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7章 普通の勇者とハーレム勇者
運に恵まれた男
しおりを挟む連行されたのは内装が整えられている綺麗な部屋だった。薄暗い牢獄を想像していただけに、孝志は拍子抜けな気分となる。
「では……此処で大人しく願います……わ、私を恨まないで下さいよ?」
「……俺ってそんな怖いイメージなの?」
ちょっとショック。
アリアンさんやオーティスさんともさっき別れたし、しばらく大人しくするしかなさそうだな。
──ここは最近までマリアが投獄されていた部屋。
罪人を投獄する場所というより、王族を軟禁するのに使われる個室だ。その為、部屋には快適に過ごせるような設備が整えられていた。
孝志は兵士達が立ち去るのを見送ってから、昨日までマリア王女が座っていた椅子に腰を降ろす……王女との間接ケツである。
「捕まったのはちょっとショックだったけど、案外この状況が休暇の代わりになりそうだなっ!」
捕まってるとは思えないほど元気だ。それもカラ元気ではなくマジで超元気。ここなら誰にも邪魔されず休めると本気で考えているのだ。
アダムはテレサを妨害をするのに必死になっている。
なので現在は孝志と【目】の共有ができてないのだが……もし見れてたなら落胆していた事だろう。こんな優しい空間では成長もクソもないのだから。
これならば、わざわざ脱獄する必要はゼロ。
どうやらアダムは孝志の幸運、及び、世界からの愛されレベルを甘く見積もり過ぎてたようだ。
因みに、牢獄ではなく此処へ連れて行くように命じたのはネリー王女だった。しかも差し入れに美味しそうなケーキまで用意したという。
アリアンからも食べごたえ抜群なステーキが贈られて来たりと、あまり罪人らしい扱いを受けていない。
それには看守も少し頭を悩ませていたが、相手が王族と剣聖なので注意する事もできなかったようだ。
──それからは何事もなく次の日の朝を迎えた。
軟禁生活は悪くなく、むしろ面倒毎に巻き込まれないから普段より快適に過ごせていたが、一つ大きな不安が孝志にはあった。
「テレサに昨日会えなかったからな……やっぱり心配だな」
結局、朝に話したっきりテレサからの連絡は途絶えたままだ。
夜の待ち合わせ時間に会いに行けば良いと考えていたが、投獄されてる所為でそれも叶わず……
本当なら無理に外へ出る必要は無かったが、孝志はテレサの為に1秒でも早く城を抜け出したかった。
しかし、その為には丸一日経つのを待たなければ成らない。その理由は孝志と丸一日離れると、強制的に孝志の近くに転移する女、アルマスと合流する必要があるからだ。
「最後に一緒だったのが夕方だったから、アルマスが来るまで半日近くあるのか……大丈夫かなテレサ?」
───────
それから数時間が経過した頃……部屋の外が急に騒がしくなり出したので、ベットで寝転がっていた孝志はムクリと起き上がる。
すると、間もなくして部屋の扉が乱暴に開け放たれ、そこから面倒臭い人物が姿を現した。
「松本っ!!何故お前が捕らえられてるんだっ!!」
「た、橘くぅ~ん……」
来たぞ、なんかヤバイのが……しかも後ろには気まずそうな顔をする中岸さんと奥本も居るし。
ちょっと距離を空けた所にはマリア王女まで居た。あとは見知らぬ兵士がマリア王女の護衛として複数人……いや兵士達は兎も角、もしかして他の奴らは遊び感覚で来てる?
「おいっ!看守っ!今すぐ松本を此処から出せっ!誰の許可を得てこんな場所に閉じ込めてるんだ!?」
「えぇ!?私に言われても……そもそも孝志様は、王国の宝を盗み出した犯罪者ですよ?」
「勝手に俺たちをこの世界に呼び出したのは王国だろ!?だったらそれ位はサービスしろっ!!」
「む、むちゃくちゃな……」
確かに言ってる事はむちゃくちゃだが……割と理論は間違ってないのが凄いな。だってこっちは無理やり生き方を変えさせられてる訳だしね?
あとは、庇ってくれてるのが少しだけ嬉しい……もしかして案外いい奴なのかも知れんな。
ただ、少なくとも看守は何も悪くないし……此処は止めるべきだ。
「橘、俺は大丈夫だから………なんか悪かったな、迷惑かけて」
「迷惑だとぉ?昨日、俺と一緒に夕食を食べる約束をしたのが迷惑だと!?」
「あれ……?急に言葉が通じなくなったぞ?俺の感心とか感謝の気持ち返してくれる?」
それから中岸さんと奥本を加え三人で話をしたが、マリア王女は少し離れて俺の様子を伺っていた。
恐らく橘が居たから距離を取ったんだろう。
確か死ぬほど嫌ってたもんなぁ……話せばそこまで悪い奴じゃないぞ……?友達になりたいとは今のところ全然これっぽっちも思わないけど。
──橘達が帰った後、それからは何もなく時間だけがあっという間に過ぎてゆく。やっぱり軟禁されてると1日の経過が早い。
何もイベントが発生しない異世界生活とか、平和過ぎて癖になるんだけど……?こんなに【無】な1日が果たして有っただろうか?
今までが本当におかしいよね?だってまだこの世界に来てから10日位しか経過してないんだよ?
時折、ダイアナさんが身の回りの世話をしに来てくれたけど、看守の目を気にして一言も話さなかった。
他の連中がおかしいだけで、これが普通の対応なんだよ……俺は捕まってるんだから、あまりフレンドリーな感じで来られても困るわ。
ただ、ダイアナさんが心配そうな目をしていたのでそれが非常に申し訳なく思った。
……それから更に数時間が経過し──ついに、孝志はその時を迎えた。
何もない空間から突如として現れたのは待ちに待ったアルマス。彼女は孝志と目が合うと、いの一番に彼へ飛び付いた。
「たかしぃ~!!!」
「わっとっ!!」
「ペロペロぺロペロペロぺロペロペロぺロペロペロぺロペロペロぺロペロペロぺロ」
「おい……顔中舐めるんじゃないよ」
「はぁはぁ……ペロ……どうして……ペロ……いつもいつも……ペロ……孝志と……ペロ……離れ離れに……ペロペロ……」
「舐めるか!喋るか!どっちかにしろっ!!」
「ペロペロペロペロペロペロペロペロ」
「こ、こいつ……」
躊躇なく舐める方を選びやがった……!!
そ、外の看守に話し声とか聞こえてないだろうな?
反応がないから大丈夫そうだけど……静かにしろよもぉ~……顔中ベトベトで気持ち悪いし……後で覚えとけよ?
「……じゃあアルマスも来たし、アレクセイさん……お願いします」
孝志はポケットに入れてあった小さな箱を取り出し、それに向かって合図を送った──すると、その箱が大きく膨れ上がり、なんと中からアレクセイが形となって姿を現した。
「あらぁ!ようやく出番ねぇ?退屈だったわよぉ?」
「……凄いですね……どうやってんですか?」
「乙女のひ・み・つ」
「いやオカマですやん。つーかさっき教えてくれたでしょう?」
「あら?そうだったかしらぁ?」
「ペロペロペロペロペロペロペロペロ」
これはアレクセイさんが所有するスキルらしい。
自分の姿を隠す能力で、緊急避難や隠密行動に役立つらしいが、今回はこのスキルを使って俺の懐に潜んで貰っていた。
随分便利な能力で、自分の存在を亜空間に閉じ込めることが出来るそうだ。その為、気配すら感知するのが不可能らしい。
ただ、あのドッペルは全知全能とかいうスキルを持っている。それで見付かる可能性も高かったが、バレることもなく、箱にも細工は施されていなかった。
名前の割に大した能力じゃないのかもな……全知全能が聞いて呆れるわクソドッペル。
「それじゃあ、アレクセイさん……手筈通りに始めましょうか」
「分かったわ」
「ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロぺロペロペロぺロ」
「いつまで舐めてんねんっ!!!」
「……………………………………………………………………………………………………………………ペロ」
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