根雪の証

宮内

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そんな日々を繰り返しているうちに年が明けた。

彼に思い人がいると聞いたのは、年明けの大きな集まりの時だった。
嫁ぐ前と違うことと言えば、たまに夜会に夫に伴われることぐらい。

同伴と言っても一緒に出向き、夫が挨拶回りの間そばにいるだけである。
夫が男性同士の輪の中に行くと社交的でもない私はご婦人方の輪の中に入ることもできず部屋の隅で備品のように立っていたそんな私に聞こえるかのようにご婦人方が話し始める。
 
 
「松岡家の誠一郎様、足しげく花街に通われているそうよ。」
「あらまだご結婚して一年も経っていないのに。」
「若奥様はお気の毒に。」
「それがね、何でも花街に玲子様がいらっしゃるそうなの。」
「玲子様?あの有川の。」
「お家がああなってしまってからどこにおられるか誰も知らなかったのに。いつからそんなところにいらっしゃるの? 怖いわ。」
「体を売って生活していらっしゃるって言うことかしら?」
「姿を消されてから何年?三年位かしら?」
「そうよね。そのくらいになると思いますわ。」
「お忘れになっておられなかったのね。」
「あら大変。ただの芸子遊びなら万が一があっても、妾にとればすむ話だけれど。」
「相手が玲子様となるとそれではすまないわね。」
「そうよ。」
「だってあんなことがなければ、今頃あのお二人がご夫婦になっていた位仲睦まじくいらしたもの。ずっと思っていらしたのね。」
「花街に身を落されても、本当に好いた方に見つけていただいて、やっぱり美しい方はいいわね。」
「あらでも花街にいらっしゃるって事は、他の殿方のお相手もされると言う事ではないの。」
「嫌だ。それはお二人お辛いわね。」
 
下世話な噂話はいつしか運命の恋へと色を変える。
そして、そんな話題の中ですら結局私は存在する事は無いような人間であった。
 
 
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