ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
661 / 1,117
獣人国編~御前試合の代表決め~

″深海″エリア

しおりを挟む
深海は一般的に、水深200メル以上の海域を指す。深海には太陽光が一切届かない暗黒な世界、高水圧、低水温の為、浅い水深とは生態系が異なる。

ノア達の居る″深海″エリアは、水深500メルと非常に深く、自分達が発する音以外何も聞こえず、<夜目>を持っているヤンにしがみ付く【記者】のラビッツはビクビクしていた。


「うひゃ~…暗いよ~、音がしないよ~、怖いよ~…
ヤンさんヤンさんヤンさん、離れちゃダメですよ?(ラビッツ)」ムギュ。

「おほほ、後頭部がモフい。
…と言っても、私の<夜目>でも見えるのは2~30メルって所ね。
<気配感知>もいつもより範囲が狭くて<夜目>と同じ位の範囲しか探れないわ…
ノア君はどう?(ヤン)」

「確かにいつもより範囲が狭くなってますね。
<夜目>は大体150メル位、<気配感知>だと300メル位が限界ですね。」

「「十分十分!(ヤンとラビッツ)」」


十分だと2人は言うが、通常<夜目>は視界に入る微々たる光を増幅させる事で、夜でもまるで昼間の如き明るさで過ごす事が出来る。

だが深海と言うほぼ光の無い世界では、増幅させる光すら無いので、見える事は見えるが、物の輪郭が薄ぼんやりと、といった程度である。

そんな″深海″エリアの現状に困っている者がもう1人。


「あれ~…あれれ~…おかしいですね~普段は色鮮やかに光輝く魚やモンスター達が…
あれれれれ~…?(セレイア)」ヨタヨタ…


明らかに視界ゼロの為、腕を伸ばしてヨタヨタと歩くセレイア。
どうやら普段は全く違う様子らしい。


「普段は違うんですか、ヤンさん?」

「いや、ここからのエリアはまだ実装する予定じゃなかったから私も殆ど情報持ってないのよ。(ヤン)」

((…まぁ恐らく…(セレイアとノア)))


と、関係者であったヤンも″深海″エリアに関する情報は持ち合わせていない様だ。

だがノアとセレイアは、何と無く原因に気付いていた。


(さっきグリードがしてきたスキンシップが原因だろうな…)

(グリード様がノア君に行ったマーキングによるモノでしょうね…(セレイア))


実はグリードが″深海″エリア移動前に行ったノアに対する過剰なスキンシップは、連戦続きのノアを想ったグリードによるマーキング行為であった。

龍種であるグリードの匂いを纏ったノアは、″深海″エリアのモンスターからすれば脅威でしかなく、エリア内にモンスターが居る事は確かだが、皆岩場等の物陰やエリアの奥に引っ込んでしまったのである。

なのでただの海中散歩としては有意義なモノにはなるが、視察としては宜しくない事になってしまったのである。


「ま、まぁ一先ず先に進みましょう。
このエリアでは別に見せたいモノが御座いますので。(セレイア)」

「「「え?本当ですか?(ノアとヤンとラビッツ)」」」

「えぇ。この先に聳え立つ巨大な物体が御座いまして…
上をご覧頂ければ分かると思います。(セレイア)」

「「「上?…あ、何か明かりが見える。(ノアとヤンとラビッツ)」」」


セレイアに言われて気付いたが、遥か頭上を見上げると、塔の様に聳え立つ物体の頂点にぼんやりとだが明かりの様なモノが見えた。

塔の高さが大体300メル、直径は50メル位だったので、何かの目印。
謂わば灯台の様な物かな?とノアは考えた。


「これは何ですか?灯台代わりか何かですか?」

「違いますよノア君、これはもしかしたらこのダンジョンにとっての観光名所の一部やも知れませんよ?(ラビッツ)」

「いやー…もうここまで来たらこれ自体何かのモンスターかも知れませんよ?(ヤン)」

「3人共惜しい所までいってますね~。
一先ず私はここの責任者の所に行ってきますね?
何かいつもより暗いので何かあったかも知れませんので…(セレイア)」トンッ!


そう言ってセレイアは大きく跳躍。
その後人魚らしく大きな足ヒレに変化させ、塔の様な物体の直上を目指していった。





ふにゃん。

「ニャーゴは面白いなぁ。
″深海″エリアに入った途端掌サイズまで縮んじゃって…苦しくないかい?」

ふにゃん。


「いやー…静かですね~、怖いですね~、暗いですね~…
セレイアさんまだ帰って来ないんですかね~…(ラビッツ)」

「ラビッちゃん怖いんですね~。
だいじょう~ぶ、お姉ちゃんが守ってあげますよ~。(ヤン)」


セレイアが一行から離れて暫し。
ノアは水圧で小っちゃくなった契約獣のニャーゴを愛で、未だ真っ暗で静かな″深海″エリアにビクビクしている10歳年上のラビッツを愛でるヤンであった。 

未だに周囲にモンスターの反応は無く、ここがダンジョンの中。
しかも高難度の部類のエリアだとは到底思えない状況である。




ゴゴン…ズズズズズ…

「「「ん?(ノアとヤンとラビッツ)」」」


突然轟音と振動が一行を襲う。
遂に″深海″エリアでの第一モンスターの登場か、と身構えるノアだが、周囲にモンスターの反応は無く、振動は継続していた。


ズズズズズズズズズズズズズズズズズズ…

「…これ、下で何かが起こってる感じね。(ヤン)」

「え!?じゃあモンスターが下から現れるんですか?(ラビッツ)」

「いや、モンスターの反応は無いので、地震か何『ゴゴン…』おわっと!?」


″深海″エリア全体が揺れたのかと思う様な揺れに困惑していると、足下で更なる揺れが発生した。


ゴゥンゴゥンゴゥンゴゥンゴゥン…

「…?…???
これ…海底がせり上がってる?」

コォオオオオオオオオオ…

「うわっ!?眩しい!?(ヤン)」
「何です!?何なんです!?(ラビッツ)」

「…え?何これ…」


各々の体に上昇時の圧を感じた直後、真っ暗な″深海″エリアの各所に次々と光が満ちていく。

そこで視界が真っ白に染まる前に<夜目>を解除したノアが周囲を見てみると、背後に立つ巨大な塔を中心に、高さ30~200メルの塔が次々に海底から姿を現していく。

それと同時に数千単位の光輝く色とりどりの魚が塔の各所から出現し、真っ暗だった″深海″エリアを明るく照らしていく。


ゴゥンゴゥンゴゥンゴゥン…

オォオオオオオオオ…

「「何じゃあれ!?(ヤンとラビッツ)」」

「あれは…城流クジラ…でも何か装甲みたいの着けてる…まるで戦艦だ…
″深海″エリアから出現する個体なのかな…」


塔の様な物体が出現しきると、海底数ヶ所に大穴が空き、巨大な生物の甲殻で作られた装甲と過剰戦力ともとれる100以上の砲塔を搭載した城流クジラが出現。

まるで塔の集合体を守る様に周囲に展開し優雅に泳いでいた。


『『『『ゴボンッ!ゴボゴボ…』』』』


数百に及ぶ塔が配置され、武装城流クジラが遊泳した後、地面から泡が立ち始めた。

何事かと思ったが、どうやら水流が発生しているようだった。

するとここで


ストッ。スタタッ!


一時離脱していたセレイアが鮮やかな鎧を着込んだ人魚を引き連れて戻ってきた。


「お待たせして申し訳ありません。
どうやら強大な反応の接近に対してやり過ごそうとして、一時的に″街″を閉鎖していた様です。(セレイア)」

「「「え?街?…ここが…?(ノアとヤンとラビッツ)」」」

「はい。ここはダンジョン内唯一のセーフティエリアであり人魚やその他海洋種が暮らす街『オセアノ』に御座います。(セレイア)」
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

処理中です...