いが、俺が勝てるかわからないと思わせた人物はラクスール王国においては、アリアンを除いてはオーティスたった一人だ。
………………ただ性格がな。
そんな事を考えてる間も、アリアンのスキンシップは段々と威力を増して行き、今は俺の胸元に顔を埋めて額を擦りつけ始めている。
普通の人なら肋骨……いや!マジ痛い!いだい!
──それからアリアンが落ち着くまで10分程。
俺はその間ずっと殺人ホールドヘットを喰らい続けた。
出発前に回復してもらわないとダメだなこれは。
俺は身体を引きずりながら医務室へと向かった。
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