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五章『花、熱る 前編』
その三
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ナナヱに連れていかれた先はなんと、今夜の宿である邑咲苑だった。正確には、邑咲苑の裏手にある開けた空き地だ。
「ここならば大丈夫なのです。広いので使い放題なのです」
ナナヱに連れられながら、おれたちはいくつかの小さな門を潜り、人通りの少ない抜け道のような細い通路を通り、宿の仲居さんらしき人にも見送られながらそこにやってきた。仲居さんに姿を見られても平然と挨拶して通り抜けたナナヱだったが、果たしてあれは関係者でもない一介の観光客が通って良い道だったのだろうか。
「ねえ、ナナヱちゃん。宿の人に挨拶してたけど、ここって本当に試合に使っていい場所なの?」
リツも同じことを気にしていたらしい。ナナヱはリツの目をやけにじっと見つめたあとで
「ナナヱが言えば平気なのです」
と、心なしかおれと話す時よりも若干低めの声で答えた。
「邑咲苑は加峯家の持ち物ですから」
最後に、驚愕の一言を添えて、答えた。
「えっ…………うそォ!?」
「ほんとなのです」
あまりにも驚きすぎて、叫ぶのが数瞬遅れてしまった。まさか、おれでも知っているような高級旅館が加峯家の傘下にあるとは思わなかったのだ。
しかし、言われてみれば、加峯家は四大武家でもそれなりに財力がある家だ。つまり、ナナヱは正真正銘のご令嬢である。それにしては佇まいがあまりにゆるく、しかも初めに見た光景があの槍の投擲だったからそうとは思わなかったのだが――彼女が着崩して身につけている水色の着物は明らかに上物だ。それに、寅松が地域の野良猫と比べ物にならないほどでっぷり肥えているのは、彼を飼っている家がそれだけ裕福であるという証拠にほかならない。
いよいよ足を引っ掛けて転ばせるのすら怖くなってきたおれだが、それに念を押すようにナナヱは言う。
「手加減は無用なのですよ。ナナヱは本気で参りますゆえ、世助様の柔術もご存分に見せてくださいませ」
ナナヱはここに来るまでの間に手に取った訓練用の槍を構える。……多分、彼女的には構えているつもりなのだろう。
「……本当に大丈夫か。その構えで」
「本当に大丈夫なのです」
武器を握る時は肩の力を抜けとよく言うが、彼女の場合は力を抜きすぎて、下手をすると槍を落っことしそうだ。腰も十分に落ちていないし、足は突っ立っているだけ、当然ながら槍の穂先も安定していない。
「まあ、それがお前の戦法ならそのつもりで相手するけどよ」
少しばかり不安を覚えつつ、おれも腰を落として構えを取る。
「リツ、合図を頼む」
「分かった」
おれは開始直前、ナナヱが右手を振りあげたリツの方を一瞬だけちらりと見たのに気づいた。
「いざ尋常に。――始め!」
試合に意識を戻したナナヱが、前に向かって蹴り出す。やはり安定しない槍の構えのまま、穂先を突き出してくる。
構えの不安定さの割に初撃の勢いはそれほど悪くないが、所詮は子供の棒振りの範疇。穂先の角度や視線から軌道を読んで躱すことは十分に可能だった。
――しかし、ここでおれの想定外が起こる。
ナナヱの持った槍は一度おれの脇をすり抜けた後、ありえない軌道と速度で戻ってきたのだ。これも言ってしまえば単なる薙ぎ払い――それも、子供のちゃんばら遊びも同然の、技術などない棒振りだったのだが――それが逆に、おれの混乱を招いた。――型通りに戦うことに慣れたおれの虚を見事についたのである。
「せぇい」
「っ!?」
薙ぎ払いを上半身を反らして避けたおれへさらに畳み掛けるように、今度は槍が棍棒のように振り下ろされる。これもまた無茶な動きだった。普通ならば体の筋を痛めているであろう、上体を重心とは全く逆の方向へ大胆に捻ることによる槍の振り下ろし。――子供の身軽さと柔軟性があってこそ可能となる動き。
「よいせっ」
「っとぉ!」
実にやりにくい――どこから攻撃がやって来るか全く読めない。相手の拍子を崩すのが仕合の定石だが、彼女はそれ以前の部分に問題があった。こう来たらこう返す、といった不文律の拍子合わせがそもそもできないのだ。
予測した方向とは全く違う方向からやって来る、予測不可能な攻撃――型破りでさえない、型などそもそも存在しない、自由すぎる槍の取り回し。それがナナヱの武器だった。
「どうしたのです、世助様。まさか、ナナヱごときに引けを取るのですか」
「……言ってくれるじゃねえか」
ナナヱの挑発におれは応えるが、分の悪いことに、ナナヱの得物は攻撃範囲の広い槍である。素手での格闘戦を得意とするおれでは、なかなか反撃がしにくい。
「そっちこそ、攻撃が全部避けられてんぞ」
挑発し返してみせると、今度は子供らしくむっと頬を膨らませるナナヱ。眉根も僅かに寄っているように見えた。
「まだまだですよ、っと!」
ナナヱはその辺に落ちていた枝を拾うと、海辺でやっていたような構えを取って投げつけてくる。軽く飛び退いてそれを避ければ、丁度その足があったその位置へ吸い込まれるように、枝がまっすぐ突き刺さった。
先ほどの投擲を見たから分かってはいたのだが、こんなものに当たったらひとたまりもない。子供だと思って気を抜けば、容易く肉を貫かれてしまいそうだ。『お遊び』とナナヱ本人は口にしていたが、ナナヱの場合はそのお遊びが単純に強いから油断できない。
「ほらほら、どうした? 一発くらいはおれに当ててみなよ」
「むむむ……!」
からかうように舌を見せて煽れば、ナナヱはさらに枝をつかまえてきておれに投擲する。おれは彼女の動きから手の先を読むのを早々にやめ、反射神経のみを頼りにしてそれらを避ける。どうしても避けるのがギリギリになってしまうので紙一重の気を抜けない勝負だ。
……とはいえ、彼女が子供らしく挑発に乗ってくれたのは助かった。油断はできないが、かと言って本気を出すまでもなかったことが、おれにとっては救いだった。
「逃げてばかりではただの腰抜けなのです」
「それもそうだな、んじゃそろそろ」
おれはナナヱが投擲にがむしゃらになったところで、攻勢に出た。近接戦には向かない、投擲のための姿勢へ完全に切り替わったその瞬間に――一気に距離を詰めた。
「ぇ……っ」
ナナヱも、ここまで一貫して守勢を貫いていたおれに突進されるとは思わなかったらしい。喩えるなら、壁際まで追い詰めた鼠から突然反撃された猫のように。
「はい、っと」
「きゃぅっ」
無防備なナナヱに触れるのは容易かった。ぽんと肩を押されたナナヱはあえなく尻もちをつき、そのまますってんころりと後ろへ一回転した。
「はい、おれの勝ち。もし実戦だったら、急所に三発はお見舞いしてたな」
転げた彼女の髪についた砂埃を払ってやると、ナナヱは上目遣いで不満を訴えてきた。
「……これは柔術ではありません、世助様。ナナヱは柔術を見せてほしいと言ったはずなのです。今のはナナヱをただ突き飛ばしただけです」
「ああ、完全にナナヱの不意をつく形でな。ちなみに、これはわりと初期の段階で仕込まれる歩法の応用だ」
「ナナヱを見くびっているのですか」
「違うね。お前の実力がどれくらいかを確かめた上で、それに合わせて加減したんだ」
尻もちをついたままのナナヱと目線を合わせてしゃがむ。
「夏目流柔術はな、戦場で、殺し合いの場で用いられるために生み出された、武器を全く使わないことを前提にした武術だ。それがどういうことか分かるか?」
ナナヱはおれの問いかけに首を振って否定する。
「おれが持ってる技術は、素手で人殺しができちまう技術なんだよ。極端な話、槍や剣なら得物を手放せば良い。だが、自分の体は手放そうったってそうはいかねえ。だから、相手に合わせて力加減ができなきゃ簡単に人が死んじまうんだ。実際おれがいた道場でも、稽古試合で事故ったせいで門弟が一人死んでる」
実際に人殺しの場面に遭遇したことのないであろうナナヱは、門弟が死んだ、という言葉がショックだったらしい。ぐっと唾を飲み込んで、喉が動いているのが見えた。
「ナナヱ、お前さ。今のおれの動きが読めなかっただろ。単純な足運びも読めないようなやつ相手に本気で技かけてみろ。一撃で息の根が止まっちまうぞ」
誇張などではなく、おれはその気になれば人を殺すことができてしまう。人の骨など簡単に折ってしまうし、腕一本使えなくするのなんて造作もない。――あの時の門弟は、そういう類の怪我がもとで敗血症になって死んだ。
「お前は軽い気持ちで技を見せろと言ったのかもしれないけど、それは自分が相手の技を十分に受け止められる技量になってから言う言葉だ。お前は年齢のわりには強いだけで、おれと渡り合えるほど強いわけじゃねえ。そこんとこしっかり弁えとかないと、いつか痛い目見るぞ」
慢心して怪我をするだけならまだいい。最悪、死を招き寄せることだってあるのだ――死んでしまった門弟も、試合相手が年下で体格も小さかったから、舐めてかかって大怪我をしてしまったのだ。
「つーわけで、試合はこれで終わり」
おれの真顔に強ばっていたナナヱに向かって、おれはわざと明るい笑顔を作り、彼女の頭をぽんと撫でた。
*****
「は~ぁ……極楽極楽ぅ……」
暑い季節であろうと、温泉に浸かると思わずほうっと息が出るものだ。さらりとした湯に蓄積していた疲労がゆるりと溶けていくのを感じる。幸運なことに温泉にはちょうど人がおらず、貸切状態だった。
「あらあら、おじいちゃんみたいなこと言うのね」
「リツか。そっちも一人なのか?」
「ええ。まだお昼だからね」
他の客はまだ観光しているであろう時分だが、おれは船旅の疲れに加えてナナヱの相手もしたのでかなり汗をかいた。なので、疲労回復も兼ねて先にひとっ風呂浴びているというわけである。
ふと、おれは思った。外湯の空間を隔てているこの頼りない仕切りの向こう側にはリツがいて、そのリツはおそらく裸なのである。何を考えているんだこの煩悩まみれ、とかいう意見はごもっとも。しかしあんな美女と温泉旅行に来ているからには、そんな助平な妄想をしてしまうのも男の性である。妄想だけだから許してくれ、悪いとは思っているんだ、悪いとは。
「で、あの子には柔術を教えてあげたの?」
「いや、夏目流の技術そのものは門外不出だから、それはできねえんだ。試合や実戦の場面でしか技は見せちゃいけねえって決まりがあんの」
どこの流派も似たようなものかもしれないが、夏目流柔術を習うには道場に入門する必要がある。言わずもがな、一見さんはお断りだ。そして、他の流派に所属している門下生の入門は大抵敬遠される傾向にある。四大武家に至っては、お互いの流派への入門は暗黙の了解でご法度とされている部分があるのだ。
そのへんの事情をかいつまんで説明すると、
「こう言ったらなんだけど、随分面倒なのね」
とリツは言った
「事実だな」
昔からのしきたりというのは、実に面倒なものである。
話が途切れてからしばらくして、そういえば、とリツが言う。
「世助ってたまに旦那様やイシさんの体ほぐしてるわよね。すごくよく効くって聞いたけど」
「おう、わりと評判だぜ」
これは自慢だが、おれは柔術をやっていた関係で人間の体のツボや関節、筋肉なんかの構造を感覚的に理解している。本来は人体の弱点を突いて相手を行動不能にするための知識なのだが、これを応用すると、筋肉の緊張や体の疲れを和らげるのにも役立つのだ。
「それ、後で私にもしてくれない?」
「ぶッ」
いや、話の流れ的にそう来るんじゃないかとは思った。別にいかがわしいことは考えてない、いや、考えてはいるけれど。ただ、女の子にこんなことをしてもいいんだろうか。イシ婆や蒼樹郎さんはやっても大丈夫だからやっているのだけど、リツはさすがに心配だ。
「大丈夫か? 多分リツじゃ色々ときついと思うぞ」
「平気よ。……世助なら」
おれなら!? おれならいいのか! おれはどんだけリツから警戒されてないんだ!
おれはリツの警戒心のなさがいよいよ悲しくなってきた。いや、分かってたけどさ、そんなことは。おれと相部屋であることも気にしていないようだし、先日だって躊躇なく添い寝されたし。おれ、完全にリツから意識されてない。
「わかった……じゃあ試しに肩だけやってみるか?」
ええい、もうやけくそだ。ちょっと助平な雰囲気とかそんなものを期待してそわそわしても仕方ない。おれはせいぜい、彼女が満足するまでしっかり肩をほぐしてやろう。そうしよう。
「いッッ……たぁ~!! いぎぎぎぎ!!」
と、思って。今まさに肩をぐりぐりほぐしてやっている最中なのだが。開始から程なくして、リツからとんでもなく野太い声が出始めた。
リツの肩は凝りに凝りまくっていて、未だかつて遭遇したことがない次元にまで達していた。勿論、おれも力加減はしているつもりだが、肩の筋肉を指で刺激する度にリツは雄々しい悲鳴を上げて悶絶していた。
「こ、こんなはずでは……!」
「えっ? なにが?」
「なんでもないっ!」
さすがにリツもここまでの痛さは予想外だったのかもしれない。しかし、それでも顔を真っ赤にしてまでじっと痛みに耐えているのはすごいと思う。『死ぬほど痛いが怖いほど効く』と言われるおれの按摩は、十人のうち七人が『痛すぎて最後まで耐えられない』と口にするほどのものだ。
「リツ、本当に大丈夫か? しんどかったらやめるけど……」
「だ、大丈夫! 万年肩凝りが解消されると思えばこれしきの痛み……!」
「万年肩凝りって……そんなに長い間、肩凝りに悩まされてたのか?」
「常に重い胸をぶら下げてるんだから、肩凝りは人生のお友達なのよ――あいたたたたたた!!」
リツがもう涙目だ。おれとしては本気で心配なのだが、リツは我慢大会の真っ只中と言わんばかりに降参せず耐えていた。
「いぃいぃ~~!! うぅあぁ~~ッッ!!」
「おーおーすげぇ声」
普段のリツからは想像もつかない、ドスのきいた声だ。変に艶かしい声じゃなくて逆に安心ではあるけれど、おかげで部屋に漂う雰囲気には情緒の欠片もない。
「うぎゃあ~~っ!! 肩もげる肩もげるぅ~!!」
「もげないもげない。しかしほんとカチコチだなぁ、肩に烏賊の甲でも仕込んでるみてぇだ。荒療治になるぞ、こりゃ」
「ひ、酷い言われようだわ……いぃたたたたたたたたたぁ!!」
「なんかこれ、傍から見たらおれが暴力振るってるみたいになってないか?」
……結果としてリツは、見事最後まで痛みに耐えきった。が、痛みとの戦いは壮絶だったようで、夕飯の時間になるまでぐったりと倒れていた。
*****
さて、翌日――本来の予定では帰りの船に乗る時間だったのだが、おれたちは部屋の中から呆然と海を見ていた。海は昨日の穏やかさが嘘に思えるほど、大しけだった。それに追い打ちをかけるようにひゅうひゅうと唸る風が部屋の窓を揺らし、暗鬱とした気持ちを煽ってくる。
今日はもう船を出せない、と聞いてすっかり落ち込み困り果てたおれたちのもとへやってきたのは、昨日手合わせをしたナナヱだった。どうやらおれらの困惑を事前に察知して、声をかけに来てくれたらしかった。
「今夜の宿なら心配無用なのです。邑咲苑にまた泊まれば良いのです」
開口一番に、ナナヱはそう断言した。
「でもおれたち、もう一泊できる金がねえんだけど……」
「問題ないのです。ナナヱが言えば、空き部屋を解放することができます。お食事も三食すべてご用意するのです。ここは加峯家の持ち物ですし、世助様たちは加峯家のお客様なのですから、そう言えば万事解決なのです」
「……マジで?」
「さすが名家ね……」
この子と知り合いになって本当に良かったと思った瞬間だった。ナナヱはほっと胸を撫で下ろすおれたちに「ただ、」と付け加える。
「本日は別のお客様がここに泊まることになっているので、お部屋は移動してもらわないとなのです。この台風で来れなくなったお客様がいて、お部屋が二つ空きましたので、お二人はどうぞそちらをお使いくださいませ」
「あ、それは助かるな」
「……そうね」
おれは宿に困らずに済んだ幸運を素直に喜んだ。が、脇にいたリツは未だに暗い顔をしている。リツは真面目だから、高級旅館の一室にタダで泊まるこの展開には気後れしているのだろうか。
「あの、世助様。ひとつ、いいですか」
ナナヱは背伸びをするようにおれをじっと見上げてから、ぺこりとお辞儀をした。
「昨日はお手合わせ頂いて、ありがとうございました」
「そんな礼を言われるようなことはしてないよ」
「いいえ、ナナヱはひとつ、己の未熟さに気づくことができたのです。己の慢心に気づかせて下さった世助様には頭が下がる思いなのです」
「そうか? まあ、お前にとっていい影響があったなら良かったよ」
「ですので」
あまりに手厚いもてなしと深い感謝を受けて、むず痒くなってきたおれに、ナナヱは衝撃的なひと言を放った。
「世助様。どうかナナヱのことを娶ってはくれませんか」
「ここならば大丈夫なのです。広いので使い放題なのです」
ナナヱに連れられながら、おれたちはいくつかの小さな門を潜り、人通りの少ない抜け道のような細い通路を通り、宿の仲居さんらしき人にも見送られながらそこにやってきた。仲居さんに姿を見られても平然と挨拶して通り抜けたナナヱだったが、果たしてあれは関係者でもない一介の観光客が通って良い道だったのだろうか。
「ねえ、ナナヱちゃん。宿の人に挨拶してたけど、ここって本当に試合に使っていい場所なの?」
リツも同じことを気にしていたらしい。ナナヱはリツの目をやけにじっと見つめたあとで
「ナナヱが言えば平気なのです」
と、心なしかおれと話す時よりも若干低めの声で答えた。
「邑咲苑は加峯家の持ち物ですから」
最後に、驚愕の一言を添えて、答えた。
「えっ…………うそォ!?」
「ほんとなのです」
あまりにも驚きすぎて、叫ぶのが数瞬遅れてしまった。まさか、おれでも知っているような高級旅館が加峯家の傘下にあるとは思わなかったのだ。
しかし、言われてみれば、加峯家は四大武家でもそれなりに財力がある家だ。つまり、ナナヱは正真正銘のご令嬢である。それにしては佇まいがあまりにゆるく、しかも初めに見た光景があの槍の投擲だったからそうとは思わなかったのだが――彼女が着崩して身につけている水色の着物は明らかに上物だ。それに、寅松が地域の野良猫と比べ物にならないほどでっぷり肥えているのは、彼を飼っている家がそれだけ裕福であるという証拠にほかならない。
いよいよ足を引っ掛けて転ばせるのすら怖くなってきたおれだが、それに念を押すようにナナヱは言う。
「手加減は無用なのですよ。ナナヱは本気で参りますゆえ、世助様の柔術もご存分に見せてくださいませ」
ナナヱはここに来るまでの間に手に取った訓練用の槍を構える。……多分、彼女的には構えているつもりなのだろう。
「……本当に大丈夫か。その構えで」
「本当に大丈夫なのです」
武器を握る時は肩の力を抜けとよく言うが、彼女の場合は力を抜きすぎて、下手をすると槍を落っことしそうだ。腰も十分に落ちていないし、足は突っ立っているだけ、当然ながら槍の穂先も安定していない。
「まあ、それがお前の戦法ならそのつもりで相手するけどよ」
少しばかり不安を覚えつつ、おれも腰を落として構えを取る。
「リツ、合図を頼む」
「分かった」
おれは開始直前、ナナヱが右手を振りあげたリツの方を一瞬だけちらりと見たのに気づいた。
「いざ尋常に。――始め!」
試合に意識を戻したナナヱが、前に向かって蹴り出す。やはり安定しない槍の構えのまま、穂先を突き出してくる。
構えの不安定さの割に初撃の勢いはそれほど悪くないが、所詮は子供の棒振りの範疇。穂先の角度や視線から軌道を読んで躱すことは十分に可能だった。
――しかし、ここでおれの想定外が起こる。
ナナヱの持った槍は一度おれの脇をすり抜けた後、ありえない軌道と速度で戻ってきたのだ。これも言ってしまえば単なる薙ぎ払い――それも、子供のちゃんばら遊びも同然の、技術などない棒振りだったのだが――それが逆に、おれの混乱を招いた。――型通りに戦うことに慣れたおれの虚を見事についたのである。
「せぇい」
「っ!?」
薙ぎ払いを上半身を反らして避けたおれへさらに畳み掛けるように、今度は槍が棍棒のように振り下ろされる。これもまた無茶な動きだった。普通ならば体の筋を痛めているであろう、上体を重心とは全く逆の方向へ大胆に捻ることによる槍の振り下ろし。――子供の身軽さと柔軟性があってこそ可能となる動き。
「よいせっ」
「っとぉ!」
実にやりにくい――どこから攻撃がやって来るか全く読めない。相手の拍子を崩すのが仕合の定石だが、彼女はそれ以前の部分に問題があった。こう来たらこう返す、といった不文律の拍子合わせがそもそもできないのだ。
予測した方向とは全く違う方向からやって来る、予測不可能な攻撃――型破りでさえない、型などそもそも存在しない、自由すぎる槍の取り回し。それがナナヱの武器だった。
「どうしたのです、世助様。まさか、ナナヱごときに引けを取るのですか」
「……言ってくれるじゃねえか」
ナナヱの挑発におれは応えるが、分の悪いことに、ナナヱの得物は攻撃範囲の広い槍である。素手での格闘戦を得意とするおれでは、なかなか反撃がしにくい。
「そっちこそ、攻撃が全部避けられてんぞ」
挑発し返してみせると、今度は子供らしくむっと頬を膨らませるナナヱ。眉根も僅かに寄っているように見えた。
「まだまだですよ、っと!」
ナナヱはその辺に落ちていた枝を拾うと、海辺でやっていたような構えを取って投げつけてくる。軽く飛び退いてそれを避ければ、丁度その足があったその位置へ吸い込まれるように、枝がまっすぐ突き刺さった。
先ほどの投擲を見たから分かってはいたのだが、こんなものに当たったらひとたまりもない。子供だと思って気を抜けば、容易く肉を貫かれてしまいそうだ。『お遊び』とナナヱ本人は口にしていたが、ナナヱの場合はそのお遊びが単純に強いから油断できない。
「ほらほら、どうした? 一発くらいはおれに当ててみなよ」
「むむむ……!」
からかうように舌を見せて煽れば、ナナヱはさらに枝をつかまえてきておれに投擲する。おれは彼女の動きから手の先を読むのを早々にやめ、反射神経のみを頼りにしてそれらを避ける。どうしても避けるのがギリギリになってしまうので紙一重の気を抜けない勝負だ。
……とはいえ、彼女が子供らしく挑発に乗ってくれたのは助かった。油断はできないが、かと言って本気を出すまでもなかったことが、おれにとっては救いだった。
「逃げてばかりではただの腰抜けなのです」
「それもそうだな、んじゃそろそろ」
おれはナナヱが投擲にがむしゃらになったところで、攻勢に出た。近接戦には向かない、投擲のための姿勢へ完全に切り替わったその瞬間に――一気に距離を詰めた。
「ぇ……っ」
ナナヱも、ここまで一貫して守勢を貫いていたおれに突進されるとは思わなかったらしい。喩えるなら、壁際まで追い詰めた鼠から突然反撃された猫のように。
「はい、っと」
「きゃぅっ」
無防備なナナヱに触れるのは容易かった。ぽんと肩を押されたナナヱはあえなく尻もちをつき、そのまますってんころりと後ろへ一回転した。
「はい、おれの勝ち。もし実戦だったら、急所に三発はお見舞いしてたな」
転げた彼女の髪についた砂埃を払ってやると、ナナヱは上目遣いで不満を訴えてきた。
「……これは柔術ではありません、世助様。ナナヱは柔術を見せてほしいと言ったはずなのです。今のはナナヱをただ突き飛ばしただけです」
「ああ、完全にナナヱの不意をつく形でな。ちなみに、これはわりと初期の段階で仕込まれる歩法の応用だ」
「ナナヱを見くびっているのですか」
「違うね。お前の実力がどれくらいかを確かめた上で、それに合わせて加減したんだ」
尻もちをついたままのナナヱと目線を合わせてしゃがむ。
「夏目流柔術はな、戦場で、殺し合いの場で用いられるために生み出された、武器を全く使わないことを前提にした武術だ。それがどういうことか分かるか?」
ナナヱはおれの問いかけに首を振って否定する。
「おれが持ってる技術は、素手で人殺しができちまう技術なんだよ。極端な話、槍や剣なら得物を手放せば良い。だが、自分の体は手放そうったってそうはいかねえ。だから、相手に合わせて力加減ができなきゃ簡単に人が死んじまうんだ。実際おれがいた道場でも、稽古試合で事故ったせいで門弟が一人死んでる」
実際に人殺しの場面に遭遇したことのないであろうナナヱは、門弟が死んだ、という言葉がショックだったらしい。ぐっと唾を飲み込んで、喉が動いているのが見えた。
「ナナヱ、お前さ。今のおれの動きが読めなかっただろ。単純な足運びも読めないようなやつ相手に本気で技かけてみろ。一撃で息の根が止まっちまうぞ」
誇張などではなく、おれはその気になれば人を殺すことができてしまう。人の骨など簡単に折ってしまうし、腕一本使えなくするのなんて造作もない。――あの時の門弟は、そういう類の怪我がもとで敗血症になって死んだ。
「お前は軽い気持ちで技を見せろと言ったのかもしれないけど、それは自分が相手の技を十分に受け止められる技量になってから言う言葉だ。お前は年齢のわりには強いだけで、おれと渡り合えるほど強いわけじゃねえ。そこんとこしっかり弁えとかないと、いつか痛い目見るぞ」
慢心して怪我をするだけならまだいい。最悪、死を招き寄せることだってあるのだ――死んでしまった門弟も、試合相手が年下で体格も小さかったから、舐めてかかって大怪我をしてしまったのだ。
「つーわけで、試合はこれで終わり」
おれの真顔に強ばっていたナナヱに向かって、おれはわざと明るい笑顔を作り、彼女の頭をぽんと撫でた。
*****
「は~ぁ……極楽極楽ぅ……」
暑い季節であろうと、温泉に浸かると思わずほうっと息が出るものだ。さらりとした湯に蓄積していた疲労がゆるりと溶けていくのを感じる。幸運なことに温泉にはちょうど人がおらず、貸切状態だった。
「あらあら、おじいちゃんみたいなこと言うのね」
「リツか。そっちも一人なのか?」
「ええ。まだお昼だからね」
他の客はまだ観光しているであろう時分だが、おれは船旅の疲れに加えてナナヱの相手もしたのでかなり汗をかいた。なので、疲労回復も兼ねて先にひとっ風呂浴びているというわけである。
ふと、おれは思った。外湯の空間を隔てているこの頼りない仕切りの向こう側にはリツがいて、そのリツはおそらく裸なのである。何を考えているんだこの煩悩まみれ、とかいう意見はごもっとも。しかしあんな美女と温泉旅行に来ているからには、そんな助平な妄想をしてしまうのも男の性である。妄想だけだから許してくれ、悪いとは思っているんだ、悪いとは。
「で、あの子には柔術を教えてあげたの?」
「いや、夏目流の技術そのものは門外不出だから、それはできねえんだ。試合や実戦の場面でしか技は見せちゃいけねえって決まりがあんの」
どこの流派も似たようなものかもしれないが、夏目流柔術を習うには道場に入門する必要がある。言わずもがな、一見さんはお断りだ。そして、他の流派に所属している門下生の入門は大抵敬遠される傾向にある。四大武家に至っては、お互いの流派への入門は暗黙の了解でご法度とされている部分があるのだ。
そのへんの事情をかいつまんで説明すると、
「こう言ったらなんだけど、随分面倒なのね」
とリツは言った
「事実だな」
昔からのしきたりというのは、実に面倒なものである。
話が途切れてからしばらくして、そういえば、とリツが言う。
「世助ってたまに旦那様やイシさんの体ほぐしてるわよね。すごくよく効くって聞いたけど」
「おう、わりと評判だぜ」
これは自慢だが、おれは柔術をやっていた関係で人間の体のツボや関節、筋肉なんかの構造を感覚的に理解している。本来は人体の弱点を突いて相手を行動不能にするための知識なのだが、これを応用すると、筋肉の緊張や体の疲れを和らげるのにも役立つのだ。
「それ、後で私にもしてくれない?」
「ぶッ」
いや、話の流れ的にそう来るんじゃないかとは思った。別にいかがわしいことは考えてない、いや、考えてはいるけれど。ただ、女の子にこんなことをしてもいいんだろうか。イシ婆や蒼樹郎さんはやっても大丈夫だからやっているのだけど、リツはさすがに心配だ。
「大丈夫か? 多分リツじゃ色々ときついと思うぞ」
「平気よ。……世助なら」
おれなら!? おれならいいのか! おれはどんだけリツから警戒されてないんだ!
おれはリツの警戒心のなさがいよいよ悲しくなってきた。いや、分かってたけどさ、そんなことは。おれと相部屋であることも気にしていないようだし、先日だって躊躇なく添い寝されたし。おれ、完全にリツから意識されてない。
「わかった……じゃあ試しに肩だけやってみるか?」
ええい、もうやけくそだ。ちょっと助平な雰囲気とかそんなものを期待してそわそわしても仕方ない。おれはせいぜい、彼女が満足するまでしっかり肩をほぐしてやろう。そうしよう。
「いッッ……たぁ~!! いぎぎぎぎ!!」
と、思って。今まさに肩をぐりぐりほぐしてやっている最中なのだが。開始から程なくして、リツからとんでもなく野太い声が出始めた。
リツの肩は凝りに凝りまくっていて、未だかつて遭遇したことがない次元にまで達していた。勿論、おれも力加減はしているつもりだが、肩の筋肉を指で刺激する度にリツは雄々しい悲鳴を上げて悶絶していた。
「こ、こんなはずでは……!」
「えっ? なにが?」
「なんでもないっ!」
さすがにリツもここまでの痛さは予想外だったのかもしれない。しかし、それでも顔を真っ赤にしてまでじっと痛みに耐えているのはすごいと思う。『死ぬほど痛いが怖いほど効く』と言われるおれの按摩は、十人のうち七人が『痛すぎて最後まで耐えられない』と口にするほどのものだ。
「リツ、本当に大丈夫か? しんどかったらやめるけど……」
「だ、大丈夫! 万年肩凝りが解消されると思えばこれしきの痛み……!」
「万年肩凝りって……そんなに長い間、肩凝りに悩まされてたのか?」
「常に重い胸をぶら下げてるんだから、肩凝りは人生のお友達なのよ――あいたたたたたた!!」
リツがもう涙目だ。おれとしては本気で心配なのだが、リツは我慢大会の真っ只中と言わんばかりに降参せず耐えていた。
「いぃいぃ~~!! うぅあぁ~~ッッ!!」
「おーおーすげぇ声」
普段のリツからは想像もつかない、ドスのきいた声だ。変に艶かしい声じゃなくて逆に安心ではあるけれど、おかげで部屋に漂う雰囲気には情緒の欠片もない。
「うぎゃあ~~っ!! 肩もげる肩もげるぅ~!!」
「もげないもげない。しかしほんとカチコチだなぁ、肩に烏賊の甲でも仕込んでるみてぇだ。荒療治になるぞ、こりゃ」
「ひ、酷い言われようだわ……いぃたたたたたたたたたぁ!!」
「なんかこれ、傍から見たらおれが暴力振るってるみたいになってないか?」
……結果としてリツは、見事最後まで痛みに耐えきった。が、痛みとの戦いは壮絶だったようで、夕飯の時間になるまでぐったりと倒れていた。
*****
さて、翌日――本来の予定では帰りの船に乗る時間だったのだが、おれたちは部屋の中から呆然と海を見ていた。海は昨日の穏やかさが嘘に思えるほど、大しけだった。それに追い打ちをかけるようにひゅうひゅうと唸る風が部屋の窓を揺らし、暗鬱とした気持ちを煽ってくる。
今日はもう船を出せない、と聞いてすっかり落ち込み困り果てたおれたちのもとへやってきたのは、昨日手合わせをしたナナヱだった。どうやらおれらの困惑を事前に察知して、声をかけに来てくれたらしかった。
「今夜の宿なら心配無用なのです。邑咲苑にまた泊まれば良いのです」
開口一番に、ナナヱはそう断言した。
「でもおれたち、もう一泊できる金がねえんだけど……」
「問題ないのです。ナナヱが言えば、空き部屋を解放することができます。お食事も三食すべてご用意するのです。ここは加峯家の持ち物ですし、世助様たちは加峯家のお客様なのですから、そう言えば万事解決なのです」
「……マジで?」
「さすが名家ね……」
この子と知り合いになって本当に良かったと思った瞬間だった。ナナヱはほっと胸を撫で下ろすおれたちに「ただ、」と付け加える。
「本日は別のお客様がここに泊まることになっているので、お部屋は移動してもらわないとなのです。この台風で来れなくなったお客様がいて、お部屋が二つ空きましたので、お二人はどうぞそちらをお使いくださいませ」
「あ、それは助かるな」
「……そうね」
おれは宿に困らずに済んだ幸運を素直に喜んだ。が、脇にいたリツは未だに暗い顔をしている。リツは真面目だから、高級旅館の一室にタダで泊まるこの展開には気後れしているのだろうか。
「あの、世助様。ひとつ、いいですか」
ナナヱは背伸びをするようにおれをじっと見上げてから、ぺこりとお辞儀をした。
「昨日はお手合わせ頂いて、ありがとうございました」
「そんな礼を言われるようなことはしてないよ」
「いいえ、ナナヱはひとつ、己の未熟さに気づくことができたのです。己の慢心に気づかせて下さった世助様には頭が下がる思いなのです」
「そうか? まあ、お前にとっていい影響があったなら良かったよ」
「ですので」
あまりに手厚いもてなしと深い感謝を受けて、むず痒くなってきたおれに、ナナヱは衝撃的なひと言を放った。
「世助様。どうかナナヱのことを娶ってはくれませんか」
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