貸本屋七本三八の譚めぐり ~実井寧々子の墓標~

茶柱まちこ

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終章「実井寧々子の墓標」

その一

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『空の鳥かご』の読み解きから一夜明け、唯助とミツユキは朝一の電車に乗って棚葉町へと帰った。
唯助は白茄子になりながらもなんとか帰宅するが、七本屋に帰った彼らを待ち受けていたのは、腕組みをしてどんと足を広げて立つ、店主の三八であった。口角のしわを深くして、目尻を下げた――菩薩の笑みをたたえる、なんとも不気味な仁王像であった。
「おかえりなさい、唯助。それと『糜爛の処女』」
「た、ただいま戻りました」
「うんうん、収穫はあったみたいだね。疲れたろう、君は先に小生の書斎で寛いでなさい」
「? 居間じゃなくて書斎ですか?」
「ああ。今は使えなくなっててね、勘弁しておくれ」
首を傾げつつも、唯助は師匠の心遣いに礼を言って、脇を抜けようとする。
――が、しかし。
「ちょっと待った」
と、唯助が三八の影を通り抜けた辺りで、突然呼び止められる。
何事かと唯助は振り返るが、三八の視線は唯助の顔よりもずっと下――唯助の足元から伸びる影に向けられている。
は残りなさい」
三八が影を睨んでいる。唯助は三八の菩薩顔の背景に、それはそれは恐ろしい般若の影を見た気がして、「ひゅっ……」と息を飲んだ。しかし、足元の影に潜んでいるは、三八の呼びかけなどまるで聞こえていないかのように、あくまで沈黙を貫き続けている。
「……、『糜爛の処女』!」
三八が怒号と共に唯助の影を勢いよく蹴りあげる。すると、それまで地面に横たわっていた唯助の影が、波打ち際の水を思い切り蹴りあげた時のように打ち上げられ、中に潜んでいたミツユキが強制的に排出された。
「あいたぁッ!?」
奇しくも、三八が蹴りあげた場所にはミツユキの尻があったらしい。思いがけず尻を下駄で蹴られたミツユキは悲鳴をあげて、びっくり箱のように勢いよく飛び出した。
「吃驚したぁ! 言霊で蹴らないでよ!」
「狸寝入りなんぞするからだろうが。はい、そこに正座」
地面そこに!?」
「いいから、
また、言霊を使ったらしい。
ミツユキの膝は強制的に地につけさせられ、足を折りたたんで正座する形になった。若かりし三八の姿をした男が老いた三八に正座させられているとは、なんとも言い難い奇妙な光景である。
これは長くなるな、と踏んだ唯助は、とりあえず三八の指示通りに書斎へ向かう……はずだった。
「な、なんだこりゃぁ!?」
建物の外からは分からなかった目を疑うその光景に、唯助は素っ頓狂な声を上げる。
そう、本来寛げと言われるはずの居間――そこには、無惨に破壊された障子と襖の残骸が積み上がっていた。ついでに、畳もたくさんの猫が引っ掻いたようにボロボロである。
「旦那、一体何があったんです! 泥棒にでも入られました!?」
ミツユキのお説教中とはいえ、これはさすがに事情を聞いていいだろう。むしろ聞くべきだろう。
唯助の問いに対し、三八はよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりの深い嘆きを返した。
「いっそその方がまだ良かったよ。人間の仕業なら弁償させられるからね」
――つまり、実際は人間でない者の仕業ということだ。
唯助は、前にも似たような状況があったことを思い出し、もしやと現状を察した。
「こやつがいないとわかった瞬間、やんちゃな禁書たちが悪戯を始めてね。そしたらもう他の禁書たちも悪ノリに次ぐ悪ノリでどんどん酷いことに」
正座しているミツユキをぴっ、と指す人差し指だけで、彼の怒りの度合いが伝わってくるようだ。道理で、三八が先ほどから言霊を――強い感情を抱いている時だけ使える能力を連発しているはずである。
「書き置きは残したじゃないか」
「当日の朝に書き置きだけ残されても困るよ。門番を離れるなら、せめて前日に言ってくれれば予防線くらいは張れただろうに。君たちが行った日の朝、慌てて知らせに来た阿子に叩き起されて、下へ降りてみればこの惨状だったんだよ」
ちなみに三八は、客から見えない部屋などの修繕を、あまり建具屋には依頼したくないようだった。当然である。この店には人ならざるものが多すぎて、人の目を上手く誤魔化すのも骨が折れるし、その人ならざるものたちがことある事に部屋を破壊してしまうものだから、その度に頼んでいては出費がかさんで仕方がないのだ。
だから、店の客から見えない部分は店の人間が直す。それが七本屋の基本方針なのだが――
「暴れた禁書たちをこってり叱ってからは飯を食う間もなく朝から晩まで東奔西走悪戦苦闘……小生、もう疲れて頭痛がしてきてるよ」
唯助たちが出かけていた三日間、彼はまだ本調子でない嫁の看病をしながら、壊れた建具を直していたのである。若い唯助の力も、ご近所の助けも借りられないまま。
「『糜爛の処女』? 君はこの惨状を一体どうしてくれるんだい?」
まだ何か言いたげなミツユキだったが、三八の怒りの圧が凄まじく、上手く反論できないようだった。普段怒らない相手に激怒されることほど恐ろしいものはない。
「ごめんなさいは?」
「だ、だってぇ……」
「ご め ん な さ い は ?」
「ごめんなさい……」
ゆっくりと一文字ずつ言うようにして促されて、ミツユキはようやく謝罪した。
「では君は明日から三日間、謹慎処分だ」
「えぇっ!? そんな殺生な! 三日間も本体から出ちゃいけないの!? 門番はどうするのさ!」
「阿子に代わりを頼む。君が相談を怠ったせいで三日間大変なことになったんだから、妥当だろう?」
「えぇ~……」
まだ文句を言いたそうなミツユキ。しかし、三八の三日間の苦労を思えば、彼はそんなことを言える立場にない。だから、ミツユキは助けてと言わんばかりの視線を唯助に投げかけた。
道中、彼に振り回されていた唯助は少しばかり迷うが、彼がいてくれたおかげで助かった局面も多い。ミツユキをここで見捨てるのも不義理な話である。
「でも、旦那。おれ、こいつがいたおかげで色々と助かったんです。心眼を使う手助けをしてくれたのもこいつで。おれを気遣ってくれましたし、疲れてへとへとになるまで用事に付き合ってくれて……」
ここはなんとか穏便に済ませてくれないだろうか? と、ミツユキを庇った。疲れている上にお説教を食らっている彼が可哀想で、根性良しの唯助はつい情けをかけたのだった。
「そうかそうか。それはいい仕事をしたね、『糜爛の処女』」
「じゃあ!」
「それとこれとは話が別」
「えぇえ!」
優しくなった三八の声音に希望を見出したミツユキだったが、希望の光はすぐさま消し去られてしまった。一瞬だけ明るくなった表情が、再び泣きそうな顔に戻る。
「情状酌量はないよ。三日間きっちり反省してもらうからね」
……どうやら、ミツユキに反省の色がないと三八は判断したようだった。謝罪の遅さと言い訳しようとする態度を見れば、そう思われても仕方あるまい。唯助にももう庇える材料がなかった。
「すまねえ、ミツユキ。こりゃもう駄目だわ」
唯助がミツユキの肩にぽんと手を置くと、彼の情けない声が響き渡った。

*****

とはいえ、唯助もただ休んでいるわけにはいかないと思い、三八の書斎を借りてひと休みした後、修復作業を手伝い始めた。
被害は一階の居間と書斎の一部だけだったようだが、この壊れようでは三八一人で修繕するのも骨だったろう。一体どんなふうに暴れればこんな酷い壊れ方をするのかと、唯助は不思議に思いながら作業を進める。
「んにゃぁ~」
と、作業中の居間へ呑気な猫の鳴き声が近くで聞こえる。この店に猫といえば奴しかいないと、唯助はその名前を呼んだ。
「鯖か?」
「にゃ」
猫の声が短く返事をする。今までどこにいたのか、鯖と呼ばれた三毛猫の子はとことこと歩み寄ってきた。
「居間の畳をバリバリ引っ掻いたのはお前か?」
「そぉだよ」
鯖は立てた尻尾を揺らしながら、唯助の手元を覗き込む。唯助は障子の破けた部分を剥いで、糊を塗っている最中であった。
「お前もやらかしたなら人型になって手伝えよ。旦那は猫の手も借りたい思いだったろうに」
「んーにゃ、おっさんは僕らが手伝うと逆に仕事が増えるって言ってたよ。失礼しちゃうよにゃぁ」
「おいこら、足で糊を触るな。猫の毛入っちまうだろ。その足で歩き回ったら承知しねえからな」
「にゃー」
人間の指ほどしかない子猫の前足を、布巾で素早くくるむ。鯖は布巾の感触がどうにも不愉快なようで、大人しく拭かれてはいたものの、尻尾が忙しなく揺れていた。
ふと、唯助は気になったことを鯖に尋ねてみる。
「なあ、鯖。お前も、姐さんからなにか感じてたりしたのか?」
「にゃぁ?」
「姐さんの譚。ミツユキは前々から変だと思ってたらしいけど、姐さんが好きな鯖はどうなのかって思ってさ」
「変かって言われても分からにゃいね。何をもって『変』とするかはそれぞれ個人の感覚だし?」
「……まあ、そりゃそうだけど」
人の譚が変かと言われてもそりゃあ困る、という言い分も理解できる。『変』という言葉は個々の基準がまちまちなだけに、総合すると実に曖昧な表現なのだ。ミツユキが変だととらえた譚も、鯖にとってはさして変ではなかったかもしれない。
はて、ならばどうやって探ろうかと唯助が頭をひねっていると
「お悩みのようですね」
と、突然人の気配が現れた。
「んぎゃーっ!?」
唯助は急に背後から話しかけられて、手にしていた布巾を思わず放り投げた。その時たまたま手にしていたのが糊の入った椀ではなく布巾であったのは幸いだったかもしれない。
「よ、珱仙先生っ」
「いい反応ですねぇ。元気がよろしいことで」
珱仙は目を細めてくすくす笑っているが、唯助にとっては笑い事ではない。口から心臓を吐き出すかと思うほど驚いたのに、そんなふうに笑われては大変面白くない。
彼といいミツユキといい、禁書の毒たちは気配もなく唐突に話しかけて驚かせるのが好きなのだろうかと思ってしまう。
「で? 何に悩んでいるのです?」
珱仙が再度尋ねてくる。
彼という禁書の能力は『慧眼』――唯助の心眼とよく似ていて、全ての事象や事実を見抜く目だ。文字通り、彼はなんでも知っている存在である。
彼に頼ってしまうのは何だか反則技のような気がして、唯助は彼にだけは相談してはならないとあえて自分に縛りを課していたのだが、
「……繋がらないんです。未回収の手がかりが多すぎて。むしろ、上手く繋がらない要素が増えてしまったっていうか」
と、ついに零した。
わざわざ藤京にまで出向いて調査をしてきた唯助だったが、唯助は思うような収穫に出会えなかったのである。
実井邸や『空の鳥かご』から集めた情報もそれは大事だろうが、しかし。唯助が一番手に入れたかった情報は、『空の鳥かご』の極致を覗いても手に入らなかったのだ。
「手がかり、とは?」
「……色々。先日の客、のこととか。どうして、昔の音音さんやお父さんがああなっちゃったんだろう、とか」
唯助は実井邸で得た断片的な情報の答えが『空の鳥かご』に隠されているのではないかと読んでいたのだ。しかし、あてが外れてしまった。あそこに記されていたのは、実井寧々子と七本三八の関係性、狂ってしまったあとの実井正蔵のみだった。そうなる前の譚は、どうやっても見ることができなかったのである。
実井正蔵は何が原因で、あのような切迫した状態になってしまったのか。娘を養うために演奏会を開いたりするなどして立ち直りかけていた彼が、なぜ再び蝕まれ、再起不能な状態まで陥ってしまったのか。
愛娘を束縛し、あまつさえその命まで離すまいという異常な執着を抱いてしまった彼の心――その経緯。
そして、七本音音が今もなお纏っているという、『雨の匂い』。
――あの父娘の過去に何があったのか。
唯助は極致まで達してはいたものの、事の深層にはたどり着けなかったのである。
「……多分、これは旦那も知らない。旦那が解き明かせなかったことを、おれが解き明かせるのかな」
「解き明かせますよ」
不安を漏らす唯助に、珱仙は即座に答えた。
何ら思案するでもなく、唯助の弱音に対して即答してみせた。
「貴方が奮闘したおかげで、条件は整ったんですよ。唯助くん」
「え……?」
何を言っているのか分からずに首を傾げる唯助。珱仙は、
「彼女たち親子の譚を語っては、貴方の修行を邪魔してしまいますので。私はその『心眼』について教えてあげるとしましょう」
と答える。
「その眼には凄まじい真の力があるのです。貴方は今まで、それを使える領域に達していなかった」
「真の力? 譚本を読み解いて極致を見るのが、この眼の特性じゃないんですか?」
『糜爛の処女』から、そこに記されていない七本三八の過去に辿り着いたように。『空の鳥かご』から、そこに記されていない七本夫妻だけの秘密に辿り着いたように。
原本では語られなかった『外伝』を覗けるのが、この眼の力ではないのか。
珱仙は首を振って否定する。
「譚本になる前の、もっと根源的な譚を覗けるんですよ。その眼は」
「??」
理解が追いつかない。頭にいくつも疑問符を浮かべる唯助に、珱仙がさらに説明を加える。
「唯助くん。他者の譚というのは、譚本に紡がれた言葉たちよりも、当事者本人の口から語られる言葉のほうがより真実に近いんですよ」
「譚本、よりも?」
「だってそうでしょう? 譚本は結局のところ、客観的な視点が入った虚構の記録なんですから」
「虚構の、記録……?」
どこかで聞いた覚えのある文言だ、と唯助はふと思い出す。そういえば、過去の三八も確かそんなことを言っていたような……
「譚本や物を介する必要はありません。真実を得るには、本人から直接聞く譚が必要になるのです。本人の口から……いいえ、心から直に見聞きするのです。それが、貴方の持つ『心眼』の真の力なんですよ」
「心から、直に……」
唯助が反芻するのに、珱仙は頷く。
「そのためにも、ある程度は前情報を手に入れておく必要がある。そうでなければ、あらゆる角度から譚を読み解くことはできません。客観的な事実を得て、その上で持ち主の主観的な譚を覗く。何を知るべきなのか、何を見なければいけないのか。貴方は調査をしてきて、きちんとそれを見つけました。条件は整ったんですよ」
「……」
分かるようで分からないような。分からないようで分かるような。唯助には、珱仙の説明を、はたして自分は理解できたのかすら解らなかった。しかし、珱仙はそれ以上は何も語らず、ただ、最後に、
「良かったですね、唯助くん。今夜はいい夢が見られますよ」
と、意味深な言葉を残して去るのみだった。
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