ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
821 / 1,117
獣人国編~事後処理・決意・旅立ち~

挨拶回りその2

しおりを挟む
~スロア領・裏門~


チリチリチリ…

「ノア殿?私をお忘れではないですかな?(クリストフ)」

「え?今後もここでデミさんに仕えるんじゃないの?」

「それは私の分体達が務めましょう。
私の主人は元よりノア殿に有らせられますぞ。(クリストフ)」

「それじゃあ今後ともよろしく。」

「畏まりました。
はい、焼きエリンギになります。(クリストフ)」


スロア領を出ようとすると、両手に焼きエリンギ数本を持ったつかえるキノコのクリストフが追い掛けて来た。

デミや領民達、子供獣人達と思いっ切り馴染んでいたのでてっきり永住するものと思っていたのだが、クリストフも今後の旅に同行するらしい。

後でクラン『きじん』に追加登録しなければならないな、と思いつつ次の訪問先へ行く事にする。





ムグムグ…

「さてと、次はリヴァイアさんの所に行こうと思ったんだけど、どう行こう…」

「以前頂いた転移符はもう無いのですか?(ヴァンディット)」

「うーん…式典前にちょくちょく通ってたから使い果たしちゃったんだよね…」

ムグムグ…

〔私が穴掘って下まで通しましょうか?〕

「いやぁ…あそこ、信じられない位深いんだよ…?
1回落ちた事あるけど、正直勘弁して…」


海洋種と出会う切っ掛けとなった王都の鉱山で、ノアは昇降機ごと落下したのを経験してから真っ暗な縦穴に少し抵抗感があるのだ。


「仕方無い、一旦獣人国に戻ってダンジョン経由で向かうとするか…」

「ならば善は急げですな。(クリストフ)」


と、一行が獣人国へと戻ろうとした時だった。


『『『ブゥンッ!』』』

ズボッ!「へぶっ!?」

ズボッ!「ぬおっ!?(クリストフ)」

スボンッ!「わひゃっ!?(ラインハード)」


突然周囲の空間が歪んだかと思うと、足下が砂地に変わり、足を取られたノアは顔から砂に突っ込み、勇み足になっていたクリストフと、機械のボディを持ち意外と重量があるラインハードが腰の辺りまで砂に埋もれてしまったのだった。





サク…サク…

「いやー、ノア君がそろそろ獣人国を発つと小耳に挟んで、1度は来るだろうとヤマ張って待ってたのさー…って、大丈夫?(リヴァイア)」

「よいしょ。『ズボッ!』だ、大丈夫です…」


リヴァイアの視界には、腰まで埋まったラインハードを引っこ抜くノアと、砂地から人間サイズのエリンギが生えている様にしか見えない光景が広まっていた。





~龍宮城内・中央区画~


「「「おおーっ、綺麗ーっ!」ですなー。」」


龍宮城内に通された一行は、中央区画を通り、リヴァイアの私室へと向かう途中であった。

中央区画は高さ1000メル以上の吹き抜けになっており、そこを数百を越える人魚が往来。

照明代わりの光の筋を発する像が立ち、吹き抜け内を目映く照らしていた。

その光が各々の鱗に反射し、何とも幻想的な光景が広がっていた。


「【鬼神】君お疲れ様ー!」
「エルダークラーケン様との試合凄かったわ!」
「「地上との架け橋になってくれてありがとー!」」
「軟体族の代表として礼を…」
「「「握手して下さい!」」」

「ど、どーも…」


現在ノアは、水族館でエサを持ったダイバーの如く全方位から人魚やその他種族が群がって来ていた。

するとそこに


「ほらほら、お客人が困っているだろう、歓待は後にしなさい。(クラーケン)」

「「「「「「はーい。」」」」」」

「あ、クラーケンさん。」


御前試合でノアと戦ったエルダークラーケンの息子であるクラーケンが<人化>形態で割って入ってきた。

すると蜘蛛の子を散らす様に集まっていた人魚達が散っていった。


「10日振りだな。息災か?(クラーケン)」

「えぇ、もう万全ですよ。」

「すまないな、歓待の宴は用意してたんだが、本人が来て抑えが利かなくなってしまったらしい。(クラーケン)」

「別に気にしないで下さい。
それよりもエルダークラーケンさんの方は大丈夫ですか?
相当な大怪我だったハズですが…」

「<人化>形態であればそう見えるだろうが、元の姿で見たらビー玉程の穴が空いた程度。
今はもう完治して肩慣らしに海溝のモンスターを蹴散らしている事だろうさ。(クラーケン)」

「ははは…元気な方ですね…」

「良く言うよ。
<人化>形態とは言え、″〔久々に滾る戦いであった〕″って何度も口に出していたんだぜ?
戦闘狂の親父が。
どうだい?海洋最強種みたく『国賓最強種』と言う肩書きを持ってみては。(クラーケン)」

「いやー…追々戦闘を吹っ掛けられそうな気がするので辞退させて


″称号『国賓最強種』を獲得致しました。″


…貰いますん…」

「…何だ?今の間は?(クラーケン)」


クラーケンからの提案を断るよりも早く頭の中に誰かの″声″が響き、新たに称号が追加された。

恐らく後で冒険者ギルドに向かえば更新されると思われる。

その後、リヴァイアの私室へと向かった一行だが、入室の直前に何故か「ノア君達から入って行って」と言われ、少し困惑するノア。

取り敢えず言われた通りにノアを先頭として入室する事に。

すると


ガチャ…

「…え?どういう事…?」

「「ふぉおおおお…(ラインハードとヴァンディット)」」

「おー、これは美しい…(クリストフ)」

〔なる程、先程言っていた″歓待″とはこの事でしたのね。〕


リヴァイアの私室は、通常形態のクラーケンがすっぽりと入る程の大きさ(大体縦横500メル以上)な上、高耐圧性の全面ガラス張りである。

海底全体に光が満ちていれば、遥か遠方まで見渡せる事だろう。

そんなガラス張りの部屋の外、つまり深海には光る海草や魚がいつも以上に遊泳。

更に龍宮城で暮らす全ての人魚、各種族の海洋種、山の様に大きな最強種等がこの地に集まって一行に手を振っていた。

その遥か遠方にはシルエットしか確認で来なかったが、エルダークラーケンと思しき存在がこちらを眺めている様であった。


「みーんな君達に感謝しているのさ。
だけど大きさ的に龍宮城内に入れない種族も居るからこういう形を取らせて貰った。
皆君を見送りたかったけど難しいので、これを君達の壮行会の宴としたのさ。(リヴァイア)」


幻想的な光景を見詰め暫し経った頃、宴らしく豪華絢爛な料理や人魚達の美麗な舞、各種族からの挨拶等が行われ、あっという間に時間が過ぎていった。

恐らくノアの生涯で最も心に残るモノとなっただろう。





~おまけ・宴がお開きになった直後~


「あ、そうだノア君にこれをあげよう。
何かの役に立ってくれると良いんだけど。(リヴァイア)」スッ…

「…何ですかコレ…?
見た所、黒い筒に何かのボタンが付いてるだけに見えますが…?」


帰りがけにノアはリヴァイアから試験管程の筒にボタンが付いた魔導具の様な物を貰う。
だが見た目だけでは用途が分からないので、この魔導具の事を聞いてみると


「これはね~、『たまてばこ』って言うんだ。(リヴァイア)」
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...