前世女子高生の私は今、悪役令嬢を経て月の女神と呼ばれてますけどムカついたヤツはぶん殴る肉体派ですわ!

DAKUNちょめ

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第二章•魔王編

36話◆魔王の実兄、暴君と呼ばれたがピュアソウル。

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レオンハルトは、ディアーナを抱き上げたままライアンの待つ夜営場所に転移した。



「あ、おかえりレオンハルト兄ちゃん……!!

ディアーナ姉ちゃん!!どうしたんだよ!
ディアーナ姉ちゃん…!」



レオンハルトの腕の中で、口も利けない位あまりにも酷いディアーナの憔悴ぶりに、ライアンはディアーナが何かしらの攻撃を受けたと思っているようだ。



「あんなに強いディアーナ姉ちゃんに、ここまでダメージを与えるなんて…!
一体どんな奴が……!」



「……レオンよ……このテカレオンが犯人よ……」



レオンハルトの腕の中でディアーナが呟く。

ライアンが冷めた目でテカるレオンハルトを見た。



「ははは、犯人だなんて人聞き悪いな。
深い愛が止まらないだけなのに」



「もう、何でもいいから、早く私を休ませろ!!
足腰痛いのよ!!眠いのよ!!!寝かせろ!!!」



ご機嫌なレオンハルトに涙目で訴える不機嫌なディアーナ。







ディアーナは、簡易テントにこもって眠りについた。

時々テントの中から「もう、無理でっしゃろ」だの
「ほう、この私に死ねと?面白い受けて立とう!」だの、
おかしな寝言が聞こえて来る。



「…レオンハルト兄ちゃん、ディアーナ姉ちゃんの寝言って…
ホントに、こんな事言ってんの?……その…最中に…?
おかしくない?」



ライアン少年にも、男女の睦事について最低限の知識があるが、ディアーナの言葉は、事の最中の台詞としては、あまりにもその場からかけ離れている。



「言ってるのかな?もう、全て愛しくて可愛くて…

何がおかしいかが分からない。」



おかしな寝言が聞こえ続けるテントを、愛しそうに見詰めるレオンハルトの顔を、ライアンが残念な人を見る目で見る。



「……そうか、レオンハルト兄ちゃんも病気だったね……」




ライアンの両親も仲が良い。ライアンの居る前でもイチャイチャする時はある。

他にも、大人のカップルというものを多々見て来たが、レオンハルトとディアーナはイチャイチャもするが、時々何かおかしい。

きっと、そういう病気なんだろう。うん。





「わああっ!だ、誰か助けてくれぇ!!」




不意に聞こえて来た助けを求める男の声に、瞬時にピンっと糸が張ったように緊張が走る。

ライアンがいち早く反応し剣を背に掛け、声のした方に向かい駆け出した。



「レオンハルト兄ちゃん!俺が行く!
レオンハルト兄ちゃんはディアーナ姉ちゃんを…!」



守っててと言い掛けてやめた。
ディアーナなら、憔悴しきった今の状態でも強い。

むしろ、睡眠不足で不機嫌な今なら容赦なしに暴れまくる。



それこそ、助けを求めた人も巻き込む勢いで。



「止めといて!!」



了解した!とばかりにグッと親指を立てるレオンハルト。

ホッとしたライアンは速度を上げ森を駆け、声の主の居る場所に飛び出した。





「何をしているんだ!お前ら!!」



その場を目にした瞬間ライアンの表情は険しくなり、威嚇するかのように大きな声で怒鳴った。



ライアン達が夜営をしていた森を少し外れた街道に、倒された一頭引きの小さな馬車と、その脇に事切れた男が一人。



見るからに堅気ではない武器を持った男が六人程馬車の前に居り、地面に膝をついた中年の男に剣を向けている。



先ほどの助けを呼ぶ声の主であろう中年の男が、ライアンと目が合うなり絶望に近い表情を見せた。



「何だ、ガキじゃねえか」



武器を持った男の一人が鼻で笑って言えば、回りの男達も下卑た笑い声を上げる。



「このジジイを殺ったら相手をしてやるから待ってな」

「ジジイが死ぬ所見てもションベン漏らすなよ!」

「そりゃ無理だ!なにしろ、こんなガキなんだから!」

「ちげえねぇ!ジジイも残念だったな!助っ人がこんなガキで!」



ライアンを無視して、ライアンを子供だと馬鹿にした会話が続く。

ライアンは目線だけを周囲に走らせ、状況を確認していく。

今、助けるべき人は目の前の中年の男一人…………ではない。



ライアンを馬鹿にした男達の背後に居る男の腕の中に、ライアンと同じ年頃の少女が囚われていた。



「オッチャン達、その子どうすんの?可哀想だから、離してあげてくんない?」



男達がライアンを指差し笑う。



「可哀想だって!?可哀想なのはお前の方だ!ジジイとお前は仲良くあの世に逝くんだからな!!」



「少年!もう、いい!いいから逃げなさい!」



膝をついた中年の男がライアンに訴える。

助けを呼んだはいいが、現れたのが子供たった一人で、他に大人が駆け付ける様子もない。

このままでは、この少年まで巻き込んで死なせてしまう!

そう考えた男は、ライアンの逃げる隙を作ろうと立ち上がろうとする。



「ジジイ!大人しくしてやがれ!」

「さっさと殺っちまおうぜ!!」

「ジジイくたばれ!!」



武器を持った男の一人が中年の男の肩に向け、剣を振り下ろす。



ライアンは素早く中年男の前に立ち、背後の男に向け振り下ろされた剣を、自身の持つロージアの剣の柄の先だけで叩いて砕いた。



「オッチャン達、こーゆーの初めてじゃないよね?
もう、いっぱい殺してる?」



武器を持った男達の目が、折れた剣を凝視する。

ライアンを逃がそうとした中年の男の目線も折れた剣を見る。



そして、その視線が全てライアンに注がれた。



「ガキがぁ!お前から先にくたばれ!!」



男達四人が一斉にライアンに剣を向けた。









「寝てなくていいのか?ディア。」

「寝てらんないわよ。面白そうだもの。」



ライアン達が居る街道の近く、大木の枝に座っているレオンハルトと、その膝に横向きに座るディアーナが二人でライアンの様子を伺う。



「ライアンは強いけど人と対峙した事はレオンとの稽古以外、一度も無いわよね……殺れるかしら?」



「殺れなきゃロージアの側に居る価値が無い。
ただの強い剣士でいたいだけなら、今のままでも充分だがな。」



レオンハルトの意見にディアーナは微笑みながら頷く。



「でも殺れたからと言って、誰でもかれでも殺せる殺戮者になられても困るのよね。
私がロージアの側に居て欲しいのは……」



ロージアを愛し、守る者。



と言ってしまうと、か弱い姫を守る、実は姫を愛している剣士的なニュアンスになるが実際は違う。



何しろロージアは守るまでもなく強い。

強い上に容赦も躊躇も無く誰でも殺せる。



ロージアを愛し…も、恋をしろと言う意味ではなく、崇敬に近い想いで愛してくれたらと思っている。

ディアーナ的には恋愛して欲しかったが、暴走すんな!とおかんにこっぴどく叱られた。



守って欲しいのは、ロージアを魔王にさせない為の世界。

瘴気を大量に生み出しそうな輩を排除出来る者。

正義の味方である必要は無い。


「過去のライアンのパパみたいな奴をプチっとね。」



「あー今、考えたらレオンハルト皇帝って、魔王生み出す程の瘴気を国中に蔓延させた奴だもんな。
今のライアンが、一番殺さなきゃならない相手じゃないか?」



「今はただの農夫兼、王様だからね。
まあ、アゴーンは戦争をいっぱい仕掛けたけど、なぜか魂は瘴気に侵されてないのよね。キレイなまんま。
アゴ割れてるクセにね。」



レオンハルトとディアーナが笑いながら話す。



黒く、暗く、澱んだ、濁った、そんな負の感情が瘴気を生む。



「レオンハルトって奴は、俺もだが泣き虫で純粋なヤツばかりだからな。」



ディアーナが「はぁ?純粋?ナニ言ってんのケダモノ」と言わんばかりの眼差しをレオンハルトにを向ける。



「多くの人の命を奪った皇帝、だが根は純粋で情が深く泣き虫。
そんなおかしな奴の息子はこの先、どう進むんだろうな。」



強く優しく、人の命を尊び正義の為に剣を振るう。
そんな英雄になるのか。



人の命を刈り取る事を躊躇いもしない殺戮者になるのか。



人の命を瘴気の有無で測り、自身の感情よりも魔王を生み出さない為の行動を優先する「魔王に付き従い、共に永きを生きる者」となるのか。



「「楽しみだ!!」」



夫婦は目を輝かせた。



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