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133話◆おめぇ、出たのか!?
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床に両手と頭を付けて土下座の姿勢を取るカチュアの前にオースティンが片膝をついてしゃがんだ。
カチュアの肩に手を触れようとして一瞬躊躇い、遠慮がちにそっと指先だけをカチュアの肩に触れさせる。
「カチュア殿、御身体が汚れます。
どうか、お立ち下さい。
私に出来る範囲ではありますが、カチュア殿の頼み事、何とかお力添え致しましょう。」
「オースティン様!いけません!
グイザール公に関わる事に首を突っ込むのは危険です!」
カチュアの申し出を承諾したオースティンに直ぐ様、従者が横槍を入れる。
グイザール公爵に関する事をほぼ知らないカチュアには、処刑されて後にもこうして「嗅ぎ回る事が危険」と噂される程の影響力を持つ悪霊の様な存在が不可解だ。
「分かっている。
だがカチュア殿にとって、それは重要な情報なのでしょう?
……私に身を委ねる覚悟をするまでに。」
オースティンに促され床から立ち上がったカチュアはソファーに腰を下ろした。
カチュアが座ったのを見て、オースティンもカチュアの向かい側の席に腰を下ろす。
「………ええ。
ですが貴方の身に危険が及ぶとなると…。」
「私とて、アリエスの指輪を許された騎士なのです。
夜会など公の場にて噂を集める位では、そう危険な目には遭いませんよ。」
カチュアとオースティンの会話を横で聞きながら、従者は不安気な表情を隠さない。
グイザール公爵本人はもうこの世には居ないが、それに関わった者達がまだ何か良からぬ動きをしているのだろう。
実際、スファイもそれに巻き込まれた可能性がある。
グイザール公爵の庶子なのだから、命を脅かされる事は無いと思いたいのだが。
「ありがとうございます。
ですが、貴方方だけを危険に晒す訳にはいかない。
オースティン様が夜会に参加する際には、私が護衛騎士として必ず同行致します。」
「カチュア殿が、男装をして私をエスコートしてして下さるのですか?それは嬉しい。ですが……
花達が群がりそうですね……妬いてしまいそうだ。」
「ご心配なさらずとも、貴方の大切なお嬢様方を奪うつもりは御座いませんよ。」
「いえ……わたくし…。
貴方に群がる花達に妬いてしまいそうですわ。」
▼
▼
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ヒールナー若夫婦の寝室のドアが開き、サイモンに身体を支えられながらミランダが部屋から出て来た。
侍女としての仕事をサボりつつ、ミランダの身を心配をして寝室近くをうろついていたメイは、2日ぶりに愛しの若奥様の顔を見れて、嬉しさの余りパアッと明るい顔をする。
「奥様、もう御身体の具合はよろしいのですか?」
メイはミランダに、タタッと駆け寄って抱き着こうとしたが、サイモンに睨まれ「近寄るな」と手の平を向け阻まれてしまった。
本音を隠さないメイが主のサイモンに対して「チッ」と舌打ちをする。
「良かった、メイ…無事だったのね。
スファイも元気?
カチュアの姿が見当たらないようだけど…。」
ミランダの問いに、どう答えるべきか一瞬悩んだメイがミランダを支えるサイモンの顔を見た。
サイモンはミランダに気付かれ無い程度に小さく首を横に振る。
何も知らせてないのだと。
「あー…あのアホは元気ですよ。
ちょっとばかり、タルんでるんでースチュワート様に鍛え直して貰ってンです。
カチュアは、さるご令嬢のエスコート兼、護衛騎士を頼まれましてーしばらくはソチラに居るそうですよ。」
「あら、そうなの?
カチュアがご令嬢の護衛騎士…なかなかお目が高いけど、良く引き受けたわね。珍しい。
じゃあ、スチュワートさんとスファイに挨拶をしに行きましょうか。」
「スチュワートとスファイは、王都内にある別邸に行って貰っている。
メイが居るとスファイは甘えるからな。
別邸で厳しく執事としての指導を受けて貰う事にした。」
メイのデタラメ設定に乗っかり上手く誤魔化したサイモンに、メイが「ヨシッ!」と心でサムズアップをする。
実際、今スチュワートはアセレーナと共にヒールナー伯爵邸の近くにある小さな邸にて療養中である。
スファイが行方不明な事もスチュワートが重傷を負った事も、今はまだミランダには知らせないというのが、ヒールナー伯爵邸の者達に徹底された。
「そうなの……カチュアやスチュワートさんの顔を見れないのは、何だか寂しいわね。」
ミランダは微妙な違和感を感じてはいるようだが、何処がどうおかしいのかには気がついておらず、何となく納得した様子を見せた。
「それより奥様、まだ体調がよろしくないのでしょ?
出歩いて大丈夫なんですか?」
サイモンに支えられたまま部屋から出て来たミランダに、メイが唇に指を当て首を傾け幼くあざとい仕草で心配の態度を見せる。
カワイイ自分をミランダにアピールするようなメイの態度を見たサイモンが、汚物を見る様に蔑んだ眼差しをメイに向けた。
そんなサイモンの視線をメイがカチ無視する。
「まだ、本調子ではないのよね。
でもずっとベッドに居たら身体がなまっちゃうもの。」
「適度な運動ならば俺が………」
サイモンの呟きに、ミランダとメイが冷めた視線を送った。
「サイモン様の運動とやらは適度なんかで収まらないでしょ。超ハードなんですから。
奥様の身を案じるなら我慢して下さいよ。
猿じゃあるまいし。」
「サササササイモン!愛する旦那様ッ!
お義父様とお義母様に挨拶っ!行きましょう!」
サイモンを主と思わないメイの態度にサイモンのこめかみがピクッと動く。
焦ったミランダはサイモンの両頬を手の平で押さえ、サイモンの視線を自分の方に向け、メイから意識を逸させた。
無礼な口をきいた侍女を主がバッサリ刃傷沙汰とか、そんな事になったら困る!!
そんな思いでミランダは必死になった。
そんな必死なミランダの表情が愛おしく、サイモンはミランダをギュッと抱き締める。
「ああ分かった。
では夫婦仲睦まじく、二人で温室に向かおうか。
マメはついて来なくて良い。邪魔だ。
留守のカチュアの分も存分に働け。」
グギィ!と悔しそうなメイにシッシッと追い払う様な手振りを見せながらニヤっとほくそ笑むサイモンは、ミランダを支えながら温室に向かった。
「メイ相手にマウントを取るなんて、大人気ないんだから…」
身体を支えられながら、ミランダがサイモンに聞こえない様にボソッと呟いた。
ゆっくりとした足取りで寝室から温室に向かう。
ミランダの実家、シルベルト男爵邸より大きなヒールナー伯爵邸では、移動にそれなりに歩く必要がある。
身体がしんどいこんな時には、前世での日本の家が恋しくなる。
部屋を出て階段降りたらすぐ玄関、すぐリビング、すぐトイレみたいな。
「つくづく考え方が庶民派なんだよなぁ」
なんてミランダは思ったりもする。
「歩くのが辛いならば、温室まで俺が君を抱き上げて行こうか。」
「大丈夫です、自分で歩かないと体力が落ちる一方ですので。」
ミランダがサイモンの申し出を断ると、サイモンがあからさまに残念そうな表情をした。
メイやスファイの行方不明騒ぎがありミランダが心労からか体調を崩したため、サイモンは数日間のお預けを食らっている。
そんなサイモンに抱き上げられるなんて、ベッドに直行しそうで怖い。
……と言うよりは、結局我慢してくれるのだから何だか可哀想。
抱きたい、だが妻の体調を慮るならばミランダを心から愛するサイモンは、心身共に辛い思いをしながらも我慢をするしかない。
欲情させた後に、そんな思いをさせるのは忍びない。
ミランダはそう考え、サイモンとの過剰なスキンシップを少し控えた。
「めぐみ、君が思っているほど俺は自重の出来ない男ではないぞ。
体調の優れない君を心配しているのだから、そこは俺に任せて欲しい。」
「……ヤリマンボウ状態になりません?」
「ヤリマンボウとは何だろう……」
ミランダは意味不明な濁し方をしてサイモンを余計に混乱させてしまった。
色んな意味でサイモンの下半身が一気に盛り上がるんじゃないかと危惧したが、要らぬ心配だったようだ。
ミランダはサイモンに抱き上げられて温室に向かった。
元気な時ならば平気だが、体調不良状態では寝室から温室までの道のりがとても長い。
サイモンに抱っこして貰わなかったら、どれだけ時間が掛かった事やら。
「お義父様、お義母様、ご心配お掛けして申し訳ありませんでした。」
「まぁメグミン!」
温室に到着したミランダはサイモンの腕から下ろして貰い、義両親二人の前でカーテシーをして、少しよろめいた。
サイモンがミランダの身体を支え、グレイスがすぐに椅子を用意してミランダを座らせるようサイモンに促す。
「無理はしなくて良かったのよ、メグミン。
今、急に顔色が悪くなったわ、バナナ食べる?」
「急に顔色が悪くなったのは、お義母様がわたしをメグミン呼びするのが定着したからです。」
グレイスはバナナの皮を剥いた状態で、丸々一本をミランダに渡そうとした。
グレイスはミランダの、令嬢らしからぬバナナ一本丸かじりを見るのが好きなのだ。
「バナナは今…ちょっと重くて……
オレンジか、チェリーあります?」
「あるけど、まだ甘熟状態じゃないから酸味が強いよ?いいのかい?」
サイモンの父であるヒールナー伯爵が、テーブルに置かれたオレンジをナイフで剝いて食べやすい様に皿に並べた。
ミランダはそれを手にして口に運び、オレンジの果汁をジュッと吸う。
「んん、酸っぱい!でも、これくらいのが美味しい。」
グレイスはミランダの向かい側の席に座り、唇をギュッと窄めて酸味の強いオレンジの果汁を吸い続けるミランダをジッと見詰めた。
「……ねぇ、メグミン。
ひょっとしたら貴女、おめでたじゃない?」
「ぉめ………?」
グレイスの言葉に、テーブルについたヒールナー伯爵とサイモンが同時にミランダを見る。
━━━━オメェ、出たぞ!を略してオメデタ……
ではないわよね……おめでた……妊娠!?━━━━
ミランダの両手から、カスカスになったオレンジがポトリと落ちた。
カチュアの肩に手を触れようとして一瞬躊躇い、遠慮がちにそっと指先だけをカチュアの肩に触れさせる。
「カチュア殿、御身体が汚れます。
どうか、お立ち下さい。
私に出来る範囲ではありますが、カチュア殿の頼み事、何とかお力添え致しましょう。」
「オースティン様!いけません!
グイザール公に関わる事に首を突っ込むのは危険です!」
カチュアの申し出を承諾したオースティンに直ぐ様、従者が横槍を入れる。
グイザール公爵に関する事をほぼ知らないカチュアには、処刑されて後にもこうして「嗅ぎ回る事が危険」と噂される程の影響力を持つ悪霊の様な存在が不可解だ。
「分かっている。
だがカチュア殿にとって、それは重要な情報なのでしょう?
……私に身を委ねる覚悟をするまでに。」
オースティンに促され床から立ち上がったカチュアはソファーに腰を下ろした。
カチュアが座ったのを見て、オースティンもカチュアの向かい側の席に腰を下ろす。
「………ええ。
ですが貴方の身に危険が及ぶとなると…。」
「私とて、アリエスの指輪を許された騎士なのです。
夜会など公の場にて噂を集める位では、そう危険な目には遭いませんよ。」
カチュアとオースティンの会話を横で聞きながら、従者は不安気な表情を隠さない。
グイザール公爵本人はもうこの世には居ないが、それに関わった者達がまだ何か良からぬ動きをしているのだろう。
実際、スファイもそれに巻き込まれた可能性がある。
グイザール公爵の庶子なのだから、命を脅かされる事は無いと思いたいのだが。
「ありがとうございます。
ですが、貴方方だけを危険に晒す訳にはいかない。
オースティン様が夜会に参加する際には、私が護衛騎士として必ず同行致します。」
「カチュア殿が、男装をして私をエスコートしてして下さるのですか?それは嬉しい。ですが……
花達が群がりそうですね……妬いてしまいそうだ。」
「ご心配なさらずとも、貴方の大切なお嬢様方を奪うつもりは御座いませんよ。」
「いえ……わたくし…。
貴方に群がる花達に妬いてしまいそうですわ。」
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ヒールナー若夫婦の寝室のドアが開き、サイモンに身体を支えられながらミランダが部屋から出て来た。
侍女としての仕事をサボりつつ、ミランダの身を心配をして寝室近くをうろついていたメイは、2日ぶりに愛しの若奥様の顔を見れて、嬉しさの余りパアッと明るい顔をする。
「奥様、もう御身体の具合はよろしいのですか?」
メイはミランダに、タタッと駆け寄って抱き着こうとしたが、サイモンに睨まれ「近寄るな」と手の平を向け阻まれてしまった。
本音を隠さないメイが主のサイモンに対して「チッ」と舌打ちをする。
「良かった、メイ…無事だったのね。
スファイも元気?
カチュアの姿が見当たらないようだけど…。」
ミランダの問いに、どう答えるべきか一瞬悩んだメイがミランダを支えるサイモンの顔を見た。
サイモンはミランダに気付かれ無い程度に小さく首を横に振る。
何も知らせてないのだと。
「あー…あのアホは元気ですよ。
ちょっとばかり、タルんでるんでースチュワート様に鍛え直して貰ってンです。
カチュアは、さるご令嬢のエスコート兼、護衛騎士を頼まれましてーしばらくはソチラに居るそうですよ。」
「あら、そうなの?
カチュアがご令嬢の護衛騎士…なかなかお目が高いけど、良く引き受けたわね。珍しい。
じゃあ、スチュワートさんとスファイに挨拶をしに行きましょうか。」
「スチュワートとスファイは、王都内にある別邸に行って貰っている。
メイが居るとスファイは甘えるからな。
別邸で厳しく執事としての指導を受けて貰う事にした。」
メイのデタラメ設定に乗っかり上手く誤魔化したサイモンに、メイが「ヨシッ!」と心でサムズアップをする。
実際、今スチュワートはアセレーナと共にヒールナー伯爵邸の近くにある小さな邸にて療養中である。
スファイが行方不明な事もスチュワートが重傷を負った事も、今はまだミランダには知らせないというのが、ヒールナー伯爵邸の者達に徹底された。
「そうなの……カチュアやスチュワートさんの顔を見れないのは、何だか寂しいわね。」
ミランダは微妙な違和感を感じてはいるようだが、何処がどうおかしいのかには気がついておらず、何となく納得した様子を見せた。
「それより奥様、まだ体調がよろしくないのでしょ?
出歩いて大丈夫なんですか?」
サイモンに支えられたまま部屋から出て来たミランダに、メイが唇に指を当て首を傾け幼くあざとい仕草で心配の態度を見せる。
カワイイ自分をミランダにアピールするようなメイの態度を見たサイモンが、汚物を見る様に蔑んだ眼差しをメイに向けた。
そんなサイモンの視線をメイがカチ無視する。
「まだ、本調子ではないのよね。
でもずっとベッドに居たら身体がなまっちゃうもの。」
「適度な運動ならば俺が………」
サイモンの呟きに、ミランダとメイが冷めた視線を送った。
「サイモン様の運動とやらは適度なんかで収まらないでしょ。超ハードなんですから。
奥様の身を案じるなら我慢して下さいよ。
猿じゃあるまいし。」
「サササササイモン!愛する旦那様ッ!
お義父様とお義母様に挨拶っ!行きましょう!」
サイモンを主と思わないメイの態度にサイモンのこめかみがピクッと動く。
焦ったミランダはサイモンの両頬を手の平で押さえ、サイモンの視線を自分の方に向け、メイから意識を逸させた。
無礼な口をきいた侍女を主がバッサリ刃傷沙汰とか、そんな事になったら困る!!
そんな思いでミランダは必死になった。
そんな必死なミランダの表情が愛おしく、サイモンはミランダをギュッと抱き締める。
「ああ分かった。
では夫婦仲睦まじく、二人で温室に向かおうか。
マメはついて来なくて良い。邪魔だ。
留守のカチュアの分も存分に働け。」
グギィ!と悔しそうなメイにシッシッと追い払う様な手振りを見せながらニヤっとほくそ笑むサイモンは、ミランダを支えながら温室に向かった。
「メイ相手にマウントを取るなんて、大人気ないんだから…」
身体を支えられながら、ミランダがサイモンに聞こえない様にボソッと呟いた。
ゆっくりとした足取りで寝室から温室に向かう。
ミランダの実家、シルベルト男爵邸より大きなヒールナー伯爵邸では、移動にそれなりに歩く必要がある。
身体がしんどいこんな時には、前世での日本の家が恋しくなる。
部屋を出て階段降りたらすぐ玄関、すぐリビング、すぐトイレみたいな。
「つくづく考え方が庶民派なんだよなぁ」
なんてミランダは思ったりもする。
「歩くのが辛いならば、温室まで俺が君を抱き上げて行こうか。」
「大丈夫です、自分で歩かないと体力が落ちる一方ですので。」
ミランダがサイモンの申し出を断ると、サイモンがあからさまに残念そうな表情をした。
メイやスファイの行方不明騒ぎがありミランダが心労からか体調を崩したため、サイモンは数日間のお預けを食らっている。
そんなサイモンに抱き上げられるなんて、ベッドに直行しそうで怖い。
……と言うよりは、結局我慢してくれるのだから何だか可哀想。
抱きたい、だが妻の体調を慮るならばミランダを心から愛するサイモンは、心身共に辛い思いをしながらも我慢をするしかない。
欲情させた後に、そんな思いをさせるのは忍びない。
ミランダはそう考え、サイモンとの過剰なスキンシップを少し控えた。
「めぐみ、君が思っているほど俺は自重の出来ない男ではないぞ。
体調の優れない君を心配しているのだから、そこは俺に任せて欲しい。」
「……ヤリマンボウ状態になりません?」
「ヤリマンボウとは何だろう……」
ミランダは意味不明な濁し方をしてサイモンを余計に混乱させてしまった。
色んな意味でサイモンの下半身が一気に盛り上がるんじゃないかと危惧したが、要らぬ心配だったようだ。
ミランダはサイモンに抱き上げられて温室に向かった。
元気な時ならば平気だが、体調不良状態では寝室から温室までの道のりがとても長い。
サイモンに抱っこして貰わなかったら、どれだけ時間が掛かった事やら。
「お義父様、お義母様、ご心配お掛けして申し訳ありませんでした。」
「まぁメグミン!」
温室に到着したミランダはサイモンの腕から下ろして貰い、義両親二人の前でカーテシーをして、少しよろめいた。
サイモンがミランダの身体を支え、グレイスがすぐに椅子を用意してミランダを座らせるようサイモンに促す。
「無理はしなくて良かったのよ、メグミン。
今、急に顔色が悪くなったわ、バナナ食べる?」
「急に顔色が悪くなったのは、お義母様がわたしをメグミン呼びするのが定着したからです。」
グレイスはバナナの皮を剥いた状態で、丸々一本をミランダに渡そうとした。
グレイスはミランダの、令嬢らしからぬバナナ一本丸かじりを見るのが好きなのだ。
「バナナは今…ちょっと重くて……
オレンジか、チェリーあります?」
「あるけど、まだ甘熟状態じゃないから酸味が強いよ?いいのかい?」
サイモンの父であるヒールナー伯爵が、テーブルに置かれたオレンジをナイフで剝いて食べやすい様に皿に並べた。
ミランダはそれを手にして口に運び、オレンジの果汁をジュッと吸う。
「んん、酸っぱい!でも、これくらいのが美味しい。」
グレイスはミランダの向かい側の席に座り、唇をギュッと窄めて酸味の強いオレンジの果汁を吸い続けるミランダをジッと見詰めた。
「……ねぇ、メグミン。
ひょっとしたら貴女、おめでたじゃない?」
「ぉめ………?」
グレイスの言葉に、テーブルについたヒールナー伯爵とサイモンが同時にミランダを見る。
━━━━オメェ、出たぞ!を略してオメデタ……
ではないわよね……おめでた……妊娠!?━━━━
ミランダの両手から、カスカスになったオレンジがポトリと落ちた。
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