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131話◆ヒールナー家を包む不穏な夜。
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ヒールナー伯爵家、若夫婦の寝室を出たカチュアとメイは邸のエントランスに向かった。
誘拐されたメイが戻り下町のゴロツキ共が捕まって事件が解決、とはいかなかった事で邸にはまだ不穏な空気が流れている。
体調の悪いミランダは寝室から出てないので今の邸の状況を知らない。
「邸の前で人が殺されて、その犯人にスファイが連れ去られたかもなんて知ったら奥様がショック受けるよ。
お優しいミランダ奥様のお心に負担を掛けたくないんだよね。」
「それは邸の皆が思っている。
……邸の前で殺された男、あれは剣士によるものだ。
それも、それなりに腕の立つ。」
カチュアの言葉にメイが、はて?と不思議そうな顔をした。
「そりゃイッパシの騎士様でも、身を持ち崩して下町に落ちる事はあるらしいけどさ。
そんな人がスファイ攫って、どうすんの?
若い女、子どもならまだ売るにしろ何にしろ使い用はあるだろうけどさ。ただのアホ少年じゃん。」
「何を言う。男にだって使い道はあるだろう。
女同様にアッチの意味でも…。
メグミン先生の導師のお仲間が描いた聖書のスファイのように……
今頃は、前後から……。」
思い出したかの様にカチュアが頬を染め、ホウッと熱い吐息を漏らした。
カチュアの態度を見たメイも、旅の途中でミランダに見せられたスファイ総受けなる薄い本を思い出した。
可愛らしい少年のスファイが前後から男に弄ばれている描写がされていたが、可愛らしい少年ではなくなった今のスファイに当てはめるとメイ的には気持ちが悪い。
「キモ…。いや、カチュア…冗談でなくて。」
「……そうだな、冗談はさて置き……。
スファイを攫った者達と、メイ達を捕らえたゴロツキ共は全く別物だと思う。
縄張り争いや、儲けのネタを奪う様な物では無いと。」
「えー……じゃあ誰が何の為に、あのアホ攫ったのか結局分からないままじゃん。」
「ヒールナー伯爵家、それもサイモン様を仇としている者達は多い。
私の母が、そう語ってエリーゼに与した様に。
かと言って使用人を攫った所で伯爵家を脅すには…。」
エントランスに向かう廊下で立ち止まり会話をする二人の耳に、エントランスの方から慌ただしくなった声が聞こえた。
カチュアとメイは何事かとエントランスへと向かう。
吹き抜けになった階段の上から下を覗き見たカチュアが、手摺りを両手で掴み身を乗り出した。
「父上!」
エントランス中央に人が集まっており、その中には血に染まるスチュワートが居た。
階段を駆け下りてカチュアがスチュワートの元へ急ぐ。
離れた位置からスチュワートの姿を見守るアセレーナの前には、邸の者で治療魔法を使用出来る者達と治療士がスチュワートに手当てを施していた。
「父上ほどの方が、これ程の痛手を負うなんて!
相手は何者なのです!?」
「カチュア!話し掛けないで!治療が先よ!
兄さんも答えようとしないで!
肺が傷付いてるかも知れないんだから、声を出さないで!」
グレイスに促されてカチュアがスチュワートから距離を取る。
スチュワートは出血量が多い様だが意識はしっかりしており、あの深傷を負った状態で邸まで戻った事に驚く。
カチュアは、不安や嘆きを表情には出さずに何かを思い出そうと深く思案している母の姿に気付いた。
その姿は夫を心配する妻と言うよりは…………
「母上、何か思い当たる事でも?」
カチュアが目にしたのは、かつて起こった戦では前線に立ち、血を浴びながら剣を振るい「鬼」と呼ばれた騎士の姿そのものだった。
━━前線から下がった者には治療が施される。
ならば自分が出来るのは、その空いた場を埋める働きをするのみ。
治療を施す者達の死なせたくないという思いを信じる。
前線から下がった者の生きたいと望む魂を信じる。
心配する暇があるなら、勝つ為に頭を使え。
そして一人でも多く敵を斃せ。━━
アセレーナもスチュワートも、ヒールナー伯爵もグレイスも、若かりし日に戦場でそう言われた。
「傷付いた夫の心配もしないなんて、冷たい女だとは思わなくて?」
カチュアに声を掛けられたアセレーナが、自嘲気味に笑って答えた。
カチュアは首を傾ける。
「いいえ。
父上の事は、奥様達に任せておけば良いでしょう。
それに先代とは言え、みっともなく取り乱した銀狼鬼の姿など見たくはありませんし。
それより何か思い当たる事があるのならと、そちらの方が気になります。」
「ウフフ…つくづく、可愛気の無い子だわね。
ウォレントの血を色濃く引いているわ。」
カチュアは少し複雑な作り笑いを浮かべた。
本当の戦場を経験していない自分には、まだまだそこまで戦士の境地には立てない。
襲撃を受けて倒れたのがスチュワートではなくミランダ様だったら、ここまで冷静では居られなかった。
……とゾッとした。
嘆き悲しみ、心痛はいかばかりか。
心配どころの騒ぎじゃ無かったかと思う。
いや、自分だけではない。メイも大変な事になっている。
というか、サイモン様が怒り狂って邸内が凍り付き、大災害並に大変な事になっていそうだ。
「私は、そこまで戦闘狂ではありませんから母上の考え全てに同意するワケではないのですが。
今は心配よりも事の決着を急ぐのが先でしょう。」
「ねぇ、アセレーナ。
君が何を思ったか当てようか?」
ヒールナー伯爵が、ヒョコっとアセレーナとカチュアの間に顔を出した。
毒気を抜かれる様な穏やかな面持ちの伯爵は、剣鬼のアセレーナや、スチュワート、グレイスと違い前線に立つ事は無かったが、それでも彼も戦場を経験している。
ゆえに伯爵も、アセレーナ達と同じ言葉を何度も聞かされて来た。
「我々がまだ、ヒヨコに毛が生えた程度の兵士だった頃に、『心配する暇があるなら頭を働かせろ』といつも我々に激を飛ばしていたー…
我々の分隊を預かる小隊の隊長マンバドナ殿のコト。でしょ。」
アセレーナは、頷いて同意を示した。
カチュアは二人の会話を聞きながら、マンバドナとは戦場における戦士としての心構えを教えた者だろうとは理解したが、それこそ今、我々が立たされた状況には必要の無い情報では無いのかとカチュアは無意識に不満気な表情をしてしまった。
「ああ、そのようなお名前でしたか。
お名前は忘れておりましたが、この……自身の技巧を誇示するようなナルシストじみた剣の使い方。
わたくし、あの方位しか思い付きませんの。」
「僕もだよ。
恐らく、スチュワートも対峙して気付いたのだろう。
マンバドナ隊長は彼の持つ美学に従い、心臓の一点のみ狙うからね。」
カチュアはヒールナー伯爵とアセレーナの不気味な会話を黙って聞いていた。
渋い表情をしたカチュアに気付いたヒールナー伯爵が、トントンと自分の心臓の辺りを指先で叩いた。
「肋骨をも傷付ける事無く隙間を狙って心臓を穿つのが彼の自慢のスタイルなんだ。
だから、他の部位を斬りつけようとしたり首を狙ったりは全てフェイクだ。
彼は、心臓だけを貫く自分に酔っている。
だからソコを狙う瞬間を見抜ければ、スチュワートみたいに避けれるかも知れない。」
「私が、其奴と戦う事になるという事ですか…?」
戦う際の注意点を聞かされているのだと解釈したカチュアが、ヒールナー伯爵とアセレーナの顔を見た。
「いや…カチュアだけではないよ。
彼の狙いが何かが、まだ分からないからね。
戦後、彼がどうしていたかも僕達は知らないし。
そもそもがスチュワートを傷付けたのがマンバドナ氏でなければ、これは無意味な話だし。」
その戦争では武勲を上げた若者も少なくは無かったと聞いた事がある。
カチュアは、ディングレイ侯爵家の次男であり家督を継げないヒールナーが、戦争が終結した際に男爵位を賜ったのが、この家の興りだと聞いた事があった。
そのヒールナー伯爵や銀狼鬼、スチュワートの居る分隊をまとめていた遣りてなのだ。
マンバドナとやらも、それなりに武勲を立てたのではないだろうか。
「知りたいですね。その、マンバドナという方の事を。
珍しいお名前ですが、貴族家としては聞いた記憶がありませんが。」
「いや、彼も僕と同様に爵位を頂いた筈だよ。」
噂が好きな貴族達の間でなら、もしかしたらマンバドナの名を知っている者も居るかも知れない。
だが、この邸に居る者達は自分も含め、社交界から遠のいている者ばかりだ。
他家の情報等の会話を交わせる様な付き合いを持つ者も居ない。
「令嬢であった内に、もっと社交の場に参加して貴族の伝手を作っておくべきだったな。
いや今更か…。」
王城に行けば、貴族家の若い者達と話す事は出来そうだが、ヒールナー伯爵達と同じ位の年齢の者でなければ知らないかも知れない。
それに要らぬ話を持ち込んで、王城でヒールナー伯爵家の噂話を広めるワケにもいかない。
スティーヴン王太子殿下は敏い方だ。
貴族でも無い使用人が攫われ傷付けられただけで、ヒールナー伯爵家の者に被害が何も出てはいない今、事を荒立てるワケにはいくまい。
「貴族との交流が盛んで、噂話などの情報を得る事が出来る者……。」
自身の呟きに反応し、カチュアの頭に真っ先に浮かんだのは、ガタイのデカい白髪の貴婦人の姿だった。
思い出した途端、カチュアが渋い表情をしてしまった。
だがそれが最適解である事も理解した。
「マンバドナ氏の話を……聞けるかも知れません……。
ですが、今すぐというワケには…。
その間にスファイの身がどうなるのかと。」
「ナルシストな彼はねプライドも高いんだよ。
小金欲しさに使用人を誘拐するような輩と組む人ではないんだ。
何にせよ、我が家に何かしらの要求が来ない事には何にも分からないんだよね。
本当にマンバドナ隊長が関わっているのかも。」
明朝になったら…
オースティンの元を訪ねよう。
その代償に、自身の大切な物を捧げなければならないとしても。
ヒールナー家に……いや、優しいミランダ奥様の身に災いが砂一粒分たりとも届かぬよう。
カチュアは強い決意を胸に、夜の空を見上げた。
誘拐されたメイが戻り下町のゴロツキ共が捕まって事件が解決、とはいかなかった事で邸にはまだ不穏な空気が流れている。
体調の悪いミランダは寝室から出てないので今の邸の状況を知らない。
「邸の前で人が殺されて、その犯人にスファイが連れ去られたかもなんて知ったら奥様がショック受けるよ。
お優しいミランダ奥様のお心に負担を掛けたくないんだよね。」
「それは邸の皆が思っている。
……邸の前で殺された男、あれは剣士によるものだ。
それも、それなりに腕の立つ。」
カチュアの言葉にメイが、はて?と不思議そうな顔をした。
「そりゃイッパシの騎士様でも、身を持ち崩して下町に落ちる事はあるらしいけどさ。
そんな人がスファイ攫って、どうすんの?
若い女、子どもならまだ売るにしろ何にしろ使い用はあるだろうけどさ。ただのアホ少年じゃん。」
「何を言う。男にだって使い道はあるだろう。
女同様にアッチの意味でも…。
メグミン先生の導師のお仲間が描いた聖書のスファイのように……
今頃は、前後から……。」
思い出したかの様にカチュアが頬を染め、ホウッと熱い吐息を漏らした。
カチュアの態度を見たメイも、旅の途中でミランダに見せられたスファイ総受けなる薄い本を思い出した。
可愛らしい少年のスファイが前後から男に弄ばれている描写がされていたが、可愛らしい少年ではなくなった今のスファイに当てはめるとメイ的には気持ちが悪い。
「キモ…。いや、カチュア…冗談でなくて。」
「……そうだな、冗談はさて置き……。
スファイを攫った者達と、メイ達を捕らえたゴロツキ共は全く別物だと思う。
縄張り争いや、儲けのネタを奪う様な物では無いと。」
「えー……じゃあ誰が何の為に、あのアホ攫ったのか結局分からないままじゃん。」
「ヒールナー伯爵家、それもサイモン様を仇としている者達は多い。
私の母が、そう語ってエリーゼに与した様に。
かと言って使用人を攫った所で伯爵家を脅すには…。」
エントランスに向かう廊下で立ち止まり会話をする二人の耳に、エントランスの方から慌ただしくなった声が聞こえた。
カチュアとメイは何事かとエントランスへと向かう。
吹き抜けになった階段の上から下を覗き見たカチュアが、手摺りを両手で掴み身を乗り出した。
「父上!」
エントランス中央に人が集まっており、その中には血に染まるスチュワートが居た。
階段を駆け下りてカチュアがスチュワートの元へ急ぐ。
離れた位置からスチュワートの姿を見守るアセレーナの前には、邸の者で治療魔法を使用出来る者達と治療士がスチュワートに手当てを施していた。
「父上ほどの方が、これ程の痛手を負うなんて!
相手は何者なのです!?」
「カチュア!話し掛けないで!治療が先よ!
兄さんも答えようとしないで!
肺が傷付いてるかも知れないんだから、声を出さないで!」
グレイスに促されてカチュアがスチュワートから距離を取る。
スチュワートは出血量が多い様だが意識はしっかりしており、あの深傷を負った状態で邸まで戻った事に驚く。
カチュアは、不安や嘆きを表情には出さずに何かを思い出そうと深く思案している母の姿に気付いた。
その姿は夫を心配する妻と言うよりは…………
「母上、何か思い当たる事でも?」
カチュアが目にしたのは、かつて起こった戦では前線に立ち、血を浴びながら剣を振るい「鬼」と呼ばれた騎士の姿そのものだった。
━━前線から下がった者には治療が施される。
ならば自分が出来るのは、その空いた場を埋める働きをするのみ。
治療を施す者達の死なせたくないという思いを信じる。
前線から下がった者の生きたいと望む魂を信じる。
心配する暇があるなら、勝つ為に頭を使え。
そして一人でも多く敵を斃せ。━━
アセレーナもスチュワートも、ヒールナー伯爵もグレイスも、若かりし日に戦場でそう言われた。
「傷付いた夫の心配もしないなんて、冷たい女だとは思わなくて?」
カチュアに声を掛けられたアセレーナが、自嘲気味に笑って答えた。
カチュアは首を傾ける。
「いいえ。
父上の事は、奥様達に任せておけば良いでしょう。
それに先代とは言え、みっともなく取り乱した銀狼鬼の姿など見たくはありませんし。
それより何か思い当たる事があるのならと、そちらの方が気になります。」
「ウフフ…つくづく、可愛気の無い子だわね。
ウォレントの血を色濃く引いているわ。」
カチュアは少し複雑な作り笑いを浮かべた。
本当の戦場を経験していない自分には、まだまだそこまで戦士の境地には立てない。
襲撃を受けて倒れたのがスチュワートではなくミランダ様だったら、ここまで冷静では居られなかった。
……とゾッとした。
嘆き悲しみ、心痛はいかばかりか。
心配どころの騒ぎじゃ無かったかと思う。
いや、自分だけではない。メイも大変な事になっている。
というか、サイモン様が怒り狂って邸内が凍り付き、大災害並に大変な事になっていそうだ。
「私は、そこまで戦闘狂ではありませんから母上の考え全てに同意するワケではないのですが。
今は心配よりも事の決着を急ぐのが先でしょう。」
「ねぇ、アセレーナ。
君が何を思ったか当てようか?」
ヒールナー伯爵が、ヒョコっとアセレーナとカチュアの間に顔を出した。
毒気を抜かれる様な穏やかな面持ちの伯爵は、剣鬼のアセレーナや、スチュワート、グレイスと違い前線に立つ事は無かったが、それでも彼も戦場を経験している。
ゆえに伯爵も、アセレーナ達と同じ言葉を何度も聞かされて来た。
「我々がまだ、ヒヨコに毛が生えた程度の兵士だった頃に、『心配する暇があるなら頭を働かせろ』といつも我々に激を飛ばしていたー…
我々の分隊を預かる小隊の隊長マンバドナ殿のコト。でしょ。」
アセレーナは、頷いて同意を示した。
カチュアは二人の会話を聞きながら、マンバドナとは戦場における戦士としての心構えを教えた者だろうとは理解したが、それこそ今、我々が立たされた状況には必要の無い情報では無いのかとカチュアは無意識に不満気な表情をしてしまった。
「ああ、そのようなお名前でしたか。
お名前は忘れておりましたが、この……自身の技巧を誇示するようなナルシストじみた剣の使い方。
わたくし、あの方位しか思い付きませんの。」
「僕もだよ。
恐らく、スチュワートも対峙して気付いたのだろう。
マンバドナ隊長は彼の持つ美学に従い、心臓の一点のみ狙うからね。」
カチュアはヒールナー伯爵とアセレーナの不気味な会話を黙って聞いていた。
渋い表情をしたカチュアに気付いたヒールナー伯爵が、トントンと自分の心臓の辺りを指先で叩いた。
「肋骨をも傷付ける事無く隙間を狙って心臓を穿つのが彼の自慢のスタイルなんだ。
だから、他の部位を斬りつけようとしたり首を狙ったりは全てフェイクだ。
彼は、心臓だけを貫く自分に酔っている。
だからソコを狙う瞬間を見抜ければ、スチュワートみたいに避けれるかも知れない。」
「私が、其奴と戦う事になるという事ですか…?」
戦う際の注意点を聞かされているのだと解釈したカチュアが、ヒールナー伯爵とアセレーナの顔を見た。
「いや…カチュアだけではないよ。
彼の狙いが何かが、まだ分からないからね。
戦後、彼がどうしていたかも僕達は知らないし。
そもそもがスチュワートを傷付けたのがマンバドナ氏でなければ、これは無意味な話だし。」
その戦争では武勲を上げた若者も少なくは無かったと聞いた事がある。
カチュアは、ディングレイ侯爵家の次男であり家督を継げないヒールナーが、戦争が終結した際に男爵位を賜ったのが、この家の興りだと聞いた事があった。
そのヒールナー伯爵や銀狼鬼、スチュワートの居る分隊をまとめていた遣りてなのだ。
マンバドナとやらも、それなりに武勲を立てたのではないだろうか。
「知りたいですね。その、マンバドナという方の事を。
珍しいお名前ですが、貴族家としては聞いた記憶がありませんが。」
「いや、彼も僕と同様に爵位を頂いた筈だよ。」
噂が好きな貴族達の間でなら、もしかしたらマンバドナの名を知っている者も居るかも知れない。
だが、この邸に居る者達は自分も含め、社交界から遠のいている者ばかりだ。
他家の情報等の会話を交わせる様な付き合いを持つ者も居ない。
「令嬢であった内に、もっと社交の場に参加して貴族の伝手を作っておくべきだったな。
いや今更か…。」
王城に行けば、貴族家の若い者達と話す事は出来そうだが、ヒールナー伯爵達と同じ位の年齢の者でなければ知らないかも知れない。
それに要らぬ話を持ち込んで、王城でヒールナー伯爵家の噂話を広めるワケにもいかない。
スティーヴン王太子殿下は敏い方だ。
貴族でも無い使用人が攫われ傷付けられただけで、ヒールナー伯爵家の者に被害が何も出てはいない今、事を荒立てるワケにはいくまい。
「貴族との交流が盛んで、噂話などの情報を得る事が出来る者……。」
自身の呟きに反応し、カチュアの頭に真っ先に浮かんだのは、ガタイのデカい白髪の貴婦人の姿だった。
思い出した途端、カチュアが渋い表情をしてしまった。
だがそれが最適解である事も理解した。
「マンバドナ氏の話を……聞けるかも知れません……。
ですが、今すぐというワケには…。
その間にスファイの身がどうなるのかと。」
「ナルシストな彼はねプライドも高いんだよ。
小金欲しさに使用人を誘拐するような輩と組む人ではないんだ。
何にせよ、我が家に何かしらの要求が来ない事には何にも分からないんだよね。
本当にマンバドナ隊長が関わっているのかも。」
明朝になったら…
オースティンの元を訪ねよう。
その代償に、自身の大切な物を捧げなければならないとしても。
ヒールナー家に……いや、優しいミランダ奥様の身に災いが砂一粒分たりとも届かぬよう。
カチュアは強い決意を胸に、夜の空を見上げた。
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