【R18】小学生から高校生に成長したファンの少年が、中年男の俺を愛してやまない。

DAKUNちょめ

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リンゴひと欠片。

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━━俺が目が覚ましたら……また昼前だった。


昨日の土砂降りが嘘のように快晴で、窓から差し込む陽の光が強く眩しい。


「今日はラン、まだ来てねぇな…
昨日みたいにキスで目を覚まさせられるとか…」


冗談じゃねぇ、と口には出さずに言葉を飲み込んだ。
別に誰かに聞かれている訳でも無いのにナニを意識してんだか。

昨夜飲んだ酒はもう抜けており、それでもまだ重く感じる身体をノッソリ動かして身体を起こす。
久しぶりの大快晴。
布団でも干そうと俺は着流し姿のまま、寝室の縁側から布団を抱えて庭に降りた。


「あ、チワっす。」


「オゥ、チワ。」


低い垣根の向こう側、夏服を着た男子高校生に頭を下げられた。

布団を持ったままの俺が同じ様に頭を下げ、持っている布団にボフッと顔を埋め込んでしまった。


「金森君は、今帰りか?」


何事も無かったかの様に布団から顔を上げて会話を続ける。
この金森という少年は、幼い頃のランとは犬猿の仲だったと聞いた。
いつの間にかランと仲良くなっていたようで、こうやって俺に挨拶をする様になった。
初めて会った時は俺を誘拐犯と勘違いしたらしいが、今は俺がランの親父さんの友人であり、それゆえに俺がランと仲が良い事を知っている。


「ハイ、神鷹さんは御剣を待ってるんスか?
御剣なら、スーパー寄るって言ってましたよ。」


「いや!別に!待ってねーけど!?
見ての通り、起きたばかりで布団干してるだけで!
何で俺がアイツを待ってるなんて思うんだ!?」


だが……彼は俺とランの本当の関係は知らない。

知らないからか、時々虚を突くような事を言って俺を驚かせたりする。

で、虚を突かれて慌てて否定したワケなんだが……
キョドり過ぎて、逆に胡散臭いな……俺。


「何でそう思うって…御剣いつも遊びに来てるし。
別に深い意味は無かったんすけど。」


金森君がごくごく普通に俺に答えを返した。
そりゃま、そうだよな…大した事を言ったワケじゃない。

いつもの様に「まぁな、ウチに寄るらしいんだ」位に返せば良かった話で……

昨日の事があるせいか、今日の俺は変にランを意識し過ぎだ。


「じゃ、俺バイトあるんで失礼するッス」


「あー…頑張ってな…。」


金森君は再びペコリと頭を下げて歩いて行った。
ランの話じゃ、高校に入ってから金森君には彼女が出来たらしい。

少し気の強い幼馴染の女の子との事だ。


そんな話を聞くと、ランにも可愛い彼女を作って普通の恋をする━━
そんな選択肢もあったんじゃないかなんて考えてしまう。

今となっては、もう選ばせる事が出来なくなった道だが。


「おっと……布団干さないとな。」


考えを切り替え、俺は庭に置いた物干し竿に布団を掛けた。









神鷹宅の庭の横を通り過ぎた金森は、しばらくしてからスマホを取り出した。

金森は悪友の御剣走宛てに、素早い動作でタタタタっとメッセージを打つ。



  御剣、お前オッサンと何かあったろ。

  今オッサンちの前を通って偶然会ったんだが

  日常会話だけで面白い反応するんだけど。

  お前がオッサンを可愛いって言うの分かるわ◀◀


▶▶なんで俺より先に真弓の顔を見てんだよ。

  真弓が可愛いと知ったからって、

  惚れても渡さないからな!!

    

スマホを持って歩いていたのか、速攻で金森のスマホに走からの返事が届いた。


「偶然だって言ってんだろうが。何の嫉妬だよ。
つーか、オッサンなんかいらんわ。
オッサンが絡むとアホになるなアイツ。
それにしても…
今朝の御剣の沈みっぷりといい、オッサンのキョドり方といい……。
昨日、ナァにしたんだかな。」


金森がニッとほくそ笑み、返事を送らずにスマホを片付けた。
察するに、いわゆる【大人の関係】にはまだなってない様だが……。

男として恋人として、まだ真弓に意識されないと走は言ったが、金森の目にはそうは映らなかった。


「ま、頑張れや御剣。」


メッセージは送らず呟くように心だけで軽くエールを送り、金森はバイトに向かった。









「真弓ーッッ!!!」


「なな、何だ!?いきなり!」


布団を干し終えた俺は着流し姿のまま縁側に座って、麦茶を飲みながらボンヤリと久しぶりの太陽を眺めていたのだが………

スーパーの袋を下げたランが、鬼気迫る様な勢いでいきなり庭に入って来た。

驚いている俺に駆け寄ると、肩に手を掛け必死に何かを訴えて来る。


「金森と会ったんだろ!?
何か言われた!?」


「………何か…?
お前がスーパーに寄るってのと、今からバイトだって位しか話してないが。」


「…そんだけ?…マジか。」


縁側に座る俺に詰め寄る様に顔を近付けたランが、俺の肩に手を置いたままヘナヘナと脱力した。

………金森君と何を話したと思ったんだ?


「……真弓を可愛いなんて言うから……」


ランが口を尖らせてボソッと何かを呟いたが、俺には聞こえなかった。

ただ俺なりに察した答えをランに返す。


「俺達の関係がバレる様な事は何も話しちゃいねぇよ。
お前にも学校での立場ってもんがあるだろうし。」


「………そ、そうなんだ。」


何かを誤魔化す様に、ランの目がスイーっと横に泳いだ。

どんな意味の表情だ、それ。







改めて玄関から俺の家に上がったランが、台所にスーパーの袋を置いた。

だらし無く着崩れた着流し姿の俺が中を覗き込むと、袋には冷凍のパイ生地やリンゴが入っていた。

定期的に持ち込まれるこれらの食材はランの母親からの、俺達にアップルパイを作って欲しいアピールだ。

俺の作るアップルパイのファンになってくれたのは嬉しいのだが……。


「いつもの事だが急だな。」


「学校行ってからスマホ開いたら、急に食べたくなったって母さんからのメッセージが届いていた。
まぁ……別に今日中でなくても良いみたいだけどな。」


昨日、今日とランの学校が早く終わり、俺も明日まで仕事が休みだし……まぁ暇があるっちゃーあるし。


「いいんじゃねぇか作れば。
もう昼飯の時間だし、飯食った後に作ろう。」


ランが昼食になるものを探し冷蔵庫を開いて中を確認する。

ランは昨日と全く変わらない冷蔵庫を閉じ、流しにあるウィスキーグラスを見て眉をひそめた。


「真弓、昨日昼に食べたリゾットから何にも食べてないだろ。
お酒だけ飲んで寝たのか?
そんなの身体に良くないだろ。」


「………世話焼きの女房か、お前は。」


「違う。どちらかと言えば真弓の方が俺の奥さん。」


フルフルと顔を横に振って真面目に答えやがった。

俺が強調したかったのは、世話焼きって部分だったんだがな。

だいたい誰のせいで食欲がわかなかったと思ってやがるんだ。

あんな事の後に、何事も無かった様に飯なんか食えるか。



頭の中で散々文句を垂れつつも現実では何も言えなくなり、気難しい顔をしてランから目を逸らした。

ランは買って来たリンゴの半分を切り、包丁でキレイに皮を向いて薄くスライスし、俺の口に突っ込んで咥えさせた。


「何か作るまで、ソレかじってて。」


「…ウサギじゃあるめぇし、リンゴかじってろって。」


口に咥えさせられた一切れのリンゴをショリッと噛んだ。
噛み切られたリンゴが口からポロッと落ちる前に、俺の右腕がランに掴まれて引き寄せられ、迎える様にランの唇が油断していた俺の口に押し当てられた。


「ッ!!!」


半欠けで口から落ちたリンゴはランが手の平で受け止めて流しに置かれた。

いや、リンゴが落ちない様にするために唇押し付けたんだろ?

だったらもう唇離して良くないか?

そんな考えが浮かび、唇を離そうとして顔を傾けるが、ランの唇が追って来て解放してくれない。


俺の口の中にリンゴをひと欠片残したままで、ランが深く唇を重ねてくる。

ランの舌先が俺の舌の上でリンゴを転がし、果汁を飲む様にコクと喉を鳴らした。


互いの口を行き来する甘い香りと味が、俺の口の中でランの舌先に掻き回されクラクラする。


「っ…ラン!…んぅ!」


俺の頭が逃げない様にランの右手が俺のうなじに当てられ、小指の先でツウと首筋を撫でられた。

俺の口にあったリンゴがランの口に移動し、ランが唇を重ねたままで軽く咀嚼する感覚までが伝わる。

背筋を通って腰の下まで、チリチリと微電流が走る様なくすぐったさにも似た感覚が肌を走りゾクッとした。


身体が火照る様に熱を持ち始め、下半身にも熱が集まるのを自認して思わず焦る。


自分をノンケだと言う俺の身体が、ランにされている行為に対して性的に興奮をしているという事実に。

止めないと……こんな状態で流されるワケには……


「っっふぁ!ちょ…!まっ…!ッッま!!」


ランの指先が着物の上から、俺の胸の粒をツイと押しつぶした。

丸まりかけた背筋がビクッと真っ直ぐに伸び、焦った俺はランの身体を強く押し返した。


「離れろ!何で、いきなりサカってんだ!お前は!」


濡れた口元を着物の袖でゴシッと拭い、ランを睨め付けた。
ラン自身も少しばかり驚いた様な頓狂な顔をして、自身の唇を指先で撫でる。


「ゴメン……真弓が可愛くて……何か……嫉妬?」


「俺が可愛くて嫉妬?はぁ?」


まさか、俺より可愛くなりたいって意味じゃねぇよな。

ラン自身、戸惑った様なツラをしているし…
これ以上、何で、どうしてなんて聞いても仕方が無い。


「………まぁ腹減ったし、とりあえず何か食おうぜ。」


俺はランが流しに置いたリンゴの半欠けを口に放り込むと、乱れた髪をゴムで縛ってランの隣りに立った。


「インスタントラーメンしかないよ。」


「あー、じゃあもーそれでもいーわ。」


乱れた着物の前を直しながら、まだバクバクと動悸の激しい胸の辺りをランに気付かれないように撫でさすった。

俺の隣りのランは「やらかした」みたいな緊張気味の表情をしている。

俺はそれに気付かないフリをして、いつも通りを装う。


俺とランは、台所に並んで黙々と昼飯の用意をした。

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