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6章 勇者と、魔族と、王女様
裏切り者と呼ばれようとも④
しおりを挟む──執務室を目指し廊下を進むと、前方に二人の少女が立っているのを見つけた。
少女達は廊下に飾ってある絵画を観ながら、楽しそうに話してる。
少女と言ってもアリアンよりだいぶ年下だ。
一人は五歳位で、もう一人に関しては更にもっと幼い。
しかし、幼いながらも立ち振る舞いは神々しく、ドレスのような服装も相まってか、非常に目を惹く。
二人は互いに手を握りながら楽しそうに笑い合ってる様子だ。それに外見が似ていることから仲睦まじい姉妹なんだろう。
そんな二人は俺の存在に気が付くと、興味深そうに近付いて来るのだった。
二人が近寄ってきた瞬間、案内してくれていたメイドがすぐさま礼を取る。
俺も相手が誰なのか何となく察していたので、メイドに続いて同じような礼を取った。
「……あなたがゆりうすね!」
「はい……王女様でお間違い無いでしょうか?」
「よくわかったわね!わたしはだいいちおうじょ、ネリーよ!」
「……よろしくお願いします、ネリー様」
俺が名前を呼び萎縮した仕草をすると、幼女は自慢気に胸を張った……御満悦といった様子が実に可愛いらしい。
幼いから世に知られて無いのだろうが、王宮を歩き回れる幼児など王女以外にはあり得ない。だからメイドが礼を取らなくて正体も看破るのは簡単な事だ。
「それにしてもよく僕の名前を知ってましたね!」
「ふふんっ!まぁね!いけめんのかおは、だいたいおぼえてるの!」
「え……?イケメン……?」
「そう!ゆりうすは、なかなかのかおだから、おぼえてた!」
ますます胸を張る幼女。
メイドは微笑ましい顔で王女を見つめるが、言ってる事は全然可愛くないので俺は苦笑いを浮かべる。
そんな中、ネリー王女の後ろに隠れていた少女は目を輝かせてネリー王女を見上げた。
「おおー、さすがネリーおねぇさま、そうめいです」
「ふふふん!まりあも、もっとわたしをうやらむといいのだわ!………ん?そうめい?」
「はい!うやまいます!ネリーおねぇさま!」
「………ん?うやまい?……まぁいいのだわ」
……あっ!なるほどっ!敬うと言いたかったのか!!ネリー王女の可愛らしい言い間違いだなっ!!
……まぁでも指摘するのはよそう。
もともと幼い子供には難しい言葉だし、何より注意したら不敬罪で捕まりそうだ。
「ゆりうす!わたしがおおきくなったら、きしにしてあげてもいいわよ!」
はは、唐突だな。
相手は王女様だ……取り敢えず、ここは当たり障りない様に話を合わせるとするかっ!
「はッ!大変光栄で御座います!ネリー王女殿下」
「くるしくないのだわ!おほほほほ!」
まぁ王女の騎士とはこれ以上ない栄誉だけど……大人になる頃には忘れてるだろうなぁ。
今の可愛らしい容姿から容易く想像出来る……ネリー王女もマリア王女も、将来、間違いなく見目麗しい素敵な王女に育つ筈だ。
「わたしはしょうらい、いけめんのきしをあつめて、しんえいたいをつくるの!」
「イケメンの騎士……ですか?どうしてまた?」
「ふふん!いけめんがだいすきだからよ!」
「……さようですか」
歪んでるなぁ……
前言撤回………ネリー王女に関しては将来がとっても不安だ。
「おねぇさま、すごいです!ぜひともゆめをかなえてくださいね!」
「ふふん!わかったのだわ!」
二人のやり取りを聞き、俺は驚愕した。
ネリー王女も年齢の割に大したものだが、それ以上にマリア王女には度肝を抜く。
見た感じ、マリア王女は2~3才といったところだろう。だが言葉遣いや言い回しが常軌を逸している……既に2~3才児の域では断じてない。
練習して言葉が身に付く年齢でもない筈だから、これは産まれながらの天才というヤツだな。王族相手に失礼な感情かも知れないが、俺は関心せずにはいられなかった。
ここである事に気付いたメイドがネリー王女に対し、ある質問する。
「ネリー様……護衛はどうしたのですか?」
「ああ、いけめんじゃないからふりきったのだわ!」
「それはいけません!ネリー王女様!」
「いやよ!さぁまりあ、にげるのだわ!ふふんっ」
「ああ……なんて事を……」
俺が居なければ追い掛けただろう。
少し悩んでる様子を見せたが、客人の俺を放っては置けず、結局メイドさんは追うのを諦めてしまった。
また、こうして簡単に諦めるという事は、こう言った出来事は日常茶飯だと思う。
なんて王女だ……てかイケメンじゃないからって振り切られた護衛が一番可哀想だな。
しかし、逃げる二つの後ろ姿を観ていて思ったけど、本当に仲良さそうに手を繋いでいる。
わんぱくなのは年相応として、あの二人ならこれからも仲良くやって行けそうだ。
──ユリウスは王女二人を見送った後、再び国王の執務室を目指した。
──────────
「──ネリーおねぇさま、どこへいくのですか?」
「としょかんよ!おもしろいほんがあるの!みにいきましょう!」
「わぁ!おねぇさま、ほんをよまれるんですね!さすがですわ!」
「うっ……!」
──まんがをみにいくのだけれど、いいづらくなったのだわ。でもまりあをがっかりさせたくないから、ほんとうのことはいわないっ!
あとでこっそりとひとりでよむのだわ……
「それではもっとべんがくにはげみましょうね!」
「ふふん、なのだわ!」
──やっぱりまんがはやめるのだわ!
いまからもっといっぱいべんきょうして、じまんのおねぇさまでいないとね!あしたからべんきょうのじかんを、もっとふやさないとだわ!
それよりべんがくってなにかしら?
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