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6章 勇者と、魔族と、王女様
裏切り者と呼ばれようとも③
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「…………こ、こは?」
──ユリウスは目を覚まし、ゆっくりと瞼を開けた。
目を覚ましたは良いものの脱力感で起き上がる事は出来ず、見慣れない部屋の天井をただジッと見つめる。
身体は痺れて動かせないが、特に痛みは無く【彼ら】の治療の完璧さが伺える。
──ユリウスは朧気ながらに覚えていた……自分を助けてくれた二人の人物と、その二人の会話を。
何故ならアレクセイに回復された直後、転移されるまでの僅かな間ではあるが、ユリウスは意識を取り戻していたからだ。
命を助けてくれた事にはもちろん心から感謝している。
しかし。それとは別にユリウスは全部聞いてしまった……アリアンがもう助からないという話も──
近くにメイドらしき人物が立っていたが、ユリウスが目を覚ました事に気が付いくと、急いで誰かを呼びに部屋を出て行った。
一人取り残されるも、そんな事を気に留める精神的余裕が今のユリウスには無かった。
「……もって数時間の命……か……」
──瀕死の自分を全快させる程の人達だ……勘違いの発言という事はない筈だ。ならば二人が言っていたアリアンの状態も本当だろう。
外の景色は夕焼けだったのに、いつの間にか見晴らしの良い青空へと変わっている……つまり、あれから最低でも一日は経過した事になるのか……
「………もって数時間なら……アリアンは……もう……」
後悔の念ばかりが押し寄せて来る。
──もっと優しくすれば良かった。
あんなに懐いてくれてたのに……自分勝手にアリアンの実力に嫉妬して……あんな態度を取って……
アリアンとの一番新しい記憶は、冷たい態度をした時にみせたアリアンの寂しそうな顔だ……俺が寂しい思いをさせてしまったんだ。
──そう考えるとユリウスは後悔で涙が止まらなかった。
……ユリウスが後悔の念に駆られていると、何者かが部屋を訪れる。ユリウスは涙を拭い無意識に其方へと視線を向けた。
「……うむ……目が覚めた様だな……」
「………あなたが治療してくれたのか……?」
現れたのはユリウスと同年代位の若い男性で、年齢は十代後半と言ったところか。
彼は黒いローブを羽織っており、間違いなく魔法使いだと言い切れるほど魔法使いらしい格好をしている。
また、ユリウスは一眼でこの男が只者では無いと感じた。
アリアン程ではないにしろ、強者特有の底知れぬ雰囲気を男は纏っていたからだ。
そんな魔法使いはユリウスの質問に答える。
「……うむ……我に回復魔法は……使えぬ……何故なら神は許さないのだ……傷を癒す事を……何故なら我は咎人……」
「咎……人……?」
「要はやられる前にヤル……それが師匠からの教え……だろ?」
「師匠……ああ、そうか」
助けてくれた二人が話をしていたな、弟子の元へ転移させると……って事は彼の名前は──
「──貴方がオーティスさんか……」
「うむ……敬語は要らぬよ……同じ師を持つ者同士ではないか……」
「……同じ師?」
勘違いされてるみたいだな……まぁ転移や手紙の件もあるし、そう思われても仕方ないか……違うと否定したい所だが、今はそんな気力もない。
…………だけど──
「一つ尋ねたい事がある……良いだろうか?」
言われた通りいつもの口調に切り替える。
オーティスもそっちの方が話し易いのか嬉しそうな顔をした。
「構わぬ……我が無限の叡智にてお答えしよう……なんでも聞くが良い」
「わ、わかった」
……やりにくい人だ。
此処がラクスール王国だってのは分かるけど、王都ってこんな感じの喋り方をする人間が多いのだろうか?
いや、今はそんな事を気にしてる場合じゃない……アリアンについて、どうしても……どうしても、聴いて置かなければ成らない事があるから──
──ユリウスは一度だけ強く目を瞑ると、意を決してオーティスにそれを尋ねた。
「オーティス……アリアンは……どうだった?」
最後は安らかに逝けたのだろうか?
看取ってやれなかったけど、最後はどうなったか……それだけは聴かせて貰いたい。
「うむ……アリアン嬢か……うむ……うむ……」
言い難そうにしてるって事は、あまり良くない最後だったんだろうか……?だとしたら本当に可哀想な目に遭わせてしまった。
辛かっただろう……本当にすまなかったアリアン。
俺もそれ相応の報いを受けなければ……
ユリウスは涙を流しながら窓の外を見上げた……天へ登った彼女へ謝罪するかの様に──
「──ユリウスッッ!!!目を覚ましたのねッッ!!?」
「…………え?」
「……アリアン嬢……落ち着けと言ったであろう……」
勢いよくドアを開け、部屋の中に入ってきた少女にユリウスの目は釘付けになった。何故なら訪れた相手がどう観てもアリアンにしか観えないからだ。
死んだ筈の少女が生きている……?
その余りに都合の良過ぎる展開に、夢でも観てるのかとユリウスは自分の精神状態を疑ってしまう。
しかし、次の瞬間、これが現実の出来事だと思い知らされる。
「──ユリウスッッ!!」
「……おわっ!……ははは」
アリアンが抱き着いて来たのだ。
それはもう笑い泣きながら思いっきり……それをユリウスは優しく抱き止める。
傷は完全に塞がっていても、勢いがあったから絶対に痛い筈なのだが、ユリウスはそんな痛みを感じないくらいアリアンとの再会を喜んだ。
そしてアリアンの背中をソッと抱き締める。
いつものユリウスなら突き飛ばしてたかも知れないが、今は逆にユリウスの方が抱き締めたい気持ちだった。
「ユリウス……?」
アリアンも流石に怒られると覚悟していたが、意外にもユリウスに受け入れて貰えた事で戸惑いを見せる。しかし、直ぐに嬉しそうに目を細めた。
「アリアン、無事で本当に良かった……」
「何を言ってるの!それはこっちのセリフよ!ユリウスったら3日も目を覚さなかったんだから!」
「そんなに眠ってたのか……?いや、そんな事より呪いはどうした?」
「……呪い?」
「……え?」
反応がおかしい。
いや、こうして生きてくれてるのも不思議だけど、呪いの単語に反応が無いのはいくらなんでも……
事情を知ってそうなオーティスを観る。
しかし彼は再会を邪魔しないように気を遣ってるのか、それとも何かを誤魔化そうとしているのか、顔を伏せてこちらと目を合わせようとしない。
アリアンが生きていてくれたのは本当に嬉しいが、解せない事が多過ぎてユリウスは混乱していた──
──そんな時、部屋の入り口から複数の人物が入ってくる気配をユリウスは感じた。どうやらアリアンが扉を開けっ放しだったので、そこから中に入って来たようだ。
其方に目をやると、数人の兵士と、その兵士に囲われている……とある人物が立っていた──
その【とある人物】の正体に気が付いたユリウスは、病み上がりの身体に鞭を打ち、急いで起き上がり礼を取ろうとした。
「──よい。病み上がりだ……眠ったままで構わぬぞ」
「しかし……国王様」
「私に敬意を示したいなら、この場を大人しく従うことで敬意と受け取ろう」
「……ハッ!勿体なきお言葉です……」
ユリウスは起き上がるのを中断し、無礼だと思いながらも寝た状態で頭を下げる。
そんなユリウスの姿を見守ってから、国王ゼクス・ラクスールはユリウスの側に居たアリアンに優しそうな笑みで話しかけた。
「……な!ユリウスは無事だっただろ!」
「うん!おじさんありがとう!」
「ははは!良かったのう!」
アリアンが国王をおじさん呼ばわりした時は肝を冷やしたが、国王も周りに控える兵士達も笑っていたので一安心する。
だが何故、国王がこんな所に……?
依頼の時も言伝で、実際に会うのは初めてだ……でも実際に会うと威厳が有ると言うより……こう……フレンドリーと言うか、なんと言うか。
「あ、そうだユリウス君!今日はゆっくりしていて構わぬが、明日話したい事がある……メイドに案内させるから、私の職務室まで来てくれぬか?」
「なっ!?私のような者が、王宮に入っても宜しいのですか?」
「……ふふ、何を言ってる?もう此処が既に王宮の中だぞ?」
「えええぇえぇぇッッ!!!?」
「おっ、良いリアクション頂き!!イェイ!!」
な、なんてお茶目なんだ……演説の時しか姿を拝見した事は無かったけど、普段はこんな感じなのか……意外だ。
しかし、まさか王宮の中だったとは……王宮騎士団に憧れてるから、キッカケさえ有ればいつか王宮を訪れたいとは思っていたんだけど……でもまさか、こんな風に来ることになるなんて思いもしなかった。
嬉しい事が立て続けに起こるものだから、俺はつい表情を綻ばせてしまった。
そんな俺にゼクス国王はゆっくりと近づき、アリアンに聴こえないほどの小声で話し掛けてきた。
「……アリアンは置いて一人で来なさい……アリアンの呪いについて、話して置かなければならない事がある……」
「……!!……分かりました」
俺は息を呑んだ。
国王はさっきまでとは打って変わり、真剣な表情をしている。恐らく本命はこの【呪い】についての話だろう。
何を楽観していたんだ俺は……!!あんな呪いを受けて何ともない訳が無いじゃないか……!!大丈夫そうに見えてもきっと深刻な後遺症があるに違いない……!!
……明日はその件で重要な話を聞かされる筈──ただ、国王の表情から察するに余り良い話ではなさそうなので、俺は気を引き締める事にした──
──そして次の日の朝を迎える。
俺はメイドに連れられ国王の職務室へと向かった。
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