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第一の秘密
二
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僕の通うS県立S高等学校は、自宅から徒歩二十分程の距離にあり、周りには団地が連なっている辺鄙な地に建っている。玄関を出てから真っ直ぐ歩き、突き当たりを左折して、あとはそのまま真っ直ぐ歩き続ければ約十分で到着するため、通学には苦労しない。偏差値は五十一で、とりあえず高校くらいは卒業しておこうという意識の低い僕の偏差値と、私立の高校には通わせたくない親の思惑から、迷わずS高校を選んだ。部活が盛んという長所を世間にアピールするため、生徒全員が部活動に入部する校則となっており、僕も新聞部に入部している。新聞部とは名ばかりで、部活動をやりたくない生徒が仕方なく入部するための部のような扱いで、S高等学校で一番の部員数を誇る。毎月一回学校新聞を発行することが活動内容なのだが、最後に発行されたのは四年前で、しかも体育祭の結果発表だけが大きく載っているだけの、なんともお粗末な新聞だった。
「おはよう。昨日のドラマ見た?」
「見た見た。最後衝撃だったよな!」
学校が近づいてくると、自然と生徒の姿も増えてきて、辺りが騒々しくなる。僕はこの喧騒が大嫌いで、いつもイヤホンを耳に装着して音楽を聴いている。それでも生徒の声は否が応でも入ってきて、せっかくの好きな音楽も楽しめない。なぜ朝からあんなに騒げるのだろうか。目の前を歩く三人組の男子生徒の様子を観察しながら、単純な疑問が湧く。
「……い」
誰かの声がすぐ後ろで途切れて聞こえた。
「おい……おい! 黒田!」
その声の主が僕の名前を呼んでいることに気が付くと、急いでイヤホンを外して振り返る。そこにはクラスメイトの緑川が、清涼感たっぷりの笑顔で立っていた。緑川はドラマの中の住人のような優れた容姿と、誰とでも隔てなく仲良くなれる性格の良さを持ってる。それにバスケットボール部の部長でもあり、クラスで一位二位を争う頭の良さもある、少女漫画の主人公のような男だ。
「ごめん。イヤホンしてて気が付かなかった」
「あー、そうなんだ。俺の方こそ音楽聞いている時に悪かったな。何聞いてんだ?」
「知らない思うけど、レディオヘッドっていうイギリスのバンド」
「知ってる知ってる! まあクリープとか、有名な曲しか知らないけどさ。何かおすすめの曲はある?」
緑川は、また清涼感たっぷりの笑顔を浮かべ、僕の話に合わせてくれた。僕も釣られてぎこちない笑顔を浮かべながら、おすすめの曲やバンドについてを話した。
「ミドリンおはよう!」
暫くすると、二人組の女子生徒が緑川の肩を叩いて話しかけてきた。僕とも目が合ったが、すぐに逸らして緑川の横を歩く。
「おはよう! そのミドリンってあだ名やめてくれない?」
「えー、いいじゃんミドリン。可愛いじゃん」
僕はゆっくりと三人の歩幅から離れると、再びイヤホンを耳に装着した。緑川は僕の方を一瞬振り返り、申し訳なさそうな顔で手のひらをこちらに広げた。そんな気遣いが余計に惨めな気分にさせる。
こんな惨めな僕と、あの子が仲良くなれるはずがない。だけど、二人だけの秘密を作ることができたなら……。昨夜から秘密のことばかりを考えてしまう。そして、やはり答えは見つからないまま、気が付くと下駄箱の前まで到着していた。真っ暗なローファーを脱いで上履きに履き替えると、イヤホンを外してカバンの中に音楽プレーヤーを仕舞う。
教室に着くと、クラスメイトたちの喧騒が耳を劈き、眉間に皺を寄せながら席に鞄を置いて椅子に座る。と、その刹那、僕の鼻腔にふわりと桃の果実のような香りが襲う。あの子だ。あの子、白石空さんの香りだ。
「おはよう。昨日のドラマ見た?」
「見た見た。最後衝撃だったよな!」
学校が近づいてくると、自然と生徒の姿も増えてきて、辺りが騒々しくなる。僕はこの喧騒が大嫌いで、いつもイヤホンを耳に装着して音楽を聴いている。それでも生徒の声は否が応でも入ってきて、せっかくの好きな音楽も楽しめない。なぜ朝からあんなに騒げるのだろうか。目の前を歩く三人組の男子生徒の様子を観察しながら、単純な疑問が湧く。
「……い」
誰かの声がすぐ後ろで途切れて聞こえた。
「おい……おい! 黒田!」
その声の主が僕の名前を呼んでいることに気が付くと、急いでイヤホンを外して振り返る。そこにはクラスメイトの緑川が、清涼感たっぷりの笑顔で立っていた。緑川はドラマの中の住人のような優れた容姿と、誰とでも隔てなく仲良くなれる性格の良さを持ってる。それにバスケットボール部の部長でもあり、クラスで一位二位を争う頭の良さもある、少女漫画の主人公のような男だ。
「ごめん。イヤホンしてて気が付かなかった」
「あー、そうなんだ。俺の方こそ音楽聞いている時に悪かったな。何聞いてんだ?」
「知らない思うけど、レディオヘッドっていうイギリスのバンド」
「知ってる知ってる! まあクリープとか、有名な曲しか知らないけどさ。何かおすすめの曲はある?」
緑川は、また清涼感たっぷりの笑顔を浮かべ、僕の話に合わせてくれた。僕も釣られてぎこちない笑顔を浮かべながら、おすすめの曲やバンドについてを話した。
「ミドリンおはよう!」
暫くすると、二人組の女子生徒が緑川の肩を叩いて話しかけてきた。僕とも目が合ったが、すぐに逸らして緑川の横を歩く。
「おはよう! そのミドリンってあだ名やめてくれない?」
「えー、いいじゃんミドリン。可愛いじゃん」
僕はゆっくりと三人の歩幅から離れると、再びイヤホンを耳に装着した。緑川は僕の方を一瞬振り返り、申し訳なさそうな顔で手のひらをこちらに広げた。そんな気遣いが余計に惨めな気分にさせる。
こんな惨めな僕と、あの子が仲良くなれるはずがない。だけど、二人だけの秘密を作ることができたなら……。昨夜から秘密のことばかりを考えてしまう。そして、やはり答えは見つからないまま、気が付くと下駄箱の前まで到着していた。真っ暗なローファーを脱いで上履きに履き替えると、イヤホンを外してカバンの中に音楽プレーヤーを仕舞う。
教室に着くと、クラスメイトたちの喧騒が耳を劈き、眉間に皺を寄せながら席に鞄を置いて椅子に座る。と、その刹那、僕の鼻腔にふわりと桃の果実のような香りが襲う。あの子だ。あの子、白石空さんの香りだ。
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