貸本屋七本三八の譚めぐり

茶柱まちこ

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九月『子猫の嫁さがし』

その一

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 …………。
 ……………い。
 ………………本当に、…………。
 ……母様、ごめんなさい。
 お許しください、母様。
 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
 本当に、ごめんなさい。
 私を許してください、母様。

 おれは、そんなことをブツブツ延々と繰り返していた。うわ言のように。ただ言わされるかのように。
 それにしても、母様って誰なんだ。おれは自分の母親を母様なんて呼んでいただろうか。
 ここまで綺麗な言葉遣いなんてしていただろうか。
 分からない、分からない。
 これは、誰の夢なんだろうか。


*****


「すみません、柄田さん。おれらの仕事を手伝わせて……」
「いや、お前たちの苦労は分かる。それを横目に茶を飲むのも気が引けるからな」
「すまねえ……本当に助かるよ、柄田さん……」

 唯助と世助、そして本日たまたま七本屋を訪れた柄田は、障子の張り替えやら箒がけやらに勤しんでいた。
 禁書の虫干しというお祭り騒ぎの翌日である。悪戯好きな【毒】たちが好き勝手に動き回り、好き勝手に遊んでくれたせいで七本屋の中は酷い有様であった。
 建物の障子はことごとく穴を空けられ、襖も一枚犠牲になり、床は泥だらけになり、ちゃぶ台はひっくり返り、あちこちに空の酒瓶が転がり、皿も一枚犠牲になるという決して少なくない被害を残し──禁書の【毒】たちは過ぎ去る嵐のごとく、さっさと本に戻っていった。

「これはまだ軽い方だな。私がここにいた頃は、この程度じゃ済まなかった。応援で呼んだ大工に『どう暴れたら一日でここまで壊せるんだ』と言わしめたからな」

 柄田はしみじみと思い出しながら、障子紙を手際よく張り替えている。妙に慣れた手つきだった。

? 柄田さんはここに住んでたのか?」

 世助が首を傾げながら聞くと、柄田は意外そうな表情で返した。

「七本から聞いていないのか? 私は奴の弟子だ。禁書士の資格を取るまでここに厄介になっていた」
「初耳ですよ! てっきり仕事仲間かなにかかと……」
「師弟ってのは意外だな」

 柄田は二人の反応を前に、呆れたようにため息をついた。

「まあ、七本は自分の過去については多くを語らないからな。知らなかったとしても無理はないか」

 柄田と知り合ったばかりの世助はともかく、唯助は六月の二人のやり取りを見ていただけに、驚きを禁じえなかった。あの時の二人といえば、先日の紫陽花宿で、先行きが不安になるほどの応酬を繰り広げていたからだ。
 三八は柄田をしつこくからかい回し、柄田はその度に腹を立てて三八を引っぱたいていた。変人で偏屈な三八が人をからかうのは半分癖のようなものだから置いておくとして、まさか弟子が師の頭を引っぱたくとは思うまい。まして、上下関係がキッチリ明確化していた道場で育ってきたのだから、その不遜さに目をむくのも尚更である。
 禁書を摘発した際の連携は阿吽の呼吸と言うべき手際であったから、あの応酬も付き合いがそれなりに長いからであろうと思っていたのだが、よもやそんな関係であったとは思いもよらなかった。

「けど、柄田さんの家系って、優秀な帝国司書を輩出してるんだろ? なんでわざわざ柄田家じゃなくて、おっさんに弟子入りしたんだ?」

 世助の言う通り、柄田家は優秀な帝国司書を輩出する名家である。
 柄田家を出た人間には、一般の本を扱う帝国司書になる者もいれば、柄田のように禁書士となって活躍する者もいる。この家で育った子供は、ほとんどが帝国司書隊に入隊するといわれるほど、教育体制も整った家系なのだ。
 だというのに、その柄田家ではなく、あえて帝国司書でもない七本三八を頼るとは、どういうことだろうか?
 世助が疑問に思うのも当然なのだが――柄田はそれを遮るように、牽制するように、刃物の先のような鋭い目で世助を一瞥する。

「悪いが、そこはあまり聞かないでほしい。私にも事情があるのでな」

 柄田本人は睨んでいるつもりなどなかったのだが、真正面から視線を向けられた世助はびくりと固まり、「……ハイ」と大人しく引き下がった。


*****


 三人は障子の修復作業を終え、おりよく音音に呼ばれたので休憩を取ることにした。
 三八も書斎での事務作業を終えたらしく、ひと足先に音音の茶を啜っていた。

「おんや、ご苦労様。悪いねえ、着いて早々に手伝わせて」
「構わん。この惨状を見ては手伝わないわけにもいくまい」

 柄田はそう言って、三八の真隣に腰を下ろす。双子は二人に向き合う場所に、きちんと正座した。
 なんだかよそよそしい様子の双子に三八が「おや?」と思うのと同時に、柄田はあることを切り出す。

「七本。この二人を交えて話をしたいのだが、構わないか?」
「うん? どうしたんだい?」
「二人の体質について、帝国司書として説明をするべきだと思ってな。話を聞くに、彼らは『先天干渉者せんてんかんしょうしゃ』のようだし」
「おお、そうかそうか。ちょうどいい、小生も機を見て話そうと思っていたんだ。大事なことだからね」

 先天干渉者、などという難しそうな単語を耳にした双子は、これから初めての授業を受ける小学生のような気分になった。
 柄田は胸ポケットに入れていた手帳と万年筆を取り出すと、サラサラと文字に起こしながら説明を始めた。

「『先天干渉』とは、特異体質の一種だ。平均的な人よりもはなしに働きかける力が強い、そういった性質を持つ人のことを、『先天干渉者』と呼ぶ」
「ふんふん、譚に働きかける力」

 唯助が柄田の言葉を反復する。

「譚に働きかける力は、大きく二つに分けられる。一つが『干渉性かんしょうせい』、もう一つが『感化性かんかせい』だ」
「『干渉性』と、『感化性』ね」

 世助も真似をするように、柄田の言葉を反復し、一つ一つ情報を咀嚼して飲み込んでいく。

「まず『干渉性』――これは特に、禁書の【毒】に対して発揮されることが多い。通常であれば同じ【毒】を用いなければ干渉できないところを、先天干渉者は【毒】を用いずとも干渉することができる。また、禁書の有害性に対しても非常に耐久性が高い」
「あ、これは何となくわかる。祭の時に唯助を食おうとしたあのデカい口を、ぐいって無理やりこじ開けたやつだろ」

 世助の言葉に大きく頷いたのは、三八だった。

「そうそう! あれはさすがに驚いたよねえ。普通ならあの口に触ること自体無理だし、先天干渉の傾向がある人でも、あんなふうに素手でこじ開けるってなかなかできないよ。世助は干渉性が抜きん出て強い、本当に珍しい体質の持ち主なんだよ」
「そうなのか?」

 無意識のままその力を奮っていた世助にしてみれば、自分が無意識でやってきたことの難しさなど分からなかった。比較対象を知らなければ、実感もしようがない。
 世助本人よりも、唯助のほうが反応はよかった。

「いいじゃん、かっこいいじゃん! 世助ってすごかったんだな!」

 目を輝かせて言う唯助に、三八は微笑ましいとばかりに笑みを深くして頷く。掛け値なしの弟の賞賛を受けた世助は、少々照れくさく、こそばゆい思いであった。
 柄田は淡々と続ける。

「そして『感化性』──これは譚を感じ取る力だ。『干渉性』が物理的に触れる作用なのに対して、『感化性』は精神的に触れる作用のことだ。この力が強い干渉者の特徴は、良くも悪くも譚を引き寄せやすいということ。──つまり、禁書も引き寄せる」

 これでも柄田は専門的な部分を省いてわかりやすく説明したつもりであったが、双子には少々難しい話であった。世助は眉根を押さえ、唯助は首を右に左に傾げまくっている。

「干渉性? は、なんとなく分かるんだけどよ。感化性ってのがいまいちピンと来ねえんだよな」
「精神的に譚に触れる……うーん?」

 なにしろ、力が全て、不要な知識はいらぬ、という価値観を持った家で育った双子である。全てを体の感覚で学び、とらえてきた彼らにとって、あいまいで小難しい言葉を用いた説明は難透難解だった。

「まあ、言葉で説明されるだけだと、理解が難しいよねえ」

 二人の様子を見かねた三八が、ここで助け舟を出す。

「霊能者や陰陽師に似たようなものだと考えてみなさい。霊感やら悪霊退散やら、そんな言葉を聞いたことはないか」
「神社とかお寺さんではよく言いますよね」
「そう。干渉性とは、悪霊や妖怪を退治する力。感化性とは、いわば霊感のようなものだ」

 ここで、悶々としていた双子の表情が、目に見えて明るくなった。特に、世助は思い当たる節があったようで、「あれか!」と反応する。

「幽霊が話しかけてきたとか、誰もいない部屋から気配を感じるとか、唯助はガキの頃から、そんなことを頻繁に言ってたな。もしかして、そういうことか?」
「うん。多分、唯助は無意識に譚を感知していたんじゃないかな。霊感に例えると、唯助はお化けに対する霊感が強く、お化けを引き寄せやすい体質なんだよ」
「あ、ありがたくない体質だ……」

 唯助はぼそっと呟きながらも得心した。
 三八の説明からするっと理解した双子を見て、柄田は珍しく三八に感心する。

「やはり、教えるのはお前の方が向いているな。そこだけは敬意に値する」
「なんだい、その言い草。『そこだけは』なんて、嫌に強調するではないか」
「敬意に値しない箇所も多すぎるんだ、貴様は」
「うっわ、師匠に対してこんな生意気な口を聞く弟子がいるか? ひどいねえ」

 三八は親指で柄田をさしながら、辟易と言わんばかりの表情を作る。柄田はまともに取り合わず、ただ「ふん」とだけ言い捨てた。

「私が率いている禁書回収部隊は、禁書の【毒】との戦闘も行う。対【毒】専門の軍隊のような側面もあるのだ。【毒】たちに対抗する上で、世助のような飛び抜けた干渉性は有効だ。加えて、元々の戦闘力も申し分ない。我々にとっては、この上なく望ましい人材といえる」
「望ましい、人材……」

 世助はその言葉にじんと胸を熱くした。
 持った性質に惜しみない評価をされ、今まで必死に鍛え上げてきた自分という人間も買ってもらえることは、血統だけを理由に努力を蔑ろにされた世助にとってこれ以上ない褒め言葉であった。

「そして、唯助。お前は言わなくても身にしみてわかっていると思うが、少々危険だ。今までは世助が対処することで凌いでいたが、今後はそうもいかん」

 良くも悪くも譚を引きつけてしまう体質。それを持ってしまった唯助は、その弊害を跳ね除けてくれる存在が運良くそばにいた。今まで唯助が無事だったのは、干渉性の強い双子の世助と共にあったからである。
 実際、世助と離れてからというもの、唯助は二度も禁書の【毒】に襲われ、命の危機に晒されていた。ここでも運良く守ってくれる人物がいたのだが、そうでなかったら落命していてもおかしくなかった。

「世助にも前々から言われてたけど、やっぱり自分で自分の身を守れないと良くないですよね……」
「ああ。だから、唯助は七本から体質との付き合い方を教わるといい。こんなやつでも、帝国司書隊に来るよりは、色々と分かることも多いだろう」

 柄田は仕返しとばかりに三八を親指でさした。

「旦那って、もしかしてそういった人達にも色々教えてたりしてたんですか?」
「いんや。というより、小生も唯助と同じ、強い感化性を持った先天干渉者だからじゃないかな」
「え! 旦那も?」

 自身の鼻筋をとんとん指で叩いてみせた。

「初めの頃に言ったろう。『小生は譚にかけては驚くほど鼻が利く』と。あれは喩えじゃなくて、本当に文字通り鼻が利くんだよ。他者にとって譚はただの物語だが、小生の場合は譚の気配をにおいとして辿ることができるのさ。『共感覚』というやつだ」

 四月にやってきた唯助の譚、五月に出会った幼女を襲っていた譚、六月の禁書を所持していた男が纏っていた譚――三八は、それをすべて嗅覚でとらえていた。 
 さらに先月、唯助を騙そうとした、世助の偽物――三八がいち早く警告ができたのは、嗅覚で禁書だと察知できたからだ。

「小生の場合は嗅覚だが、他にも話し声など聴覚でとらえる者や、予知夢という形で見える者もいるらしい。譚を感じる方法は、干渉者によってもそれぞれ違うのだ」
「譚を感じる……」

 唯助は黙りこくって、なにか思案している。

「なにか心当たりがあったかい?」 
「……もしかして、ですけど」

 唯助には、もしかしてこの体質のせいなのでは? と話の最中で考えていたことがあった。

「予知夢というか、それがそうかは分からないんですが……おれ、先月から変な夢を見ているんです。なんか、自分じゃない人の夢を、勝手に覗いているような……」

 誰のものか分からぬ夢――それは、少なくとも『菜摘芽唯助を主人公にした夢』ではなかった。
 母親と思しき誰かに頭を撫でられたり、甘えていたり、なぜかその母親に懺悔していたり、――確かに、視点は唯助のところにあるものの、夢の中でのやりとりには菜摘芽唯助という存在がまるでない。そんな感じだ。
 
「それに、夢って普通、時間が経つとぽろっと忘れるじゃないですか。その夢だけは自分が言ったこともしっかり覚えてて。でも、なんていうか、あの夢は自分とは全く違う人の中に、間違っておれが入り込んじゃったような感じが……うーん……」

 まだまだ語彙の少ない唯助の言い回しは稚拙であったが、三八はなにか読み取ったのか、顎に手をあてがいながら「ふむ、」と鼻を鳴らしている。

「もしかしたら、それも誰かの譚を感知したものかもしれないね。夢を介して、誰かの譚を覗いているのかもしれない」

 確証はないけれど、と三八は一応付け足す。

「帝国司書隊でも、感化性は干渉性に比べてあまり重視されない傾向にある。いかんせん、情報が少ないのが現状だ」
「そうですか……」

 世助のように上手くいく話ではないか、と唯助はなんとなく不安を覚えた。自分の身に何が起きているか、違和はあるのにそれが何なのかはっきり分からないことほど不安なものはない。 

「まあ、そう不安がるな。なにかあれば小生が力になる。どこかでその情報も役に立つかもしれんし、君自身の性質を知るためにも、夢日記などをつけて記録しておくといい」
「わかりました」

 現状は専門家の三八や柄田の指示に従うしかないだろう。唯助は素直に頷いた。

「さて、話は以上だ。専門家がいたおかげで話がしやすかった。協力感謝する、七本」

 柄田は冷めかけた茶を一気に飲み干して立ち上がる。
 そこへ丁度、音音が通りかかった。

「まあ、柄田様。もうお帰りになるのですか? せめて夕餉だけでも召し上がっていかれては……」
「いや、さすがにそこまで世話になるわけにはいかん」
「いいから泊まっていけ。せっかく土産に酒を持ってきてくれたんだ、ついでに晩酌も付き合っておくれよ」

 三八が肩を掴んで止めると、柄田はきゅっと眉根に皺を寄せ、渋柿を食ったような顔で振り返った。

「貴様と飲むのは気が進まん」
「えぇ~柄田のいけずぅ~! たまには小生も誰かと飲みたいんだよぉ~! 一緒に飲めるのは君くらいなんだよぉ~ねぇ~!」
「ベタベタするな! ええい、気色悪い!」
「いやぁ~ん!」

 いい大人が駄々をこねている様のなんと見苦しいことか。三八はくねくねと気持ち悪く柄田に密着し、しっかりと抱きつき、しとしと泣いて縋る女の真似をして引き止めている。
 見ている双子からしてみても、その様子ときたら目も当てられない。中身が五十路の男と知った今は尚更である。

「あぁもう分かった! 泊まる! 泊まるから、離れろひっつき虫め!」

 言いながら、柄田は気持ち悪いことこの上ない三八をべりっと剥がした。

「柄田ってば優し~い! 小生、柄田のことだぁい好き!」
「やかましいわっ」


*****


 さて、翌朝である。
 障子が新調されたばかりの寝室で、三八は酒の酔いもあって気持ちよく眠っていた。
 ぼんやりと目を開ければ、既に日は昇り切っている。

(む、ちと寝過ごしたか……)

 いつもは日が顔を出し始めた頃、先に妻が目を覚ましてもそもそと動き始めてから三八も起きるのだが、飲んだ日の翌朝は熟睡して寝過ごすことが大半である。
 妻は起きて朝餉の支度をしている頃だろう。唯助と世助もこの時間であればとっくに起きて朝の鍛錬に励んでいるはずだ。柄田ももしかしたら起きているかもしれない。自分も早く起きて、妻の支度を手伝わなくては。
 そんなことを考えながら、寝ぼけまなこのまま起きようとした時──三八は自分の近くに、自分のものではない温度を感じた。意外なことに、音音はまだ眠っているようだった。いつもは日が昇る前に起きている妻が朝寝坊など、珍しいこともあるものだ。

(随分奥まで潜り込んでいるなぁ)

 音音は猫のように丸まって眠るのが癖だが、たまに三八の胸元から着物の中に潜り込むように眠っていることがある。体勢的に苦しくないのか、おじさんの体臭が気にならんのかということはさておいて、そろそろ起こさねば朝餉の支度も間に合わない。

「音音、音音さんや。もう朝だよ」

 布団をめくって、猫のように丸まった妻をとんとん叩いて起こす。 

「ん、んん……」

 よほど眠いのだろうか、音音は三八の胸元に埋まったまま、さらに深く深く潜り込もうとする。

「これこれ、音音。擽ったいよ」

 可哀想だが、まともに飯を作れるのはこの家で音音だけだ。三八は温もりを惜しみながら、音音を引き剥がした。

「ほら、早く起きないと――…………ん??」

 引き剥がして、固まった。
 穏やかな朝の空気の流れが停止したかのように、三八は固まった。 

「んにゃ……みや、さま…?」

 猫のような声を出しおって、どころの話ではない──引き剥がした音音の頭上で、ぴょこぴょこと命を宿したように動くそれは――まさしく、猫の耳であった。
 眠い目をこすっている音音の頭には、紛うことなき猫の耳が生えていたのだ。

「……にゃっ、にゃ」
「? みや様?」

 なにやら様子のおかしい夫を前に、音音はちょこんと首を傾げる。
 愛すべき妻の頭に、猫耳。いくら猫のように愛くるしいと思っている妻であろうと、突然本当に猫の耳が生えてしまったら、人間は正気を保てないらしい。
 音音に異常事態を伝えようにも、三八の口からは「にゃーん……」などという間抜けな鳴き声が出てくるばかりだ。

「?? みや様、どうなさったのです? まるで猫みたいですよ?」

 いや、小生が猫みたいとかじゃなくて、君が猫になってるんだよ。
 ……と、普段なら言っていたところだが。残念ながら今の三八は、それができないくらい動転していた。
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