ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~救出作戦~

良く食うなぁ、坊主

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「ほい、エレファント・バッファローのステーキ追加分の8枚だよ。
それにしても良く食うなぁ、坊主。」

「今日は色々あったのでお腹が空いちゃって…『ムグムグ…』あ、エレファント・バッファローのシチュー2人前良いですか?」

「あいよ。
それにしたって食い過ぎだろう…
店としては嬉しい限りだが、そんなに食うと動けなくなるぞ…
ほら、シチューお待ちどおさん。
サービスでパン2つ付けてやる、余裕があるなら食っちまいな。」

「あ、『ムシャムシャ』どうも『ムシィッ…』ありがとう『ズズズ…』ございます。」

「礼は食い終わってからで良いから落ち着いて食いな。」


暗くなってきたので滅びの森でのランス・ラビット狩りを終え、獣人国に戻ってきたノアは、一先ず疲労で震える足を引き摺りつつ冒険者ギルドに向かい、報告をした後ランス・ラビットとダックス憤怒の解体依頼をお願いしに行った。(魔蛸は塩問題がまだ解決していないので、解体依頼は出していない。)



何やら驚かれたが、頭部が抉り飛ばされていれば誰だって驚くだろう。
解体の職員と何を話したか覚えていないが、疲労感よりも空腹感が凄かったので、足早に屋台へ向かい今に至っている。

いつもの倍食べているにも関わらず、食っても食っても即消化されていってる様な感覚を覚える程に空腹感が止まらないのであった。


(『どうやら俺を出現させるのは相当燃費が掛かる様だな。
俺もこの【固有スキル】使われるの久々だから知らんかったわ。』)

(うーん…それじゃあ対策として食糧買いだめするか大量に作るかしようかな…
この空腹感は本当にヤバいよ…)

「すいません。」

「ん?」

「エレファント・バッファローのステーキお持ち帰りって出来ますか?」

「出来ない事は無いが…まだ食うのか坊主…」


結局店主にお願いしてエレファント・バッファローのステーキを8枚焼いて貰い、持ち帰る事となった。





「ふー、食った食った。
さて、解体の終了時間までまだまだあるし、宿に行って仮眠でも…ん?」


<気配感知>の範囲内に『犬姫』のハナと部下のサクラとモコの反応を感知。
真っ直ぐノアが居る屋台を目指していた。

(何かあったのかな?…まぁ巡回か何かだろうな。)

と考えたノアは、屋台の席を立ち、通りの脇に建つ絞った果物の果汁を販売している屋台へと向かう。

仄かに甘い香りが漂っていて前々から寄ってみたいと思っていたのだ。






「すいませーん。
この『バナナナナナナ』と、『甘王』って言う苺のミックスジュースを4人分下さい。」

「はいよー。
お連れさんの分だね?毎度ありー。」


屋台の狐獣人がジュースの作成に取り掛かる。
その間ノアは屋台の前で待機しているのだが、その後ろではハナとサクラ、モコの3人が無言で佇んでいた。


「…あ、あの、何か用ですか?
そう無言で背後に立たれると非常に居辛いのですが…」

「いえ、ノア様の用事が済んでからお伝え致しますのでお気になさらず。」

(あ、口調が仕事モードっぽい…)


3人は手を後ろ手に組んで待機姿勢を取っていた。

コッ…

「ほいよー、『バナナナナナナ』と『甘王』のミックスジュース4人分ね。」

「ありがとうございます。
それではこちらの用事は済んだので、皆さんの用事を伺いましょうか。
それと、はいこれ、皆さんの分です。」

「「「え?…あ、ありがとうございます…」」」


ミックスジュースを渡そうとすると、最初は遠慮していた3人だが、善意を無下に出来ないとか理由を付けて受け取ってくれた。

3人の表情は騎士然としていたが、コクコクと飲み干す時の3人の尻尾はブンブンと振られていた。





「指名依頼?僕にですか?」

「えぇ。と言いますかノア様だから、と言った方が良いですね。」

「依頼内容は『宝物庫最奥への先導』。
正規ルートの調査に向かわせたものの、3層中盤以降誰も突破出来ずに断念しました。」

「なので唯一突破されましたノア様に先導をお願いしたい。
という事で冒険者ギルド長ガラパゴからの直接指名依頼になります。如何でしょう?」


と、冒険者ギルドからの指名依頼をお願いされるノア。
だが反応は芳しく無かった。


「うーん…先導するのは良いですけど、3層を突破するのは最終的には地力がものを言いますので、僕が行ったからって攻略出来るかどうかは分かりませんよ?」

「「「うっ…」」」


3層の木人は破壊不可な上に決まった行動パターンの様な物は存在しない。
その時その時で臨機応変に対応しなければならないので、ノアが先導しても攻略出来るかは後続の者達次第である。


「そ、それでも、ノア様がどう動くかを間近で見て何か取り入れられれば、攻略の足掛かりになるかと思います。」

「うーん…因みに参加する調査隊は何人居るのですか?」

「参加人数は私達含めて50人になります。」

「50て…そんなに居たら被弾率上がっちゃいますよ?…ん?"私達"?」


どうやらこの指名依頼には冒険者ギルドの調査隊と『犬姫』の3人(ハナ、サクラ、モコ)も参加する様だ。

大方王様から使命の様な事でも受けたのだろう。


「ええ~…大丈夫ですか~?あそこ結構キツイですよ?」

「た、確かに豹獣人達の様に足は早くありませんが、私達犬獣人は後ろを着いていくのは得意ですのでご心配無く!」

 
そういう問題では無いのだが、と思いつつもノアの返事を待つ3人は、"待て"を食らった犬の様に(実際犬獣人なのだが…)ジッと待機していた。


「分かりました、良いですよ。」

「「「ほ、本当ですか!?」」」

「えぇ。それで?いつ行きますか?
僕はいつでも良いので。」

「あ、それでは冒険者ギルドに報告と参加者の呼び出し。
それに私達も準備してくるので1時間後にお願いします!」

「1時間後ですね、分かりました。」


と、何と無く根負けしたノアは、急遽指名依頼『宝物庫最奥への先導』を請け負う事となった。




(『おい、良いのか?
まぁまぁ疲れてるんじゃ無かったのか?』)

(空腹感が収まったらある程度気にならなくなったよ。これなら後3日位は不眠不休で動けるよ。)

(『それにしたってよ…』)

(まぁ良いさ。何れラインハードさんには会いに行く予定だったし『魔装・破城槌式鉄甲』も修理して貰おうと思ってたしね。)

(『まぁ主が決めた事なら俺は従うまでよ。』)


と、鬼神も了承してくれた事なのでノアは腹を休めつつゆったりと『宝物庫』の方へと歩いていくのであった。
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