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7章 普通の勇者とハーレム勇者
覚えのない記憶
しおりを挟む俺、松本孝志は夢の中に居る。
ハッキリ夢だと分かるのは、今自分が横になってるベッド以外は周囲に何も無く、空間が真っ白なのと、何故か意識が覚醒しているからだ。
それにしても──
本当に何もない真っ白の空間だな。
夢だから良いけど、現実でこんなところに閉じ込められでもしたら、流石の俺も発狂してしまいそうだ。
だから我がお目目よ、早く覚めてくれないだろうか?
──ん?
そんな事を孝志が考えていると、目の前に不思議な映像が映し出される。孝志は目を凝らして映像をじっくりと見つめた。
──【俺そっくりのイケメン】が、幼い女の子と笑い合ってる光景だな。
えなに?夢にロリが出てくるって、やっぱり俺はロリコンなの?自分で気付いてないだけで実はそうだったんだろうか?やばいぞマリア王女に通報されて追放されそう。
でも夢だからバレへんバレへん。
……いやこのロリッ子、何処か見覚えがあるぞ?
つい最近……それもこの世界に来てから、会ったことがあるような……?
孝志が思い出そうと自身の記憶を辿って行く。
そんな時、今度は映像から音声が流れ出した。孝志そっくりの男性と、幼い少女の話し声が孝志の耳の中へ流れ込んでくる。
『──兄さま!向こうで綺麗なお花畑をみつけたの!一緒に摘みにいきましょう!』
『やれやれ、仕方ないなフェイルノートは。ご飯を食べてからね?』
『兄さま、約束ですよ?破ったら酷いですよ?』
『ああ、約束は守るよ。それに、僕がフェイルノートとの約束を破ったことがあるかい?』
『ううん、ないです!』
『そうだろう?──フェイルノートの事は僕が守るよ…………いや、それだけじゃない。この世界も僕が守り抜く……!それが英雄として産まれた僕の使命なのだから…………例えこの身が滅んでも、この世界は僕が救ってみせる──!!』
孝志のそっくりさんがカッコ良いセリフを吐いた所で映像が途絶えた。と同時に、孝志は目を瞑り大きく息を吐く。彼にとっては見るに耐えない映像だったようだ。
──おゲェぇぇッッ!!!
吐きそうなんだあれぇ?俺の顔でなにキモい事言ってんの?俺が絶対に言わない事じゃん。
それに花を摘みに行くってなんだよ?約束を破らないってなんだよ?世界を救う使命ってなんだよ?──この身が滅んでもってなんだよ?
頭おかしいんじゃないのか?
自分の命が一番大切だろ普通は。ちょっと考えれば小学生にだって分かる事が分からないのか?
──だからお前はあんな可愛い妹を残してあっさり死んだんだよ。
…………
…………
…………え?死んだのかアイツ?
てか、どうして俺にそんな事が分かる?
意味わかんねぇし……
第一、フェイルノートってアレじゃん、俺を殺そうとしたヤツじゃないか。
「そんな奴が夢に出て来るって……もしかして知らずのウチに一目惚れしてたのか俺?」
『そんな訳ないだろう?』
「………………」
急に何者かに声を掛けられた俺は、ベッドから起き上がりその声がする方を向いた。
するとそこには自分と瓜二つの男前が立っている……先程の映像に映し出された奴で間違いないだろう。
どうやらソイツが俺に話を掛けてるようだ。
しかし、似ていても俺じゃないなと言い切れる。
まず雰囲気が全然違う。俺はあんな感じにはならない。
『……ん?聞こえてる筈だが?コチラを見ている事だし』
「………………」
『聞こえてるね?……返答なしか……もしかして設定間違えたのだろうか』
「……いや、これ自分の夢なんで。勝手に主導権握らないで貰っても良いですか?」
『はぁぁ……なに馬鹿げたことを言ってるんだ、君は──それより話がある、聞いてくれ』
「………………」
『………………』
「………………」
『お話させて頂いても宜しいでしょうか?』
「わかった……好きにしろよ」
『………そうか、なるほど。やはり一筋縄とはいかない様だね、君は』
「その橘っぽい喋り方はやめて貰っても良いですか?」
透かした感じがムカツク。
俺の顔でその喋り方は鼻に付くんだよ。
『流石にそれは我慢して貰いたい。普段の喋り方を変えるのは難しいからね』
──だったらせめて俺そっくりの顔を変えてくれ。
……と言っても無駄だし、嫌だけどここは我慢するか。
「………それで?なんのようっすか?」
『態度悪いな君』
──態度も悪くなるわ。
だって嫌な夢を観せられてる訳だからな。取り敢えず、用件だけを聞いてとっとと目覚めたい。
『君はどうして、人々を救わない?』
「急になんだよ?いつの話をしてるの?」
『これまでの話さ。君はいつも他人任せで自分では戦わないよね?全知全能のスキルだって僕から与えられたモノだ』
嫌な表情だ。まるで見下してるみたいな。
それと全知全能ってなんだ?もしかしてあの『なんとなく』と感じるアレだろうか?
多分、そうだな。
「話にならん。戦わないのは戦ってもどうせ勝てないからだし、スキルだってお前が勝手に与えたものだろ?スキル名だって今初めて知った位だしな」
『なるほど。向こうの世界では、なかなか見所のある奴かと思ってたけど、どうやら見当違いのようだ──それに、君は自分の実力を卑下にしてるようだけど、そんな事はない。君には才能が眠っている。それもとてつもなく強大な力がね』
──俺の事は自分が一番解ってるんだよ。知ったかぶりやがって……!!
もうこいつと話しても頭に来るだけで、為になる事は無さそうだ。
「それで?用件をまとめてくれるか?」
『そうだな……僕が言いたいのは、その力を目覚めさせて人々の役に立とうとは思わないのか?確かに、君は辛い目に遭ってしまうだろうけど、それで多くの人々を救えるなら、それは素晴らしい事だと思うだろう?』
「…………チッ」
──くそウゼェなコイツ。
喋り方が橘なのもそうだけど、なんで俺が犠牲になる事が前提なんだよ。
「素晴らしい事だと思わないし、人々の役に立とうとは思わない──第一、多くの者を救うって……いったい何と戦うんだよ?」
呆れたように首を振る孝志そっくりな男。
『……全く……何故、僕のーーーーーーが君なんだろうね?理解に苦しむよ』
僕の……何だって?擬音で聴こえないんだけど?まぁいいや、別に。どうせ嫌味だろうし。
「お前、橘っぽいって言ったけど、訂正するわ。お前の方が遥かにウザい。かぁ~~ぺっ!」
『何故唾を吐くんだ?──まぁ良い。それと最後の質問に対する答えだけど、君が戦うべき相手は直ぐ側に居るじゃないか』
「はぁ?誰だよ?フェイルノートか?それともアリアンさんか?」
『わざわざ言わなくても良いと思ったが、やれやれ──君の戦うべき相手……それは魔王……いや、元魔王テレサ=アウシューレンさ』
──コイツ……また訳の分からん事を……!!
「……………テレサが敵になる筈がないだろ?俺の事を色々知ってるなら、その目でテレサも見てきたんだろ?あんな心優しく可愛らしい女の子が敵になるように見えたのか?」
『それは、君だからそう見える事だ。どうして君の目に彼女が可愛らしく見えるのか解らない──でもね?僕から見たら醜悪な怪物にしか見えないね』
「おうすげぇな!英雄さんは見た目で善悪を判断するのか?」
『そうでは無いが──まぁいずれ解るさ。彼女の呪いの怖さを君は甘く見ている。あの少女に科せられた呪いは、アレでまだ不完全。あの呪いが覚醒すればこの世界から君以外の生物は死滅するだろう』
「……何が言いたい?──正直あんまり話したく無いんだよお前とは。基本、人の悪口ばっかじゃねーかよさっきから。ほんと手短に宜しく頼む」
『悪口のつもりは無いけどね──しかし、用件をまとめるのには同意だ。そうだな、率直に言うと君の手で魔王テレサを葬って欲しいんだ』
「………………」
『彼女は君にのみ心を許し、君だけが彼女の呪いの影響を受けない。だから隙をみて葬って欲しい。確かに卑怯なやり方かも知れんが、魔王テレサの実力はハッキリ言って異常だ。あらゆる次元の生物から探しても彼女を倒せる者は存在しない──だからこそ──』
「あーもういいよ、解ったから」
『おお!解ってくれたのか!』
「おう!今日からは今まで以上にテレサと仲良くするわ!」
『……ふざけてるのか?』
「いやどう思われようが別に良いけど」
──もう口論しようとは思わない。
この男がテレサを否定しても俺は彼女を信じている。
もうそれで十分だ。
コイツとは話し合いの余地なんてない。何を言っても否定するだろうから。
『ふぅ……やはり見込みを誤ったようだ。きみの様な考え方の人間に世界は救えない』
「あのなぁ、だからもう本当に最初からずっと言ってるだろ?──
──無理して世界を救う気は無いって」
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