貸本屋七本三八の譚めぐり ~熱を孕む花~

茶柱まちこ

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五章『花、熱る 前編』

その一

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「どうでした? 進展はありましたか?」
 棚葉町の祭から帰ったあとで、おれとリツをわざと二人きりにした姉御から、そんなことを聞かれた。
「別に、特に何ってほどのこともないよ。第一、リツの眼中におれが入ってるわけないだろ」
 人の恋愛に期待しまくっている姉御の熱視線を振り払うようにおれは返した。けれど、燃える星のように熱々の視線はその程度で振り払えるはずもなく、
「そんなことはないですよ。わたくし、脈は十分あると思ったのです! 間違いなく!」
 などと姉御は言う。女って他人の恋愛事情にそこまで興味を惹かれるものなのだろうか。それとも、姉御個人がそういった話題を好んでいるのだろうか。
「そうですかね? おれには微妙に見えましたけど」
 姉御が盛り上がりすぎているせいで、普通にしているだけであろう唯助がものすごく冷静に見えてくる。いまいちな反応を示す唯助とは対照的に、姉御は「いいえ、これはいけますよ!」とやけに自信たっぷりに断言していた。
「昼間にお化粧をしている時、リツさんが仰ったのです。『いつも世助さんが寄り添ってくれるから、大きな不安もなく過ごせてる』って!」
「リツが?」
「はい。いつでも一番そばにいて気遣ってくれていたのは世助さんだったとも聞いております。とても感謝しているようでしたよ」
「はあ」
 別に、リツに寄り添っているのはおれだけじゃないだろう。蒼樹郎さんだって毎日彼女を気にかけているし、イシ婆を始めとする女中さんたちも彼女が退屈しないよう積極的に会話しに行っている。おれが彼女と行動を共にすることが多いのは確かだろうが、だからといっておれだけが彼女にとって特別なわけじゃない。
「世助、だいぶリツさんのこと気にかけてんだなぁ」
「……他人事とは思えなかったからだよ」
「? 今、何か仰いましたか?」
「なんでもねえ」
 正直、脈アリと言われてもおれは困るのだ。いや、叶うことならおれだってリツと結ばれたいとは思っている。あわよくばこうなりたい、ああしたいと頭を過ぎったことだって何回もある。けれど、おれは元々のリツの日常にいた人間じゃないし、彼女には帰るべき日常と待っている姉がいる。おれが想いを告げるなんてことをすれば、きっと優しいリツを困らせてしまうに違いない。だから、この想いが恋であるとわかったその時から、おれは心の奥にしまっておこうと決めていたのだ。
 このままここにいてほしい。いなくならないでほしい。――なんて、言えるわけがない。
  
 *****

 風邪から回復した数日後。朝餉を食べ終え、さあ仕事だと机を前にした蒼樹郎さんは、顔を顰めて固まっていた。まあ、蒼樹郎さんは仕事中もよくそんな顔をしているから、その表情自体はそう珍しいことではない。珍しいのは、まさに今のような――仕事を始める前からそんな顔をしているという点にある。
「旦那様? 如何なさいましたか」
 食後のお茶を差し出しながら、リツが尋ねる。
「あぁ、リツか」
 それに対して苛立たしげな吐息を孕んだ返事をする蒼樹郎さん。
 彼の傍らに立っていたおれとリツは顔を見合せた。一体なにが蒼樹郎さんの機嫌をここまで急落させたのだろうか――原因に心当たりはあるかと、視線を交わすことで暗に確認しあったのだ。おれたちは『そんなものはない』と、ゆるりと首を振ることで示しあう。
「あぁ、違うんだ。お前たちがなにかしたのではない。少し面白いものが届いただけだ」
「「面白いもの?」」
 これだ、と蒼樹郎さんはその手に持っていたものを机の上にパッと投げ捨てた。投げたのではなく、投げ捨てた。
 今でこそ穏やかに笑うことも増えた蒼樹郎さんだが、元来、彼は短気な性格だ。見るからに、相当お怒りの様子である。
「拝見致します」
 蒼樹郎さんを怒らせた原因を確かめるべく、彼が投げ捨てたものを確認する。そこにあったのは白い封筒と、その中に入っていたのであろうものたち。三つ折りにされた手紙が一枚と、掌くらいの大きさをした紙切れだった。真っ先に飛び込んできた紙切れの文字に、おれはあっと驚く。
邑咲苑むらさきえん……って確か、離島の高級旅館じゃん!?」
 おれはそこでふと、この旅館周辺の立地について思い出す。確かここの旅館は客室からの景観を売りにしていて、季節ごとの島の自然を一望できるのだとか――その為に、建物は坂の頂上に建てられていたはずだ。更に紙切れの内容まで読んで、おれは蒼樹郎さんの怒りの原因に確信を抱いた。
「あー……なるほどな。確かにこれは怒るわ」
 リツは何も言わなかったが、同封されていた手紙を読むその顔は見事に引きつっていた。
「先方は冗談がお好きなようだ。しかし、品性は下の下らしい」
 今更言うまでもないことだが、蒼樹郎さんは常に車椅子に乗っていなければ移動ができない。両足の感覚がないので、杖をついて歩くこともままならない。蒼樹郎さんは五体不満足で外での行動にも不便を強いられる自分の身の上を、協力関係を結ぶ商談相手にも前もって伝えているはずだ。
 だと言うのに相手は。坂の上に建つ、階段しか昇降手段のない高級旅館の宿泊券を贈ってきたのである。
「滅多に泊まれない一流旅館の最上階……ねぇ」
 手紙には蒼樹郎さんを労うような言葉の数々が綴られているが、所詮は上っ面ということだ。有り体に言って、これは蒼樹郎さんへのあからさまな嫌がらせである。
「どうして相手はこんなことを?」
 リツは(先程からブツブツと何か言っている)蒼樹郎さんに聞こえないよう、おれに尋ねてくる。
「蒼樹郎さんが若いうえにやり手だから、それを生意気だとか言って因縁つけて嫌がらせしてくる爺がいんの」
「なにそれ、性根の曲がった人ね」
 勿論、蒼樹郎さんも短気とはいえ、ちくちくと小さな嫌がらせをされた程度で憤慨するような人ではない。怒りに左右されることなく冷静に立ち回れるのがこの人の強さでもある。しかし、さすがに今回のことは腹に据えかねたようだった。
「こちらが下手に出ていれば舐めた真似をしてくれおって、あのクソ野郎……」
 蒼樹郎さんの口から、久しぶりに彼らしからぬ汚い言葉を聞いた。しかし、こんな仕打ちを受けては致し方あるまい。

 ――それが午後になって、こうなった。
「いいのかよ、こんな上等なモン貰って!?」
「構わん、どうせ私はこの屋敷から一歩も出られん身だ。五体満足だろうと滅多に行けないような旅館だし、破り捨てるのも勿体ないだろう」
 なんと蒼樹郎さんは、贈られた宿泊券をおれとリツに譲ってくれると言うのだ。おれたちには特別働いてもらっているし、記憶探しのこともあって疲れているだろうから、これを使って骨休めしてくるといい――との事だった。
「聞くところによれば、ここの温泉は疲労回復にはうってつけらしいからな」
「疲労回復、ねえ」
 確かに、おれも肉体労働が多めだから、そういった効能の温泉に入れるのはありがたい。だがそれに浮かれる前に、おれはひとつ、気になっていたことを確かめた。
「なあ、蒼樹郎さん。一応の確認だけどよ。券が二枚あるってことは、部屋は別々なんだよな?」
「いや、同室らしいぞ。二人一組前提のようだ」
 あっけらかんとした蒼樹郎さんの発言に、おれは目玉が飛び出るんじゃないかというほど目をひん剥いて仰天する。
「すまん。交通費を自費で賄わなくてはいけない時点で察してくれ……」
 眉尻を下げる蒼樹郎さんがなんとも切なげだった。その台詞と表情を見て、おれの口から「部屋代くらいは自分で出すよ」と言えればいいのだが、不甲斐ないことにおれの小遣いはほとんど参考書で消えているので雀の涙だ。高級旅館の一室ともなれば、一番格の低い部屋でも残りのほぼ全額が吹っ飛ぶだろう。
「その代わり、宿泊券に書いてある部屋は宿の中でも一番広い部屋だそうだ。寝床を仕切ることくらいはできるだろう。若い二人にはやりにくさもあるだろうが、それで勘弁してくれ」
「いやいやちょっと待てよ。おれは良くても、いや良いって言うのもどうかとは思うけど、リツは良かねえだろ。男と相部屋なんて――」
「あっさり『構いません』と返事された」
「……マジで??」
 さすが、二十歳も近い男に平然と添い寝をしただけある。美人のくせに男に対する警戒心がないのか。それとも物理的な意味で強いおかげで心臓も鉄製なのか。そういえば以前、暴漢数人に襲われた後も、怖がるどころかけろっとしていたんだっけか。相変わらず肝っ玉の据わった女だ。
「リツは行く気満々だぞ。二つ返事で喜んでいた」
「はあ。リツってそんなに温泉好きなんだ?」
「いや、温泉が好きだからというよりも――」

 *****

「最っ高~! いい眺めだわ~っ♡」
 行きの船が目的地たる離島の港に着いた直後――リツが二つ返事で旅行に行くと言った理由に、おれは心底納得がいった。
「あぁ見て、世助! あそこに猫ちゃんが四匹も並んでる! あ~ん可愛い~っ♡」
「うん、良かったな……」
 猫だらけの港町と聞けば、そりゃ筋金入りの猫好きであるリツは喜んで行くわけだ。たとえおれと相部屋だったとしても、瑣末なことだと快諾するだろう。猫への情熱がおれという男への警戒心を遥かに上回っているのだ。おれは好きな女と相部屋になれた幸運を密かに喜ぶべきなのか、男として全く意識されていないことを大いに悲しむべきなのかよく分からなかった。
「あぁん、まってキジトラちゃん! もっと可愛いお顔を見せてぇ~!」
 それにしても、リツは猫を前にすると吃驚するくらいポンコツになる。普段のキリッとした出来るメイド像は跡形もなく吹っ飛び、今や彼女はデレデレ顔で猫を追いかけ回す若干ヤバい女になっていた。
「にしても、なんでこの一角だけ猫だらけなんだ?」
「近くに漁港があるから、そこで獲れる魚を目当てに野良猫がやって来て、そのうち住み着いたんですって。住民としても観光客に宣伝できるから、そのまま地域で飼っているそうよ」
「詳しいな……」
藍舘あいだて島は猫好きの間では有名だもの!」
 きゃ~っ♡ なんて言いながら、リツはそのへんを歩いていた猫の背中をもっふもっふと撫でている。病気を持っている可能性もあるから気をつけて、と先に言っておいたのだがちゃんと覚えているのだろうか。
「あっ! また逃げられちゃった……私、よく猫ちゃんに逃げられちゃうのよね。こんなに好きでたまらないのに」
 この場合、猫に対するリツの圧がすごいから、と率直に教えてあげたほうがいいのだろうか。いくら猫が可愛いと言っても、自分より数倍も大きい生物から鼻息荒く迫られたら、当の猫もそりゃあ怖かろうと。しかし、正直に言ったらそれはそれでリツが可哀想な気もするし、はてどうしたものか。この短時間で既に五匹の猫に袖にされているリツを見ながら、おれは呆然としていた。
「ぶにゃあ」
「んぉっ? なんだなんだ?」
 めげずに猫を追いかけるリツに気を取られている間に、おれの足元にはいつの間にか一匹の猫がやって来ていた。周りの猫よりも少し大柄でむっちりとしていて、目は瞳の色がよく分からないほどに細い茶トラ柄の猫だ。
「なんだよ、お前。おれはなんにも持ってねえぞ?」
「にゃお~ぅ」
 おれの言葉など気にも留めない様子で、茶トラ猫はおれの足に頭を押し付けながら、太い声でふてぶてしく鳴く。首輪についている鈴のちりちりとした音色が、心なしか上機嫌な猫の気持ちを歌っているように聞こえる。
「しょーがねえなぁ」
 おれが屈んでその頭を撫でてやると、どうやらそれがお気に召したらしい。ここも撫でろあそこも撫でろと要求してきた末に、猫はごろりと転がっておれの手にじゃれ始めた。なんだかよく分からないが、おれはこの猫に気に入られたらしかった。おれもそれについつい気を良くして、リツに言った言葉を忘れて猫を撫で回した。
「おいおい、そんなに気軽に腹見せていいのかよ。悪い奴に良いようにされても知らねぇぞ~?」
 正直、おれは猫にここまで懐かれると思っていなかったので、撫でる手が止まらなくなっている。おれも猫もじゃれることに夢中になり、いよいよ猫の喉からごろごろという音が聞こえてきた頃。おれは自分の真横に人の影が伸びていることに気づいた。
「…………」
「リツ? どした?」
 振り返って見上げれば、その先にあった牡丹色の双眸がおれのことをどこか羨ましげに、というか恨めしげに捉えていた。
「……なんだか、すさまじい敗北感だわ」
 リツはおれの傍まで来て屈むと、唐突におれの肩をぼかぼかと叩き始める。
「なんでそんなふうにお腹まで撫でさせて貰えるのよ! 私なんかどの子も寄ってきてくれないのに! なんならさっき肉球で殴られたのに!」
 当たり所的には肩こりがちょうどほぐれて良いものの、自分に寄ってこない猫をおれが簡単に手懐けていたのがよほど悔しいのか、リツの拳はなかなかに力強い。
「あーもう! せっかく藍舘島に来たのに~!」
「痛てぇな。猫に怖がられてるんだよ、あんた」
「だって好きだから仕方がないじゃない~!」
 大人げなくプンスカ怒るリツに密かに萌えを感じつつ、ふとおれは、リツが口にした島の名前を頭の中で繰り返した。
 藍舘島――どこかで聞いたことがあるような気がするけど、果たして何だったか。
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