神秘と悪霊の魔"京"へようこそ!:鬼娘と契約して巫女になった俺が、悪霊退治の英雄(ヒロイン)になる!

戸﨑享

文字の大きさ
9 / 23
Ver 1.1 京の街をご案内! サブストーリー「怖い姉貴との再会」

第1話 怖い姉貴との遭遇

しおりを挟む
「ようこそ! 人間と式神と神霊と神人が共存する楽園京都へ! 本日のガイドを務めさせていただきます私、夢原希子《ゆめはら きこ》が街を案内します」

 まだ外を歩けないレイの代わりに買い物をするべく街を歩いていると、知っているヤツの声が聞こえた。団体さんを案内するのは俺より4歳年上の女性。

 俺はそいつをよく知っているから、珍しく仕事をするところを見ようとついそちらへ目を向けてしまった。

 俺の名前は夢原礼。そこまで言えば、あのガイドと俺の関係性は分かるというものだ。あれは怖い怖い俺の姉貴だ。今はこの都を悪霊や悪質な神人から守る防衛軍である『京都反逆軍』で働いている。

 それにしても、今俺を照り焼きにする勢いでキラキラ照らす太陽を浴びて、まだ春なのにもう夏の訪れを感じそうになる気分だ。そんな中で今から姉貴に歩かされることになる団体さんの心境はいかに。

 ……表情を見る限りは嫌そうな顔をしている人間はいない。最初の口ぶりから察するにあの団体はきっと事情があって、この街に避難してきたばかりの人間なのだろう。

 そういう類の人間は頻繁にやってくる。正直京都育ちの子供から見て、外の常識が通じない神人の世でどうやって生きていたのか不思議に思うくらいだ。

 噂だけはいくらか聞いたことがある、電池とか水槽とか品種改良とか? 理解不可能だったのであまり気にしてない。

 それに、この街の外に出ることとは良くないというのはこの街に住む者として守るべき鋼の掟の1つだ。それを遵守すれば外のことなど考えなくても生きていける。

 外から来た人間はこの街に来たときどんな反応をするのだろう。レイは急ぎの買い物じゃないから夜までに戻ってきてくれれば、という話もしていたし昼だから危険も少ない。好奇心に身を任せその団体について行ってみることにした。





「都の中心はあの反逆軍の要塞です。倭の島がまだ1つの国だったころ、此処には京都駅があったと言います。この要塞の外観は当時の建物を再現したものです」

 姉貴に見つからないように距離を取りながらついていってその仕事ぶりを観察しているが、思ったより姉貴は様になっていると思う。

「反逆軍の要塞を始め、いくつかの特別な建物に関しては他の家や商店とは一線を画す見た目になっております。逆にその他は基本的に統一的な景観を保っています」

 倭の伝統的な木造建築に見える建物が並び、石造りの道路が敷かれている街は、1つ1つの家はデザインや色に細かな違いがあっても、全体的に調和がとれているように見える。

 特殊な役割を持つ建物以外は皆地上2階までで統一されているが、実際中身も同じような印象をもてる建物は半数程度だろう。

 基本的に住宅に関しては中に入ったら時代を一気に1000年飛ばしたようなハイテクな設備がそろい踏み。商店も露店は調和を崩さないことを求められるが、外と中に隔たりがある店は、入った瞬間に倭の雰囲気が一気にぶっ飛ぶところも多い。

 俺的には、地上2階建ての普通の家が入ってみたら地下12階まで広がっているマンションやホテルだったりするところが、かなりカオスで面白いなと思う。

 そう言う意味で、建物の中に入ると違った驚きを得られる不思議な街だ。

「基本的に大通りには皆さんがお世話になることも多い店が多いですね。細道に入っていくほど住宅の並びが多いです。もちろんそういうところにも面白い店はあったりするので、住宅を決めた際にはぜひ、お近くを歩いてみることをお勧めします」

 姉貴はここで立ち止まる。

 ん? あれ?

 いつもの姉貴の顔でこっち見た?

 まさか、100メートルも離れてんだぞ。お仕事ちゅうに気づくわけないって。こっちだって辛うじて姉貴の大声だけ聞こえるくらいなのに。

 真剣な顔でお客様の方に振り返る姉貴は、観光とはまた違った話を始めた。

「京の都には寺院や神社が多いです。そこは私たちが人間以外の生命を一括りにして式神と呼ぶ生き物が好む場所であり、特殊な場をつくる特別な式神も住んでいることがあります」

 有名なのは南部の鳥居大社《おおやしろ》の話だろうか。俺は見たことないけれど大社には突如として現れた稲荷様という大神が白い獣の姿を借りて住んでいるとか。

「彼らの命を狙って、どこから悪霊が湧くのもまたこの街。彼らは人間や式神を食うことを好みます。夜中、特に11時を超えたら歩き回るのはやめましょう。灯りが減ったころに、連中は街を徘徊するのです」

 俺はふと疑問に思ったことを呟いた。

「そう言えば、どうして悪霊って現れるんだろうなぁ……?」

「どうしてって?」

 誰かが同じことを質問したようだ。

「それはまだ明らかになってないのです。地震のような自然災害だと思って都の住人は割り切っています。ですがお付き合いをする必要は皆様にはありません。夜は静かに――」

 まだ昼にも関わらず爆発が起きた音が聞こえた。それがちょうど姉貴がいる方向だ。

 まさか、悪霊は夜にしか現れないはず……。

 いや、このセリフはフラグとかいうヤツだな。そして悪い予感は当たり昼なのに元気な悪霊が現れた。黒い瘴気を纏って赤い瞳だけと微かに輪郭がつかめる狼のような姿。

 昼に現れること自体は異常ではない。稀というだけだ。あの団体さんは不運だったというしかない。

 姉貴の実力を疑うわけじゃないが、狼の形をしているくせに群れていて、数がかなり多い。周りに戦える人間はいないようだ。皆恐れをなしている。

 なら、俺の出番だ。

 レイの呪術で見えなくしていたが今俺は帯刀している。レイが己の身を護れるように持たせてくれていたものだ。

 近くの路地裏へと逃げ込んで、抜刀する

 抜刀は契約して得た力を行使すると宣言するに等しい。刃が見え始めると共に俺の姿も変化する!

 流れてくるのは鬼の呪力、契約によって繋がっている俺の相棒、レイは鬼であり、俺は彼女の巫女となった。

 ちゃんと言っておくが俺は男だ。残念ながらいわゆる『オレっ娘《こ》』ではないことを声高らかに宣言しておこう。

 しかしこの刀を抜くことでそうとも言えなくなる。男の状態ではよわよわな俺は鬼の彼女から力を借りる代わりに女性の姿をとることになるのだ。

 体の形、使い方、五感の感じ方が変わり、毎回男の時との差で困惑するけど、この姿を取ればもうそこにはよわよわな夢原礼はいない。

 鬼の巫女としての俺は鬼である彼女の力を使うことが可能になり、戦えるようになる。

 変身完了! 俺は路地裏から駆け出した。悲鳴が聞こえる方へ全力疾走する。

 見ると俺が変身している間に、黒い狼は既に団体様への近づいている。てか口から変な炎吐いてる怖い。

 でも、恐れるな。俺がこの力を手に入れたのは、困っている人を見捨てない善い人間になる誓いなのだ。

「あ、レイちゃんじゃないあれ! 昼でも出てくるのか。すごいな、本当にスーパーヒロインだ」

 ヒロイン言うな。いや、それはこの姿を見れば仕方なしか。

「ああ、お美しい。レイ&レイの1人、がんばれー!」

 お美しい言うな。

 ここ最近は夜に人助けを続けているため、それなりに知名度も上がってきている。さすがにマスコミが騒ぎたてすぎている気がするが、応援を受けるのは悪い気分じゃない。

 脚に力を籠め地面を蹴る。50メートル先まで近づいてそこからあの悪霊に向けてぶっ飛んだ。

 着地様に狼を一匹斬り祓った。絶命と共に体が消えるところを見るそれほど強力な悪霊ではないようだ。

 続けざまに飛び掛かってきた2匹を斬り伏せ消滅させる。

 やべ、1匹通した。

「逃げ」

 姉貴が獣型の悪霊に恐れを持たず回し蹴りをする。ものすごい勢いだ。刃物で切ったわけでもなく打撃で1撃KO、悪霊を暴力で退けた。

 悪霊がそれを見てビビる。隙を晒した今がチャンスだ。突きと共に突っ込んでさらに1匹、続けて回転切りで一気に3匹を斬り祓う。

 実は鬼も悪霊の一種で俺は今その力を使って身体能力を上げているのだが、彼女から受け取ったこの刀はその力を通しても悪を祓う剣として機能している。すごい。

 そしてそれと同様にすごいのは、後ろで少し離れたところで大暴れしている姉貴だ。

「あの子も反逆軍なのか」

「反逆軍ってすごいんだな……」

 悪霊を前に仕事柄携帯が許可されている刀を抜刀する。刃の長さから見て脇差くらいだが鬼の力で暴れている俺の2倍くらい早く片付けていく。

 えぇ……自身失くすなぁ。元々自分の力ではないけど。

「ふぅ」

 全員ぶっ倒すと周りから拍手が上がった。おい誰だ、あんな可愛いのに、って言ったやつ。

「ありがとう。援軍助かったわ」

 姉貴に話しかけられた。さすがに今の俺は女の姿だ。バレてはいないだろう。

「あなたが最近噂になってるレイ&レイの1人ねぇ……もしかして学校所属なのかしら?」

「あ、ええ。まあ」

「弟も近くにいたのよ。悪霊一緒に祓ってくれてありがとねー。 おかげで弟にも危害は出なかったわ」

 え、マジで言ってるの? 気づかれてたの? こわ。

「そ、そうですか……」

「ふふ、勇ましい子を想像してたけど、困った姿は可愛いわぁ。ウチとこの後お茶しない? 軍の本部に部屋があるからさ」

 急なお誘いだな。姉貴ってナンパ師なのか? それはさておきどうしよ? 別にこの姿自体は隠しているわけではないのだが。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...